NEW桃太郎 最終話

ももたろう
最終話 お宝の行方の巻



 その頃、桃太郎のほうはとんでもないことになっていた。なんと、お宝を守るために荷車の中に潜んでいた鬼と格闘中だったのだ。

しかし、実際のところ、桃太郎には剣での格闘の経験などなかったので、初めての相手が鬼という、かなりきつい状況だった。

「こんなところで死んでたまるか・・・」

 桃太郎は何やらぶつぶつ言いながら、ギリギリのところで鬼の攻撃をかわしていた。

「・・・俺はこんなところで死ぬわけにはいかないんだ・・・このお宝をもって、おふくろと・・・あんな親父のいないところへ行って暮らすんだ・・・ちくしょう、てめえみたいなザコ鬼なんかくたばっちまえ!」

 そう言いながらの桃太郎の捨て身の突進は、うまい具合に鬼をとらえ、鬼を船から突き落とす形になった。

「あ、やった。勝った。鬼をやっつけたぞ!」

 鬼は持っていた金棒の重みで、ブクブクと海の底へ沈んでいった。

 この勝利は今まで逃げの人生を送っていた桃太郎に、本当の勇気や自信を与えることとなった。

 荷車いっぱいのお宝をもって家についた桃太郎は、母親を連れ、家を逃げ出そうとした。だが、その時、あのろくでなしの親父が帰ってきた。

「何だ、このお宝は?スゲーじゃねーか、こんだけありゃ一生遊んで暮らせるぜ」

「あんた!それはこの桃太郎のものだよ。手ぇ出すんじゃないよ!」

「うるせえ!だからどうしたってんだ!息子の物を親が使ってどこが悪いってんだ!」

「親ぁ?お前のような奴、親なんて思ったことないね!こいつは俺とおふくろのモンだ!」

「ももたろう・・・」

「何とでも言え、とにかく、こいつは貰っていくからな」

「あんた、やめて・・・うっ!」

 桃太郎の父につかみかかった母は、夫にぶたれ倒れ込んだ。

「おふくろ!」

 桃太郎は口から血を流し、うずくまる母に走り寄った。

 そんな桃太郎たちをしり目に父親は家を出ていった。しかし、その直後、

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 表のほうで叫び声がした。桃太郎は思わず家を飛び出した。

 すると、父親は胴体を真っ二つに切り裂かれ倒れ、かたわらにはあのキジ村が、血の滴る剣を持ち、立っていた。

「桃太郎、お宝を返してもらいに来た。文句があるのなら、この男のようにたたき切る」

「・・・いや、たった今、あんたがこのクソ親父をぶっ殺してくれたんでそいつは必要無くなった。それに・・・お宝より大事にしなくちゃならないものが俺にはあるから・・・」

 桃太郎は父親の死体を見ながら呟いた。

「そうか・・・ならばこれでお別れだ・・・」

 そういうとキジ村は去っていこうとした。が、振り返り、

「そういや、お前は生きて帰ってきたから百万円貰えるんだったな、ほら、こいつがその代わりだ。・・・おふくろさんを大切にしろよ」

 そう言うとキジ村はお宝の中でもとびきり大きな、時価数億はくだらないようなダイヤをひとつ、桃太郎に渡し、去っていった。

 桃太郎はその姿をいつまでも見送っていたという。

 さて、サル吉たちのほうは残っていた日光猿軍団を引き連れ光秀を追っていた。しかし、指揮官のいない軍団のためか、ここへきて膠着状態が続いていた。

「犬山、何かいい手はないか?」

 犬山は、鬼との戦いで討ち死にした指揮官たちに変わって、サル吉の参謀を勤めていた。

「今は・・・これといって・・・しかし、こんなときキジ村がいてくれたら・・・」

「サル吉殿!」

 声の主は待っていた人物、キジ村だった。

「キジ村!来てくれたか!よしこれで光秀は終わりだ!」

 サル吉は頼もしい助っ人の登場に大いに喜んだ。

「キジ村、桃太郎を追ったのではなかったのか?」

「ああ、お宝はちゃんといただいてきた。だが、そいつは自分の為以外の目的に使うことに決めたんだ。だから、目的を探してこうしてここへ来たんだ」

「そうか・・・あのお宝はもともと鬼たちが人々から奪ってきたものだ、そういう使い方が正しいのかもしれないな」

 結局、キジ村が加わったことで、サル吉の軍は作戦面で光秀に勝り、見事、信長公の仇討ちに成功した。

 こうして、すべての事が新しい方向へと前進し始めた。

 サル吉は信長公の後継者として将軍の位についた。

 犬山はサル吉の右腕として、犬として初めて猿軍団の軍団長に就任した。

 同じくキジ村はサル吉の参謀として就任し、鬼のお宝を使い、現在空軍を作ろうと計画中である。

 一方、桃太郎はちょっとだけ心を入れ替えて、ダイヤは換金せず、母親のためにまじめに働いてるというが、ちょっとはいいかげんなところは残っているらしく、鬼退治は自分がきびだんごで雇ったサル、犬、キジを連れてやったんだ。といいふらしているらしい。だが信用する人もあんまりいないようで、鬼をたおしたんだという、一応ノンフィクションの部分も信じる人はまずいないという。ところで、彼が後に正義の人、桃太郎侍を名乗るのは周知の事実である。が、まだそれは誰も知らない。

 と、いった具合に、母親や世間からの評判はかなりよくなり、母親もあの時殺しておけばよかった。などと思うこともなくなったという。





おわり



© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: