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昨日の寝る前はストーブなしでも暖かかった気がするんだけど、今朝は朝から天気も悪くて、ちょっと寒い。夕方くらいに、ちょっと早めにストーブをつけてしまった。今日も昼前くらいに起きて、本を少し読んだりパソコンで作業したりしてました。なかなかはかどらない。今日は何の日みどりの日国際消防士の日エメラルドの日競艇の日ファミリーの日植物園の日ラムネの日ノストラダムスの日名刺の日うすいえんどうの日しらすの日スター・ウォーズの日糸魚川・ヒスイの日ゴーシェ病の日口臭ケアの日とろけるハンバーグの日信州ハム「グリーンマーク」の日常総メロンパンの日巻寿司の日天赦日は開運財布の日みたらしだんごの日修司忌高級食パン文化月間タイトル:予言のランチボックス その小さな温室は、時間の流れが少しだけ遅い場所だった。緑に囲まれた木のベンチに座り、ユイはいつものように昼食を広げていた。手には炭酸の瓶、膝の上には分厚い一冊——『ノストラダムスの大予言』。 正直なところ、彼女はこの本を“信じている”わけではなかった。ただ、妙に落ち着くのだ。世界の終わりとか、破滅とか、そういう壮大な話を読みながら、目の前のハンバーグ弁当を食べると、不思議と現実のありがたみが増す気がする。「もし今日が最後の日だったら、これ食べてるのも贅沢だよね」 そうつぶやいて、彼女は箸を取った。 そのときだった。 ぱらり、とページが勝手にめくれた。風はない。窓も閉まっている。猫が足元で寝返りを打っただけだ。 ユイは少しだけ眉をひそめ、本に目を落とす。 そこには、さっきまでなかったはずの文章が浮かんでいた。『緑の衣の娘、昼餉の時、炭酸の瓶を手に笑う。やがて彼女は、未来を知る。だがその結末は——』「……え?」 思わず声が漏れる。自分の状況と一致しすぎている。緑のワンピース、炭酸の瓶、そして今まさに昼食中。 ページの続きが、じわりと浮かび上がる。『彼女は最後の一口を食べる前に、重大な真実に気づくであろう』 ユイは箸を止めた。「最後の一口……?」 弁当箱の中を見つめる。ハンバーグはもう半分以下。残りはあと少しだ。 妙な緊張が走る。これを食べたら、何かが起こるのか?世界の終わり?それとも、個人的な何か? ごくり、と唾を飲み込む。「……いやいや、そんなわけ」 笑い飛ばそうとしたが、ページはさらに続きを映し出した。『そして彼女は理解する。“それ”がすでに始まっていることを——』 ユイの手が止まる。 視線が、ふとテーブルの端に移る。 そこには、さっきまでなかったはずの白い紙が一枚置かれていた。 封もされていない、小さなメモ。 震える手でそれを開く。 ——中には、たった一行。 「弁当、塩入れすぎたかも。ごめん。—未来の自分より」「……え?」 ユイはゆっくりと、最後のハンバーグを口に入れた。 瞬間。「しょっっっっっっっっっぱ!!!!!」 温室に響く叫び声。 猫が飛び起きる。 本のページは、静かに閉じた。 ——予言は、完璧に当たっていた。おわり
2026.05.04
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空が明るくなりかけるまで夜更かしして昼まで寝てる。連休を満喫してる。とも言えないが、そんな生活。映画見ようと思ってたけど、全然見れない。今日は何の日憲法記念日世界笑いの日世界報道自由デーごみの日リカちゃんの誕生日スケートパトロールの日ゴミ片付けの日そうじの日五三焼カステラの日F&E酵素の日くるみパンの日みたらしだんごの日ビースリーの日高級食パン文化月間タイトル:ごみじゃない日商店街の片隅で、おばあさんは毎日「ごみ」を広げていた。古びた本、片方だけのローラースケート、色とりどりのスカーフ、空き瓶、新聞紙。そのどれもが、誰かにとってはとっくに終わったものに見える。けれど彼女は違った。ひとつひとつ丁寧に布で拭き、並べ、時々くすっと笑う。「ああ、この子は昨日泣いてたね」「この子は遠くまで転がったんだよ」まるで物に記憶があるみたいに話しかける。通りすがりの人は最初、変わった人だと思った。でも、不思議なことに、立ち止まる人が増えていった。会社帰りのサラリーマン、学校帰りの子ども、犬の散歩中の主婦。誰もが少しだけその「ごみ」を見て、少しだけ笑顔になって帰っていく。ある日、近くの店の若い店主がたまらず聞いた。「おばあちゃん、それ全部拾ってきたの?売ってるわけでもないし、なんのために?」おばあさんは手を止めて、にこっと笑った。「これはね、忘れられた“物語”なのよ。捨てられるとき、みんなちょっとだけ悲しい顔をしてるの。それを、ここで一回だけ“楽しい話”に変えてあげるの」店主は首をかしげたが、それ以上は聞かなかった。そして数週間後、その場所からおばあさんは忽然と姿を消した。残っていたのは、きれいに片付けられた路面と、一枚の紙だけ。そこにはこう書かれていた。「ごみ収集は、毎週月・木です。分別にご協力ください」店主はその紙を見て笑った。「なんだ、ただの清掃ボランティアかよ」そう言って立ち去ろうとしたとき、ふと気づいた。あの場所、前よりずっと人が立ち止まるようになっている。誰もごみを捨てなくなっていた。——そして、その紙の裏には小さくこう書かれていた。「物語を見た人は、次に捨てるとき、少しだけ優しくなる」おわりコンビニに行こうと思ってたけど行かなかった。明日行こう。
2026.05.03
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ゴールデンウイークですね。今日も天気はいまいちな感じ。そしてこの時間になるとちょっと寒い。今日は出かける予定がなくなったので、家で作業したりしていました。本読みたいけど、集中ができない。読み始めたら眠くなる。今日は何の日八十八夜世界まぐろデー郵便貯金の日(郵便貯金創業記念日)交通広告の日歯科医師記念日緑茶の日えんぴつ記念日婚活の日カルシウムの日コツコツが勝つコツの日ごっつの日コージーコーナーの日紙コップの日国府津(こうづ)の日VIVUS GOLFの日新茶の日Life2.0の日高級食パン文化月間タイトル:ここ、実は「時間つぶし席」です水津駅の待合室、その窓際の席には、いつも彼女がいる。紙コップの緑茶を飲みながら、ノートに何かを書いている人。ある日、隣に座ったサラリーマンが声をかけた。「すみません、いつもここにいますよね。何してるんですか?」彼女は少し考えてから答えた。「時間をつぶしてます」「……普通ですね」「ええ。でも、“うまくつぶす”のがコツなんです」彼はなんとなく興味を持った。「どうやって?」彼女はノートを開く。「人と話すこと。これが一番早いです」半信半疑のまま、彼は話し始めた。仕事のこと、最近の疲れ、ちょっとした愚痴。気づけば会話は思ったより続いていた。ふと時計を見る。「……あれ?」まだ10分くらいしか経っていないはずだった。なのに、発車案内はすでに「間もなく到着」に変わっている。「そんなに話しました?」彼女は微笑む。「いいえ、ほとんど話していませんよ」「いや、でも……」彼は首をかしげる。妙な感覚だった。時間が飛んだような、抜け落ちたような。彼女はペンを走らせる。「観察対象No.214:会話により時間感覚が消失」「それ、俺のことですよね?」「はい。とてもいいデータです」彼は苦笑する。「まあ、確かにあっという間でしたね」そのとき、彼女がぽつりと言った。「大丈夫ですよ。少しくらいなら」「……何がですか?」彼女は顔を上げる。「あなたの時間です」一瞬、意味がわからなかった。「時間って……」彼女はさらっと言う。「会話で消えた時間、どこに行くと思います?」冗談だと思って、彼は笑おうとした。けれど、彼女は笑っていなかった。「ちゃんと回収してますよ」「……回収?」彼女はノートを閉じる。「私は“時間泥棒”なんです」その言葉に、ようやく違和感が形になる。さっきの“飛んだ時間”。妙な空白。思い出せない会話の一部。彼は急に不安になる。「……え、ちょっと待ってください。冗談ですよね?」彼女は答えない。ただ、静かに彼を見ている。そのとき、駅のスピーカーが鳴った。「——本日、午後三時二十分発の列車はすでに発車しております」彼は固まった。「え……?」慌てて時計を見る。三時四十二分。「いや、さっきまで三時前で……」頭が追いつかない。彼女は穏やかに言った。「二十分くらいですかね」「……何がですか」「いただいた時間です」彼は立ち上がる。「ちょっと待ってくださいよ!仕事あるんですよ!」「大丈夫ですよ」彼女はあっさり言う。「もう終わってますから」「……は?」彼女はノートをめくる。そこにはこう書かれていた。「観察対象No.214:本日、重要な商談あり(14:30)」「結果:欠席により契約失効」彼の血の気が引いた。「なんでそれを……」彼女は淡々と続ける。「さっき、話してくれたじゃないですか」彼は言葉を失う。確かに話した。でも、その“さっき”が、どれくらい前なのか思い出せない。彼女は最後に一行書き足す。「回収時間:72分」「な、なにそれ……20分じゃ……」彼女は静かに笑った。「体感時間と、実際の時間は違いますから」彼は震える声で言う。「返してくださいよ……俺の時間……」彼女は首をかしげる。「無理ですね」そして、あっさりと言った。「もう、使っちゃったので」「……何に?」彼女は窓の外を見た。夕方の光が、少しだけ傾いている。「次の人のために」そのとき、待合室のドアが開いた。別の誰かが入ってくる。彼女はその人に軽く会釈する。「どうぞ、こちら空いてますよ」そして、さっきと同じように言う。「何してるか、ですか?」一拍おいて。「時間をつぶしてるんです」彼はその光景を見ながら、動けなかった。ふと、ポケットのスマホが震える。画面には、見覚えのない通知。《本日の残り時間:18分》彼は息を止めた。さっきまで“まだある”はずだった時間が、もうほとんど残っていなかった。おわりもうちょっと面白く終わらせられそうだったけど、まあこんなもんか。
2026.05.02
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五月ですね。今日は連休の合間だけど会社で仕事です。昨日も会社で仕事してたけど。今日は請求書づくりの準備で銀行回ったりしてました。あと、給料も早めにやっときました。天気は風が強かったですね。昼から雨が降ってきて、ちょっと寒いかも。連休中にどこか行くという予定はないけど、一応ガソリンを入れてきた。その帰りに、ローソンでアイスメガカフェオレが今日まで安いのでアイスメガカフェオレを買った。だけど、ボタンを押し間違えて、メガアイスコーヒーが出てきてしまった。間違ったけど、何も言わないでそのまま帰ってきてしまった。前から思ってたけど、ローソンってこの辺のインチキ割とできそうだよね。故意にはしないけど。今日は何の日「令和」改元の日メーデー日本赤十字社創立記念日扇の日スズランの日水俣病啓発の日語彙の日カリフォルニア・レーズンデー宅配ボックスの日恋がはじまる日鯉の日コインの日自転車ヘルメットの日恋の予感の日本仕込の日魔王魂の日アテックスルルドの日ヤメマス記念日コーギー ありがとうの日資格チャレンジの日釜飯の日あずきの日省エネルギーの日Myハミガキの日もったいないフルーツの日高級食パン文化月間タイトル:安全第一の犬桜が散る路地で、ミナは花屋の帰りだった。手にはすずらん、袋にはレーズン、扇子、そしてなぜか非常用の小さな救急ポーチ。肩のトートには赤十字のワッペンまでついている。「今日は絶対に転ばないでね」ミナが言うと、コーギーのポン太は得意げに胸を張った。頭には銀色のヘルメット。近所ではすっかり有名だった。自転車にも乗らない犬が、なぜヘルメットをかぶって散歩しているのか。理由は三日前のことだった。ポン太はこの路地で、郵便受けから落ちたチラシを追いかけ、すずらんの匂いに気を取られ、通りすがりの自転車のベルに驚き、最後にゴミ箱へ頭から突っ込んだ。ケガはなかったが、ミナはその場で宣言した。「あなたは注意力が春風より軽い」それ以来、散歩のたびにヘルメットである。今日もポン太は、郵便受け、自転車、桜の花びら、全部に興味津々だった。ミナは笑いながら手を差し出す。「いい子。今日は落ち着いてるね」その瞬間、ポン太がぴたりと止まった。道端に、白い小さな花びらが一枚。ポン太はそれを見つめ、ゆっくり一歩下がった。さらに一歩。まるで爆弾処理班だった。「ただの桜だよ?」ミナが言った直後、上からひらひらと花びらが落ちてきて、ポン太のヘルメットに乗った。ポン太は満面の笑顔で見上げた。どうやら彼は、桜を「空から降ってくる危険物」だと思っているらしい。ミナは笑いすぎて、買い物袋を落としそうになった。その拍子に袋の中の扇子が開き、レーズンの袋が倒れ、すずらんがふわっと揺れた。ポン太は慌ててミナの前に立ち、ヘルメットをこちらに向けた。守るつもりらしい。ミナはしゃがんで、ポン太の頭をそっと撫でた。「ありがとう。でも危ないのは、たぶんあなたのほうだよ」するとポン太は、得意げにワンと鳴いた。その瞬間、郵便受けの影から猫が一匹飛び出した。ポン太は驚いてジャンプし、見事に自分のヘルメットで郵便受けをコーンと鳴らした。猫は逃げ、ミナは笑い、ポン太は何事もなかった顔でまた胸を張る。その音を聞いた近所のおばあさんが窓から顔を出した。「おや、もう六時かい?」それ以来、ポン太は町内で「時報犬」と呼ばれるようになった。本人だけは今も、自分が町を守るヘルメット隊長だと思っている。おわりおまけでもう一枚画像をつけておく。
2026.05.01
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今日は宅配が届いてから家を出ました。んで、警察署へ。免許証の更新の続きをしていました。心配だった視力検査も、メガネを使わずにクリアしました。前回のあれは何だったんだ?心配して損した。そして、メガネ作らなくてよかった。そのあと、会社で仕事してきました。今日は何の日国際ジャズデー図書館記念日ヴァルプルギスの夜学力鑑定士の日しみゼロの日王子マリンロード430の日HAKUの日派手髪の日モンストの日みその日EPAの日サワーの日キャッシュレスの日荷風忌ひとひら忌高級食パン文化月間タイトル:図書館の案内人たちリラは本が嫌いだった。文字は小さいし、話は長いし、どこが面白いのかよくわからない。学校の課題で図書館に来ても、結局いつも眠ってしまう。その日も三ページ目で限界だった。ページを開いたまま、机に頬をつける。——ほんの少し、目を閉じただけのつもりだった。気づくと、図書館は夜になっていた。天井は見えず、本棚は森みたいに伸びている。本が静かに空を泳いでいた。「ここ、どこ…?」隣にいた青年が、やわらかく答えた。「同じ場所です。ただ、少しだけ見え方が違う」リラは不機嫌そうに言う。「本は本でしょ。読んでも眠くなるやつ」青年は一冊を開いた。すると、知らない街の風景が目の前に広がる。見たことのない食べ物、聞いたことのない言葉。「これは、誰かが本当に見て、考えたものです」リラは少しだけ眉を上げた。「…これ、全部ウソじゃないの?」「ウソの話もあります。でも、どれも“誰かの中にあったもの”です。遠くても、昔でも、ここに届きます」リラは考える。今まで「知らない話=どうでもいい」と思っていた。でもそれは、知らない誰かの頭の中だったのかもしれない。「…ちょっとだけ、気になる」そこへ、白いドレスの女性が現れた。彼女は同じ本をのぞき込み、静かに言う。「この人は、どうしてこうしたと思う?」リラは戸惑う。「わかんない…」「じゃあ、あなたなら?」リラはしばらく黙ってから、小さく言った。「…逃げるかも」女性はうなずく。「それでいいの。本は答えをくれるだけじゃない。あなたの中に、考えを増やすの」リラの胸の中が、少しだけ動いた。眠くなる感じとは違う。頭の中に、何かが広がる感じ。そのとき、サックスの音が響いた。派手な髪の男が、笑いながら吹いている。音に合わせて、空気が変わる。冷たい雨。胸がぎゅっとなる感じ。なのに少し、あたたかい。リラは思わず言った。「これ…なんでわかるの?」男は肩をすくめる。「言葉にしきれないことも、本はちゃんと届く。読むってのは、ちょっと誰かになってみることだ」リラは、自分の手元の本を見た。今まで「長いだけ」だったページが、少し違って見える。ここにも、誰かの見たものや、考えたことや、感じたことがある。「…ちゃんと読んでみたい」その言葉は、自分でも少し驚くくらい、自然に出た。リラが目を覚ますと、図書館は昼のままだった。窓の外は明るい。時計を見ると、ほんの10分しか経っていない。「うそ…」夢だったのかもしれない。でも、胸の奥に、まだあの音が残っている気がした。リラはさっきの本を、もう一度開いた。今度は、ゆっくり読む。少し止まって考える。登場人物の気持ちを、想像してみる。前より時間がかかるのに、前より退屈じゃない。感想文の紙に、リラは書いた。「本は、知らないことを教えてくれるだけじゃなくて、考えたり、誰かの気持ちを感じたりできるものだと思いました。」先生は赤ペンで大きく丸をつけた。横にこう書いてあった。「とてもいい視点です」リラは少しだけ笑った。そして帰る前に、本棚の前で立ち止まる。少し迷ってから、もう一冊、手に取った。今度は、眠くならない気がした。おわり今回はテイク5くらいかも。何回かやり直しました。
2026.04.30
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昨日は荷物が届くのが遅かったので、今日は午前中のうちに出かけて来た。そしたら、午前中に荷物が届いていた。また戻るのかよ。連休の初日ということで、人はそんなに多くはなかったと思うけど、いつもよりは少し多かったかな。天気がいいので出かけた人は多かったと思うけど、俺が出かけたのは午前中だったからかもしれないね。今日は何の日昭和の日国際ダンスデー国際盲導犬の日畳の日羊肉の日歯肉炎予防デー歯肉ケアの日豊後高田昭和の町の日タオルの日フォニックスの日ナポリタンの日近江赤ハヤシの日四国・幸福の日「銀河のしずく」の日家族と暮らす動物の幸せを考える日肉の日クレープの日Piknikの日ふくの日高級食パン文化月間タイトル:銀河のしずくと発音の秘密昼下がりの小さな教室。木のテーブルの上には、少し湯気の立つナポリタンと、不思議な名前の袋――「銀河のしずく」。その横で、やさしい笑顔の女性が一匹のラブラドールの頭を撫でている。「はい、今日もいくよ。フォニックス」壁のボードには、カラフルな文字で「フォニックス」と書かれている。ここは子どもたちに英語の音を教える教室……なのだが、生徒は今のところ一匹だけ。犬の名前は「レオ」。盲導犬としての訓練を受けている最中だ。「Aは“ア”、Bは“ブ”…じゃあ、Dは?」女性が優しく問いかけると、レオはじっと女性の口元を見つめる。そして、わずかに首をかしげた。「うんうん、いいね。考えてる顔」女性は満足そうに微笑み、ナポリタンを一口食べる。レオはその香りにほんの少しだけ鼻を動かしたが、決してテーブルには手を出さない。「えらいね。ちゃんと我慢できてる」女性はそう言って、今度は袋のほうを軽く叩いた。「こっちはごほうび。“銀河のしずく”。特別なやつ」レオの耳がぴくりと動く。実はこの教室、ただの英語教室ではない。女性は“音で考える力”を動物にも教えられないかという、少し変わった研究をしていたのだ。「いい? “D”…これはね、“ドゥ”」ゆっくり、はっきりと発音する。その瞬間――「ドゥ」小さく、しかし確かに聞こえた。女性は一瞬固まる。レオは何事もなかったかのように、穏やかな顔でこちらを見ている。「……今、言った?」「ドゥ」今度ははっきりと。女性は椅子から立ち上がり、震える手でノートをつかんだ。「すごい……成功……? いや、でも……発声器官的に……」興奮と混乱で言葉が追いつかない。レオはゆっくりと立ち上がり、女性の膝に前足を乗せた。そして、もう一度。「……パスタ、ちょうだい」女性はその場に崩れ落ちた。静かな教室に、ナポリタンの湯気だけがのぼっている。レオは満足そうに尻尾を振りながら、ボードの「フォニックス」をちらりと見て、「フォニックス、便利だね」と、きれいな発音でつぶやいた。おわり
2026.04.29
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今日は宅配が来てから出かけようと思ってたのだが、午前中はこなかった。なので、昼休みにちょっと出かけて、仕事して、コンビニで昼ご飯を買って帰ってきた。荷物が届いたのは夕方だった。初めて見る配達員だった。配置が換わったのか、単に忙しいだけか。今日はりくりゅうコンビの引退記者会見ばっかりやってたね。正直、どうでもいいわ。それと、旭川の事件。これに対して市長が「旭川市と動物園のイメージ低下や風評被害は非常に大きい」って言ったらしいが、もっと前から旭川のイメージはよくないと思う。今日は何の日労働安全衛生世界デー主権回復の日・サンフランシスコ平和条約発効記念日シニアーズデイ・シニアの日象の日ドイツワインの日缶ジュース発売記念日庭の日アクアフィットネスの日渋谷ギャルの日海外ドラマの日セアダスの日インターホンの日四つ葉の日北海道よつ葉記念日溶射の日よーじやの日シブヤから世界へ羽ばたく日日本こどもホスピスの日洗車の日にわとりの日高級食パン文化月間タイトル:クローバーの推理は甘くない庭は春の匂いで満ちていた。花の間を抜ける風はやわらかく、どこか浮かれているようで、事件の気配なんて一ミリも感じさせない。その中心に、彼女はいた。レオパード柄のキャミソールにデニムのミニスカート。首元にはやたらと大きなクローバーのペンダント。手にはオレンジの缶ジュース。ぱっと見、完全に「軽そうな子」だ。だが——「おばあちゃん、そのグラス、誰が出したの?」庭の奥、白ワインを片手に笑っていた老婦人がきょとんとする。「え?あら…さっきテーブルに置いてあったのを…」「ふーん」彼女はジュースを一口飲んで、にこっと笑った。その直後。「そのグラス、触らないで」空気が変わった。周囲にいた数人が顔を見合わせる。なんだこの子、急に。彼女はポケットから小さなカードを取り出した。さっき手にしていたやつだ。「さっきからね、この庭、変なことが三つあるの」指を一本立てる。「一つ。鳩が妙にこの席に近寄らない」二本目。「二つ。この花壇、手入れが行き届いてるのに、このテーブル周りだけ花粉が少ない」三本目。「三つ。そのグラスだけ、結露が出てない」ざわ、と空気が揺れる。「つまりさ」彼女はグラスを見つめたまま、軽く肩をすくめる。「それ、さっき置かれたばっかり。しかも中身、入れ替えられてる」「え…?」老婦人の手が震える。「毒…ってこと?」彼女は少し考えてから、首を振った。「いや、もっと地味。睡眠薬系。庭で寝かせて、財布とか持ってくタイプ」その瞬間、奥にいた男性が立ち上がろうとした。が、すでに彼女の足が先に動いていた。ヒールとは思えないスピードで間合いを詰め、男の手首を軽くひねる。ポケットから小瓶が落ちた。「はい、ビンゴ」周囲がどよめく。警察が来るまでの数分、彼女は何事もなかったかのようにジュースを飲みながら、花を眺めていた。事件が片付いたあと。老婦人が恐る恐る聞く。「あなた…いったい何者なの?」彼女は少しだけ考えてから、笑った。「んー?」缶を軽く振って、言った。「ただの、“オレンジ好きな子”」そのとき、警察官の一人がぽつりとつぶやいた。「…いや、あの子、今朝ニュースで見たぞ」「え?」「“四つ葉のクローバーの探偵”って呼ばれてるやつだ」その瞬間、彼女はすでにいなかった。テーブルの上には、飲みかけのオレンジジュースと——クローバーのカードが一枚、置かれているだけだった。裏には、こう書かれていた。“運がいいんじゃないよ。全部、見てるだけ。”おわり
2026.04.28
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今日は朝の地震で目が覚めた。大きな横揺れはなく、ガタガタガタガタと続いて収まった。起きてテレビを見ようと思ったが、時間を見たら5時25分で、そのままもう一度寝た。いつもの時間になって起きて行ったら、テーブルの上に積んであった本が倒れていた。2階はもっと被害がありそうだがまだ見ていない。近々このへんでも大地震が起きると言われているので、覚悟はしているのだが、来るとしたらこんなもんじゃないと思ってる。でも確実に震源地が近づいてきているのが怖いね。今日は何の日哲学の日駅伝誕生の日婦人警官記念日(婦人警官の日)国会図書館開館記念日悪妻の日世界生命の日絆の日ロープデー駒ヶ根ソースかつ丼の日つなぐ日スタジオキャラットの日タッパーの日仏壇の日ツナの日高級食パン文化月間駅伝誕生の日ということだったが、ニュースでマラソン男子で2時間を切る記録が生まれたということで、話をそっち寄りにしてみた。「2時間ちょうどの男」あの夜、ジョシュアは真夜中のトレーニング中だった。いつものコースを走っていると、気づけば十字路に立っていた。しばらくすると、どこからともなく男が現れた。スーツ姿で、手にはジョシュアのランニングシューズを持っていた。男はそれをジョシュアに手渡し、もう一度履かせた。ひもをきつく結び直し、軽く底を叩いた。「世界記録のタイムをやろう」と男は言った。差し出された契約書は一枚の紙だった。大きな字で「世界記録」と書いてあった。その下に細かい字がびっしりと続いていたが、ジョシュアは読まなかった。アスリートは直感で生きている。サインをすると、男は契約書を折り畳んでスーツの内ポケットにしまい、また夜の中へ消えていった。翌朝から、ジョシュアは別人になった。どのレースを走っても、ゴールタイムは必ず2時間00分00秒。狂ったように練習しても、手を抜いても、2時間00分00秒。世界は彼を「奇跡の男」と呼んだ。しかし3年後、ケニアのサウェという男が1時間59分30秒を叩き出した。その瞬間から、ジョシュアは「ただ速い人」になった。契約書には小さくこう書いてあった。「記録は契約時点の世界記録とする。更新はされない」そしてもう一行。「代償として、日常における小さな理不尽を永続的に享受するものとする」最初に気づいたのは、コンビニのレジだった。小銭で払おうとすると、必ず数円足りない。お札を出すとお釣りで小銭が増える。翌日その小銭で払おうとすると、また数円足りない。財布が小銭で膨らんでいった。行列に並べば、自分の直前で「本日の数量終了」の札が出る。エレベーターを待てば、来るのは必ず逆方向だった。しかも誰も乗っていないのに、全ての階のボタンが押されている。傘を持たない日にだけ雨が降る。傘を持った日は一度も降らない。「慣れましたよ」とジョシュアは言った。インタビュアーが「世界記録についてどう思いますか」と聞いた時のことだ。「走ることは好きです。記録はもう関係ない」インタビュアーはうなずき、録音機を止めた。「ありがとうございました。後でデータをお送りしますね」三日後、ジョシュアのもとにメールが届いた。件名:インタビュー音声データについて「誠に恐れ入りますが、録音が最後の30秒だけ消えておりまして——」ジョシュアはメールを読み終えた瞬間、パソコンの画面が暗くなった。充電が切れていた。窓の外では、雨が降り始めていた。おわりロバート・ジョンソンのクロスロードの話をオマージュしてみました。
2026.04.27
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今日も朝から本を読みながらニコニコ超会議を見たりしてたんだけど、途中で眠くなって気がついたら寝落ちしていた。本は少しだけ読めた。今日は何の日世界知的所有権の日リメンバー・チェルノブイリ・デー海上自衛隊の日よい風呂の日七人の侍の日オンライン麻雀の日テルマエ・ロマエ よい風呂の日Dな日わらびもちの日エイリアンの日風呂の日プルーンの日ツローの日高級食パン文化月間エイリアンをメインにしてみた。タイトル:きな粉餅の地球儀その客は、毎週火曜の午後三時にだけ現れた。青い作務衣を着て、湯気の立つ部屋の奥に座り、必ずきな粉餅を頼む。顔つきはかなり変わっていたが、店主は「外国の特殊なマスク趣味の人」と思うことにしていた。客は礼儀正しく、会計もぴったりで、食べ終えると木の札のようなものを懐から出して、黙って並べはじめる。それが少し、麻雀牌に似ていた。店主の妻は言った。「あれ、麻雀じゃないわよ。絵も数字も違うもの」たしかに札には、波、山、鳥居、稲妻、丸い点、虫の脚みたいな記号が彫られていた。客はそれを扇のように持ち、時々きな粉を指先につけて、札の上をなぞる。まるで占いか、古い祭りの作法みたいだった。ある日、近所の男が客に声をかけた。「兄さん、それ何のゲーム?」客は一瞬固まったあと、低い声で答えた。「地球式の、ええと、遊戯です」「へえ、麻雀?」「そうです。マージャンです」明らかに嘘だった。その夜、店のラジオが勝手についた。雑音の向こうから、聞き覚えのある客の声がした。「地点固定完了。糖質粉末による地表サンプル取得、順調。偽装名、マージャン、現地人に受容されつつあり」店主は青ざめた。きな粉は好物ではなく、地球の土壌成分を調べるため。木札はゲームではなく、地図。あの客は、毎週この店で侵略の準備をしていたのだ。翌週、客はまた来た。店主は震える手できな粉餅を出した。客は札を並べる。波、山、鳥居、稲妻。最後に店主の町の形そっくりの札を置いた。「今日で完了です」「地球を、どうする気ですか」客は静かに顔を上げた。「まず、この星で最も重要な場所を確保します」店主は覚悟した。「東京か。官邸か。発電所か」客は首を振った。「ここです」「……うち?」「はい。きな粉餅が一番おいしいので」その日から店の看板は少し変わった。『甘味処 こまつ』その下に、小さくこう書かれている。『銀河連邦指定・地球支店 一号店』おわり
2026.04.26
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今日は朝から作業しつつ、大体ニコニコ超会議を見てました。途中で眠くなったりして全部は見ていません。あと、天気が良かったけど、夕方ちょっとコンビニに行ったときは、空気がひんやりとしていました。お花見はちょっと寒いかもしれないですね。今日は何の日世界マラリア・デー世界ペンギンの日国連記念日国際マルコーニ・デー歩道橋の日拾得物の日市町村制公布記念日DNAの日ギロチンの日ファーストペイデー・初任給の日小児がんゴールドリボンの日しあわせニッコリ食で健康長寿の日失語症の日TMS・感動新婚旅行の日志授業記念日室蘭カレーラーメンの日プリンの日いたわり肌の日天神の縁日高級食パン文化月間タイトル:夕刊係彼女は、夕方だけ新聞を配っている。新聞の名前は「余談」。事件も政治も載っていない。「駅前の鳩、今日だけ人を避けない」「パン屋の店主、あんぱんに謝る」そういう、どうでもいいことだけ載っている。歩道橋の上から、そういう新聞を落とす。拾うのは、だいたい疲れている人だ。ある日、彼女は自分用に一部だけ残して開いた。一面にはこう書いてあった。「歩道橋の新聞配達員、今日で最後」彼女は笑った。「誰が書いてるんだろうね」その日の配達が終わるころ、橋の下に小さな印刷所が見えた。今まで気づかなかった場所に、シャッター半開きの店。電気だけがついている。彼女は階段を降りて、のぞいた。中には古い印刷機が一台。紙の束。インクの匂い。人はいない。でも、機械は動いていた。ガチャン、ガチャンと紙を吐き出す。彼女は一枚取る。刷りたての一面。「印刷所に入ってきた人、だいたいここに残る」彼女はしばらく黙っていた。誰かの気配はない。ただ、機械だけが一定のリズムで動いている。次の紙が出てくる。「この新聞は、誰か一人が作っているわけではない」さらに次。「余った出来事を、ここで拾っているだけ」彼女は印刷機の奥をのぞいた。そこには、原稿らしいものは何もない。ただ、白紙が吸い込まれていく。そして出てくるときには、もう文字がある。彼女は最後の一枚を取った。そこにはこう書かれていた。「理由は、特にない」彼女は少しだけ笑った。新聞を折りたたんで、元の歩道橋に戻る。次の日、彼女はまた新聞を配っていた。やめる理由が、特に見つからなかったからだ。ただ、一つだけ変わった。自分で書こうとするのをやめた。どうせ勝手に刷られると知ってしまったから。その代わり、前よりよく見るようになった。鳩の動き。パン屋の手つき。誰かの小さなため息。その夜、印刷所ではまた紙が一枚出てきた。見出しはこうだった。「理由を知った人、だいたい続ける」おわり旭山動物園の事件はなんかいろいろありそうだね。来週のワイドショーのネタになりそう。
2026.04.25
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今日は朝から眠い。でも朝から会社で仕事。午前中に洗車してもらうのを予約していたんだけど、昼には雨が降ってきた。ま、洗車したら雨が降る物だよね。んで、昼ご飯食べた後にちょっとうとうとしちゃってた。今もまだ眠い。でも今日はやろうと思ってたことが大体できたかな。今日は何の日植物学の日・マキノの日日本ダービー記念日しぶしの日プレミアムフライデーエムセラ・尿失禁改善の日削り節の日ブルボン・プチの日地蔵の縁日愛宕の縁日高級食パン文化月間タイトル:『解読不能の芝』 老人の机の上には、奇妙な文字が並んでいた。 どの言語にも似ていない、どの時代にも属さない——それでもどこか規則性を感じさせる、不思議な筆跡。 彼はそれを見つめながら、小さくつぶやく。「やはり……同じ構造だ」 ページの横には、丁寧に描かれた植物のスケッチ。現実に存在するもののようで、どこか微妙に違う。葉の形、茎の分岐、配置の妙。 それは——ヴォイニッチ手稿の写しだった。 老人は長年、この“解読不能の書物”に取り憑かれていた。 世界中の学者が挑み、誰一人として完全に読み解けなかった書。 だが彼は、別の角度からそれを見ていた。 ——植物だ。 描かれている植物は空想だと言われている。 だが彼には違った。「これは……現実にある。ただし、“瞬間”の植物だ」 彼は窓の外に目をやる。 競馬場。 風に揺れる芝。踏みしめられ、倒れ、また起き上がる草。 老人はゆっくりと立ち上がり、窓辺に近づく。「そうか……そういうことか」 彼のノートには、こう書かれていた。 ——“ヴォイニッチ手稿に描かれた植物は、静止した個体ではない。 時間と環境によって変形する『状態の連続』を記録したもの” つまり——“生きている過程そのもの”。 彼は震える手でページをめくる。 奇妙な文字列。 だがそれは言語ではなく、条件式だった。 風速、湿度、圧力、踏圧、光量—— それらが変わると、植物の“形”も変わる。 そしてその形が—— 彼は外の芝を見つめた。 次のレースの馬たちがゲートに収まる。「なるほど……これは“予測式”だ」 ページの文字をなぞりながら、彼は確信する。「植物の状態から、次に起こる“動き”を導き出す……」 ——つまり。 彼は静かに笑った。「未来予測の本だ」 スタートのベルが鳴る。 馬たちが一斉に走り出す。 彼はノートに一つの数字を書いた。 ——“7” 数秒後。 歓声が爆発した。 7番の馬が、最後の直線で抜け出した。 部屋の扉が勢いよく開く。「先生!!また当たりましたよ!!」 若い研究助手が駆け込んでくる。「これで何連勝ですか!?すごいですよこれ、もう論文どころじゃ——」 だが言葉は途中で止まった。 老人は静かに、ページを閉じていた。「……もういい」「え?」「解読は終わった」 助手は目を見開く。「え!?本当に!?じゃあ中身は!?何が書いてあったんですか!?」 老人はしばらく黙ってから、穏やかに答えた。「簡単なことだよ」 そして窓の外を指差した。「“よく踏まれた草は、次にどこへ倒れるか”——それだけだ」 助手はぽかんとする。「……え、それだけ?」「うん」 老人は少しだけ肩をすくめた。「ただし、それを600ページ分書いただけだ」「……」 静寂。 そして助手は震える声で言った。「それ、つまり……」 老人はにこやかに頷いた。「そう。“めちゃくちゃ当たる競馬予想ノート”だね」 助手は頭を抱えた。「人類、何百年も何してたんですか……」 老人は椅子に座り直し、静かにペンを取る。「いや」 そして、さらりと言った。「まだ一番大事な部分は解けてない」「え?」「“なんで当たるのか”だ」 外では次のレースの馬が整列している。 老人は新しいページを開いた。 そこには、またあの奇妙な植物が描かれていた。 ——ただし今度は、少しだけ“笑っているように”見えた。おわり今日は旭山動物園のニュースが気になったね。また旭川か。って感じだけど。
2026.04.24
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今日は朝から出かけて来た。んで、待ち時間は本屋を物色して、ドトールでエスプレッソとトーストを食べ、おかわりでマスカットヨーグルンを飲みました。エスプレッソが少なかったのと、マスカットヨーグルンが冷たくて、お腹が痛くなりそうでした。でもなりませんでした。味はマスカットというより、アロエヨーグルトっぽかったです。本屋では、特に何も買いませんでした。今日は何の日世界図書・著作権デーサン・ジョルディの日子ども読書の日地ビールの日・ビールの日慶應義塾大学開校記念日消防車の日シジミの日ぐんま花の日明治おいしい牛乳の日国産小ねぎ消費拡大の日天ぷらの日乳酸菌の日不眠の日高級食パン文化月間なんかたまたま本屋行ったしトースト食べたし、今日の日らしい行動していたなぁ。タイトル:『火を消す者、紙の森に入る』町はずれの古い書庫には、夕方を過ぎると人が近づかない。理由は簡単で、本棚のあいだから、たまに誰かの話し声が聞こえるからだった。けれど、その声は人間のものではないらしい。ページをめくる音に混じって、乾いた声がささやく。「まだ読まれていない」「このままでは消えてしまう」「だれか、続きを――」そんな噂を、彼は笑わなかった。消防団の制服を着たまま、町の見回りの帰りに、何度もその書庫の前で足を止めていたからだ。火事の気配には敏感だったが、ここから漂う気配は煙ではなく、もっと静かで、もっと古い“消えそうなもの”の匂いだった。ある雨上がりの夕方。彼が書庫の扉を開けると、中は見た目よりずっと深かった。棚と棚のあいだに淡い橙色の灯りが浮かび、天井の見えない高さまで本が積みあがっている。背表紙はどれも少しだけ脈打っていて、まるで眠る生き物みたいだった。彼は、通路の途中で一冊の本が震えているのに気づいた。表紙の文字はかすれ、今にも消えそうだった。『竜鱗海岸の……』その先が読めない。そっと開くと、中から赤い火花が一粒、ふわりと飛び出した。火花は蝶のように彼の肩へとまり、かすかな声で言った。「やっと来た。火を扱う者」彼は本を取り落としそうになった。蝶は気にせず続けた。「この書庫は、“忘れられた物語”の森。読まれなくなった話は枯れ、題名を失い、やがて世界から消える。だが完全に消える前に、火を持つ者だけが再び灯せる」「火を持つ者って……消防団だけど」「それで十分。火を消す者は、火を守る者でもあるでしょう?」妙に納得しかけたとき、棚の奥で低いうなり声がした。振り向くと、闇の中で巨大な影が本棚のあいだを這っている。墨のように黒く、しおりを何十枚も束ねたようなひげを持つ獣だった。通るたび、背表紙の文字が白く抜け落ちていく。「なんだ、あれは」蝶は羽を震わせた。「“未読い”です。読まれなかった本から生まれる獣。題名を食べ、結末をかじり、物語を空っぽにする」「ひどい名前だな」「名付けたのは子どもですから」獣はゆっくりこちらを向いた。目がない。あるのは、開ききらない栞みたいな裂け目だけ。そして、湿った紙のこすれる音で鳴いた。彼は思わず身構えたが、武器になるものはない。手元にあるのは、読みかけの本と、胸ポケットの赤いバラだけだった。「それです!」と蝶が叫んだ。「バラをしおりに!」「は?」「早く!」半信半疑のまま、彼はバラを本にはさんだ。すると、花びらがぱっと燃えずに輝き、赤い文字となってページの上を走った。消えかけていた題名がよみがえる。『竜鱗海岸の魔法灯台』同時に、書庫の奥から潮騒が響いた。棚と棚のあいだに、ありえないはずの海が現れる。月の光を受けた黒い海。断崖の上には、鱗のような石でできた灯台が立ち、てっぺんに青白い炎がともっている。本の中の世界が、現実へにじみ出してきたのだ。蝶が言う。「物語は、題名を取り戻すと入口を開く。けれど未読いは、その前に全部食べてしまおうとする」黒い獣が吠え、海の見える通路へ飛びかかってきた。彼は反射的に、本を胸に抱えて脚立の上へ飛び乗った。ぐらりと揺れる。下では獣が唸り、本棚から古いしおりが雪のように舞った。「どうすればいい!」「読んでください!」「どこを!」「声に出して!」彼はあわててページを追った。文字は古く、ところどころ欠けていたが、読むしかなかった。「――海霧の夜、灯台守は最後の炎を掲げた。その火は、帰る場所を忘れた者のために燃える――」すると灯台の火が強くなり、書庫じゅうに青い光が満ちた。黒い獣が苦しげにのたうつ。背中から、食べてきた題名たちが光の粒となってこぼれ落ちた。「もっと!」と蝶。彼は続けた。「――火は焼くためだけにあるのではない。道を示し、名を呼び、失われたものをこちら側へつなぎとめるためにある――」最後の一行を読んだ瞬間、灯台の炎がまっすぐ獣を貫いた。獣は悲鳴もあげず、ぱらぱらと無数の白紙になって崩れた。そして床に落ちた紙片には、世界中の消えかけていた物語の題名が、うっすらと戻っていた。静寂のあと、潮騒も、灯台も、ゆっくり本の中へ引いていく。残ったのは、古い書庫と、脚立の上で本を抱えた彼だけだった。蝶はもう、火花ほどの大きさに戻っていた。「助かりました」「これで終わりか」「いいえ。こういう本は、また眠ります。ときどき起こしてやらないと」彼は苦笑した。「消防より地味で大変そうだな」蝶は彼の肩から離れ、本の背にとまった。「では、次もお願いします。火を消す者」翌日から、町では少し妙な噂が立った。古い書庫で、消防団の男がときどき脚立に腰かけ、本を読んでいるという。赤いバラを一本、本にはさんで。しかも、なぜかその日は、長いこと貸し出されなかった本が急に借りられていくのだという。人々は「不思議な読み聞かせのまじないらしい」と言い合った。子どもたちは目を輝かせ、大人たちは半信半疑で本を手に取った。そして彼は、誰にも本当のことを言わなかった。あの書庫の奥に、まだ眠っている海や森や竜の話を。読まれない物語は、ほんとうに死んでしまうことを。だから自分が、たまに見回りの帰りに寄って、少しずつ火を灯していることを。ただひとつ困ったことがあるとすれば、毎回バラを一本持っていくので、町の花屋のおばあさんに完全に勘違いされていることだった。ある日ついに、おばあさんはにやにやしながら言った。「言わなくてもわかるよ。あの図書室の子に渡してるんだろ?」彼は首をかしげた。「あの図書室の子?」「とぼけなくていいよ。最近よく“赤い髪の女の子が棚の奥で笑ってた”って噂になってるじゃないか」彼の顔色が変わった。その夜、あわてて書庫へ駆けつけると、蝶は本の上でくすくす笑っていた。「どうやら、新しい物語が目を覚ましたようです」「それを先に言え」「でも、赤いバラを毎回持ってくるから、書庫じゅうがすっかりその気になってますよ」「書庫じゅうって何だ」そのとき、棚の奥から小さな笑い声がした。振り向くと、見たことのない一冊が、ぱたりとひとりでに開く。そこには、まだ題名がなかった。彼はため息をついて、脚立に腰を下ろした。どうやらこの先、自分は火事だけではなく、物語の恋の火種まで見回ることになるらしい。おわり
2026.04.23
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今日も雨。ちょっと寒い。そして眠い。明日は朝早起きして出かけないといけない。起きれるか。いや、起きれるけど。今日は何の日アースデー・国際母なる地球デーよい夫婦の日清掃デーカーペンターズの日ダイヤモンド原石の日ミス日本の日バーバパパの日道の駅の日肩コリを労わる日成吉思汗たれの日幸せ夫婦の日大人の日夫婦の日ショートケーキの日禁煙の日デルちゃん誕生の日ラブラブサンドの日カニカマの日なないろSMSの日高級食パン文化月間タイトル:『塵祓いの家』その家は、古い集落のはずれにあった。板張りの平屋で、土間があり、台所の奥に煤けた神棚がある。いまでは誰も住んでいないが、もともとは代々、山仕事に出る者たちの宿り場のように使われていたらしい。村では昔から、あの家には**「垢離を落とし損ねたものが溜まる」**と言われていた。人の死に限らない。怒り、諦め、恥、言えなかった言葉、片づけられなかった暮らし。そういうものが家の隅に澱のように溜まり、やがて戸を鳴らし、夜半に気配となって歩くのだと。もっとも、そういう言い伝えを面と向かって信じる者はもう少なかった。依頼人の藤巻も、そのひとりだった。彼は祖父の家を取り壊すつもりでいた。だが解体の話を進めるたび、妙なことが起きた。台所の引き戸が夜中に少しずつ開く。誰もいないのに、土間で“さっ、さっ”と掃くような音がする。片づけたはずの小さな塵が、翌朝にはきまって敷居の前に集まっている。工務店の者は顔をしかめ、近所の年寄りは「ああ、あれが出たか」とだけ言った。そこで呼ばれたのが、葛城志乃だった。祈祷師でも霊媒でもなく、名目上は民俗資料の調査人。失われた村の習俗や口承、家の祀り方を調べるのが仕事だという。だが、土地の古老たちは別の呼び方をした。塵祓い。彼女が来たのは、日暮れの少し前だった。色の褪せた作業着に古びた道具袋。学者にも職人にも見える身なりで、土間に上がるとまず黙って神棚を見た。次に敷居を見て、流しの下を見て、柱の根元に指を当てた。その指先にうっすら白い粉がつく。「灰ではないですね」と彼女は言った。「綿埃と、油と、土。暮らしの塵です」藤巻は苦笑した。「それなら掃除不足ってことですか」志乃は否定も肯定もしなかった。「この地方では、塵はただの汚れではありません。人の気のよりしろになると考えられていました。とくに台所と敷居は境目です。内と外、生者と死者、食うことと絶えること。そのあわいに溜まったものは、昔は祓ったんです」「ほうきで?」彼女はその問いに答えず、道具袋を開けた。中から出てきたのは、掌に収まるほどの小さなほうき、古びたちりとり、筆、白布。そして一本の、見慣れた瓶だった。ジンギスカンソース。藤巻は思わず瓶を二度見した。「……それも民俗資料ですか」「ええ、この土地の」真顔で答えられたので、冗談なのか判断がつかなかった。日が落ちるのを待って、儀式は始まった。台所の引き戸は半寸ほど開いていた。誰も触れていないのに、そこから冷えた空気が細く漏れている。志乃は敷居の前にしゃがみ、筆の先にソースを含ませた。そして、溝に沿って細く一筋の線を引く。その手つきは妙に端正で、まるで古文書の訓点を打つようだった。「この家には、昔、止め塗りという作法があったそうです」「止め塗り?」「動いてはならぬものを、匂いで留める。塩でも酒でもなく、台所の気を濃くしたもので塞ぐんです。山の獣除けが転じたとも、飢饉の年のまじないが残ったとも言われています」藤巻は黙った。さっきから説明は一応筋が通っているのに、要所要所が妙におかしい。志乃は立ち上がると、右手に小ほうきを持った。左手は胸の前で刀印のように重ねる。暗い台所の前で、彼女の姿勢だけが異様に美しい。背筋が伸び、呼吸が消え、空気がぴんと張る。そして、低い声で祝詞のように唱えた。「祓へ給へ、清め給へ。諸々の禍事、罪、穢れをば、塵となり垢となりて留まるもの、息吹戸に坐す根の国底の気吹き放ちてむ。祓へ給へ、清め給へ。」その声は、響かせようとしているのではなく、家の柱や敷居のほうへ沈めるような調子だった。戸が、ことり、と鳴った。藤巻の喉が鳴る。次の瞬間、流しの下の暗がりから、白いものがにじみ出るように盛り上がった。輪郭はない。煙でも布でもない。ただ“そこに溜まっていた何か”が、人の視線に耐えられる形へかろうじて寄ってきたような、不気味な白さだった。藤巻は声を失った。「……何だ、あれは」志乃の目は逸れなかった。「人ではありません。けれど人の暮らしに寄り添って残る類です」白い塊が敷居へ寄ろうとする。だが、ソースの線の手前でふっとたわみ、進めない。匂いに触れた獣みたいに、見えない首を引く。志乃は静かに言った。「ほら、留まった」それから一歩踏み込み、小ほうきを横に払った。「祓へ給へ。」もう一度、下から上へ。「清め給へ。」最後は、塵を掃き寄せるように、しかし鋭く。「散り失せよ。」小さなほうきの穂先が空気を切るたび、白い塊は削がれるように崩れていった。そこに漂うのは恐怖よりも、むしろ奇妙な切実さだった。長年、流しの下や敷居の際や戸の溝にへばりついていた何かが、ようやく形を失っていく。そんな印象だった。やがて白いものは、ふっと散った。同時に、少し開いていた引き戸が、重みをなくしたようにすっと閉まった。家の空気が変わった。藤巻はその場に立ち尽くしたまま言った。「……終わったんですか」「たぶん」「たぶん?」志乃は小ほうきを見下ろした。「こういうものは、何をどこまで“終わり”と呼ぶかが難しいんです。家につくのか、人につくのか、習慣につくのか。村の昔の人は、その区別をあまりしなかったでしょうから」その答え方が、いかにも学者じみていて、かえって現実味があった。藤巻は、まだ少し震える声で訊ねた。「あなたは……本当に、何者なんですか」志乃は道具を片づけながら答えた。「記録をしているだけです。こういう土地には、まだ“残っているやり方”がある」「その小さいほうきも?」「はい」「何の意味が?」志乃は少しだけ考え、それから言った。「もともとは塵を払う道具です。それが転じて、場の穢れも祓うものになった。民俗学では、そういう転義は珍しくありません」藤巻は眉をひそめた。「つまり……」志乃は、まっすぐな顔で言った。「埃を払うのと、霊を祓うのが、同じ“はらう”なんです」藤巻はしばらく何も言えなかった。呆れたわけではない。むしろ、儀式の最中に見たものが鮮烈すぎて、その説明の素朴さがうまく受け止められなかったのだ。やがて、なんとか言った。「……それ、駄洒落みたいですね」「古い呪術は、案外そういうものですよ」志乃は真顔のまま、ソースの瓶を布で拭いた。ラベルの赤茶けた文字が、やけに俗っぽく見えた。藤巻は最後の疑問を口にした。「じゃあ、ソースは?」「この土地の家々で、いちばん濃く共有されている匂いです。記憶を縛るには、祈りより暮らしのほうが強いことがあります」「……本当に?」「少なくとも、あれは止まりました」反論できなかった。たしかに止まったのだ。その後、藤巻は家を解体するのをやめた。大げさな理由ではない。ただ、あの夜以降、家の中の気配が変わり、妙に軽くなったからだった。代わりに神棚を整え、土間を掃き、台所を片づけるようになった。近所の者はそれを見て、「ああ、あの家は祓われたな」と言った。半年後、藤巻は志乃から一通の葉書を受け取った。そこには簡潔に、こうだけ書かれていた。「あの家の“止め塗り”について追記。古老の聞き書きによれば、本来は味噌でも醤でもよいが、匂い強きものを尊ぶとあり。なお現地では近代以後、羊肉のたれに置き換わった可能性あり。」学術調査らしい文面の末尾に、小さく追伸があった。「小箒の件、語源説明は半分本当です。」藤巻はそれを読んで、ひとりで笑った。やはりどこまでが本気で、どこからがあの人の流儀なのか、最後までよくわからない。ただ、その夜のことを思い出すたび、どうしてもひとつだけ説明のつかないことがあった。儀式の最中、引き戸が閉まる寸前。散っていく白い塊の奥で、ほんの一瞬だけ、誰かが台所の隅を“きれいになった”と確かめるように見回した気がしたのだ。藤巻はそのことだけは、誰にも話していない。おわり
2026.04.22
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今日は朝から雨。ちょっと寒いかな。って思ったけど、日中はそうでもなかった。最近忙しくて、夜も夜更かしで、なんか疲れがたまってる気がしてる。のどが痛かったり鼻水が出たり、おなかの調子も悪かったりしてる。今日は休みなので寝坊してた。けど、10時頃には起きてた。玄関に郵便の荷物が届いていた。ピンポンなったの全く気付かなかったなぁ。今日は何の日創造性とイノベーションの世界デー民放の日(民間放送発足記念日)川根茶の日錦通り・ニッキーの日オーベルジュの日「小岩井 生乳100%ヨーグルト」の日マリルージュの日myDIYの日ゼクシオの日(XXIOの日)漬物の日木挽BLUEの日高級食パン文化月間タイトル:午前十時のローカルボイス宿のラウンジを改装しただけの、小さな即席スタジオだった。窓際に古いマイクを立て、棚には本と配線と食器が雑多に並び、壁には手書きの看板が何枚も立てかけられている。「AUBERGE RADIO ― LOCAL VOICES」「NI-KEY AVE. & THE INN AT KAWANE: CREATIVITY IN MOTION」名前だけはやたら立派だが、実態はほとんど“気の合う人たちの寄り合い所帯”だった。その番組の唯一のパーソナリティが、椅子に座っている彼女、志乃だった。志乃はもともと陶芸をやっていた。エプロンに残る白い粉や釉薬の跡はその名残だ。だが数か月前、宿の女将に「声が落ち着くから、ラジオやってみない?」と半分冗談で言われ、なぜか本当に始まってしまった。番組名は『ローカルボイス、湯気の向こう側』。内容は、近所の人を呼んで、畑の話や川根の昔話や、今朝どんな漬物を食べたかをのんびり聞く。ただそれだけなのに、なぜかじわじわ評判になった。農家のおじさんは「FMより聞きやすい」と言い、パン屋の店主は「仕込みのとき流すと発酵がうまくいく気がする」と言い、宿泊客の一人は「都会のポッドキャストよりずっと緊張感がある」と意味のわからない褒め方をした。その日のゲストは、町で“伝説の人”として知られている宮下という老紳士だった。九十近いのに背筋がまっすぐで、毎朝五時に散歩し、毎年一度だけ俳句を投稿し、しかもなぜか一度は必ず入選する。志乃は朝から緊張していた。開始三分前。志乃はマイクを握り、深呼吸した。湯のみの緑茶は少しぬるくなっていた。「今日はですね、町の皆さんもよくご存じの宮下さんをお迎えして――」そこまでリハーサルしたところで、扉が開いた。入ってきたのは宮下さんではなく、宿の主人だった。しかも妙に申し訳なさそうな顔をしている。「ごめん、志乃さん」「え、宮下さん来ました?」「いや……来たんだけど」「だけど?」「隣の部屋で昼寝始めちゃった」志乃は固まった。「……本番五分前ですよ」「うん」「起こしてくださいよ」「起こしたよ。でも“ラジオは起きてからでも逃げん”って言って、また寝た」どうしようもない。この番組は生配信だ。町内の数少ない熱心なリスナーたちは、今まさにスマホや台所ラジオの前で待っている。主人は困った顔で言った。「つなぎで、なんか一人でしゃべれる?」「三十分も?」「うん」「無理です」「でももう配信ランプついちゃった」「早い!」赤いランプが点灯する。志乃は腹をくくった。「おはようございます。『ローカルボイス、湯気の向こう側』、本日は少し予定を変更してお送りします」声は意外と落ち着いていた。もうやるしかない。志乃は目の前の緑茶を見て、ふと思いついた。「今日のテーマは……“待つ”です」自分でもうまいこと言ったと思った。「人を待つ時間って、なんだかその人の輪郭が濃くなりますよね。遅いな、とか、何してるんだろう、とか。会っていない時間に、その人のことばかり考える。今日はそんな話を、ひとりでしてみようと思います」そこからの二十分は、不思議とうまくいった。陶芸の窯の前で待つ時間。湯が沸くのを待つ時間。返事の来ない手紙を待っていた祖母の話。宿に着くはずの客がなかなか来ず、あとで“駅で猫を撫でてました”と言って現れた話。コメントも届き始めた。「今日の一人回、沁みる」「宮下さん寝てるの?」「待つ話いいなあ」「猫の件わかる」志乃は少しずつ調子を取り戻した。そして配信終了五分前。ついに扉が開いた。宮下さんだ。髪はきっちり整い、姿勢はしゃんとして、眠っていた人には見えない。まるで何事もなかったかのように入ってきて、志乃の向かいに座った。志乃は半ばあきれながらも、マイクを向けた。「……おはようございます、宮下さん」「おはようございます」「本日、だいぶお待ちしました」「ええ、よく待てました」「寝てましたよね?」「寝ておりました」「堂々と言いますね」「人の本音は、待たせたときにいちばん出ますからな」志乃は一瞬、言葉を失った。宮下さんは続けた。「この番組に呼ばれて、何を話そうか考えたんです。昔話でも、川の話でも、戦後のことでもいい。でもね、志乃さんの声のいちばん良いところは、“予定外”に置かれたときに出ると思った」主人が隣で「うわ」と小さく言った。「だから寝たんですか?」「はい」「わざと?」「はい」「本当に?」「ただし、最初の十分は本当に寝てました」志乃はとうとう吹き出した。配信越しにもその笑いは伝わったらしく、コメント欄には「策士なのかただの老人なのか」「どっちだ」「両方だろ」と流れた。宮下さんは茶碗を見て言った。「それで、今日のお茶は何です?」「川根茶です」「ほう。待ったぶん、少し渋くなったでしょう」「ええ。でも、悪くないです」「そういう回が、いちばん残るんですよ」その日の放送は、番組史上いちばん再生された。後日、宿の入口には新しい看板が出た。AUBERGE RADIO ― LOCAL VOICES本日の教訓:ゲストは起きているとは限らないそしてその看板を書いたのは誰かといえば、寝坊した罰として筆を持たされた、宮下さん本人だった。おわり今日は戦車のニュースが気になった。なんで暴発したのか。ちゃんと調べてほしいな。
2026.04.21
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この辺でも桜が咲いたとかってニュースが出たりしてたんだけど、やっぱり外でなんかするのはまだちょっと寒い。今日は年に一回の会社の安全祈願祭でした。天気はよかったんだけど、風も強くてほんのちょっとの間だったけど寒かったです。会社の人はそのあと焼肉に行ったけど、俺はお弁当をもらって帰ってきました。てか今日は眠いよ。昼前に宅配の人から電話が来て、トラックが故障したから配達は昼からになるけどいい?って言われてたので、いつ来るのかなぁ。って思ってたら、コンビニにも行かなかったし昼寝もできなかったよ。で、来たのがさっき、18時半くらい。電話してきた人と違う人が持ってきた。トラック故障して、すぐ直らなくて積みかえてたから遅くなったのかなぁ?今日は何の日穀雨郵政記念日(逓信記念日)青年海外協力隊の日女子大の日「聴く」の日腰痛ゼロの日ジャムの日肌には知る権利がある記念日珈琲牛乳の日四川料理の日リラクゼーションドリンク「CHILL OUT」の日泉州阪南さわらの日愛国者の日モンストの日ワインの日発芽野菜の日シチューライスの日信州ワインブレッドの日キャッシュレスの日菜の花忌木蓮忌高級食パン文化月間タイトル:『聞く準備だけはできている』その喫茶店には、少し変わった決まりがあった。入口の脇に小さく「大声禁止」、壁にはただ一文字、「聴」とだけ書かれた金属の看板。客はみな、なんとなく声を潜める。常連はここを「聞く店」と呼んでいた。昼下がり、その店のいちばん奥の木の椅子に、ひとりの若い女性が座っていた。薄い麻のワンピース、開きかけの文庫本、冷めかけた珈琲、なぜか机には方位磁針、革の手帳、いちごの瓶詰め、郵政と書かれた古い瓶、そして四川料理の皿。統一感があるようでまるでない。まるで、何か重大な儀式の直前みたいな卓上だった。彼女は本を読んでいるように見えて、実際はほとんどページを進めていなかった。指先を同じ行の上に置いたまま、ときどき窓の外を見た。通りを歩く人、店の前で立ち止まる人、また去っていく人。まるで誰かを待っているようだった。店主は余計なことを聞かない主義だったが、その日は少しだけ気になった。というのも、彼女は三日前から毎日同じ席に座り、ほとんど同じ品を注文していたからだ。珈琲、四川料理、それからいちごジャムを小皿でもらう。飲み物の缶は持ち込み。しかも帰るとき、必ず郵政の瓶を軽く振って中を確かめる。四日目、ついに店主は負けた。「どなたか、お待ちですか」彼女は顔を上げ、しばらく考えてからうなずいた。「はい。たぶん、来ます」「たぶん?」「来るって言ったのは七年前なので」店主はそれ以上聞かなかったが、厨房の奥で皿を拭いていたバイトの青年は、完全に耳をそばだてていた。七年前。待ち人。古い瓶。方位磁針。文庫本。静かな喫茶店。材料だけ見ると、だいぶ恋愛映画だった。五日目、近所の常連たちの間でも噂になった。「昔の恋人だ」「いや、失踪した兄だ」「祖父の遺言かもしれない」「四川料理が好きな人なんじゃないか」最後の説だけ妙に現実味があった。六日目の午後、ついに一人の男が店に入ってきた。息を切らし、紙袋を抱え、店内を見回す。そして彼女を見つけると、申し訳なさそうに頭を下げた。「すみません、遅れて」店主もバイトも常連も、聞いていないふりで全員聞いていた。彼女は驚いた顔もせず、本に栞を挟んだ。「七年」男はうなずいた。「長かったです」「長かったですね」「途中で一回、場所を勘違いして名古屋に行きました」「それは途中じゃなくてかなり大きいミスですね」男は紙袋をテーブルに置いた。中から出てきたのは、古びたカセットテープの再生機だった。さらに彼はポケットから一本の鍵を取り出した。「見つかりました。あなたのお祖母さんの荷物の中にあった郵便貯金の箱、その鍵です」店内の空気が変わった。なるほど、恋ではない。遺品整理か。郵政の瓶もその流れか。ではあの瓶の中身は何なのか。常連たちの推理は静かに組み替えられた。彼女は鍵を受け取ると、ようやく少しだけ笑った。「ありがとうございます。じゃあ、開けてみます」「ここで?」「ここでです。家だと緊張するので」彼女は革の手帳の下から、小さな金属箱を取り出した。見た目は地味で、たしかに昔の貯金箱のようでもあり、秘密を隠していそうでもある。店主はつい珈琲を注ぐ手を止めた。鍵が差し込まれ、回る。かちり。箱が開く。中には一枚の紙と、古いカセットテープが一本入っていた。彼女はゆっくり紙を開いた。祖母の字だった。少し震えた文字で、こう書いてある。『これを開けるときは、必ず静かな場所で、なにか甘いものと珈琲を用意すること。話は長いから』喫茶店の条件にぴったりだった。彼女は無言でうなずき、男が持ってきた再生機にテープを入れた。皆、聞いてはいけないと思いながら、聞く気満々だった。店の壁の「聴」の字が、今日は妙に圧を持っていた。がしゃ、という小さな機械音のあと、テープが回り始める。しばらくの無音。それから、年配の女性の声が流れた。『――もしもし。これを聞いてるってことは、うまく鍵を見つけたんだね。えらいえらい。さて、本題です』店内の全員が息をのむ。『この喫茶店の四川料理、食べたかい。食べてないなら先に食べな。冷めるとおいしくないから』彼女は皿を見た。たしかに少し冷めていた。テープは続く。『あと、いちごジャムは珈琲に入れちゃだめ。あんた昔やったろ。まずかったろ。学びなさい』バイト青年が吹き出しそうになって、必死に口を押さえた。そして祖母の声は、急に妙に明るくなった。『で、あんたがいちばん知りたい話だけどね。うちの家系に代々伝わる“宝の在りか”についてです』ついに来た、と誰もが思った。彼女の指が止まる。男も背筋を伸ばす。店主は完全に配膳を忘れていた。三秒の間。『宝は、台所の吊り戸棚のいちばん上。赤い缶に入ってます』彼女が目を見開く。『ただし中身は現金じゃなくて、昭和五十八年に私がどうしても捨てられなかった輪ゴムと、どの鍵に使うかわからない鍵が十四本と、商店街の福引で外れたポケットティッシュです。期待させて悪いね』店内に、長い沈黙が落ちた。彼女はしばらく固まっていたが、やがて額を押さえて笑い出した。男もつられて笑った。店主まで肩を震わせている。常連の一人は「宝ってそういうことか」と小さくつぶやいた。だがテープはまだ終わらない。『追伸。本当の宝はその箱の底に入れておきました。もったいぶってごめんね』全員の視線が箱に戻る。彼女は慌てて箱の底を探った。底板が少し浮く。爪で引くと、薄い隠し蓋が外れた。中に入っていたのは、封筒一枚。彼女はそっと開ける。そこには現金でも権利書でもなく、一枚のメモがあった。『この店のコーヒー代、私のツケです。七年分、よろしく』彼女は天を仰いだ。店主はゆっくり帳簿を閉じた。「お客様」「はい」「まずは、四川料理の追加からにしましょうか」彼女は笑いながらうなずいた。「……祖母は、最後まで人の話を聞かせるのがうまい人でした」壁の「聴」の字が、少しだけ誇らしそうに見えた。おわりそうそう、地震大丈夫でしたか?この辺はあんまり揺れなかったけど、ちょっと長かった体感です。あと、最近の空気清浄機って、地震とか津波の情報を言ってくれるの?これってWifiにつながってるんだっけ?って思った。
2026.04.20
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今日も午後から出かけてて今帰ってきたところなので、めっちゃ眠いです。でも、昨日と今日で桜咲いたみたいだね。帰り頃は車が揺れるほど風が吹いてたので桜も散ってしまってないか心配だね。今日は何の日地図の日(最初の一歩の日)乗馬許可記念日養育費の日飼育の日良いきゅうりの日みんなの保育の日収育の日養育費を知る日JADCAの日クレープの日シュークリームの日熟カレーの日松阪牛の日共育の日イクラの日食育の日熟成烏龍茶の日高級食パン文化月間タイトル:最初の一歩係朝の開園前、ふれあい牧場はまだ静かだった。柵の向こうでは羊が眠たそうに草を噛み、奥の小屋からは掃除の音がする。新人飼育員の真帆は、今日もいちばん気むずかしい担当の前に立っていた。相手の名前は、ポン太。小柄な馬なのに妙に貫禄があって、初対面の新人には決して心を開かない。耳を伏せ、首をそむけ、機嫌が悪いと案内板まで背中で隠す。先輩たちはみんな笑って言う。「ポン太に認められたら一人前」「逆に言うと、認められないうちはずっと“最初の一歩”だね」その言葉どおり、ポン太の近くには古びた木の看板が立っていた。矢印の上に白い字でこう書かれている。最初の一歩真帆はこの一週間、ずっとその意味を考えていた。動物と信頼関係を築くには、焦らず、相手のペースに合わせること。近づきすぎない。驚かせない。まずは撫でる前に、気配をなじませる。きっとあの看板は、牧場の哲学なのだろう。誰か偉い人が書いた、初心を忘れないための言葉に違いない。だから真帆は毎朝、ポン太の前に立つと小さく深呼吸した。「よし、最初の一歩から」最初の日、ポン太はそっぽを向いた。二日目、鼻先で作業帽をはたき落とされた。三日目、真帆が差し出したブラシを無視して、なぜか肩掛けバッグだけをじっと見た。四日目、耳の後ろをそっと掻いたら、一瞬だけ目を細めた。五日目、逃げなかった。六日目、真帆が話しかけると、面倒くさそうにだが顔を向けた。そして七日目の朝。真帆が両手でたてがみの根元を優しくほぐすと、ポン太は初めて、ふっと体の力を抜いた。耳が少し前を向く。首が下がる。まるで「そこ、悪くない」と言っているみたいだった。真帆は思わず笑った。「やっとだ。やっと最初の一歩、だね」そのとき、後ろから先輩の加瀬が牛乳ケースを抱えてやってきた。「あ、真帆ちゃんいた。今日から案内係もお願いね」「え?」「この子、もう慣れたでしょ。じゃあ“最初の一歩”よろしく」「はい、もちろんです。初心を大切にって意味ですよね」「……初心?」加瀬は少し黙ってから、看板を見て吹き出した。「違う違う。あれね、この先に“地団駄広場”があるでしょ」「地団駄広場?」「子どもが乗馬体験の前に練習する場所。歩き方の説明で、“最初の一歩”ってコース名なの」「コース名?」「うん。その次が“二歩目”、最後が“地団駄広場”。昔の園長のネーミングセンス」「えっ、哲学の言葉じゃないんですか」「全然違う」「じゃあ私、この一週間ずっと看板に感動して……」「してたね。毎朝うなずいてたもんね」真帆はその場でしゃがみこみたくなった。あまりの恥ずかしさに顔が熱くなる。するとポン太が、そんな彼女の肩掛けバッグに鼻先を突っ込み、器用に中から丸めた紙をくわえ出した。加瀬がそれを見て、また笑った。「あーあ。ポン太、そっちだったか」「そっち?」「バッグに入ってる“にんじん支給表”。毎朝それ見てたから、たぶん真帆ちゃん本人じゃなくて、餌の担当者として認めたんだと思う」「……え」「一週間かけて築いた信頼、たぶん愛情じゃなくて配給ルートだね」真帆が固まっていると、ポン太は満足そうに鼻を鳴らした。さっきまでのしみじみした空気が全部ひっくり返るくらい、実にいい顔だった。その日の日誌に、真帆はこう書いた。『ポン太との距離、かなり縮まる。なお理由は哲学でも絆でもなく、にんじんである可能性が高い。』おわり
2026.04.19
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今日は母の買い出しの運転手でお出かけしてきた。昼ごはんにありつけるかと思ってたのだが、なかった。でも、ちょっと遠回りして道の駅でとりのから揚げとソフトクリームを食べ、そのあと、コーヒー屋のコーヒーを買ってもらった。待ってる間に頭が痛くなったが、まぁ、そのうち治るだろう。そういえば、朝のどが痛かったが、風邪っぽいのかもしれない。今は頭が痛いし、めっちゃ眠い。今日は何の日世界アマチュア無線の日発明の日よい歯の日三重県民の日岡山県創立の日お香の日ウッドデッキの日ガーベラ記念日よいお肌の日毛穴の日夏美容はじめの日準婚カップルの絆を確認し合う日米粉を使った四角いシュークリーム「myblock」の日ニューギンのよいパチンコの日米食の日防犯の日オコパー・タコパーの日同窓会の日高級食パン文化月間タイトル:午後三時、宇宙はだいたいおやつの時間町はずれの古い縁側で、真鍋澪は毎日きっかり午後三時になると湯気の立つ白い器を持ち、庭のほうを向いて座った。机の上には古いラジオ、黄ばんだカード、開きっぱなしのノート、そして用途のよくわからない真鍮の器具。知らない人が見れば、のんびりした昼下がりの読書時間にしか見えない。だが澪にとってこれはれっきとした“観測”だった。彼女は元・市立科学館の臨時解説員で、今はなぜか「個人で異星文明の信号を受信している」と近所でうっすら噂されていた。噂の発端は、先月商店街の福引きで当てた古い短波ラジオだ。電源を入れると雑音の海の中に、ときどき規則正しい音が混じる。ピ、ピピ、ピ。ピ、ピピ、ピ。偶然とは思えない。しかもそれは決まって午後三時前後にだけ強くなる。澪はノートに真剣な顔で記録をつけていた。「繰り返し信号。知性あり」「一定間隔。感情を抑えた呼びかけの可能性」「こちらの文明レベルを試している節あり」最初は冗談半分だった。だが三日目には、信号のあとにラジオの奥で微かに“カン…”という金属音が鳴った。五日目には二回。七日目には三回。これはもうメッセージだ。澪はそう確信した。その日も信号は来た。ピ、ピピ、ピ。澪は目を細め、ゆっくりノートに書く。「本日も受信。昨日より近い」すると今度は、いつもよりはっきりした雑音が混じった。ざざっ、と鳴ったあと、かすかに人の声のようなものがする。澪は息をのんだ。来た。ついに来た。彼女は古いラジオのつまみを慎重に回した。背筋を伸ばし、相手を刺激しないよう低い声で言う。「こちら地球。あなた方の言語体系は未解読ですが、友好的意志を持っています」ざざっ。「……み……お……さん……」澪の鼓動が早くなる。名前まで把握されている。観測されていたのはこっちだ。彼女は急いでノートに書いた。「先方、個体名を認識。接触段階は想定以上に進行」そして次の瞬間、ついにメッセージは明瞭になった。「澪さん! またラジオでケーキ焼き時間のタイマー拾ってませんか! オーブン鳴ってるんで早く来てください!」澪は固まった。声の主は、隣の母屋にいる叔母だった。叔母は最近、通販で買った“離れでも聞こえる便利な無線チャイム付きオーブンタイマー”を使い始めていた。毎日午後三時に規則正しく入っていた信号は、知的生命体からの呼びかけではなく、叔母の焼き菓子の完成通知だったのである。机の上のノートには、過去二週間ぶんの壮大な誤解が並んでいた。「知性あり」「感情を抑えた呼びかけ」「文明レベルを試している節あり」全部、スコーンかパウンドケーキの焼き上がりである。そこへ母屋の戸が開き、叔母が顔を出した。「ほらやっぱり。あんた、また宇宙と交信してたの?」澪は白い器を持ち上げ、ため息まじりに答えた。「少なくとも向こうは、小麦粉の扱いに関しては高度文明です」叔母は笑って、焼きたてのケーキを皿にのせて去っていった。澪もつられて笑い、ノートを閉じた。なんだ、全部勘違いだったのだ。少し恥ずかしいが、まあ悪くない午後だった。……そう思って、ふと机の上の黄色いカードに目をやる。カードの裏面には、いつのまにか見覚えのない文字が一行だけ、銀色に浮かび上がっていた。「次回接触は、発酵を伴う」澪が顔を上げると、母屋のほうから叔母の声がした。「澪ちゃーん、明日はパン焼くから、三時より早めに来てねー」その声のあと、ラジオがひとりでに鳴った。ピ、ピピ、ピ。そして、日本語でも機械音でもない、やけに流暢な声が小さく続いた。「地球のイースト菌、きわめて有望」澪はしばらく黙ってから、ノートを開き、新しい見出しを書いた。『深宇宙通信記録・補遺 叔母、完全には白ではない』おわりいまヤフーニュース見てたんだけど、今日、出かけてる間にマイケル・J・フォックスが亡くなったっていう誤報騒ぎがあったのか。あ、5日前?そんな騒ぎあったのか。
2026.04.18
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最近、迷惑メール、詐欺メールが多くて腹が立つ。見破ってるからもう送ってくるなよ。今日は免許更新が近いので、メガネ屋さんでメガネを作ってこようと思って行ってきた。前にメガネを作った時より目が悪くなってるような気がしたからだ。んで、いろいろやってもらったんだけど、まえに作ったメガネで免許の更新はできる。ということだった。メガネ屋さんでせっかくいろいろ検査したけどお金も払わず帰ってきました。いいのか?今日は何の日世界血友病デー恐竜の日職安記念日・ハローワークの日なすび記念日飯田・下伊那の日(五平もち記念日)クイーン(Queen)の日まいどなの日国産なす消費拡大の日いなりの日減塩の日高級食パン文化月間タイトル:「世界地図の横で、なすを勧める女」町はずれの古い家に、「進路相談やってます」とだけ書かれた札が出ている。役所でも学校でもない、どう見ても普通の民家だ。なのに妙に評判がいい。「話すと少し元気になる」「帰るころには、なぜか応募する気になる」「でも最後に必ず野菜を持たされる」そんな噂を聞いて、失業中の三十七歳、岡部はその家を訪ねた。案内された部屋は、奇妙だった。机の横には地球儀。棚には古い本、石、恐竜の置物、なぜか「職安・ハローワーク」と書かれたプレート。さらに別の棚には、つやつやしたナスが箱に並び、その箱には堂々と EGGPLANT と書いてある。壁にはロックバンドのポスター。マグカップは三つとも「まいど」と書いてあった。そして部屋の真ん中に、その人はいた。グレーの巻き毛、落ち着いた目、デニムシャツの似合う年配の女性。まるで大学教授と畑のベテランが同時に一人の身体に入ってしまったみたいな雰囲気だった。「どうぞ。座って」声はやわらかいのに、逆らえない感じがあった。岡部は正直に話した。前の会社を辞めたこと。やりたいことがあるような、ないようなこと。事務はできるが向いてる気もしないこと。子どものころは地図を見るのが好きで、旅の本ばかり読んでいたこと。でも今さら何者にもなれない気がしていること。女性は途中で一度もうなずかなかった。ただ、静かに聞いていた。やがて岡部が話し終えると、彼女は机の上の鉛筆を一本取り、メモ用紙に丸を三つ書いた。「人ってね、仕事を探すとき、だいたい三つを見失うの」「三つ、ですか」「どこへ行きたいか」彼女は地球儀を軽く回した。「何が好きだったか」棚の本を指さした。「それから、自分が思ってるより人に役立つものは何か」最後の一言で、彼女はなぜかナスの箱を軽く叩いた。岡部は少し笑った。「そのナス、なんなんですか」「大事な例えよ」「例え?」「ナスはね、見た目で損をしやすい。でも、焼いても煮ても揚げても、ちゃんと居場所がある」その言い方が妙に真剣で、岡部は笑っていいのか迷った。彼女はさらに話を続けた。地図が好きなら、配達や物流、観光案内、地域資料館、旅行会社の裏方もある。本が好きなら、図書整理や記録業務もある。人としゃべるのが完全に嫌いじゃないなら、窓口の仕事だって向いているかもしれない。「向いてる仕事」は、最初から天から降ってくる職名じゃない。好きだったことの周辺に、あとから名前がつくことも多い。岡部は、来た時より少し背筋を伸ばしていた。不思議と、「終わってる感じ」が薄くなっていた。「……なんか、久しぶりに前向きなこと考えました」「それはよかった」「こういう相談、いつからやってるんですか?」「長いわよ」「元カウンセラーとかですか?」「似たようなものね」彼女は少しだけ笑い、棚の上から一冊のノートを取った。そこには相談者の名前と、その後どうなったかがびっしり書いてあった。—郵便局の仕分けに採用。—道の駅スタッフ、半年継続。—測量会社に再就職。—古書店で生き生きしている。—農協で意外な才能開花。岡部は感心した。「すごいですね。本当に人の進路を変えてるんだ」すると女性は立ち上がり、棚のナスを三本選んで紙袋に入れた。ついでに、丸い平たい焼き菓子みたいなものも二枚入れた。「はい、お土産」「いや、なんでですか」「今日はよく話したから」「相談って、そういう制度でしたっけ」「うちはそうなの」岡部は紙袋を受け取り、深く頭を下げた。玄関まで見送られながら、最後にどうしても気になっていたことを聞いた。「あの、ひとつだけ」「なに?」「ここ、いったい何の事務所なんですか?」女性は、きょとんとして言った。「事務所じゃないわよ」「え?」「ここ、うちの八百屋の休憩所」「は?」彼女は親指で店先を指した。岡部が振り返ると、今まで気づかなかったが、引き戸の向こうに手書きの看板が見えた。『野菜・惣菜 ハローナス』「“職安・ハローワーク”って札は……」「お客さんが勝手に置いていったの。相談してるうちに、みんな仕事決まるから」「じゃあ、あなた……」「ただの店主。ついでに焼きナスが上手い」その瞬間、奥からエプロン姿の青年が顔を出して言った。「母ちゃん、さっきの人、また就職決まったって! お礼に履歴書の書き方教室やってくれって!」女性はうなずき、岡部に名刺を渡した。そこにはこう書いてあった。店主・進路相談・焼きナス担当小田切 典子岡部は名刺を見て、紙袋を見て、店を見た。そして人生で初めて、こんな感想を抱いた。——ハローワークより、ナスのほうが話が早い。おわり
2026.04.17
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今日は去年ぶりに会うお友達とミスドに行く予定だったが、隣のゼッテリアに行った。さすがに平日の昼間、お昼時でもすいてた。お土産に、道の駅で買ったトートバッグを持って行ったら、むこうの席に座って食べていたお一人様の女性に声をかけられた。んで、俺が持ってきたトートバッグに興味を示して見せてくださいって言われた。その辺で売ってたら教えてあげるんだけど、そのバッグはうちの地元の道の駅で買ったやつだからそうはいかなくて、ちょっと残念そうだった。てか、他人の話聞いてるのか。そして、トートバッグが気になるのか?なんか変な感じ。平日の昼間ってこんな感じなのか?久しぶりに食べたハンバーガーが美味しかった。ハニーマスタードのチキンバーガーを食べたんだけど、マスタードがめちゃウマだった。もう一個食べたかった。が、我慢した。今日は朝から京都の事件の父親が逮捕されたニュースばっかりだったね。何で殺したんだろうなぁ。殺すことないと思うけどなあ。なんかあったんだろうな。何があったんだろうね。タイトル:二十九番テーブルの大遠征朝の光が、古い地図帳の上をゆっくり滑っていた。村はずれの小さなカフェ「オルタナ」。観光客はめったに来ないが、窓の向こうには絵葉書みたいな畑と、遠くに淡い山並みが見える。店の奥の壁には古地図、古写真、古びた帽子。ついでに、なぜかエスプレッソマシンだけが妙に本気だ。その店のいちばん端の席で、リタは頬杖をついていた。前には開いた地図帳、脇には方位磁針、手元には小さなメダル、そして「29」と書かれたゼッケン。まるでこれから未踏の大地にでも踏み込む探検家のようだった。ただし足元には、よれたランニングシューズが脱ぎっぱなしで置かれていた。店主のマルコは、カップを拭きながら三十分ほど彼女を見ていたが、ついに我慢できなくなった。「……聞いてもいいかい」リタは顔を上げた。「はい」「君は今から、どこへ行くんだ」リタは少しだけ目を細めた。「まだ決めきれてなくて」「決めきれてない?」「ええ。東から回るべきか、西から攻めるべきか」マルコは思わずカップを置いた。攻めるべきか、という物騒な言い方が、この静かなカフェにはまったく似合わない。「危険なのか」「かなり」「一人で?」「基本は単独です」「装備はそれだけで?」「今日は軽装で。機動力重視なので」「帰ってこられる見込みは」「制限時間しだいです」マルコはごくりと唾をのんだ。壁の張り紙には、昔から置きっぱなしの標語がある。BOYS, BE AMBITIOUSあれは店主の父が若いころ、夢だけは大きく生きろと貼ったものだ。だが今この瞬間、その言葉はどう見ても彼女のためにあるように思えた。「家族は、このことを?」「知ってます。母は“無理なら途中でやめなさい”って」「賢明だ」「でも、去年もあと一歩のところで」「去年もやったのか!?」「はい。最後で完全に読みを間違えました」マルコの脳裏には、霧の峡谷、崩れる吊り橋、食糧不足、裏切る案内人、そういうものが勝手に浮かんでいた。目の前の娘は静かで上品なのに、話している内容だけは妙に壮絶だった。「何のためなんだ」そう尋ねると、リタは初めて少し笑った。「誇りのためです」「誇り」「あと、どうしても欲しいものがあって」「宝か」「まあ、そんな感じです」「その地図に、ありかが?」「はい。だいたい」「だいたい!?」「配置が毎年ちょっと変わるので」ますます危ない。宝の位置が毎年変わる大遠征など、ろくなものではない。マルコは、黙って濃いエスプレッソを一杯、彼女の前に置いた。「サービスだ」「え」「行く前に飲みなさい。帰ってきたら、もう一杯おごる」リタは目を丸くしたあと、少しだけ背筋を伸ばして、うなずいた。「ありがとうございます。生きて戻れたら」「その言い方はやめてくれ」そのとき、店の外から拡声器の声が聞こえた。『まもなく村民合同オリエンテーリング大会、受付を締め切りまーす! スタンプラリー形式です! 上位入賞者には温泉旅館ペア宿泊券と、特製ジャム詰め合わせが贈られまーす! なおゼッケン29番の方、お連れさまがお待ちでーす!』店内が静まり返った。マルコはゆっくり外を見た。広場には、地元の小学生、犬を連れたおじさん、妙にやる気のある主婦たちが集まり、みんな首から村の手書き地図をぶら下げていた。リタは黙ってゼッケンを持ち上げた。「……すみません」「いや」「でも去年、最後の漬物工房を見落として四位だったんです」「漬物工房」「今年こそジャムを取ります」「誇りって」「ジャム部門、三年連続で隣村に持っていかれてるので」マルコはしばらく無言だったが、やがて大きくうなずいた。「なるほど」「はい」「それは……確かに村の威信がかかっているな」「でしょう?」「東から回れ。西のパン工房は毎年、みんな最初に群がる」「やっぱり!」「だが終盤、北の養蜂小屋は脚にくる。そこでこのエスプレッソが効く」リタは立ち上がった。さっきまでの物憂げな顔は消え、歴戦の猛者みたいな目になっていた。「ありがとう、マルコさん」「行け、29番」「ジャム、獲ってきます」彼女はランニングシューズを履き、ゼッケンを胸につけ、扉へ向かった。その背中は、たしかに冒険へ向かう人間のそれだった。店のベルが鳴り、扉が閉まる。しばらくして、マルコは彼女の開きっぱなしの地図帳をちらりと見た。そこには赤ペンで大きくこう書いてあった。最優先目標:温泉旅館ペア宿泊券第二目標:ジャム第三目標:参加賞のゆで卵マルコは小さく笑って、カウンターの奥に向かってつぶやいた。「……いちばん本気なの、卵かもしれんな」おわり今日はい天気でお出かけ日和だったよ。コーヒー二杯も飲んだから帰りは眠くならなかったけど、帰って来てから眠いよ。
2026.04.16
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最近色々忙しいなぁ。って思ってて、今日も予定があると思って、昨日のうちに準備していたんだけど、今日の朝、予定を確認したら来週だった。もう予定を確認してるうちに、今週か来週かわからんくなってくる。確認してる意味ないじゃん。ことし1月から新潟県に住む女子中学生が行方不明となっていましたが、今月9日に長岡市で見つかった遺体について不明の女子中学生と判明しました。なんかさ、またこういう結果になってしまったよ。あの子どうなっただろう?って思いつつ、京都の子の話題が多くなっていって、だんだんニュースにならなくなってしまってたけど、こういう結果になるのは残念だね。今日は何の日世界医学検査デーヘリコプターの日消しゴムの日象供養の日遺言の日ジャッキー・ロビンソンの日東京ディズニーランド開園記念日京和装小物の日よい酵母の日良いコラーゲンの日からあげクン誕生日日本巡礼文化の日いちご大福の日IJIMEQUEST415の日宮崎カーフェリーの日スクフェスの日いちごの日中華の日梅若忌登美子忌春の全国交通安全運動高級食パン文化月間タイトル:遺品整理より先に、運を整理してください町内ではその老人を「お守り師」と呼んでいた。本名は芝田公平、七十三歳。普段は無口で、紺の作務衣を着て、机に向かって小さな袋や根付を黙々と縫っている。だが、ひとたび相談事を持ち込まれると、相手の話を最後まで聞き、必要なら三日三晩でも考える。その代わり、作るお守りは少し変わっていた。交通安全や学業成就のような、わかりやすい願掛けはほとんど作らない。芝田が得意なのは、もっと面倒なものだった。「遺産分割が荒れませんように」「推し活が家族会議に発展しませんように」「兄が“これは思い出だから値段じゃない”と言い出しませんように」「姉が急に親孝行ランキングを持ち出しませんように」そういう、神社でも寺でも受付を一瞬ためらう類の願いばかり、芝田のところへ集まってきた。その日も、芝田は机の上に小さな布袋を並べていた。桜の刺繍、松の模様、亀甲柄、雲の柄。どれも可愛らしいのに、置かれている空気だけは妙に重い。机の脇には白い封筒が一枚。表には大きく「Will」と書いてある。近所の人は見た。「ついに自分の遺言を書いてるらしい」「いや、あの人のことだから、遺言まで手芸で解決する気だ」「相続の本まで置いてあるって」「しかもヘリコプターの模型がある。あれ絶対、財産目録の暗示だよ」実際、その噂は半分当たっていた。芝田は先月、古くからの友人・坂上から相談を受けていた。坂上は町でも有名な“集める男”で、人生の途中で好きになったものを何でも集めていた。野球カード、遊園地の地図、フェリーのチケット、アイドルのキーホルダー、航空グッズ、なぜか鶏の形の箱。趣味に一貫性はないが、熱量だけは一流。問題は、その坂上が入院したことだった。「もし俺に何かあったら、子どもたちが絶対にもめる」病室で坂上は真顔で言った。「現金なら分けられる。家も売れば済む。だが、コレクションは違う。長男は“資産価値”で見る。長女は“思い出”で見る。次男は何でもメルカリに出す。いちばん危ないのは、誰も欲しくないのに“親父が大事にしてたから”って全員が急に大事にし始めることだ」芝田はうなずいた。それはたしかに、交通安全より難しい。そこで芝田は考えた。ただの遺言では足りない。公平に、しかも角が立たず、できれば少し笑って受け入れられる方法がいる。彼が思いついたのが、「相続用お守り」だった。ひとつひとつの袋の中には、小さな紙が入っている。ただし、財産名がそのまま書いてあるわけではない。坂上の品々を象徴するモチーフを刺繍と色で示し、その意味だけを家族に読み解かせる仕掛けにしたのだ。青い波模様はフェリーグッズ。金糸の鳥は例の鶏箱。白い糸の輪はキーホルダー類。緑の雲は遊園地マップ。野球の縫い目に見える赤糸はカード。象の根付は、坂上が昔タイ旅行で買って以来「これは開運の核だ」と言い張っていた置物一式。そして、いちばん豪華なお守りには、こう書いた。「これを受け取る者は、父の遺品を“価値”ではなく“理由”で語ること」つまり、争いが始まったら、欲しい人はまず「なぜ自分がそれを欲しいのか」を家族の前で説明しなければならない。値段でも、希少性でもない。思い出か、愛着か、笑える由来か。とにかく“理由”だ。芝田はこれを「先に運を試す相続」と呼んだ。数日後、坂上の家族が集められた。芝田は机の前に正座し、静かにお守りを並べた。長男は腕を組み、長女は目を赤くし、次男はすでにスマホのメモを開いていた。芝田は言った。「まず、くじではありません。これは、お守りです」「違いあるんですか」と次男。「気持ちの問題です」「いちばん日本人が信じてるやつだ」と長男が小声で言った。一つ目のお守りを開く。青い波模様。中には小さく「宮崎」と書かれた紙。長女が吹き出した。「あ、これフェリーの半券だ。お父さん、新婚旅行で飛行機が怖くて、私たちの母に“船のほうがロマンがある”って言い張って、二十時間くらいかけて行ったやつ」長男も笑った。「母さんずっと船酔いしてたって聞いた」「だからこれはお姉ちゃんが持って」と次男。二つ目。赤糸の縫い目。中には「ジャッキー」とある。長男が手を挙げた。「それは俺。小学生の時、親父に“野球は記録じゃない、雰囲気だ”って教えられた」「何その最悪な英才教育」と長女が言ったが、顔は笑っていた。三つ目。白い輪。中にはアイドル名が三つ。次男が無言で受け取った。「理由は?」と芝田。次男は観念して答えた。「父さん、ライブ物販で並ぶの恥ずかしいからって、いつも俺を連れていったんです」「親子の思い出だねえ」「いや、父さん自分の分より俺の名義で買わせるのが目的だった」部屋に笑いが広がった。空気がゆるみ、最初の険しさは消えていった。残るは最後のひとつ。いちばん手の込んだ、金糸と花の刺繍があるお守りだった。坂上がとくに大切にしていた“何か”に違いない。家族全員が少し身を乗り出した。芝田は慎重に紐をほどいた。中の紙を見て、珍しく一瞬だけ目を細めた。それから咳払いをして読み上げた。「……『鶏の箱の中の、クッキーの缶の中の、遊園地マップの裏に挟んだ、通帳を見よ』」部屋が静まり返った。長男が言った。「え?」長女が言った。「通帳?」次男が言った。「それ、いま一番大事なやつでは?」三人が同時に立ち上がり、棚へ走った。鶏の箱を取り、開ける。中にクッキー缶。その中に折りたたまれた遊園地マップ。裏に、本当に一冊の通帳が挟まっていた。長男が震える手で開く。家族全員がのぞき込む。残高欄には、きっちり印字されていた。1,215円。沈黙。長女が先に笑い出した。次男が机に突っ伏した。長男は天井を見て言った。「親父、最後まで“宝探しの演出”だけは一流だったな……」芝田は深くうなずいた。「ええ。坂上さんは、“もめるほど金はないが、盛り上がる自信はある”とおっしゃってました」そのとき、次男が通帳の間からもう一枚、小さな紙を見つけた。そこには坂上の字で、こう書かれていた。『本当の遺産は、下の引き出し。そこに遺品整理代として現金を入れた。なお、開ける前にもめたら減額。仲良く笑ったので満額です』あわてて引き出しを開けると、封筒が三つ。等分された現金と、ひとりずつへの短い手紙が入っていた。長男が笑いながら言った。「結局、最後まで親父のゲームに付き合わされたな」長女も頷いた。「でも悔しいけど、ちょっと楽しかった」次男は通帳を振って言った。「で、この千二百十五円は?」芝田は静かに答えた。「たぶん、フェリーの記念グッズ代くらいにはなるでしょう」その日以来、町では芝田公平の評判がさらに上がった。ただし肩書きは少し変わった。交通安全でも学業成就でもない。人々は彼をこう呼ぶようになった。“遺産相続を、ギリギリ余興に変える男”おわり今日も朝から眠い。そしてこの時間になると寒い。
2026.04.15
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やっぱり昨日の見つかった遺体は行方不明の少年ものだったね。しかも、亡くなってから相当時間がたってるという話だ。死亡時期は3月下旬ごろで、父親が学校に送っていったというのが3月23日。行方不明になってすぐ亡くなっていたか、あるいはその前にすでに‥‥なんかさ、この事件てホントかウソかわからないけど、少年の周りの奇妙なことがいろいろネットで流れてくるんだよね。少年が行方不明になったことより、そっちの方が気になるような。これって何なんだろう?SNSのせい?今日は何の日オレンジデーパートナーデーフレンドリーデー柔道整復の日タイタニック号の日良い年の日椅子の日ロスゼロの日ブラックチョコレートの日家具の町東川町・椅子の日ピロリ菌検査の日丸大燻製屋・ジューシーの日クラシコ・医師の日春の全国交通安全運動高級食パン文化月間タイトル:みかんと椅子職人の午後町の外れに、「家具の町 木工房・椅子」という、名前の説明がまるごと看板になっている店があった。説明しすぎだろ、と初めて来た人はだいたい笑う。でもこの店では、笑うことはだいたい正解だった。店主の栄一は、椅子ばかり作って五十年の職人だった。机も作れる。棚も作れる。なんなら仏壇だって頼まれれば作れる。だが本人が言うには、「椅子は人間の本音が出るからな」らしい。座って落ち着くか、落ち着かないか。立ち上がるときに「よいしょ」と言うか言わないか。長居したくなるか、すぐ帰りたくなるか。椅子には、その人の人生が少しだけ乗るのだと、栄一は真顔で言う。妻の澄子は、その理屈を四十年聞かされてきた。もう反論もしない。「はいはい、椅子の哲学ね」と流しつつ、作業の合間にはみかんをむいて職人の口に放り込むのが、夫婦の長年のやり方だった。その日、栄一は小さな引き出し付きの箱を撫でるように磨いていた。黒く塗られた木肌は、光の当たり方でやわらかく艶めく。椅子ではない。珍しいことだった。「ついに椅子に飽きたの?」澄子が聞くと、栄一は首を振った。「飽きるか。これは椅子じゃない」「見ればわかる」「大事な箱だ」「へえ。秘密の宝物でも入れるの?」「まあな」澄子は、そこで少しだけ顔を上げた。夫がこういう言い方をするときは、大体ろくでもない。昔も「大事な改良だ」と言って、座ると必ず背筋が伸びすぎて味噌汁をこぼす椅子を作った。その前は「理想の角度だ」と言って、昼寝すると二十分で首を痛める座椅子を作った。職人の情熱は、たまに家庭を敵に回す。「今度は何?」「まだ言えん」「また実験?」「実験じゃない。完成だ」「その言い方、不安しかない」澄子はみかんをひと房ちぎって、栄一の口元へ持っていった。栄一は素直に食べた。職人としては頑固だが、みかんを食べさせられることについては昔から従順だった。工房の中は木の匂いでいっぱいだった。削りかけの脚、組みかけの背もたれ、壁際の板材、あちこちに置かれた椅子たち。未完成の椅子も、完成した椅子も、どれも人を待っているように見えた。「で、その箱、誰に渡すの」澄子がなんでもない顔で聞くと、栄一は布で角を磨きながら言った。「おまえにだ」澄子の手が止まった。みかんの房が宙ぶらりんになる。「……私?」「そうだ」「なんでまた急に」「急じゃない。ずっと考えてた」澄子は笑おうとしたが、少しだけうまくいかなかった。若いころ、この人は気の利いたことをほとんど言わなかった。花を買ってきたこともない。記念日に洒落た店を予約したこともない。その代わり、冬になる前に黙って座布団を新しくしたり、台所の踏み台をちょうどいい高さに直したり、そういうことで気持ちを表す男だった。だからこそ、「おまえにだ」は妙に効いた。「なに、どうしたの。急に殊勝じゃない」「殊勝とはなんだ」「あなたのこと」「失礼なやつだな」そう言いながらも、栄一はちょっと耳を赤くした。澄子はその変化を見逃さない。四十年見てきたのだ。これは珍しく、本当に何かある顔だった。「開けていいの?」「いや、まだだ」「なんでよ」「最後の仕上げがある」「引っ張るねえ」「大事なものだからな」澄子は、今度こそ本気で中身を想像した。昔撮った写真だろうか。へたくそな手紙だろうか。もしかして、結婚指輪でも作り直したのかもしれない。いや、それはない。木工職人が木の箱に指輪を入れるのは、さすがに照れすぎている。でも、今日の栄一なら、ありえなくもない。「ねえ、まさか遺言とかじゃないでしょうね」「みかん食いながら言うことか」「だって急に“おまえにだ”なんて言うから」「縁起でもない」「じゃあ何よ」「だから、まだだって」そう言って、栄一は引き出しを一つ、そっと開けた。中には、小さな金具と、細長い木片と、なにやら丸い部品が入っている。澄子は拍子抜けした。「……部品?」「部品だ」「宝物じゃないの?」「宝物になる」「説明が雑」「見てろ」栄一は箱を膝の上に乗せ、裏側を見せた。そこには小さな木製のレバーがついていた。カチ、と動かす。すると箱の中で、ことり、と気持ちのいい音がした。「それで?」「それだけじゃない」栄一はさらに横の隠し板を押した。すると、箱の上部がゆっくりと持ち上がり、小さな背もたれのような形になった。澄子は目をぱちぱちさせた。「なにこれ」「見ればわかるだろ」「今日は見ればわかることしか言わない日なの?」「変形するんだ」「いや、したのは見た」「これはな――」栄一は、もったいぶって一拍おいた。「みかん休憩専用、超小型一人掛け椅子型お菓子入れだ」澄子は三秒黙った。それから、ゆっくり聞き返した。「……何専用?」「みかん休憩専用」「なんで専用にしたの」「おまえ、いつも俺にみかん食わせるだろ。そのとき、チョコも横に置くし、皮も置くし、最後に『ちょっと座って食べたい』って言う」「言うけど」「だから全部まとめた」「まとめた……?」栄一は得意げに説明を始めた。上のくぼみにはみかん。小引き出しにはチョコ。横の細い溝には爪楊枝。背もたれみたいに見える部分を倒すと、スマホ置きにもなる。しかも前面の小板を引き出すと、みかんの皮用の受け皿になる。さらに、その受け皿は――「椅子の座面の形になってる」と栄一は言った。「だから何」と澄子は言った。だが次の瞬間、澄子は吹き出した。笑いが止まらない。木工房に、乾いた笑い声が何度も跳ねた。栄一は少しむっとして、「いいだろ、便利だぞ」と言う。「便利は便利だけど!」澄子は涙を拭きながら言った。「四十年連れ添って、ようやく私への贈り物がこれ? “みかん休憩専用、超小型一人掛け椅子型お菓子入れ”?」「名前はまだ仮だ」「そこじゃないのよ!」しばらく笑ったあと、澄子は箱――いや、超小型一人掛け椅子型お菓子入れ――を撫でた。角は丸く、手にやさしい。引き出しの滑りは見事で、ぴたりと閉まる。木目もきれいだ。馬鹿みたいに手が込んでいる。本気でふざけるときの栄一は、だいたい腕がいい。「……でも、まあ」澄子は言った。「私っぽいっちゃ私っぽいか」「だろう」「花束より、こっちのほうがあなたらしいしね」「花束なんかすぐしおれる」「それ、ロマンの敵の発言よ」「椅子はしおれん」「それはそう」澄子は笑って、みかんをもうひと房、夫に差し出した。栄一が食べる。ふたりで、そのへんてこな贈り物を眺める。窓の外は白く、工房の中だけがあたたかかった。そのとき、店の引き戸ががらりと開いた。近所の常連客が顔を出した。「こんにちはー。注文してた椅子、できたかい?」栄一は振り向いて、いつもの職人の顔に戻った。「できてるよ」「お、よかった。座り心地のいいやつ、頼むよ」「任せろ」常連客は、作業台の上の黒い箱を見て首をかしげた。「新作かい?」栄一は一瞬だけ迷い、胸を張って答えた。「うちの今年いちばんの自信作だ」澄子が慌てて「それは売り物じゃないから!」と言うより早く、常連客は箱を手に取り、感心したようにうなずいた。「ほほう、これはいい。座れないのに椅子の魂がある」「でしょ?」と栄一。「これ、いくら?」澄子は嫌な予感がした。栄一の目が、職人ではなく商売人の光を帯びていたからだ。その夜、澄子の“世界に一つだけの贈り物”は、なぜか予約注文が七件入った。しかも商品名は、栄一が勝手にこう決めていた。『妻公認・みかん休憩専用チェアボックス』澄子は深いため息をつき、みかんの皮を新作一号機に入れながら言った。「ねえ、これもう私へのプレゼントじゃなくて、ただの新商品じゃない?」すると栄一は真顔で答えた。「違う。おまえが最初のモニターだ」澄子はみかんをもうひと房、今度は少し強めに夫の口へ押し込んだ。おわり今日もこの時間、眠くて、さっき一瞬ウトウトしていた。そして気がついたら部屋がうっすらと寒い。日中暖かかったのに。
2026.04.14
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今日は小説の出来がイマイチで、ChatGPTにスランプ?って聞いたほどなんだけど、そんなことをやってたら京都で遺体発見のニュースが入ってきた。京都・南丹市で子どもとみられる遺体行方不明の小学生との関連捜査 警察(NHKニュース)靴が発見された時点で、これはやばいなぁ。って思ってたけど、遺体も他殺ってことになるんじゃないの?まだ何も発表されてないからわからないけど。嫌な終わり方だ。まだ終わりとはわからないけど。今日は何の日水産デー喫茶店の日決闘の日恵美子の日浄水器の日新型インフルエンザ対策の日ブルダック炒め麺の日花キューピットの日BiSが創るほんものを贈る日一汁三菜の日石井スポーツグループ 登山の日お父さんの日啄木忌虚空蔵の縁日春の全国交通安全運動高級食パン文化月間タイトル:ひと皿の停戦協定「見て、あの二人」彼女は花束を抱えたまま、テーブル越しにこちらへ少しだけ身を乗り出し、小さな声で言った。「たぶん今、世界でいちばん真剣に一皿を分け合ってる」夕方の喫茶店は、中途半端に静かだった。壁の時計の音と、窓の外を通る車の気配と、鉄板ナポリタンの匂いだけが妙にはっきりしている。彼女の前には赤いカップ、僕の前にはカメラ。今日は付き合って三年の記念日で、花束を渡したら「せっかくだから自然な感じで撮ってよ」と言われて、何枚か写真を撮っていた。ところが、自然どころではないものが背後にいた。店の奥の二人組。黒い服にバンダナ、ピアスと鋲と反抗期をそのまま固めたみたいな見た目なのに、二人で一皿のオムライスを、やたら礼儀正しくつついている。左の女がスプーンを構えて言った。「先に言っとくけど、卵のふわふわ地帯は平等だから」右の男がすぐ返す。「いや、待て。今日の議題はそこじゃない。中央のケチャップだ」「ケチャップ?」「あれは国境線だ」「オムライスに国境線引くな」彼女は吹き出しそうになりながら、口元を押さえた。「何、あの会話。オムライスを国として扱ってる」僕もカメラを下ろしそうになったが、なんとか構え直す。すると奥の二人は、ますます深刻な顔つきになった。「いいか」と男が言う。「おまえが右側から掘り進めると、ライス層がこっちへ崩れてくる。それは越境だ」「越境じゃない、食べてるだけ」「言い方を変えるな。歴史の教科書みたいにするな」「そっちこそ急に外交問題にするな」彼女が小声で僕に言う。「ねえ、これたぶん前世で国王と宰相だったんじゃない?」「内戦がオムライスまで縮んだ感じだね」「スケールだけが急にかわいくなったね」すると今度は女のほうが、スプーンを置いて真顔で言った。「じゃあ確認する。ウインナーは?」男も真顔でうなずく。「停戦条約第七条。付け合わせのウインナーは一本ずつ」「よし」「ただし、太いほうは俺」「なんでよ」「今日は俺がドリンクバーを取りに行った」「それ労働加点で決まるの?」「当然だろ」「この国せこいな」彼女の肩が震えた。花束が小さく揺れる。「だめ、面白い。すごいパンクっぽい見た目なのに、やってること町内会の話し合いなのよ」「しかもかなり丁寧」「うん。荒れてるの外見だけ」僕がそっとシャッターを切ると、彼女は正面を向いたまま、さらに小さな声で続けた。「でも、たぶんあの二人、仲いいね」「そう見える?」「見えるよ。仲悪い人って、あんなに細かく分けないもん。黙って大きい方取るもん」「それは名言かもしれない」「今の、メモして」そのとき奥のテーブルで、ついに事件が起きた。女が「あっ」と声を上げたのだ。最後のひと口の手前、オムライスの端に隠れていた小さな唐揚げを、二人が同時に見つけたのである。空気が変わった。男が言う。「……これは想定外だ」女が言う。「議事録にない」「隠しボスか」「どうする」「一回、店員を呼ぶか?」「何て?」「“この唐揚げの所属が不明です”」「やめなよ、出禁になる」彼女はとうとう耐えきれず、僕に顔を向けた。「ねえ、あの二人、たぶん毎日こんな感じで生きてるよ」「だとしたら人生がだいぶ楽しそう」「ちょっとだけうらやましい」そして奥の二人は、長い沈黙の末、ついに結論を出したらしかった。男がポケットから何かを取り出す。女がそれを見てうなずく。彼女がひそひそ声で言う。「え、何出したの。コイン?」「まさか」「唐揚げで運命を決めるの?」次の瞬間、二人は同時に叫んだ。「最初はグー!」じゃんけんだった。しかも一発で決着がついた。女が勝って、男が大げさに天を仰ぐ。女は勝ち誇った顔で唐揚げを持ち上げ、ほんの一秒だけ見せびらかしてから、ぱくりと食べた。彼女は僕のほうを見て、花束を抱えたまま、呆れたように笑った。「平和条約の最後がじゃんけんって、かわいすぎるでしょ」「いちばん揉めない方法ではある」「パンクなのに最終判断が幼稚園児なの、最高」そこで僕は、なんとなく気になって店内の壁に目をやった。彼女の後ろ、柱のところに小さな札がかかっている。『BiSが知るほんもの』さっきから妙に気になっていたその文字を見て、僕は思わず吹き出した。彼女が首をかしげる。「何?」「いや……」「あ、わかった。店の名前?」「うん。でも違う」「違う?」僕は奥の二人を見た。一皿をつつきながら、唐揚げを失ったショックでなおも細かい抗議を続ける男と、それを軽くいなす女。それから花束を抱えた彼女を見た。僕のツッコミ待ちの顔で、もう半分笑っている。僕はカメラを構え直して言った。「この店の看板、たぶん間違ってない」「何が?」「“ほんもの”って、あの二人のことだよ」彼女は一秒黙って、それから小さくうなずいた。「たしかに」そして、僕のほうに少しだけ身を寄せて、決定打みたいに囁いた。「でもさ。ほんものの記念日デート中に、他人のオムライス外交をメインで見てる私たちも、だいぶほんものだよね」そのひと言で、僕は完全にシャッターのタイミングを失った。結果、その日にいちばん自然に撮れた一枚は、花束を抱えた彼女の笑顔でも、勝利の唐揚げを掲げるパンクの彼女でもなく、奥でじゃんけんに負けて、ものすごく静かにふてくされながら、彼女の勝利を祝って水を注いでいる、パンクの男だった。おわりこれはテイク3か4くらい。おもしろそうな展開になってもオチで脱線するんだよなぁ。
2026.04.13
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最近睡眠時間が足りてないし、昨日も夜に出かけてきて疲れてるので今日は昼くらいまで寝てた。今日は風が強いね。天気はいいのにちょっと寒い。そしてまだ眠い。今日は何の日世界宇宙飛行の日パンの記念日東京大学創立記念日子どもを紫外線から守る日徳島県にんじんの日国分寺ペンシルロケット記念日補綴(ほてつ)の日シャイニーカラーズの日タイルの日豊橋「つまもの」の日ブタメンの日豆腐の日育児の日パンの日わんにゃんの日春の全国交通安全運動高級食パン文化月間タイトル:原宿じゃないのに、逸材がいた日夕方の大学通りで、私はいつもの街角ファッション企画を回していた。番組名は『突然すみません、今日その服でどこ行くんですか?』。名前の通り、服装に妙な説得力のある人を見つけては声をかけるだけの、ゆるい街頭インタビューである。その日、カメラマンの井上が私の腕をつかんだ。「いた」「え、なにが?」「今日の主役」視線の先にいたのは、小学校高学年くらいの女の子だった。つば広の帽子。帽子の上にはサングラス。上着は色も素材もバラバラなのに、なぜか全体としてひとつの完成形になっているパッチワーク風ジャケット。胸にはNASAのワッペン。手首には大量のミサンガのようなもの。肩からは小さなポーチ。片手には「KOKUBUNJI」と書かれた飛行機のおもちゃ。もう片方の手には、パン、野菜、花、そしてなぜかカップ麺まで入った籠。情報量が多すぎた。私はマイクを握りしめて近づいた。「すみません、街角ファッションチェックなんですが、お時間いいですか?」女の子は足を止め、にこっと笑った。「はい。いま、ちょうど途中なので」途中。何の途中なのかは、見た目からは一ミリも読めなかった。「ありがとうございます。まず、今日のファッションのポイントを教えてください」「今日は“日差し対応・長距離移動・補給任務仕様”です」「ほきゅう……任務仕様」「はい。帽子は日差し。サングラスは目の保護。ポーチは地図。腕のひもは気分です」「最後のだけ急に自由ですね」カメラの後ろで井上が肩を震わせている。私は気を取り直した。「上着のワッペン、NASAですよね。宇宙お好きなんですか?」「好きです。宇宙は、遠いところにちゃんと届けないといけないので」「すごい、もう言ってることが広いな」「でも今日は宇宙じゃないです」「よかった。今日は地球で」「はい。国分寺です」「急に縮尺がだいぶ戻ったな」女の子は真顔でうなずいた。「この飛行機も気になります。“KOKUBUNJI”って書いてありますね」「これは乗り物です」「それは見れば飛行機なんだけど、そういう意味じゃなくて」「気持ちの」「気持ちの乗り物」「はい。これを持つと、まっすぐ行けます」「たぶん人生の話してるな、この子」見れば見るほど、ちゃんと考えて服を着ている。変わっているのに、ふざけている感じがしない。全部に理由がありそうで、でも聞くほど謎が増える。「ちなみに、今日は何をされてるんですか?」私がそう聞くと、女の子は籠を少し持ち上げた。「届けものです」「誰に?」「おなかがすいてる人に」「なるほど、やさしい」「あと、野菜を食べない人に」「対象がちょっと具体的になったな」井上がもうだめだった。カメラを回しながら笑っている。「もしかして、ご家族に?」「うーん、家族みたいなものです」「ほう」「でも、最近は研究室に住んでるみたいなので」「研究室に住んでる!?」ここで私は一気に興味を持った。服装のおしゃれインタビューのはずが、だんだんドキュメンタリーの匂いがしてきた。「ちょっと待ってください。届け先って、大学の人ですか?」「はい。お兄ちゃんです」「お兄ちゃん?」「本当のお兄ちゃんです」「よかった、急に安心した」私は胸をなで下ろした。NASAワッペンの少女が“家族みたいな研究室の人”に補給物資を届ける話かと思ったら、血縁だった。「じゃあ今日は、お兄ちゃんに差し入れを?」「そうです」「なるほど。それでこの籠」「はい。パンと野菜と、お花と、焼きそば」「待って、お花は何用?」「見た目がさみしいから」「差し入れの美意識が高い」私はもうこの子のファンになりかけていた。「ちなみに、そのジャケットはご自分で選ばれたんですか?」「はい。お母さんは“派手すぎる”って言いました」「まあ、言うでしょうね」「でも私は、相手が遠くからでも見つけやすいほうがいいと思いました」「実用派だった!」ただ奇抜なのではない。すべてに目的がある。しかも目的が、絶妙に子どもらしくて、妙に合理的だ。「失礼ですが、お名前を伺っても?」「すみれです」「すみれちゃん。将来はファッション関係とか、宇宙関係とか、そういう夢があるんですか?」すみれちゃんは少し考えてから、にっこり笑った。「将来は、交渉が強い人になりたいです」「交渉」「はい。うちでいちばん必要なので」「急に家庭の事情が見えたな」私はここで確信した。この子、ただ者ではない。「差し支えなければ、“うちでいちばん必要”というのは?」「お兄ちゃんが、ぜんぜん家に帰ってこないんです」「研究で?」「研究で」「なるほど」「でも、お母さんが電話しても出ないです」「うわ、まずい」「だから今日は、私が行くことになりました」「ここまでは分かる」「私だと断りにくいので」「うわ、作戦だ!」井上がついに声を出して笑った。私は思わずマイクを握り直した。「つまりすみれちゃん、今日の服装は」「はい。“目立つ・断りにくい・ついでに撮られても平気”の三点を意識しました」「インタビューされる前提だったの!?」「ちょっとだけ」「ちょっとでそんな完成度ある!?」私はここで、ようやく全部がつながった。派手な上着は、遠くからでも見つけてもらうため。帽子とサングラスは長距離移動用。飛行機は“気持ちの乗り物”。籠は補給物資。そしてこの堂々とした受け答え。この子はただのおしゃれキッズではない。家族会議の末に送り込まれた、最年少の交渉担当者だったのだ。「ちなみに、お兄ちゃんは何の研究を?」「飛ぶやつです」「ざっくりしてるなあ」「でも生活は飛んでないです」「うまいこと言うなあ!」私は思わず膝を打った。そのとき、大学の建物から白衣の若い男性が出てきた。寝ぐせ。無精ひげ。やせ気味。いかにも何日も研究室にいた顔をしている。すみれちゃんがぱっと手を振った。「あ、お兄ちゃん」男性は私たちのカメラを見て固まった。次に、すみれちゃんを見て固まった。最後に、自分が完全に終わったことを悟った顔になった。「……なんでテレビみたいなの連れてきてるの」すみれちゃんは胸を張った。「連れてきたんじゃないよ。ついてきたの」私はすかさずマイクを向けた。「突然すみません、妹さんのファッションについて一言お願いします」「いやそこ!?」「かなり注目を集めてますが」「でしょうね! うちの妹、昔から勝ち方が派手なんですよ!」私は吹き出した。お兄ちゃんは観念したように籠を受け取る。中を見て、少しだけ顔がやわらいだ。「……パンに野菜に、カップ焼きそば。母さんか」「あと花」「なんで花?」「部屋が終わってるから」「反論できない」すみれちゃんは小さな紙をポーチから取り出し、お兄ちゃんに渡した。お兄ちゃんが読んだ瞬間、顔が引きつる。「なにそれ」と私が聞くと、すみれちゃんが代わりに答えた。「今日いっしょに帰らなかったら、次はお母さんが来るって」「最終兵器だ」「はい」「すみれちゃんは先遣隊?」「はい。私は穏便担当です」「穏便でこの目立ち方!?」そのとき、お兄ちゃんがぼそっと言った。「……帰るよ」すみれちゃんは満足そうにうなずいた。私は思わず拍手した。井上なんて、カメラを回しながら「交渉成立です!」と叫んでいる。そして私は、番組の締めとして最後の質問をした。「すみれちゃん。今日のファッションをひと言で表すと?」すみれちゃんは少し考えて、木の飛行機を掲げた。「“絶対に取り逃がさない兄回収コーデ”です」私はマイクを落としかけた。帰り際、お兄ちゃんは恥ずかしそうに私へ言った。「すみません、お騒がせしました」私は首を振った。「いえ、こちらこそ最高でした。最後にひとつだけ。妹さん、普段からこんな感じなんですか?」お兄ちゃんは遠い目をして答えた。「いえ。今日はまだ地味なほうです」私は反射的に聞き返した。「え、今日で!?」するとすみれちゃんがにこっと笑って、ポーチからもう一枚紙を出した。そこには次回予告のように、太い字でこう書かれていた。『兄が来週も帰らなかった場合、祖母を投入します』私はその紙を見て、思わずカメラの外で叫んだ。「待って、その家のキャスティング会議、強すぎるだろ!」おわりこれ、テイク2なんだけど、ちょっと長いよね。
2026.04.12
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今日はいい天気だね。昨日調子悪くなっていた人たちは今日はよくなっているのだろうか?今日は夕方から出かけるので早めに更新です。昨日やってた作業が、あとから考えたらイマイチだったので、半分までやったんだけど、もう一回やり直すことにしよう。と思いました。今日かやらないんだけどね。今日は何の日メートル法公布記念日中央線開業記念日ガッツポーズの日しっかりいい朝食の日しっかりいい髪の日ロールちゃんの日めんの日VSOP運動の日ダブルソフトの日おかあちゃん同盟の日春の全国交通安全運動高級食パン文化月間今日は昨日に比べたら少ないね。しかも半分以上は毎月とか何回もあるやつなので使ってないし。タイトル:窓際の作戦会議日曜の朝、美咲は駅前のカフェの窓際席に座っていた。テーブルにはモーニングプレート、コーヒー、開いたノート、そして丸いメジャー。外をオレンジ色の電車が通るたび、彼女はちらりと窓の外を見て、またテーブルの上に目を戻した。店員の青年は、さっきから少し気になっていた。彼女は食事を楽しんでいるように見えるのに、どこか落ち着かない。ノートには何かを書いては消し、書いては消し。しかも、ときどきメジャーを伸ばしては、パンの長さや皿の幅を測っている。ただの変わった客、で片づけるには、表情が妙に真剣だった。青年が水を注ぎに行くと、美咲はすぐにメジャーを引っ込めた。隠すような手つきだった。「何か、準備中ですか?」美咲は少しだけ笑って、答えをごまかした。「ええ、そんなところです」それだけ言って、また窓の外を見る。ちょうど電車が駅に滑り込んできた。美咲はそのタイミングを見計らっていたように、腕時計を見て、ノートに何か書き込んだ。青年はますます気になった。準備中。時間を確認。窓の外の電車。メジャー。何をするつもりなんだろう。隣の席の老夫婦も、なんとなく彼女を気にしていた。奥さんが小声で言う。「何かの取材かしら」「いや、鉄道関係じゃないか。車両の見え方でも調べてるのかも」「でもパンを測ってたわよ」「パンを基準にしてるのかもしれん」基準がパン、という新説が出たところで、また電車が通った。美咲はすっと顔を上げ、窓の外を見つめた。数秒してから、今度はカップを持ち上げるふりをしながら、さりげなく外を確認する。完全に、何かを待っている。青年はカウンターの中で勝手に推理を始めた。駅で誰かと落ち合うのではないか。いや、待ち合わせならこんなに細かく測らない。となると、相手に見つからないようにタイミングを計っている?まさか、ドラマみたいに、ここから誰かを尾行するつもりでは。そう思うと、ノートに何度も書き直しているのも作戦メモに見えてきた。皿の位置、カップの位置、窓までの距離。身を隠しながら、最も自然に外を見られる角度を計算しているのかもしれない。青年は急に、この平和なモーニングセットが秘密任務の現場に見えてきた。やがて美咲は、意を決したように深呼吸した。そして、丸いメジャーを手に取ると、テーブルの端から自分の席の背もたれまでを測り、ノートに大きく数字を書いた。その瞬間、老夫婦のおじいさんがぽつりと言った。「間違いない。あれは受け渡し場所の確認だ」奥さんが小さく息をのむ。青年は止めようか迷ったが、止めたら何かに巻き込まれる気もして、見守ることにした。美咲は最後の一口を食べ、ナプキンで口元を押さえ、窓の外を見た。また電車が来る。オレンジの車体が近づいてくる。彼女はカバンからスマホを出し、カメラを起動した。全員の緊張が、少しだけ高まる。――やっぱり誰かを撮る気だ。青年はそう思った。電車が窓の前を横切る。その瞬間、美咲は立ち上がりもせず、座ったまま、皿の横に置いたメジャーをすっと持ち上げ、スマホを構えた。カシャッ。そして彼女は、ノートをぱたんと閉じて、晴れやかな顔で立ち上がった。会計のとき、青年はとうとう聞いた。「すみません。差し支えなければ、何をされてたんですか?」美咲は、やり切った人の顔で答えた。「毎週やってるんです。ここ、九時十二分の電車がちょうど窓の後ろを通るでしょう? その瞬間に撮ると、朝ごはんがすごく素敵に見えるんです」「……写真のために、ですか?」「はい。今日は完璧でした。パンの位置も、コーヒーカップの角度も、電車との距離感も。前回はメジャーを忘れて、トーストがちょっと左に寄っちゃって」青年は思わず聞き返した。「前回って……何のためにそこまで?」美咲はスマホの画面を見せた。そこには、今日のモーニングと窓の外の電車が、たしかに妙におしゃれに写っていた。やわらかな朝の光、笑顔、整った皿、走り抜けるオレンジの車体。雑誌の一ページみたいだった。そして画面の上には、投稿文の下書きが見えた。『#奇跡の通勤映え朝食 #中央線見え席ガチ勢 #今日も自然体です』青年が黙っていると、美咲は少しだけ照れくさそうに笑った。「“自然な朝の一枚”って、いちばん準備がいるんですよ」店を出たあと、彼女は駅へ向かわず、店の外で立ち止まり、投稿された自分の写真に満足そうにうなずいた。その完璧に自然な一枚のために使った道具が、メジャーだったということだけは、たぶんフォロワーは一生知らない。おわり今月は予定がなかったはずなのに、気がつけば毎週なんか予定が入ってる。やっぱりね、四月だから、いろいろあるよね。
2026.04.11
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今日は朝から仕事に行ってました。今日もこの時間になると眠い。今日は何の日女性の日(婦人の日・婦人参政記念日)建具の日インテリアを考える日駅弁の日瀬戸大橋開通記念日四万十の日ヨットの日教科書の日ステンレスボトルの日仕入れの日ヨード卵の日辛ラーメンの日愛知の新たまねぎの日酒盗の日ピークシフトデー笛吹市桃源郷の日シートの日しろえびせんべいの日社長の日スポーツシートの日酔い止めの日月のうさぎの日フォトの日お弁当始めの日ほうとうの日フォントの日ACアダプターの日100の日きょうだいの日(シブリングデー)よいトマトの日ジルコニウムの日四万十鶏の日フォトフェイシャルの日タネの日フィードフォワードの日みんな大好き!シーフードサラダの日ポメチワ ありがとうの日交通事故死ゼロを目指す日東金(とうがね)の日モンストの日糖化の日パンケーキの日アメリカンフライドポテトの日バイナリーオプションの日コッペパンの日Windows 10 の日スカイプロポーズの日サガミ満天そばの日キャッシュレスの日金毘羅の縁日春の全国交通安全運動高級食パン文化月間今日はめっちゃ多いね。タイトル:船上、設計中、犬は見ていた その朝、真琴は「今日こそ決める」と決めていた。 川の上に浮かぶ小さな船室で、古びた木の机に図面を広げ、窓の向こうの橋を見つめる。ノートには何本もの線。部屋には小さなベッド、棚の上のうさぎの人形、カメラ、弁当、トマト、そして足元には、なぜか人間以上に落ち着き払った顔をした小型犬のポン助。 真琴は三十二歳。建築を学び、街の設計事務所で五年働き、今は辞めている。 辞めた理由は簡単だった。「もっと自由な家をつくりたい」と言ったら、上司に「自由な家って何だ」と聞かれ、自分でもうまく答えられなかったからだ。 それで彼女は、答えを探すために船で暮らし始めた。 狭い。 揺れる。 冬は寒い。 夏は蒸す。 犬はたまに勝手に枕を使う。 でも、朝の光が窓から斜めに差し込む感じや、水面の反射が天井に揺れる感じや、「ここが今、自分の世界の全部です」と言い切れてしまう感じは、たしかに好きだった。「家って、壁の大きさじゃないんだよなあ……」 真琴はそうつぶやいて、弁当の卵を半分食べた。 ポン助がじっと見上げてくる。「だめ。これは人間の朝ごはん」 ポン助は傷ついたような顔をしたあと、五秒で立ち直った。 真琴が今考えているのは、“どこにでも停泊できる極小住宅”だった。 六畳以下。 小さなキッチン。 寝床。 机。 収納。 犬一匹まで可。 できれば橋の見える窓つき。 都会で家賃に追われる若い人、店を始めたい人、身軽に働きたい人。そんな人たちが「仮住まい」ではなく、「ちゃんと自分の城だ」と思える場所をつくれないか。 それが、今の真琴の夢だった。 しかし夢には、だいたい現実がついてくる。 電話が鳴った。母からだ。「もしもし、元気?」「元気」「ちゃんと食べてる?」「食べてる」「ちゃんと働いてる?」「考えてる」「それは働いてるの?」「広い意味では」「狭い船に住んでるくせに?」 真琴は黙った。 母は昔から、こういう一言だけ異様に切れる。「で、今日は何してるの」「家の図面ひいてる」「どこの家?」「まだ、どこでもない家」「また始まった」「いいの。これはそのうち、すごいことになるから」「前も“すごいことになる”って言って梅酒を漬けて、瓶を爆発させたじゃない」「あれは発酵の勢いがすごかっただけ」 電話を切ったあと、真琴はしばらく橋を見ていた。 向こう岸とこちら岸をつなぐ、長くて静かな線。「橋っていいな。家もこういうものかも」 場所と場所をつなぐだけじゃない。昨日の自分と明日の自分をつなぐもの。ひとりでいる時間と、誰かと笑う時間をつなぐもの。 その瞬間、真琴はひらめいた。「そうか、家を売るんじゃない。始め方を売ればいいんだ」 いきなり勢いづいた彼女は、ノートをめくり、ページの上に大きく書いた。 “はじめるための家” 家具つき。 最小限。 移動可。 小商い対応。 住居兼仕事場。 犬歓迎。「これだ……!」 思わず立ち上がり、机に膝をぶつけた。「痛っ!」 ポン助だけが「なるほど」という顔をした。 真琴はカメラを手に取り、船室の写真を何枚も撮った。 朝の光。 机。 ベッド。 棚。 窓。 犬。 犬。 犬。 気づけばポン助の写真ばかりだったが、それもまあいい。今どきはそういうほうが人の心をつかむ。 彼女はその日のうちに、知人の編集者、工務店の友人、古道具屋の店主、犬好きの税理士にメッセージを送りまくった。「小さな船暮らしから始める住宅企画、どう思う?」 返事は早かった。 編集者「面白い」 工務店「やれるかも」 古道具屋「家具入れたい」 税理士「面白いけど採算は変」 母「先に就職しなさい」 翌週、小さな内覧会をすることになった。 真琴は船を片づけ、クッションを直し、トマトを新しいものに替え、棚の上のうさぎの位置まで整えた。 ポン助の首輪も少しきれいなものにした。 当日。 最初に来たのは、カフェをやりたい夫婦。 二組目は、画家を目指す大学生。 三組目は、都会を離れて暮らしたい会社員。 みんな、真琴の話を目を輝かせて聞いた。「狭いけど、不思議と窮屈じゃないですね」「窓がいい」「仕事も生活も、たしかに始められそう」「犬がいるのもいい」 そのたび真琴の胸は熱くなった。 いける。これは、ほんとうにいけるかもしれない。 最後に、一人の年配の男性がやってきた。 無口で、船室をじっと見回し、図面を見て、窓の外の橋を見て、それから足元のポン助を見た。「……なるほど」 その一言だけで、妙に重みがあった。「こういう家、どう思われますか」 真琴が尋ねると、男性はゆっくりうなずいた。「悪くない。いや、かなりいい」「本当ですか?」「ええ。ひとつだけ、非常に重要な点が抜けています」「えっ」 真琴は息をのんだ。構造か。断熱か。排水か。法規か。 男性は、しゃがみこんでポン助をなでた。「この企画の主役は、完全にこの犬です」 真琴は固まった。「……はい?」「窓辺の暮らし、木の質感、橋の景色、小さな弁当。全部いい。でも最後に人の心を持っていくのは、この犬です」「いや、これは住宅企画で」「違います。これは犬が“ていねいな暮らしをしている人間を飼っている”物語です」「逆!」「写真集にしましょう。タイトルは『船上の犬、たまに建築』」「なんでですか!」 その場にいた全員が笑った。 笑いながらも、誰も反論しなかった。 というより、できなかった。 なぜなら、ポン助がその完璧なタイミングで、机の下からひょいと顔を出し、まるで自分がこの船のオーナーであるかのような微笑みを浮かべたからである。 結局、その企画の最初のバズは住宅雑誌ではなく、SNSだった。 投稿された写真にはこう書かれていた。 「建築家と暮らす犬の、理想のワンルーム」 いいねは十万を超えた。 コメント欄には、「犬が社長の顔してる」「この人、たぶん犬の秘書」「設計してるの絶対犬」 と並び、 真琴の新しい事業アカウントのプロフィールには、いつのまにかこう追記されていた。 代表:真琴 実質オーナー:ポン助 その日の夕方、母から電話が来た。「見たわよ」「何を」「あなたの会社」「まだ会社じゃないよ」「でも犬が社長なんでしょ?」「ちがう」「就職しなくてよかったわね」「なんで」「社長の器、あんたにはまだ早そうだから」 真琴は反論しようとしたが、足元を見ると、ポン助が誇らしげに胸を張っていた。 そして真琴の描きかけの図面の上に、静かに前足を置いた。 その形は、たまたまではあったが、 新企画のロゴにちょうどよかった。おわり画像がもう一枚出て来たので、これでもお話を書いてもらいました。タイトル:非常食より非常識夕方、川の水位が上がっていることには気づいていた。けれど真由は、「まだ大丈夫」と思いながら、船室のテーブルで改装用のスケッチを描いていた。古い船を小さな移動式カフェに変える。その夢の第一歩として、今日は内装の寸法を測って、持ってきた弁当を食べて、犬のポン太にだけはちゃんと景色を見せてやろうと思っていた。ところが、夢中になるというのは怖い。橋の向こうの空が灰色ににじみ、川面がじわじわ窓のすぐ下まで迫っていたのに、真由が気づいたのは足元が妙に冷たいと感じたときだった。「……え?」床を見ると、うっすら水が張っている。ポン太はすでに避難を開始していて、毛布の上にちょこんと座り、こちらを見上げていた。顔は完全に「やっと気づいた?」である。真由は立ち上がった。が、立った瞬間に船がぐらりと傾き、弁当箱がすいーっと水面を滑っていった。トマトが二つ、ころん、と転がる。保温ボトルは妙に落ち着いた顔で直立したまま浮いている。テーブルの上の辛ラーメンだけが、なぜか今この瞬間に最も存在感を放っていた。「いや、待って待って待って、こういうのって映画の中だけじゃないの?」真由はスケッチブックを抱え、カメラを首から提げたまま窓の外を見た。岸までは微妙に遠い。飛び込めなくはない。でも、飛び込んだら負けな気がする。何に負けるのかはわからないが、とにかく負けだ。ポン太は小さく「ワン」と鳴いた。真由にはそれが、「人類、判断が遅い」と聞こえた。そのとき、船室のドアが外からガタガタと鳴った。誰かいる。助かった、と真由は叫んだ。「すみませーん! 中、水入ってます!」扉が開き、オレンジ色のライフジャケットを着た男が顔を出した。消防か救助隊かと思ったが、ヘルメットには大きくこう書かれていた。市観光課 ロケ支援班「大丈夫ですか!」「た、多分!」「よかった! エキストラの方ですよね?」「は?」「今日の防災啓発ポスター撮影、“増水時に船内でのんきに弁当を食べている人”役の!」「違います!」男は一瞬だけ気まずそうな顔をしたが、すぐに後ろを振り向いて叫んだ。「すみません監督ー! 本物でした!」次の瞬間、外から拍手が起きた。真由が岸に避難すると、そこにはカメラマン、照明スタッフ、メイク担当、なぜか着ぐるみのカッパまでいた。全員、真由を見て感心しきりだった。「いやあ、自然な表情でした」「犬もすごくいい芝居してましたね」「辛ラーメンの位置、完璧でした」ポン太は誇らしげに尻尾を振っていた。どうやら彼だけは最初から状況を理解していたらしい。数日後、真由は町中の掲示板で自分の顔を見ることになる。『増水時、船でくつろがないでください。』その横でポン太は、なぜか名前入りでこう紹介されていた。危機管理意識モデル犬 ポン太真由の名前は、どこにも載っていなかった。おわり
2026.04.10
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今日は休みだった。懸念事項があったので、それが心配だったけど、何とかなったようでとりあえずよかった。先週のダメージがだいたい抜けてきた。だけど、眠さは残ってる。眠いけど昼寝ができない。今日はいい天気。暖かくて日中は外出するときには上着いらないね。でも暗くなると寒いよ。今日は何の日大仏の日・大仏開眼の日反核燃の日美術展の日食と野菜ソムリエの日子宮頸がんを予防する日よいPマンの日フォークソングの日鍼灸の日左官の日丸亀市×サン・セバスティアン市「チャコリの日」予祝の日愛情仕送りの日クレープの日パソコン検定の日えのすいクラゲの日吉里吉里忌春の全国交通安全運動高級食パン文化月間なんかGeminiの仕様変わった?タイトル:大仏、チャコリ、そして春の予祝会議山あいの古い寺で、その年いちばん妙な祭りが開かれた。きっかけは、住職が貼り出した一枚の手書き告知だった。「大仏開眼の祝い、美術展、野菜の供養、鍼灸の奉納、左官の実演、春の歌会、国際交流、そして予祝を、ぜんぶまとめてやる」誰も意味はわからなかったが、とにかく寺の人たちは「春だしね」で納得した。朝から境内は大忙しだった。若い女性は灯籠を持って石段を照らし、絵描きたちは桜の下で写生を始め、僧たちは山盛りの野菜を供え、なぜかギターを抱えた男は「フォークソング奉納です」と言って勝手に歌い始めた。左官職人は寺の壁を塗り直していたが、途中から筆を持って絵まで描き始め、「今日は境界がない日なんで」とよくわからないことを言った。昼前になると、さらに謎の一団が現れた。樽を囲み、異国の旗を立て、「今日はチャコリの日でもあります」と乾杯を始めたのである。寺の者は誰ひとりチャコリが何なのかわからなかったが、これもまた「春だしね」で片づけられた。そんな中、いちばん目立っていたのは石段を運ばれてくる小さな大仏だった。古びた木枠に載せられ、職人たちが「よいしょ、よいしょ」と慎重に担いでいる。村では百年ぶりの修復で、今日ようやく本堂に戻される予定だった。ところが石段の途中で、先頭を歩いていた歌う男が張り切りすぎた。「♪春よ来い、運も来い、ついでに客足も来い〜」その瞬間、担ぎ手のひとりが笑って足を滑らせた。「あっ」全員の顔色が変わる。大仏が、ぐらりと傾いた。「支えろーっ!」「縁起でもない!」「予祝どころじゃない!」叫び声の中、一人の少女がすっと前に出た。灯籠を掲げていた、あの子だ。彼女は大仏を見上げ、はっきりと言った。「大丈夫。もう祝ったから」意味不明だった。だが次の瞬間、信じられないことが起きた。傾いた大仏は、石段の角でぴたりと止まり、まるで自分で座り直したみたいに、すとん、と安定したのである。場が静まり返る。「……今、見た?」「見た」「座り直したよな?」「座り直した」住職はふるえながら少女に聞いた。「きみ、いったい何をしたんだね」少女はきょとんとして答えた。「予祝です。先に『うまくいったことにして』喜んでおくと、だいたいそうなるって、おばあちゃんが」一同は顔を見合わせた。たしかに今日は朝から、成功した前提で祝っていた。供え物も、歌も、絵も、乾杯も、全部「うまくいった未来」を先に迎えにいくためのものだったらしい。理屈はわからないが、結果として大仏は無事だった。そこで住職は深くうなずき、厳かに宣言した。「よし。今年からこれを寺の正式行事とする」「名前は?」「春の全部盛り祭り」「雑だなあ」と何人かが思ったが、もう誰も止めなかった。夕方、祭りは最高潮を迎えた。絵は並び、壁は美しく塗られ、野菜は炊き出しになり、歌は妙に盛り上がり、異国の客たちはすっかり村人と肩を組んでいた。背中に鍼の跡がある青年まで「なんか軽いです」と笑っている。寺はこれまでにないほど賑やかだった。そして最後、本堂の前で修復された大仏のお披露目が行われた。みんなが息をのんで見守る中、覆い布が外される。そこに現れた大仏は――思ったより、かなり小さかった。静寂。村人の一人がぽつりと言った。「……あれ?」別の一人が続けた。「運んでる途中で気づかなかったけど」絵描きも言った。「これ、台座が立派すぎて、遠目だと大きく見えてただけでは?」住職は青ざめ、修復帳簿をめくった。そして震える声で読み上げた。「すまん。わし、“大仏”じゃなくて“中仏”の欄を読んで手配しておった」一拍おいて、境内が爆笑に包まれた。担いでいた職人は膝を叩いて笑い、ギターの男は「だから軽かったのか!」と歌い出し、チャコリ組は「乾杯の理由が増えた!」とまた杯を上げた。少女だけが満足そうにうなずいていた。「ほら、うまくいったでしょ」住職は笑いながら頭を抱えた。「たしかに壊れず戻ってきた。祭りも大成功だ。だが、わしらが一日かけて大騒ぎして運んだのは、村じゅうが思ってたよりずいぶん小さい仏さまだったわけだな」少女は灯籠を揺らして、にこっと笑った。「でも、笑って終われたから、大仏より大成功です」その年から寺の春祭りは本当に名物になった。ただし翌年から告知には、こう大きく書かれるようになった。「仏像のサイズは事前に確認します」おわり眠いわ。
2026.04.09
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世の中さ、うまく行ってるときはなんでもうまく行くと思っちゃうんだけど、実際はそうでもない。なかなかな上手くいかないのが人生なんだ。で、うまく行かなかった後どうするか。それが問題だ。今日も眠い。そして暗くなると寒い。今日は何の日灌仏会・花祭り参考書の日タイヤの日ヴィーナスの日忠犬ハチ公の日世界ロマの日指圧の日出発の日シンハービールの日シワ対策の日炭酸水の日ロータスデー森町(しんまち)の日美容鍼灸の日貝の日白肌の日芝の日小ネタの日ベビーリーフ記念日シーバの日清流の日・小川の日ホヤの日シャボン(せっけん)の香りの日木曽路「すきやきの日」ドモホルンリンクル「しわキレイ」の日柴犬とおっさんの日おからの日高級食パン文化の日Get Wildの日柴犬 ありがとうの日折り紙供養の日信州地酒で乾杯の日歯ブラシ交換デーホールケーキの日スッキリ美腸の日果物の日生パスタの日モンテール・スイーツの日虚子忌薬師縁日春の全国交通安全運動高級食パン文化月間タイトル:しあわせ係の重要任務 ぼくの仕事は、朝九時に起きて、家の見回りをして、おじいさんのひざをあたためることだ。正式な役職名はたぶんない。でも、この家ではぼくがいちばん忙しい。 おじいさんは毎日、窓ぎわの長い椅子に座る。本棚に囲まれたこの場所は、おじいさんの「書斎」と呼ばれているが、ぼくに言わせれば「なでてもらえる確率が最も高い席」だ。雨の日は特にいい。外の音がやわらかくなって、おじいさんの手も、いつもよりゆっくり動く。 その日も、雨だった。 おじいさんは片手に小さな透明のびんを持っていた。中で水が少しだけ揺れている。人間はあれを飲むらしい。ぼくは一度においをかいだことがあるが、まったく面白くなかった。肉の気配ゼロ。湯気ゼロ。夢ゼロだ。「今日も頼むなあ」 おじいさんがそう言って、ぼくの首のあたりをくしゃりとなでた。任務開始の合図である。ぼくは胸を張って目を細めた。ここで大事なのは、気持ちよさそうな顔をすることだ。するとおじいさんは安心して、少し笑う。その笑顔を見るまでが、ぼくの仕事。 けれど最近、おじいさんには妙な癖があった。 紙で鳥を折るのだ。 机の上には色とりどりの小さな鳥が何羽も並んでいる。赤、青、黄色。あれは食べられないし、飛ばないし、吠えもしない。なのにおじいさんは、ときどき本を読む手を止めて、じっとその鳥たちを見る。ぼくにはわからない。飛べない鳥を見つめて、何が楽しいのだろう。 ある日、ついに聞いてみた。 もちろん犬語でだ。「わふ?」 訳すと、「あれは何の群れですか」である。 おじいさんはうなずいて、まるで通じたみたいに言った。「これはな、手紙だよ」 手紙。 ぼくは耳をぴくりと立てた。知っている。手紙とは、郵便屋さんが持ってきて、おじいさんが読んだあと、ぼくにはくれない紙のことだ。「昔はな、伝えたいことがあっても、すぐには届かなかったんだ」 おじいさんはそう言って、一羽の青い鳥をつまんだ。「だから、せめて飛んでいく形にしてみたくなるんだろうな」 なるほど。つまり、おじいさんは飛べないくせに、紙に飛ぶふりをさせて満足しているらしい。人間というのは、なかなか切ない生きものだ。 ぼくは少しだけ同情して、その日はいつもより長くひざの上にいてやった。 それから数日後、事件が起きた。 昼すぎ、おじいさんが急に立ち上がり、本棚の前を行ったり来たりし始めたのだ。落ち着かない足音。これはただごとではない。ぼくはすぐに椅子から飛び降り、非常事態の顔をした。「ないなあ……どこ行ったかなあ……」 おじいさんは机の上を見て、窓辺を見て、また机を見る。 ぼくは鼻をひくつかせた。失せもの捜索だ。これは得意分野である。ぼくは床をくんくん嗅ぎ、椅子の下を確認し、カーテンの裏も念入りに調べた。だが骨はない。おやつもない。靴下もない。代わりに、ほんの少しだけ、おじいさんの困ったにおいがした。「最後の一羽だったのになあ」 最後の一羽。 ぼくはぴんときた。紙の鳥だ。 おじいさんは小さく息をついた。「これ、今日あの子が来たら渡そうと思ってたんだけどな」 あの子。 その単語を聞いて、ぼくのしっぽが止まった。あの子とはたぶん、月に一度くらい来る、やさしい匂いの女の人だ。来ると必ずぼくの頭を両手で包んで、「相変わらずいい顔してるねえ」と言う。見る目がある。 おじいさんは、その人のために鳥を折っていたのか。 ぼくは急に、この任務の重大さを理解した。これは単なる紙ではない。人間の、うまく飛べない気持ちそのものだ。 ぼくは再び鼻を使った。紙の匂い。指先の匂い。少しだけインク。少しだけ雨。追っていくと、その匂いは、おじいさんの膝、机の角、そして――ぼくの寝床のあたりへ続いていた。 まさかと思って、自分の毛布を前足でめくる。 あった。 ぺしゃんこになった黄色い鳥が。 しかも、くちばしの部分がほんの少し噛まれている。 ……まずい。 すごくまずい。 思い出した。昨夜、夢の中で郵便屋さんを追いかけていて、なにか口にくわえて走った気がする。あれか。あれだったのか。 ぼくは鳥をくわえ、おじいさんのもとへそっと運んだ。 おじいさんは一瞬、目を丸くした。次に、鳥を見た。さらに、ぼくを見た。「おまえか」 その言い方は怒っているようで、でも少し笑っていた。ずるい。そういう笑い方をされると、こちらも耳を倒して反省するしかない。 おじいさんはぺしゃんこの鳥をていねいに開き、しわを伸ばした。完全には戻らなかった。黄色い羽には、くっきりとぼくの歯形が残っている。「困ったなあ。これじゃ渡せないか」 ぼくは床にふせて、深くうなだれた。しあわせ係、痛恨の失態である。今月の評価査定に響くかもしれない。 そのとき、玄関のベルが鳴った。 あの子だ。 おじいさんは鳥を持ったまま、ゆっくり玄関へ向かった。ぼくもついていく。こういうときは現場に立ち会うのが礼儀だ。 戸が開くと、いつものやさしい匂いがした。「こんにちは。雨、大丈夫だった?」「うん、なんとかね」 少し世間話をして、それからおじいさんは例の鳥を差し出した。「あのな、本当はもうちょっときれいだったんだけど」 女の人は受け取って、目をぱちぱちさせた。「……これ、折ってくれたの?」「うん。最後に一羽だけ残ってて、今日渡そうと思ってたんだけど、うちの共犯者がちょっと手を加えてな」 おじいさんがぼくを見る。 女の人もぼくを見る。 ぼくは反射的に、いちばん反省している顔をした。 すると女の人は、急に吹き出した。「なにこれ、かわいすぎる。歯形ついてるじゃない」「だろう」「むしろこっちのほうがいいよ。おじいちゃんだけじゃなくて、この子の気持ちまで届いた感じする」 おじいさんは、そこで少し照れたように笑った。 ぼくは耳を立てた。 え、いいのか。噛んだのに。失敗だったのに。人間の世界では、そういうことがあるのか。きれいにできたものより、ちょっと壊れたもののほうが、ちゃんと伝わることが。 女の人はしゃがんで、ぼくの頭をなでた。「ありがとね。届けてくれて」 ちがう。ぼくは隠していた側だ。正確には、いったん奪って、ぺしゃんこにしてから、しぶしぶ返却しただけである。 でも人間は、ときどき都合よく話をまとめる。たぶんそれも、飛べない気持ちを飛ばすための技術なのだろう。 その夜、おじいさんはいつもより長くぼくをなでた。「おまえ、案外たいしたもんだな」 ちがう、と言おうとして、やめた。 しあわせ係に必要なのは、事実より結果だ。おじいさんが笑って、あの子も笑った。それなら任務は成功でいい。 ……ただし翌日、机の上に新しく置かれた札を見たとき、ぼくは少しだけ納得がいかなかった。 そこには達筆で、こう書かれていた。『紙もの注意 柴犬立入厳禁』 ぼくはその札をじっと見つめ、それから静かに、おじいさんのスリッパだけを片方くわえて運んだ。おわり戦争の関係で株価が上がってる。ウハウハだね。今はいつ売るのがいいのか。ってところなんだけど。喜んでばっかりというわけにもいかない。というのが今日の出来事。
2026.04.08
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今日は雨。寒い。そしてまだ腰が痛い。朝は昨日より痛い気がしたけど、今の時間になると少し楽になってる気もする。週末までには治るかな。地図係は、だいたい合ってる市立郷土資料室の臨時職員、真鍋しおりの仕事は、古い地図や記録を整理することだった。地味で静かで、誰にも邪魔されない。本人はそれを天職だと思っていたし、実際、書架の並びが三ミリずれているだけで気づくくらいには向いていた。 その日もしおりは、古い地誌と明治期の地図を見比べながら、「この川、昔はこっちを流れてたんだ」と小さくうなずいていた。誰に聞かせるでもない独り言だったが、資料室ではそういう独り言がよく似合った。 窓から午後の光が差し込み、部屋はやけに穏やかだった。あまりに穏やかすぎて、逆に何か起きそうな気さえした。すると、カウンターの呼び鈴がちりんと鳴った。見れば、見慣れない老人が立っていた。帽子をかぶり、杖を持ち、なぜか世界地図を小脇に抱えている。 「すみません、この町の“失われた駅”を探してるんですがね」 しおりは顔を上げた。「失われた駅、ですか」 「昔は確かにあった。でも今は誰も知らん。地図から消えてる」 そう言って老人は、古びた紙を差し出した。そこには確かに、現在の路線図にはない小さな駅名が書かれていた。墨がにじみ、読みづらいが、たしかにある。しおりの目が少しだけ輝いた。こういう話に弱いのだ。 彼女はすぐに書架から町史、鉄道年表、廃線記録、地形図を引っぱり出した。調べれば調べるほど、その駅は妙だった。昭和二十八年の観光案内には載っているのに、翌年の資料では何事もなかったように消えている。住民名簿にも、駅前商店街の記録だけが残っていた。駅が消えたのか、町が忘れたのか、それとも最初から誰かの書き間違いだったのか。 「面白いですね」 しおりは久しぶりに仕事中の声量を一段階上げた。老人は満足そうにうなずいた。 二人は夕方まで資料をあさり、ついに一枚の航空写真を見つけた。雑木林の脇、今は何もない場所に、たしかに小さなホームのような影が写っている。しおりは思わず立ち上がった。「あった!」 老人も杖を鳴らして喜んだ。「やっぱりなあ。わしの記憶違いじゃなかった」 しおりは勢いで、その場で館長に報告した。館長は老眼鏡を上げ下げしながら写真を見て、「これは展示になるぞ」と言った。翌週には『幻の駅、発見か』という小さな館内掲示が出され、地元紙の記者までやって来た。しおりは急に資料室のヒーローになった。取材では緊張して「はい」と「おそらく」しか言えなかったが、それでも町の人たちは「すごいねえ」「先生みたいだねえ」と褒めてくれた。 そして展示初日、例の老人も来るはずだった。ところが開館時間を過ぎても姿を見せない。しおりは少し気になったが、受付は「そういう昔話の人って、ふっと現れてふっと消えるものでしょ」と適当なことを言った。 そのとき、展示を見ていた小学生の男の子が、掲示された航空写真を指さして言った。 「ねえ、お母さん、ここ“駅”じゃなくて“相撲の土俵”じゃない?」 しおりの背中が固まった。 周囲がざわつく。別の来館者が写真に顔を寄せた。「あ、たしかに丸いな」「ホームにしては変だね」「これ屋根じゃなくて俵っぽいぞ」 慌ててしおりは、老人が最初に持ってきた古い紙を見直した。駅名だと思っていた文字は、よく見ると駅ではなく「驛前角力大会」の一部だった。墨のにじみで、前後がちぎれていただけだったのである。失われた駅ではなく、失われた町内相撲大会だった。 しかもその瞬間、受付の職員が奥から声を上げた。 「真鍋さん! このあいだ来たおじいさんの忘れ物です!」 渡されたのは、あの老人の帽子ではなく、一枚の診察券だった。名前の欄にはこう書いてあった。 『真鍋 栄一』 しおりはまじまじとそれを見た。祖父の名前だった。しかも裏には、祖父の字でこうメモがある。 『しおりへ 地図はたまに人をだます。でも、だまされる人間はもっと面白い』 受付が不思議そうに尋ねた。「知り合いですか?」 しおりはしばらく黙ってから、深く息を吐いた。 「たぶん、うちのじいちゃんです。十年前に亡くなってるんですけど」 その場にいた全員が静まり返った。 が、次の瞬間、受付の職員が診察券の発行日を見て言った。 「あ、でもこれ昨日の再発行ですね」 しおりは天井を見上げた。幽霊よりたちが悪い。生きてたのか、じいちゃん。しかもその日の夕方、祖父本人から電話がかかってきて第一声がこうだった。 「いやあ悪い悪い。相撲大会の話、駅の話にしたほうが食いつくと思って」 しおりは受話器を握りしめたまま、静かに答えた。 「じいちゃん、資料室出禁ね」 受話器の向こうで祖父は笑っていた。 「でも展示、客入ったべ?」 それだけは、ものすごく腹が立つほど正しかった。おわりこの話、たまたまAIが作った話なんだけど、この前会った人の話を何となく思い出すんだよね。
2026.04.07
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昨日の話、札幌の叙々苑で高級焼肉を食べてきました。そのあと、カラオケに行って11時半くらいまで歌って、真夜中、高速で帰ってきました。行くときは天気も良くて暖かかったんですが、峠越えの辺でちょっと寒くなって、札幌も風が冷たかったです。叙々苑は、さすが高級店という感じで、従業員もやっぱり違うなぁ。って感じの接客でした。お値段は、この量でこんなにするの?って感じでした。一緒に行った人は初めて会う人だと思ってたんだけど、話を聞いてるうちに、もしかしたら昔あったことがあるかもしれないという人でした。不思議な縁ですね。今日は何の日開発と平和のためのスポーツの国際デー城の日新聞をヨム日北極の日コンビーフの日白の日自然療法の日シールの日春巻きの日アバの日天塩 塩むすびの日事務の日さつま島美人の日養老渓谷の日マシュマロの日ソラコム・SIMの日あなたの進路を考える日「パネルクイズ アタック25」の日手巻きロールケーキの日メロンの日春の全国交通安全運動タイトル:非常食と極秘任務その朝、真理子はいつもより少しだけ早く新聞を束ね、机の上に封筒を置いた。蝋で封をした手紙、古い写真、コーンビーフの缶詰、そしてなぜか三角のおにぎり二つ。どれも同じ人物に届けるためのものだった。相手は三十年前に突然いなくなった父の親友・片桐。最近になって「雪が降る日に、新聞とコーンビーフを見れば思い出す」という妙な伝言だけが見つかったのだ。警察に相談しても笑われそうで、真理子は自力で“記憶を呼び起こすセット”を再現していたのである。古い写真には、派手な服を着た若者たちがぎこちないポーズで並んでいた。父も、その中にいた。机の前で深呼吸しながら、真理子は考える。父たちは昔、何をしていたのだろう。学生運動、秘密結社、駆け落ちの計画、あるいは売れないバンドか。そこへ玄関のチャイムが鳴った。開けると、白髪の男が立っていた。「片桐さん、ですか」「……新聞、コーンビーフ、おにぎり。やっぱり来たか」男は部屋に入るなり、写真を見て目を細めた。「ああ、若いな。これ、文化祭の時だ」「父のこと、知ってるんですね!」「もちろんだとも。あいつはベース担当、私はボーカルだった」真理子は息をのんだ。「やっぱりバンドだったんですね」「ああ。伝説の四人組さ」片桐はそう言って、しみじみとコーンビーフ缶を撫でた。「じゃあ、この品々には深い意味が?」「あるとも。新聞紙は、当時の防音材。コーンビーフは、金がない日の打ち上げ。おにぎりは、ライブ前の差し入れだ」「……その封筒は?」「ああ、それはたぶん」片桐は封をひっくり返し、小さく印字された文字を読んだ。「町内会費の未納のお知らせだね」真理子は固まった。父の極秘メッセージだと思っていたものは、母が“それっぽいから”一緒に渡してきただけの封筒だったのだ。しかも片桐は写真を見ながらさらに言った。「ちなみに“雪が降る日に、新聞とコーンビーフを見れば思い出す”って伝言ね」「はい」「あれ、たぶん記憶じゃない」片桐はおにぎりを一つ持ち上げ、懐かしそうに笑った。「大雪で店に閉じ込められた時、みんなで“新聞敷いてコーンビーフとおにぎり食ったら妙にうまかった”ってだけだ」真理子は三秒ほど黙り、それから肩を落として笑った。三十年越しの謎は、国家機密でも青春の暗号でもなく、ただの“雪の日のうまい飯”だった。すると片桐はもう一枚の写真を見つけ、急に目を見開いた。「あっ、でもこれは大発見だ」「え?」「君のお父さん、ライブ中ずっとベースのコード一本もつないでない」その瞬間、父の伝説は感動的に蘇るどころか、まさかの“エアベース担当”として確定した。おわり昨日の運転と、ずっと座っていたので今日は腰が痛いです。あと、カラオケでコーヒーを飲んだので、帰りの運転中に眠くはならなかったけど、帰って来てからも眠れず、今日はめちゃ眠いです。
2026.04.06
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この日記、日付は5日だけど、書いてるのは6日です。すいません。昨日は昼くらいから札幌に行って夜に帰ってきました。疲れました。山がきれいでした。
2026.04.05
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ホントは昨日行こうと思ったんだけど、今日行って、ついでに会社も行って、そのあとガソリンスタンドも行こうと思ったので、今日行ってきました。床屋ね。髪切った後、会社行ってちょっと書類作って、ガソリンスタンド寄って、で、ついでにコンビニ寄って、昼ごはん買って帰ってきました。床屋のおばさんがボケ始めてるのか、この前行ったときと同じ話をしていました。ガソリンスタンドは店長が変わったということで、新しい店長に名刺貰いました。前の人はどこ行ったんだろう?帰って来てからは映画見ようと思ったんだけど、面白そうだけど集中力が続かなく、第3話の途中で挫折しました。映画じゃなくて連続ドラマだったわ。タイトル:かんで、ひらめけ! その部屋には、どう見ても共通点のないものが集まっていた。 窓辺には「KOBE JAZZ」のレコード。棚には「Girls Rock」の古い雑誌。なぜか小さなブルドーザーの模型。机の上には、アンパンの箱と、歯のパンフレットと、米粉の袋と、よくわからない赤い豆の瓶。壁際では犬が、人生に疲れた税理士みたいな顔で眠っている。 そして部屋の真ん中では、青年が古いアップライトピアノを静かに弾いていた。 雨の日になると、彼は決まってこの曲を弾く。 決まって同じ時間に。 決まって、カーテンは半分だけ開ける。 理由は単純だった。 向かいのビルのネオン看板が、雨の日だけきれいに滲んで見えるからだ。 そのにじんだ光が、昔どこかで見た夢みたいで好きだった。 青年の名前は湊。 職業は、いちおう作曲家志望。 ただし現実には、作曲で食べているわけではない。 昼は歯科医院の受付で働き、夜はこの部屋で曲を書き、たまに頼まれて近所の子ども向けイベントに出すジングルを作る。要するに、履歴書に書くと少し説明が必要な人生だった。 今夜も彼は鍵盤をなぞりながら、ため息をついた。「だめだな……また“それっぽい曲”にしかならない」 犬が片目だけ開けた。 名前はベース。 胴が長いからという、安直で潔い理由で名づけられた。「おまえはいいよな。寝てるだけで味がある」 ベースは何も答えず、ただ鼻をひくつかせた。アンパンの匂いに反応しているだけだった。 湊は机の上の紙をめくった。 そこには新しい依頼のメモがある。『商店街合同イベント用テーマ曲』『明るく親しみやすく』『ちょっとジャズっぽく』『でもロック感も』『子どもにも人気が出そうで』『歯の健康も感じられるとなお良い』「無理だろ」 つい声に出た。 ジャズで、ロックで、子ども向けで、歯の健康。 さらにスポンサーの都合で、地元パン屋のアンパン要素も少し入れてほしい、と追記まである。「アンパン要素って何だよ……」 外では雨が強くなり、窓に細かい粒が走った。 向かいのビルの灯りが滲み、部屋全体が青紫色の水槽みたいになる。 そのときだった。 コンコン。 窓が鳴った。 湊は顔を上げた。十二階だ。人がノックできる高さではない。 気のせいかと思ったが、もう一度。 コンコン。「……え?」 窓の外に、小さな紙がぺたりと張りついていた。 雨に濡れながら、まるで誰かが外から押しつけたみたいに。 湊が窓を少し開けて取ると、それはメモ用紙だった。『そのままFからB♭mへ行くと重い。サビ前は一回、逃がして。』 湊は固まった。「誰?」 思わず外を見たが、そこにいるのは雨と、無関心そうなオフィスビルだけだった。 だがその助言は、めちゃくちゃ的確だった。 半信半疑で弾き直してみる。 なるほど。流れが急に自然になる。 さっきまで行き止まりだったメロディが、少し先へ進んだ。「……え、すご」 その夜からだった。 雨が降るたび、窓にメモが届くようになった。『二番Aメロ、歌詞を詰め込みすぎ。人はそんなに一息で真実を言えない。』『ベースライン、犬みたいにもう少し粘って。』『“キラキラ”を三回言うな。二回で十分。三回は雑。』『アンパン要素は比喩で処理しろ。』 言い方は少し腹が立つのに、毎回ぐうの音も出ないほど正しい。 湊はだんだん、その“窓の誰か”に心を許し始めた。 姿は見えない。名前も知らない。 でも、自分の曲をここまでちゃんと聴いてくれる相手なんて、いままでいなかった。 ある晩、湊はピアノを止めて、メモに返事を書いた。『あなた、誰ですか』 窓に貼って待つ。 数分後、新しい紙が現れた。『となりのビルの八階』 湊は目を細めて向かいを見た。 雨と灯りの向こう、たしかに一つだけ、まだ明かりのついている部屋があった。『どうやってメモを?』『企業秘密』『なんで手伝ってくれるんですか』 少し間があって、返事。『ひまだから』 湊は笑ってしまった。『こっちは人生がかかってるんですけど』『ひまな人間のほうが、わりと人の人生を救う』 その一文は、なぜだか妙に胸に残った。 それから二人は、雨の日だけ窓越しにやりとりするようになった。 メモのやりとりだけなのに、不思議なくらい会話が弾んだ。『今日は何してたんですか』『歯医者の受付』『似合わない』『失礼』『でも、似合わない人がやってる仕事のほうが、たぶん優しい』『あなたは何者なんですか』『相談員みたいなもの』『何の?』『いろいろ』 いろいろ、の中身は最後まで教えてくれなかった。 商店街のイベント曲は、完成した。 ジャズっぽくて、少しロックで、子どもにも覚えやすく、なぜかサビに歯みがきを連想させる小気味よさまである。しかも二番の歌詞に、うまくアンパンが紛れ込んでいた。 奇跡みたいな曲だった。 イベント当日、曲は大好評だった。 商店街の人たちは笑顔で手をたたき、パン屋のおじさんは「アンパンの魂を感じた」とわけのわからない感想を述べ、歯科医院の院長は「虫歯予防啓発に革命が起きた」と泣いていた。 湊は帰り道、コンビニで少し高い缶コーヒーを買った。 今夜はきっと雨が降る。 ちゃんとお礼を言おう。そう思った。 だが、部屋に戻っても、窓の向こうの明かりはつかなかった。 雨は降っている。 なのに、メモは来ない。 翌週も、その次の雨の日も、向かいの部屋は真っ暗だった。 湊は落ち着かなくなった。 名前も知らない相手なのに、いなくなったことだけが、はっきりわかった。 いてもたってもいられず、彼は向かいのビルへ向かった。 受付で事情を話すと、警備員は怪訝な顔をした。「八階の相談室ですか?」「はい。雨の日に明かりがついてた部屋です」「……ああ、“生活なんでも相談室”のことかな。でも、そこ先月で閉鎖しましたよ」「え?」 湊は間の抜けた声を出した。「担当の人、異動になってねえ。備品もだいたい撤収済みです」「そんな……いや、でも、雨の日にずっと……」「雨の日?」 警備員は首をかしげ、それから何か思い出したように笑った。「ああ、窓のとこに古い投函シュートが残ってたな。昔、書類を隣のビルに送るための設備で」「……は?」「隣のビル?」「このビルと、あなたのマンション。昔は管理が一緒でね。細いワイヤーでやりとりしてたらしいですよ。もう使ってないはずだけど」 湊は呆然とした。 つまり、あのメモは物理的には可能だった。 しかし問題はそこじゃない。「担当の人って、どんな人でした?」「えーと、たしか……年配の男性で、音楽好きだったかな。相談者に妙に厳しいけど人気があったって聞きましたよ。名前は……」 警備員が名簿を見て言ったその名前に、湊は目を見開いた。 それは、湊が子どものころに一度だけ会ったことのある、亡くなった祖父の名前だった。 ジャズが好きで、 ロックはうるさいと言いながら嫌いじゃなくて、 人の話を最後まで聞かずに核心だけ突く、 そういう人だった。 部屋に戻ると、窓辺に一枚だけ、新しいメモが落ちていた。 今夜はもう来ないと思っていたのに。 震える指で開く。『遅い。礼を言いに来るなら、もっと早く来い。』 その下に、見慣れた癖のある字で、こう続いていた。『あと犬のリード、ずっと床に出しっぱなしだ。だらしない。』 湊は思わず笑って、そして少し泣いた。 ベースがのそのそ起き上がり、リードをくわえて彼の膝に置いた。 まるで「ほら、怒られる前に片づけろ」とでも言いたげに。 湊は涙をぬぐって、ピアノの前に座った。「わかったよ。片づけるよ」 そして、ふと机の端にあるイベント用パンフレットが目に入った。 そこには完成曲のタイトルが大きく印刷されていた。 『かんで、ひらめけ!』 しばらく見つめたあと、湊は天井を仰いだ。「……そうだ。これ、あの人の案だった」 静かな部屋に、湊の声が響いた。「祖父ちゃん、最後までセンスが昭和なんだよ!」 その瞬間、窓の外で雷が光り、つづいてどこからか、紙をめくるような乾いた音がした。 机の上に、もう一枚だけメモが落ちていた。『うるさい。今でもそれが一番ウケた。』 翌日の商店街アンケート結果―― 子どもたちにいちばん人気だったのは、曲そのものではなく、タイトルの 『かんで、ひらめけ!』 だった。おわり明日は昼くらいから出かける予定。ここの更新ができるかはわからん。
2026.04.04
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今日もいい天気。だけどちょっと寒い気もする。暖かいと思って上着を着て行かなかったかもしれない。今日は何となく忙しかった。久しぶりにまじめに仕事やってた感じだ。大したことはやってないけど。今日は何の日日本橋開通記念日清水寺・みずの日シーサーの日愛林日神武天皇祭いんげん豆の日趣味の日葉酸の日シミ対策の日フォーサイトの日読み聞かせの日ケシミンの日シーザーの日シースリー記念日プラズマレーザーの日資産形成を考える日ドモホルンリンクル「しみキレイ」の日輸入洋酒の日シェアサイクルの日しるこサンドの日マルヨのほたるいかの日くるみパンの日みたらしだんごの日ビースリーの日隠元忌タイトル:日本橋の瓶と、祖母のうそ祖母の部屋には、時間がゆっくり流れていた。壁一面の本棚には、難しそうな古い本がぎっしり並び、机の上には小鉢や瓶や、いつからそこにあるのかわからない小さな置物が、まるで会議中のように静かに並んでいる。窓から入る午後の光だけが、その部屋の時計だった。その日、僕は中学の自由研究のために、祖母の家に来ていた。「おばあちゃん、なんか昔の話ない? 歴史っぽいやつ」祖母は革張りの古い本を閉じ、少しだけ目を細めた。「あるよ」その言い方が妙に自信ありげで、僕は思わず身を乗り出した。「この部屋にあるもので、一番大事なのはどれだと思う?」僕は机を見回した。古い本。絵。小鉢。変な犬みたいな置物。だが祖母の視線は、白い陶器の瓶に向いていた。でかでかと『日本橋』と書いてある、妙に存在感のある瓶だ。「それ?」「そう」祖母はうなずいた。「その瓶はね、うちの先祖が江戸の日本橋で手に入れたものなんだよ。代々受け継がれてきた、由緒正しい家宝なの」僕は思わず瓶を見た。家宝にしては、なんだか焼酎の空き瓶みたいだったが、祖母が真顔なので、いったん信じることにした。「この中には昔、ものすごく大事なものが入っていた」「なに?」祖母は声をひそめた。「幕府がひた隠しにした、幻の地図」僕の心は一気に江戸へ飛んだ。「えっ、やばいやつじゃん」「そう。だから先祖は追われた。夜の日本橋を、雨の中、この瓶を抱えて走ったそうだよ」祖母はそう言って、静かに机の上の本を開いた。そこには古地図らしき紙が挟まっていて、たしかに物語の信憑性を妙に補強していた。僕は完全に飲み込まれた。「それでその地図は?」「なくなった」「ええっ!?」「明治のどこかで、誰かが間違って別のものを入れてしまってね」「別のもの?」祖母はにこりともせず言った。「大豆」僕は瓶の横の小鉢を見た。たしかに、机の上には豆がある。「ちょっと待って。じゃあ地図は?」「捨てたかもしれないね」「そんなことある!?」祖母は平然としていた。「歴史というのはね、そういうものだよ」納得しかけたその時、僕の母が買い物袋を提げて部屋に入ってきた。「あ、お母さん。その瓶まだ置いてあるんだ」祖母がぴくっとした。「……置いてあるよ」母は僕の顔を見るなり、笑った。「それ、おじいちゃんが昔、福引きで当てた焼酎の瓶だよ。中身なくなってから、おばあちゃんが豆入れにしてたの」部屋の空気が止まった。僕は祖母を見た。祖母は本を閉じ、何事もなかったように湯のみを持った。「……じゃあ、日本橋の家宝って」母は首をかしげた。「なにそれ」祖母は一拍おいて、すました顔で言った。「自由研究には、多少のロマンが必要でしょう」僕が呆れていると、母がさらに追い打ちをかけた。「しかもその瓶、日本橋じゃなくて“日本盛”じゃなかった? 字、薄れて見間違えてるだけじゃない?」祖母はそこで初めて、少しだけ目を泳がせた。僕は耐えきれず吹き出した。「おばあちゃん、先祖が雨の中走ったの、ただの晩酌じゃん!」すると祖母は、ようやく口元をゆるめて言った。「そうだよ。しかも追ってきたのは幕府じゃない。おじいちゃんに『つまみも買ってきて』って言われてただけ」その日、僕の自由研究の題名は『わが家に伝わる歴史的な大うそ』になった。先生には大笑いされ、クラスではなぜか一番人気だった。ちなみに祖母は後日、得意げにこう言った。「ほらね。なくなった地図より、残った話のほうが価値があるんだよ」たしかにそうかもしれない。でも僕は今でも思う。あの祖母の語り口なら、たぶんシーサーの置物についても、琉球王国最後の密偵くらいまでは平気で話を盛れる。おわりおなか減った。
2026.04.03
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今日は朝から天気がイマイチで日中はストーブなしでも大丈夫だったけど、夕方くらいからちょっと寒くなってストーブつけた。外は軽く雨も降ってた。どっかでは雪も降ってるらしい。まだ春になりきらないね。最近、映画を最後まで見るのができなかったんだけど、昨日見たのは面白かったので最後まで見れた。1本目はアマプラで「クレイブン・ザ・ハンター」という作品。スパイダーマンはクモ男。クレイブンはライオン男。って感じの話。敵はサイ男。弟はカメレオン?面白いけど、なんか登場人物全員好きになれない。2本目はネトフリで今話題の「爆弾」。面白かった。佐藤二郎と警察との心理戦。ついでに今日も見た。ネトフリで「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」最初は洋画を見ようと思ったんだけど、吹替え版がなく、字幕よ読まないといけないので、適当に邦画を見ることに。んで、見たのがこれ。面白かった。今日は何の日世界自閉症啓発デー国際子どもの本の日図書館開設記念日週刊誌の日歯列矯正の日CO2削減の日五百円札発行記念日木曽路「しゃぶしゃぶの日」リーブ21・シャンプーの日巻き爪ケアの日エクエルの日April Trueの日ガチャピン・ムックみんなともだちの日腰痛と向き合う日Life2.0の日連翹忌タイトル:貸出カードのうしろ側町の小さな図書室では、毎週水曜日の午後だけ、不思議なことが起きると子どもたちのあいだで噂になっていた。本を読んでくれるお姉さん――いや、子どもたちは親しみをこめて「しずか先生」と呼んでいた――が、たまに読んでいる途中で、ふっと遠くを見るのだ。ページの途中なのに、まるで誰かの声を聞いたみたいに。その日も、しずか先生は古い児童書を開き、子どもたちの前でやさしい声で読み始めた。「むかしむかし、森のはずれに……」部屋の後ろでは保護者たちが静かに見守り、棚の上には緑と赤のへんなぬいぐるみが並び、ガチャガチャのカプセルが光を受けてぼんやり光っていた。どこにでもある午後。どこにでもある、少し眠たい時間。けれど、しずか先生だけは知っていた。この図書室には、“返しそびれた物語”が残るのだ。昔ここで借りられたまま、とうとう返ってこなかった本。失くしたと思われていた絵本。途中まで読んで、そのまま大人になってしまった子どもたちの物語。それらが水曜日の午後だけ、本棚のすき間からそっと出てきて、「続きを読んで」と頼みにくる。最初にそれが起きたのは、三年前だった。閉館前、本を整理していたしずか先生の耳元で、たしかに声がしたのだ。「わたし、まだおおかみに食べられてないんですけど」振り向くと、誰もいない。ただ、開いたままの童話集が一冊、机の上にあった。それ以来、しずか先生には“物語の忘れ物”が見えるようになった。王子を待ったままの姫。宝の地図をなくした海賊。三ページ目から先を読まれたことがない探偵。だから彼女は、毎週水曜日、子どもたちへの読み聞かせのふりをして、実はそういう置き去りの物語たちにも続きを読んでやっていたのだ。その日、彼女が手にしていたのは、背表紙も擦り切れた古い冒険小説だった。読み進めていると、不意にページのあいだから小さな紙片が落ちた。貸出カードだった。いまどき珍しい、名前を手書きする昔のカードで、いちばん下の欄にだけ、妙な記入があった。「借りた人:さとう しずか」しずか先生は眉をひそめた。自分の名前だった。日付を見ると、二十七年前。しかも、借りた本の題名は、今まさに自分が読んでいるこの本だった。彼女の背中が、すうっと冷えた。記憶はない。二十七年前といえば、まだ子どもだ。だが、この町に住んでいたことはある。母に連れられて、この図書室に何度か来た記憶も、うっすらある。そのとき、ページが勝手にぱらりとめくれた。最後のページに、鉛筆で小さく書いてあった。「つづきがこわくて、かえしました」しずか先生は息をのんだ。――私だ。昔の自分は、怖い場面の手前でこの本を返してしまったのだ。そしてたぶん、その“最後まで読まれなかった物語”が、ずっとこの図書室に残っていた。だから聞こえたのだ。だから見えていたのだ。返しそびれたのは本じゃない。子どものころの、自分の“つづき”だった。しずか先生は少し笑って、子どもたちに向き直った。「今日はね、最後まで読みます」いつもより少しだけ、声がやわらかかった。子どもたちは身を乗り出し、後ろの保護者もなんとなく空気の変化を感じて静かになった。緑と赤のぬいぐるみまで、聞き耳を立てているように見えた。物語は、洞窟の奥で主人公が怪物に出会う場面へ進んだ。昔のしずか先生が逃げたページだ。だが怪物は、想像していたような恐ろしい存在ではなかった。主人公に向かって、こう言ったのだ。「ここまで読んでくれてありがとう。ところで出口はあっちだよ」子どもたちは一瞬ぽかんとして、それからどっと笑った。しずか先生も笑った。怖いと思っていたものの正体が、ただの親切な案内係だったことがおかしくて、肩の力が抜けた。読み聞かせが終わると、ひとりの男の子が手を挙げた。「先生、その本、おもしろい。ぼくも借りたい」しずか先生はうなずき、本を閉じた。するとまた、貸出カードがはらりと落ちた。そこには新しい字で、もうひとつ記入が増えていた。「借りた人:さとう しずか(42)ちゃんと最後まで読めました」しずか先生はしばらく黙って、その文字を見つめた。そして、ふっと笑ってカードを裏返した。裏にはさらに、見覚えのない字でこう書いてあった。「延滞料金 20円」「……え?」思わず声が出た。二十七年越しの延滞だった。その瞬間、受付カウンターの奥から、白髪の司書さんがぬっと顔を出して言った。「お気づきになりましたか。ご精算、現金のみです」しずか先生は目を丸くした。子どもたちは意味もわからず大笑いした。町の図書室では、毎週水曜日の午後、ときどき不思議なことが起きる。でもいちばん不思議なのは、怪談みたいな話の最後にちゃんと延滞金だけは回収されることだった。おわり今日もログインに手間取ってた。ホントめんどくせーわ。なんとかなったけど。これ、回数制限あるやつだったらどうもならんかったと思う。
2026.04.02
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今朝はびっくりしたね。いや、サッカー。イングランドにも勝っちゃった。決めたのは三笘。やっぱりイングランドはお得意様なのかな。4月1日ですよ。まえはエイプリルフールネタとか、いろいろ見るの面白かったけど、今はそんなに騒がなくなったなぁ。普段からフェイクニュースだか何だかわからないのがあふれてるからなぁ。そういえば、嘘みたいなニュースがあったね。KDDIの広告費問題。子会社の架空取引問題。2400億円て金額のインパクトはあるけど、どんな問題なのかピンとこないからAIにまとめてもらった。売り上げ2461億円は”見せかけ”が消えた数字、329億円は”外に出て戻らなかったお金”ということらしい。誰が得をして誰が損をしたのか。かなり単純化すると、**得をしたのは主に「取引に入っていた外部代理店」と「数字をよく見せたかった現場」**で、損をしたのはKDDIグループ、株主、そして責任を負った役員や従業員です。 まず、外部の代理店側です。KDDIの開示では、累計329億円が「外部流出額」とされ、これは架空循環取引の中でKDDIグループの外へ出た実損部分です。報告資料では、この外部流出額は損益計算書上「その他の費用」として扱うとされています。つまり、外の業者の一部は手数料やマージン相当のお金を受け取っていた形です。 次に、取引を主導した関与従業員2人です。公開資料では、ビッグローブとジー・プランの従業員2名が架空循環取引を行っていたと認定されています。ただし、現時点の公表資料からは、この2人が個人的に巨額の金銭を直接着服していたとまでは確認できません。むしろ先に見えている「得」は、売上や利益を大きく見せることで事業をよく見せられたことです。KDDIはこの2人を懲戒解雇しています。 つまりこの2人の“得”は、現金の持ち逃げより、「実際より事業が伸びているように見せられた」「赤字や行き詰まりを隠せた」という組織内の見かけ上の利益だったとみるのが自然です。これは、売上高2461億円、計上利益取消499億円という数字が示すように、帳簿上かなり大きく事業実績が膨らんでいたためです。 一方で、誰が損したかでいちばん大きいのは、まずKDDIグループ本体です。KDDIは架空計上されていた売上2461億円を取り消し、利益面でも499億円の取消、さらに減損なども含めて業績に大きなマイナス影響を受けました。要するに、会社の数字・信用・経営資源が傷んだということです。 株主・投資家も損をしました。会社が後から決算訂正を出す事態になったため、投資家は過去の業績を正しく見直さなければならなくなり、会社への信頼も傷ついたといえます。KDDI自身も「株主・投資家の皆様をはじめとする関係者に多大な心配と迷惑をかけた」と述べています。 役員層も処分という形で損をしています。KDDI本体では会長と社長が月例報酬の30%を3カ月返納し、CFOや事業本部長らも報酬返納の対象になりました。ビッグローブとジー・プランでは、社長やCFOなどの辞任が公表されています。 なので、いちばんわかりやすく言い切ると、得した側外部代理店の一部:手数料・マージンを受け取った。 関与従業員:事業数字をよく見せ、問題の先送りができた。 損した側KDDIグループ:売上・利益の訂正、外部流出、減損、信用低下。 株主・投資家:誤った業績認識を前提に判断させられた。 役員・従業員:辞任、報酬返納、懲戒解雇。 要するに、「外の一部業者は現金で得をし、現場は数字で得をし、そのツケを会社と株主がかぶった」という理解がいちばん近いです。 まとめてもらったけどよくわからんな。最初は「赤字や目標未達を隠したい」から始まり、途中からは「今さらやめると全部バレる」状態になって、組織も止められなかった、という構図です。 ということで、嘘をごまかすためにまた嘘をつかなくちゃいけなくなっちゃうやつですね。まさにエイプリルフールらしいネタってことか。今日は何の日年度初日エイプリルフールトレーニングの日オンライントレードの日児童福祉法施行記念日売春防止法施行記念日携帯ストラップの日第2の成人式WHOPPERの日ビックリマンの日はがねの日サントリー赤玉の日グッドスーツの日黒ラベルの日熊本甘夏の日居酒屋で乾杯の日エイプリルドリームの日こころのヘルスケアの日ジャパニーズウイスキーの日タクシーサイネージの日ほぼカニの日東スポの日サーチファンド誕生の日建設業DX推進の日うそつきマスカラの日的矢かきの日パチンコ&スロット喜久家創立記念日不動産表示登記の日不動産鑑定評価の日資格チャレンジの日釜飯の日あずきの日省エネルギーの日Myハミガキの日もったいないフルーツの日愛子忌三鬼忌今日は多いな。多いけど、これに大活躍の三笘も入れて画像を作ってもらったら意外とあっさりした画像になった。タイトル:四月一日の決勝点雨上がりの路地は、まだ少しだけ夜を引きずっていた。濡れた石畳に店の灯りがにじみ、古い暖簾の紺色が、やけに深く見える。そんな通りの真ん中に、男はひとり、妙に絵になる立ち方で立っていた。黒いジャケットに黒いシャツ。片手にはスマホ。その手にはなぜか、ビックリマンチョコが一つ、一緒に握られている。いかにも「今しがた世界を沸かせてきました」という顔をしているくせに、持っているのが高級な記念品ではなくビックリマンチョコなのが妙だった。店の中から友人の大地が出てきて、その姿を見るなり吹き出した。「なんだよ、その顔。ヒーローインタビュー終わりみたいになってるぞ」男は少し笑って、何でもないことのように言った。「いや、今日ちょっとね。イングランド戦で決勝点決めたんだよ」大地は三秒ほど黙ったあと、盛大に笑った。「はいはい、エイプリル・フールね」「ほんとだって」「ほんとに決めたやつは、そんな顔でビックリマンチョコ持って路地に立ってないの」男は否定もせず、ただ店の灯りを見上げた。その横顔が妙に落ち着いていて、大地は少しだけ笑いを引っ込めた。この男は昔から、嘘が下手だった。小学生のころは「宿題やった」と言いながらノートが真っ白で、高校のころは「全然緊張してない」と言いながら耳だけ真っ赤で、大人になっても「全然酔ってない」と言った五分後に自販機へ謝っていた。だからこそ、こんなに平然と「決勝点を決めた」と言うのが少し気になった。「……で、どんなゴールだったの?」大地がそう聞くと、男は少し遠くを見る目になった。「後半の終盤。右からボールが来てさ、一瞬だけ、周りが静かになったんだよ」「へえ」「で、相手が一歩寄った瞬間、“あ、今だ”って」「うん」「綺麗に入った」「ざっくりしすぎだろ」「でも入った」そのとき、店の奥から女将が暖簾を上げて出てきた。小柄なのに妙に迫力のある人で、近所のほぼ全部を知っている顔だった。女将は男を見るなり目を細めた。「あんた、昼にテレビ出てなかったかい」大地が勢いよく振り向く。男は「まあ」とも「いや」ともつかない笑い方をした。「やっぱり!」大地が叫ぶ。「おまえマジか! 本当に!? え、サインとか今のうちにもらったほうがいい!?」通りがかったサラリーマンまで立ち止まり、奥を歩いていた女子高生二人までひそひそし始めた。女将は続けた。「ほら、昼の再放送でやってたじゃないか。“商店街フットサル大会・四十歳以上の部”」路地が静まり返った。大地がゆっくりと男を見る。「……イングランド戦って」男はうなずいた。「駅前の“イングランド”っていう英国風パブの常連チームとの試合」「決勝点って」「商店街大会の決勝点」「代表戦みたいに言うな!」その瞬間、通りにいた全員がどっと笑った。女子高生は「ちょっと信じたし!」と肩を揺らし、サラリーマンは「雰囲気ありすぎるんだよ」と苦笑いした。男もつられて笑い、手に持っていたスマホをポケットにしまおうとした。そのとき、画面がぱっと光った。大地の目が止まる。送信者:森保一笑っていた顔が、ぴたりと止まった。「……いま、誰から?」男は「あっ」と小さく声を漏らし、あわてて画面を伏せた。「いや、別に」「いやいやいや、“森保一”って見えたぞ?」周りの空気が変わる。さっきまで笑っていた女子高生まで真顔になった。「え、ちょっと待って」「本物?」「いやでも、顔はたしかにそれっぽい」「ていうか最初から妙にオーラあったよね?」男は困ったように頭をかいた。「だから今日はエイプリル・フールだって」「そういうやつが一番怪しいんだよ!」大地が一歩詰め寄る。「見せろ!」「やだよ」「見せろって!」二人がわちゃわちゃやっている、そのときだった。路地の奥から、誰かの蹴り損ねたサッカーボールが、ころころと転がってきた。雨上がりの石畳をすべるように進み、男の足元へ吸い寄せられてくる。誰もが反射的に「危ない」と思った。けれど男は、半歩だけ体をずらした。右足のアウトで、ボールの勢いをふわりと殺す。次の一歩で、かかとに乗せる。そのまま足の後ろを通し、くるりと前へ落とす。音が消えた。正確には、周りの全員が息をのんで、音を忘れた。ボールは男の足元に、最初からそこにいたみたいに収まっていた。向こうからボールを追いかけてきた小学生が、目をまん丸にする。「おじさん、いまのすご!」男は何事もなかったように笑って、つま先で軽くボールを返した。ボールはまっすぐ、小学生の胸に吸い込まれるみたいに届いた。「うまっ!」大地が半開きの口のままつぶやく。「……おまえ、誰なんだよ」そのとき、路地の奥から、小さな拍手が聞こえた。全員が振り向く。提灯の明かりの外れ、電柱の影に、帽子を深くかぶった男が立っていた。顔はよく見えない。けれど、ただ立っているだけなのに、不思議と目が離せなかった。その男は、低い声でひと言だけ言った。「いいタッチだな」大地が目をこらした瞬間、男は軽く手を上げ、背を向けて歩き出した。女将が「あっ」と小さく声を漏らす。サラリーマンが思わず姿勢を正す。女子高生の片方は、口元を押さえたまま固まっていた。男のスマホが震えた。今度は、大地にも画面が見えた。『見てたよ。今度はイングランド相手に頼む。 森保』大地は完全に固まった。女将は暖簾を握ったまま口を開け、女子高生たちは同時に「えっ」と叫んだ。黒いジャケットの男は、画面を見て、少し困ったように笑った。「だから今日はエイプリル・フールだって」そう言って、彼はビックリマンチョコをひらりと振り、路地の奥へ歩き出した。「ちょ、待て!」大地が叫ぶ。「嘘なのか本当なのか、どっちなんだよ!」男は振り返らなかった。ただ、片手だけ軽く上げて、去り際にそれだけ残した。「次の試合、見といて」角を曲がる直前、提灯の灯りが一瞬だけ彼の横顔を照らした。さっきまでただの冗談にしか聞こえなかった言葉が、今は妙に本物に思えた。通りに残された全員は、しばらく誰も動けなかった。やがて女将がぽつりと言った。「……で、あの子、ビックリマンチョコだけ置いて中のシール持ってったね」その瞬間、大地は天を仰いだ。「そこだけはスターじゃなくて完全に小学生なんだよ!」おわり今日は日中暖かかったなぁ。空気が4月っぽかった。4月なんだけどね。あと、今日は102回目のプロポーズが始まるらしい。これって、だいぶ前に言ってたやつだよね。いま放送なの?
2026.04.01
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3月も終わりですね。今日は曇りがちの日でした。最近暖かくなってきたと思ってたけど、お日様が出ないとまだちょっと寒いですね。高校野球終ってたんだね。大阪桐蔭か。やっぱ名門だなぁ。野球と言えば、ヤクルトのマスコットのつば九郎が帰ってきたらしいですね。二代目か。前の人と同じことはできないと思うんだよ。自分なりの二代目をやればいいんじゃないのかな?知らんけど。今日は何の日オーケストラの日教育基本法・学校教育法公布記念日エッフェル塔落成記念日サザンイエローパインの日山菜の日体内時計の日経理の日サミーの日カワマニの日サンミーの日アラ!の日樹木葬・千年オリーブの森の日菜の日タイトル「フクロウ係、就任」 パリの外れにある古いアパルトマンの五階、その小さなベランダは、近所ではちょっとした名所だった。 名所といっても、観光ガイドに載るようなものではない。洗濯物も干していないのに、鉢植えの松があり、なぜかエッフェル塔の模型があり、壁には賞状がいくつも飾られている。そして毎朝きっかり七時になると、そこに一人の日本人女性が現れるのだ。 その人の名は、皆川フミエ。 近所の人々は彼女を「時間に厳しい東洋のマダム」と呼んでいた。 フミエさんは毎朝、ベランダに出る。左手に木彫りのフクロウ、右手に古い懐中時計を持ち、無言で三分ほど街を見下ろす。雨の日も、風の日も、少し熱がある日も、必ず同じ姿勢で立っていた。 通りのパン屋の主人は、「あれはたぶん日本の伝統的な儀式だ」と言った。 向かいのアパルトマンの老紳士は、「いや、スパイの合図だ。フクロウは暗号装置に違いない」と言った。 一階の花屋の娘は、「モデルさんじゃない? 静かなファッション系の」と言った。 誰も本当のことを知らなかった。 フミエさんはその噂を、だいたい知っていた。でも訂正しなかった。説明が面倒だったし、少しだけ、こういう誤解も悪くないと思っていた。 実際のところ、彼女は厳密にはスパイでもモデルでもなかった。 日本で長く経理の仕事をして、定年後に語学留学と称してパリに来た、ごく普通の女性である。賞状のうち三枚は簿記、一枚は地域の清掃活動、そして一番立派に見える額に入っているのは、地元の商店街でもらった「朝のあいさつ運動参加証」だった。 それでも彼女には、毎朝このベランダに立たなければならない理由があった。 半年前、パリに着いたばかりの頃、彼女は時差ぼけで毎朝とんでもなく早く目が覚めていた。することもないのでベランダでぼんやりしていたところ、下の通りで毎朝同じ男が、同じ時間に、同じパンを買い、同じ犬に吠えられ、同じ場所でコーヒーをこぼすことに気づいた。 人間というのは、案外、時計より正確だ。 その観察が面白くなり、彼女は懐中時計を片手に「今日も七時二分、コーヒーをこぼした」と記録するようになった。木彫りのフクロウは、日本から持ってきた置物だったが、ただ手ぶらで立つのも落ち着かないので、なんとなく抱えるようになった。 近所の人はそれを見て、ますます彼女を謎の存在だと思った。 やがて噂は育った。 「あのマダムは、街の時間の乱れを見張っているらしい」 「遅刻する人を見抜くらしい」 「いや、フクロウに相談してから一日が始まるそうだ」 ある日、パン屋の主人が、冗談半分でこう声をかけた。 「マダム、今日は私、ちゃんと定時に店を開けられましたか?」 フミエさんは少し考えてから、懐中時計を見て言った。 「二分遅れです」 主人は目を丸くした。 当たっていた。 それ以来、近所の人たちは時々、彼女に時間の判定を求めるようになった。 「今日はいつもより早く犬の散歩に出た?」 「この配達員さん、昨日より急いでる?」 「うちの夫、また約束の時間をごまかしてない?」 フミエさんは、妙に正確だった。 もともと数字と記録に強かったし、人の癖を覚えるのも得意だった。誰が何分遅れがちか、誰が「すぐ行く」と言ってから本当に来るまで平均何分かかるか、そんなことが自然と頭に入ってしまうのだ。 評判は広がった。 いつのまにか彼女は、近所の子どもから「マダム・フクロウ」、大人からは「時間の番人」と呼ばれるようになった。 フミエさん自身は少し困っていたが、内心では悪い気はしていなかった。パリで友達ができるとは思っていなかったし、まさかフクロウを抱いて立っているだけで地域に溶け込むとも思っていなかった。 そんなある日、アパルトマンの管理人が真面目な顔で訪ねてきた。 「お願いがあります。今度の住民総会で、ぜひ役員を引き受けていただけませんか」 「役員?」 「はい。住民の信頼が厚いですし、時間にも正確ですから」 フミエさんは断ろうとした。異国の集合住宅の役員など、荷が重すぎる。 だが管理人は続けた。 「もう皆さん、あなたにしか任せられないと言っているんです」 フミエさんは少しだけ胸を張った。定年後、まさかパリでそんなふうに頼られるとは思わなかった。 総会の日、住民たちは拍手で彼女を迎えた。 議題は、騒音問題、ゴミ出しルール、エレベーター修理、共用部の植木の管理など、実に現実的なものばかりだった。フミエさんは落ち着いてメモを取り、発言の順番を整え、時間配分まできっちり仕切った。 会は驚くほどスムーズに進んだ。 最後に管理人が言った。 「では、新しい役職名を正式に確認します」 フミエさんは一瞬、背筋を伸ばした。 “時間管理担当理事”とか、“副会長”とか、そういう感じだろうと思った。 管理人は紙を見ながら、はっきり読み上げた。 「皆川フミエさん。新任の――フクロウ係です」 会場は大きな拍手に包まれた。 誰かが立ち上がって言った。 「マダムには、やはりそれが一番ふさわしい!」 別の誰かも頷いた。 「時間のことも、ベランダの植物のことも、全部見てくれてるから!」 フミエさんは口を開けたまま固まった。 議事録をのぞくと、そこには確かに書いてあった。 『ベランダにてフクロウを保持しつつ住民の生活リズムを監督する役割』 しかも、年二回の報告義務つき。 こうしてフミエさんは、パリの集合住宅でおそらく世界でもかなり珍しい正式役職、 「フクロウ係」に就任した。 今でも毎朝七時になると、彼女はベランダに立つ。 左手に木彫りのフクロウ。 右手に懐中時計。 背後には、特に関係のない簿記の賞状。 そして新しく増えた額には、住民総会から贈られた感謝状が飾られている。 そこには達筆なフランス語で、こう書かれていた。 『当アパルトマンの平和と時間秩序に多大な貢献をした、偉大なるフクロウ係へ』 フミエさんはその文面を見て、毎回ちょっとだけ笑う。 経理一筋四十年。 まさか最後の肩書きが、 「元会社員」ではなく 「フクロウ係」になるとは思ってもいなかった。おわりあ、今日クレイジージャーニーあるのか。これは今までに見たことないやつなのかな?ちょっと気になるなぁ。
2026.03.31
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今日は朝一から銀行に行ってきた。朝一からなんでこんなに混んでるのってくらい人がいた。なんでだ?月末だから?年度末だから?月曜日だから?知らんけど。んでそのあと会社に行って仕事してました。と言いつつ、Xで流れてきてた中川郁子さんの話について書いてあるのをいろいろ読んでました。中川さんはずっと言いたかったことだったと思うんだよね。でも言えなかった。内容はYouTubeなんかで誰かが検証されていたのとほぼ同じ内容だった。そんなことを言うと、陰謀論とか、暗殺とか、おかしなこと言ってると思われるからね。それを今言った。そこに何か意味があると思うんだ。どんな意味かは知らないけど。今日は何の日国立競技場落成記念日マフィアの日信長の野望の日妻がうるおう日スポーツ栄養の日サラサーティの日+Style・スマート家電の日白黒猫さんの日見えない・見えにくい人と共生社会を考える3日間みその日EPAの日サワーの日キャッシュレスの日タイトル:『十三路盤の名人』古い町のはずれに、「サカキ囲碁店」という小さな店があった。店の奥には年季の入った碁盤が置かれ、壁には少し色あせた日本地図と、「サカキ塾」と書かれた看板がかかっている。昼は子ども相手の囲碁教室、夜は大人たちのたまり場。静かな店だったが、ひとつだけ、やたらに騒がしい噂があった。「あそこの白黒の猫、めちゃくちゃ強いらしい」猫の名はハチワレ。店主の榊老人が拾ってきた猫で、毎日決まって碁盤の横に座っていた。対局が始まると、ハチワレはじっと盤面を見つめる。誰かが変な手を打つと耳がぴくりと動き、勝負どころになると、なぜか前のめりになる。たまたまだろう、と最初は誰も気にしていなかった。だが、何度も見ているうちに常連たちは確信しはじめた。「今の場面、あの猫、先にわかってたぞ」「さっきもだ。あいつがしっぽ振った直後、形勢がひっくり返った」「前世が本因坊なんじゃないか?」噂は町中に広がり、ついには隣町から“県大会ベスト8”を三回も自称する、やたら肩書きの細かい男がやってきた。男は店に入るなり、鼻で笑った。「猫が囲碁を読む? 結構。今日はその迷信を、盤の上で終わらせましょう」榊老人は「はいはい」とだけ言い、いつもの席に座った。ハチワレもまた、いつものように盤の横に座った。対局が始まった。序盤から男は鋭かった。石を置く音まで自信満々で、常連たちも「これはさすがに強いぞ」と顔を見合わせる。中盤に入るころには、榊老人の形勢がやや悪いようにも見えた。店の空気が重くなる。そのときだった。ハチワレが、すっと立ち上がった。ざわっ、と店内が揺れた。猫は盤のまわりを半周し、男の背後へ回り込む。そして男の肩越しに盤面をのぞき込み、そのまま、じっと動かなくなった。「出た……」「読んでる……」「完全に勝負手の顔だ……」男のこめかみに汗がにじんだ。常連たちは息をのむ。榊老人だけが湯飲みを持ったまま、ぼんやりしている。男は平静を装って石を置いた。その瞬間、ハチワレは静かに盤の右上へ前足を伸ばした。「そこか!」と常連の一人が叫んだ。「右上が急所だ!」「やっぱり先生は読んでる!」榊老人は「ああ、なるほど」と言って、その近くに一手打った。すると、その一手をきっかけに流れが変わった。男の攻めは空振りし、榊老人の石がみるみるつながっていく。やがて形勢は逆転。最後は榊老人の中押し勝ちとなった。店は騒然となった。「見たか!」「やっぱり猫が決めた!」「右上を示したんだ!」「ハチワレ先生だ!」男は青ざめた顔で盤を見つめ、それからハチワレに向かって深々と頭を下げた。「……完敗です。私は、猫に負けました」常連たちは大拍手。誰かはもう「先生の写真をポスターにしよう」と言い出し、別の誰かは「サイン会は無理でも肉球判なら」と本気で相談し始めていた。そのとき、榊老人がぽつりと言った。「いや、たぶん違うな」みんなが振り向く。榊老人は男の背後の壁を指さした。そこには、店のガラス戸があった。夜の店内がうっすら映り込むそのガラスに、男の頭頂部がきれいに反射していた。そしてその真ん中に、丸く、くっきりと——ハチワレの大好物の、ちゅ〜るのシールが貼ってあった。沈黙。常連一同が、壁と、男の頭と、猫を順に見た。ハチワレは囲碁の急所を見抜いていたのではない。男の頭がちょうどガラスに映って、ちゅ〜るのシールが頭頂部に貼られているように見えたので、「食べ物が乗ってる」と思って狙っていただけだった。男が、震える声で言った。「……じゃあ、あの“勝負手の視線”は」榊老人は湯飲みを置いて答えた。「腹減ってただけだろ」その瞬間、店の奥で見ていた小学生が、最悪のひと言を放った。「でも結果的に、おじさんの頭をエサ扱いした猫のほうが強かったってことだよね」店内、大爆笑。町内会長は机を叩いて笑い、元教師は涙を流し、常連の一人は「それは棋力じゃなくて嗅覚だ!」と意味不明の反論をした。男は真っ赤になって立ち上がったが、出口へ向かう途中で、ハチワレがちょんと前足を出したので、思わずぴたりと止まってしまった。すると小学生が追い打ちをかけた。「ほら! 次の一手も読まれてる!」その日以来、町での噂はこうなった。「サカキ囲碁店には、名人の猫がいる」ではなく、「サカキ囲碁店には、相手の弱点が“頭”だとすぐ見抜く猫がいる」そして県大会ベスト8を三回も自称した男は、それ以来一度も来なかった。ただし半年後、町内の回覧板に載ったチェス教室の生徒募集広告に、見覚えのある顔写真が出ていた。写真はしっかり帽子姿だった。おわり月曜日から眠いよ。この時間特に眠いわ。
2026.03.30
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今日は朝から天気が良かったけど、気がついたら曇りになってた。でも日中は暖かかったね。昨日のサッカーはよく勝ったなぁ。たまたまかもしれないけど。やっぱ日本強いわ。今日はアッコにおまかせの最終回をちらっと見てた。なんでこんなに続いたのかなぁ。事務所の力かなぁ。今日は何の日マリモの日八百屋お七の日作業服の日サニクリーンの日みんつくの日ヴァイスシュヴァルツの日「ラヴィット!」の日見えない・見えにくい人と共生社会を考える3日間肉の日クレープの日Piknikの日ふくの日風信子忌タイトル:苔玉鑑定士、現る町の小さな八百屋「やの星おいし店」には、午後三時を過ぎると、なぜか少しだけ空気が変わる時間があった。野菜の補充がひと段落し、テレビでは微妙に盛り上がりきらない情報番組が流れ、店先のりんごも白菜も、どことなく昼の役目を終えた顔になる。そんな時間になると、店の隅の丸椅子に腰かけるのが、配達担当の桑原さんだった。桑原さんは無口ではない。むしろ聞かれればよく話す。ただ、自分から話し出す内容が毎回少しだけおかしかった。「これね」その日、彼が得意げに取り出したのは、小さな透明ケースに入った緑色の球体だった。ピンポン玉より少し小さい。ふわっと丸く、光を吸い込むような深い緑。どう見ても、苔玉にしか見えない。レジ打ちの真理子さんが、にんじんの値札を貼りながら言った。「また始まった。今度は何なんですか、それ」桑原さんは口元に薄く笑みを浮かべた。「これはね、“持ち歩ける落ち着き”です」「落ち着き」「人はみんな、心の中に乾いた場所を持ってるんですよ」急に話が大きくなった。真理子さんは、ああ今日もそういう日か、という顔でうなずいた。桑原さんによると、その球体はただの苔玉ではなく、「一日に三分見つめるだけで気持ちが整う携帯用観賞苔」らしかった。朝の忙しい時間、昼のイライラする時間、夜のよく分からない不安の時間。そのどれにも効くのだという。「なんか薬機法に引っかかりそうな言い方してません?」「効くとは言ってません。整うんです」「もっと危ないです」しかし不思議なことに、桑原さんがそう言って緑の玉を見つめていると、たしかに妙な説得力があった。彼は仕事ぶりは真面目で、野菜の扱いは丁寧で、お年寄りの家に配達へ行けばついでに電球まで替えてくるような人だった。だからこそ、たまに飛び出す妙な発言にも、店の人たちは完全には笑いきれない。そのうち、店長まで興味を示した。「それ、売れるかな」「たぶん売れません」桑原さんはきっぱり言った。「じゃあ何で持ってきたんだよ」「見せたかったからです」その潔さに、店長はちょっと感心した。夕方になると、常連の小学生たちまで集まってきた。「それなに」「食べれるの」「スライム?」と口々に言う子どもたちに、桑原さんはケースを掲げて静かに答えた。「これは大人の心を守るための緑です」子どもたちは一秒で飽きて、りんご箱の陰にいたカナブンを追いかけ始めた。だが、その日の店内には少しだけ変な一体感が生まれていた。真理子さんはレジの合間にちらっとその球体を見て、「たしかにちょっと落ち着くかも」と思ったし、店長も「事務作業の机に一個あってもいいな」と言い出した。配達帰りの高校生バイトなどは、「なんか高そうっすね」と、よく分からない感想を残した。桑原さんは満足そうだった。自分の信じる小さな緑の丸を、世界が少しだけ認め始めた気がしたのだろう。そして閉店後。片付けを終えた真理子さんは、ふと思い出して尋ねた。「で、結局それ、どこで買ったんですか?」桑原さんは、少しだけ困ったように笑った。「買ってないです」「え?」「昼休みに、向かいの用水路の石に生えてたやつを丸めて詰めました」真理子さんは手を止めた。「……はい?」「最初はもっと大きかったんですけど、ケースに入るサイズに調整して」「調整って何」「ちぎって」店長が奥から顔を出した。「お前、それ商品じゃないの?」「商品じゃないです。作品です」「もっとダメだろ!」さらに桑原さんは、胸を張ってこう続けた。「ちなみに名前も決めてます。“流域一号”です」その瞬間、真理子さんは笑いをこらえきれず、レジ台に突っ伏した。店長は頭を抱え、高校生バイトは腹を抱えて笑い、当の桑原さんだけが最後まで真顔だった。翌週、店の入口には小さな手書きの張り紙が出た。『店内への用水路由来の芸術作品の持ち込みは禁止します』そしてその紙の横には、なぜか新しい透明ケースが一つ置かれていた。中には、前より少し大きく、少し形の整った緑の玉。張り紙の下に、桑原さんが小さく追記していた。『二号はかなり整います』おわり
2026.03.29
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今週は色々忙しくって、夜も眠いし朝はもう少し寝坊したいと思ってるんだけど、いつもくらいの時間に目が覚めてしまう。今日もそんな感じ。んで、日中眠くなる。よくないねえ。このサイクル。今日は何の日シルクロードの日スリーマイル島の日三つ葉の日三ツ矢の日・三ツ矢サイダーの日グリーンツーリズムの日八幡浜ちゃんぽん記念日酵水素328選の日ナッツのミツヤの日刀剣乱舞・審神者の日焼肉開きの日見えない・見えにくい人と共生社会を考える3日間にわとりの日宗因忌鑑三忌邂逅忌タイトル:酢と刀のあいだ 町はずれの古道具屋の二階に、「鑑定処・三ツ矢堂」はあった。 看板も小さく、宣伝らしい宣伝もしていないのに、なぜか妙な品物ばかり持ち込まれる。欠けた茶碗、古い帳簿、誰のものかわからない軍帽、そしてたまに、明らかに普通ではないもの。 この日、店主の娘である真琴は、一本の古い刀を前にしていた。 藍色の着物に袖を通し、虫眼鏡を片手に、真剣そのものの顔で刀身を見つめる。机の上には見かけによらず生活感のあるものが並んでいた。豆、芹、そしてなぜか三ツ矢サイダーの空き瓶ではなく、三ツ矢サイダーそのもの。「どうだい、真琴」 階下から父が声をかけた。「本物か、贋作か、わかりそうか」 真琴はすぐには答えなかった。刀の茎に刻まれた銘を見て、ふっと眉を寄せる。「銘はある。でも妙です」「ほう」「時代が合わない。研ぎも不自然。なのに、変に丁寧」「ますます面白いな」 持ち主は、商店街で乾物屋を営む熊田という男だった。朝いちばんに店へ飛び込んできて、「うちの蔵から出た家宝です! 先祖はきっとすごい武士だったんです!」と息巻いていたが、話を聞くうちに、「いや、たぶん曽祖父が景品でもらった気もします」などと言い出し、信用していいのかよくわからない人物だった。 真琴は刀を傾け、光に透かした。 刃文は美しい。だが、どこか妙に整いすぎている。古刀の気配も、新刀の力強さも、中途半端に混ざっていた。 彼女は机の上の瓶をちらりと見た。「……お父さん」「なんだ」「これ、もしかしたら“あの系統”かもしれません」「あの系統って、どの系統だ」「見た目だけ立派で、出自が情けない系統」 父は階下でしばらく黙ったあと、「うちで一番多いな」とだけ言った。 真琴は刀の根元に残ったごく薄い汚れを見つけた。赤茶色の染みでも、油でもない。指先でこすり、匂いを確かめる。さらに机の上の豆をひとつ拾って、鼻先へ寄せた。「……なるほど」 彼女は静かに階下へ降り、熊田を呼んだ。 熊田は落ち着きなく正座しながら待っていた。「で、どうでした!? 国宝級!?」「そこまではいきません」「重要文化財!?」「もっと違います」「じゃあ、名のある武士の佩刀とか」「たぶん違います」「たぶん!?」 真琴は刀を布の上に置いた。「結論から言います。この刀は、古刀ではありません」「な、なんだって……」「ですが、ただの模造刀でもない」「おおっ!」 熊田の目が輝いた。「おそらく昭和の終わり頃に作られた、特注品です」「特注品?」「はい。かなりしっかり作ってあります。観賞用というより、見せるための道具です」「見せる?」「ええ。たぶん“切れること”を証明する必要があった」 熊田はごくりと唾をのんだ。「……試し斬り用?」「いえ」「剣術道場の演武用?」「いえ」「まさか闇の――」「違います」 真琴は机の上の瓶を持ち上げた。「炭酸飲料の販促用です」「は?」 部屋がしんとした。「刀身の根元に残っていた成分、砂糖と香料でした。しかも今のものではなく、昔の三ツ矢サイダーに近い配合です。さらに銘に見えた刻印、よく見ると銘ではなく『一刀両断キャンペーン』の“断”の一部です」「は?」 熊田はさっきより深い“は?”を出した。 真琴は淡々と続けた。「昭和の地方商店街では、開店記念や売り出しで、妙に力の入った催しをやることがありました。これはたぶん、そのとき使われた“瓶を斬る演出用の大刀”です。実際には斬るというより、あらかじめ仕込みの入った飴細工か薄い氷柱を斬って、観客に『うおーっ』と言わせる類の」「じゃ、じゃあ家宝じゃないのか……?」「家宝ではありません」「先祖は武士じゃないのか……?」「むしろ販促に全力の酒屋か雑貨屋だった可能性が高いです」「そっちかぁ……!」 熊田は天を仰いだ。 父はその様子を見て、腕を組んだ。「しかし、よくそこまでわかったな」「ポスターです」「ポスター?」「壁の、あれ」 真琴が指した先には、店の奥に貼られた古い三ツ矢サイダーのポスターがあった。何十年も前に貼られたまま色褪せていたが、下のほうに小さく書かれている。“夏の特別実演 一刀両断! 三ツ矢サイダーの涼味演武” 熊田は目を細めた。「……あれ、うちの蔵にあった古いチラシにも、似た文句が……」「おそらく同じ催しです」「じゃあ曽祖父は」「武士ではなく、たぶん司会です」「司会!?」 しかも、と真琴は付け加えた。「刀の鞘の内側に紙片が詰まっていました」「なんて書いてあった!? 秘伝書か!?」「台本です」「台本」「『ここで一拍おいて、子どもを前に集めること』『サイダーはぬるいと不評が出るので氷を多めに』と書いてありました」「生活感が強い!」 熊田はしばらく黙っていたが、やがて肩を震わせ、笑い出した。「いやあ……うちの先祖、思ってたよりずっと庶民だな……」「でも、悪くありません」 真琴は少しだけ笑った。「人を驚かせて、喜ばせようとしていたんでしょう。立派な仕事です」「たしかに……武士ではないけど、商店街のエンターテイナーではあったわけか」 熊田は満足したように刀を抱えた。「よし、店に飾ります。“熊田家伝来”じゃなくて、“曽祖父のサイダーショー使用刀”って書いて」「正しい表記です」「ついでに乾物屋の前で実演でも――」「やめたほうがいいです」「だよな」 熊田が帰ったあと、父は真琴に尋ねた。「ところで、机の上の豆と芹はなんだったんだ」「あれですか」「鑑定に必要だったのか?」「いえ」「じゃあなぜ置いてあった」「今夜、豆ごはんです」「芹は」「お吸い物です」「サイダーは」「気分です」 父はうなずいた。「なるほど。全部に意味があるわけではないんだな」「そうです」 真琴は真顔で言った。「でも、虫眼鏡だけは意味があります」「うむ」「さっき床に落とした一円玉を探すのに使いました」 名鑑定士らしい顔のまま、真琴は懐から一円玉を取り出した。「あと、お父さん」「なんだ」「熊田さんの刀より大事なことが一つあります」「なんだ」「うちの壁のポスター、“ミツ矢サイダー”じゃなくて“三ツ矢サイダー”です」「……それが?」「さっきまでずっと、私、読み間違えてました」「鑑定士として致命的じゃないか」 真琴は少しだけ考えてから言った。「だから今日は、鑑定料を半額にします」「良心的だな」「その代わり、サイダー一本いただきます」「結局そこか」 こうして三ツ矢堂は、その日もまた、刀よりサイダーのほうが記憶に残る鑑定を終えたのだった。おわり昨日の昼に食べたジンギスカンが美味しかったので、すでにまた食べたくなってる。
2026.03.28
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今日は朝からお出かけ。今週は色々忙しかったけど、これで予定は最後だ。昼くらいに終わって、焼肉を食べて帰ってきた。サガリより、ジンギスカンがうまかった。ただ、切り方がケチ臭い。網の目の大きさを考えたらもっと肉も大きめに切るべきだ。と思った。あと、お水はセルフサービスで。っていうから、お水と一緒に並んでるお茶を注いだらお茶はドリンクバーを注文しないといけないらしい。そんなの先に言ってくれよ。言われてたらお茶は注がなかった。今日は何の日世界演劇の日さくらの日祈りの日オンライン花見の日京鼎樓の小籠包の日プレミアムフライデー仏壇の日ツナの日赤彦忌タイトル:プレミアムフライデーに賭けすぎた女 その店は、春になると少しだけ有名になる。 窓の外の桜が見事だから――というのが表向きの理由だが、本当は「なんとなく人生の重大な話が行われそうな雰囲気」があるからだ。告白、別れ話、和解、退職報告、あるいは親族会議。そういうものが、やけに似合う店だった。 だから真理子は、その席に座った瞬間、覚悟を決めた。 来る。 今日は、あの人が来る。 昨夜届いたメッセージは、たった一文だった。「明日、あの店で」 余計な説明はない。 絵文字もない。 句点すらない。 逆に重い。 三年前、真理子はこの店で恋人の健吾と別れていた。 正確には、健吾が「今は自分を見つめ直したい」と言い、真理子が「じゃあ見つかったら返しに来て」と言って終わった。 以来、健吾は見つかったのか迷子のままなのか、一切不明だった。 なのに昨夜、急に「あの店で」だ。 これはもう、再会である。 やり直しかもしれない。 少なくとも、重要な話ではある。 真理子は朝から大変だった。 服を三回着替え、髪型を二回やり直し、鏡の前で「久しぶり」と「え、急にどうしたの」を七種類練習した。 最終的には、あまり気合いを入れた感じを出さず、それでいて「ちゃんと生きてました」感もある絶妙な服装に着地した。 店に着いてからも抜かりはない。 姿勢よく座り、注文は上品にお茶と小籠包。 指先には、窓から舞い込んできた桜の花びらをそっと持つ。 我ながら、絵になる。 これで相手が来て、「変わってないな」 なんて言ったら、だいぶ困る。 でも困ってもいい。 今日はそういう日なのだ。 約束の時間が来た。 来ない。 五分過ぎた。 来ない。 十分過ぎた。 真理子は窓の外を見た。 桜はきれいだった。 とてもきれいだった。 きれいすぎて腹が立ってきた。 二十分過ぎた。 小籠包が来た。 湯気が立っている。 今が食べごろだ。 だがここで先に食べると、なんだか待ち合わせに負けた気がする。 三十分過ぎた。 真理子は一個だけ食べた。 思った以上に熱くて、上品に待つ女の顔のまま「ッッッッッ!」となった。 四十分過ぎた。 もう一個食べた。 今度は慎重に食べたので熱くなかった。 おいしかった。 腹が立った。 五十分過ぎた。 真理子は、「もしかしてこれはドッキリ番組で、どこかからカメラが撮っているのでは」と思い始めた。 もしそうなら、今のところ絵面は「桜を見ながら一人で小籠包を追加注文した女」である。 弱い。 一時間過ぎた。 ついに真理子はスマホを取り出した。 そして、昨夜のメッセージをもう一度開いた。「明日、あの店で」 送信者名を見て、真理子は静かにすべてを理解した。 母「……うそでしょ」 そのタイミングで、店の引き戸がガラッと開いた。「ごめんごめん! 町内会の人つかまっちゃって!」 入ってきたのは健吾ではなく、母だった。 しかも妙に元気だった。 春の陽気を全部吸ってきたみたいな顔をしていた。「え、あんたなんでそんなちゃんとしてんの?」「……」「その髪どうしたの?」「……」「えっ、泣いた?」「小籠包でやけどしただけ」 母は向かいにどかっと座ると、窓際の立て札を指さした。「見て見て。“プレミアムフライデー特別企画”で小籠包一個サービスなんだって! 二人で来たほうが得じゃない?」 真理子は、人生のいろいろな場面を思い出した。 受験の失敗。 失恋。 前髪を自分で切って終わった朝。 でも、今この瞬間ほど「私は何に本気を出していたんだろう」と思ったことはなかった。「お母さん」「なに」「メッセージ、もっと書けたよね?」「書けたけど、短いほうが大人っぽいかなと思って」「私の心の中では、元彼との再会か復縁か謝罪会見まで始まってた」「えっ、そんなに?」「しかも小籠包二個先に食べた」「じゃあちょうどよかったじゃない」「どこが!」「一人で二個食べる娘を見るより、四個食べる娘を見るほうが母として安心する」 母は店員を呼んで、にこにこしながら言った。「すみませーん、追加で小籠包ふたせいろ!」「なんで!?」「だってあんた、さっきから顔が失恋した人じゃなくて、完全に食べ直したい人の顔だもの」「見抜かないで」 結局、真理子はその日、母と並んで合計六個の小籠包を食べた。 さらに母は食後に言った。「で、本題なんだけど」「まだ本題あったの?」「お花見の場所取り、若い人のほうが足速いでしょ。朝六時お願い」「最悪だ!」 店中が少しだけ静かになった。 奥の席の老夫婦がこちらを見た。 店員がせいろを置きながら笑いをこらえた。 窓の外では桜が、まるで全部わかっているみたいに、はらはら散っていた。 真理子は湯のみを持ち上げ、深く息をついた。「……ちなみに、その“あの店で”って、私以外にも送った?」「送ったわよ。お父さんと、おばさんと、自治会の佐々木さん」「グループ招集じゃん!」 その瞬間、引き戸がまた開いた。「遅れてごめーん!」 父とおばさんと佐々木さんが、ほぼ同時に入ってきた。 真理子は思った。 復縁じゃなかった。 運命の再会でもなかった。 ただの町内会プレミアムフライデー小籠包会議だった。 しかも母は最後に、真理子へにっこり笑って言った。「でも、あんた今日すごくきれいよ。健吾くん呼べばよかったわね」 真理子は桜の花びらをそっと置き、静かに言った。「今からでも遅くないから、お母さんだけ外で待ち合わせしてきて」おわりてか、帰り道も眠かったが、帰って来てからも眠い。
2026.03.27
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今日はいい天気でだいぶ暖かかかった。昼間出かけるときは上着に悩むね。暗くなってからはさすがにちょっと寒いから何か必要だけど、昼間、車でちょっとちょっとくらいなら上着なくてもいいかもしれない。今日は何の日カチューシャの唄の日サク山チョコ次郎の日食品サンプルの日風呂の日プルーンの日ツローの日楽聖忌鉄幹忌犀星忌誓子忌タイトル:ミニパフェの決断商店街のはずれにある喫茶店「月曜の三時」は、少しだけ時間の流れが遅い店だった。木枠の窓。やわらかい電球。少しくたびれたメニュー板。そしてガラスケースの中には、季節を無視して一年中ならぶ色とりどりのパフェたち。結城しおりは、その店のいつもの席に座っていた。窓際の、午後の光がいちばんやさしく当たる席だ。しおりは考えごとをするとき、必ず甘いものを頼む。子どものころからそうだった。進路に迷ったときはプリン。就職で悩んだときはチョコレートパフェ。失恋した夜は、なぜかクリームソーダを二杯飲んだ。そして今日、彼女は人生でもかなり大きな選択を前にしていた。東京の出版社から、編集者として来ないかという誘いを受けていたのだ。いまの街を離れるか。このままここに残るか。友だちはみんな「行ったほうがいい」と言った。母は「若いうちは動いたほうがいい」と言った。父は「ただし家賃は高いぞ」と、やけに現実的なことを言った。しおりは三日前からずっと迷っていて、ついに自分のなかで結論が出せないまま、「月曜の三時」へ来たのだった。注文したのは、普通のパフェではなかった。店の名物、“試食用ミニミニパフェ”。親指ほどのグラスに、アイス、クリーム、ソース、クッキーまで全部のっている。見た目は本格的なのに、サイズだけがやけに小さい。しおりはそれを指先でつまみ、じっと見つめた。「人生って、こういうものかもしれないな」思わず、そんな言葉が口をついた。大きいと思っていた選択肢も、少し距離を置けば、指で持てるくらいの大きさになる。苦いことも甘いことも、案外きれいに一つのグラスに収まってしまう。大事なのは、量じゃなくて、自分で味わう覚悟なんじゃないか――。「ずいぶん深い顔してるねえ」声をかけたのは、店主の沢村だった。七十を過ぎているのに背筋がしゃんとしていて、蝶ネクタイが妙に似合う老人だ。「東京へ行くか迷ってるんです」と、しおりは正直に話した。「やりたい仕事ではあるんです。でも、この街も好きで。決めきれなくて」沢村はふんふんとうなずき、カウンターを拭きながら言った。「人はね、迷うときはだいたい、どっちを選んでもちゃんと生きていけるときなんだよ」しおりは、ほう、と小さく息を漏らした。「ほんとですか」「ほんとほんと。ほんとにダメな道は、だいたい迷う前に周りが止める」それは妙に説得力があった。しおりは少し笑い、ミニミニパフェを一口で食べた。甘かった。驚くほどちゃんとしたパフェの味がした。小さいくせに、妙に満足感がある。その瞬間、しおりのなかで何かがすとんと落ちた。――行こう。だめなら戻ってくればいい。この店だって、この街だって、なくなるわけじゃない。少し大きな場所で、自分がどこまでやれるか試してみよう。しおりは顔を上げた。窓の外の光が、さっきより明るく見えた。「決めました」「おお」「東京、行きます」沢村はにっこり笑った。「そうか。じゃあ、お祝いにこれをあげよう」差し出されたのは、小さな紙袋だった。中には、店のロゴ入りの焼き菓子が入っていた。しおりは思わず顔をほころばせる。「ありがとうございます。あの、今日の代金も――」すると沢村は手をひらひらさせた。「いいよいいよ。今日は相談料だけで十分」「相談料?」「うん。五千円」しおりは固まった。「……え?」「人生相談コース。うちの裏メニュー」「そんなのメニューに書いてないですよ!?」「書いてない。常連限定だから」「聞いてないです!」「でも、きみ、さっき“人生ってこういうものかもしれないな”って言っただろう。あれで相談開始」しおりは目を丸くしたまま、しばらく沢村を見つめた。沢村はまじめな顔でレジを打っている。カシャ、と乾いた音が店内に響く。ミニミニパフェ 280円人生相談コース 5,000円伝票には、きっちりそう印字されていた。しおりはしばらく黙っていたが、やがて吹き出した。笑いが止まらなくなって、窓際の席で肩を震わせた。「……東京でもやっていける気がしてきました」涙をぬぐいながらそう言うと、沢村はうなずいた。「そうだろう。五千円分の自信はつけて帰ってもらわないと困る」しおりはその日、人生でいちばん高いミニパフェを食べた。そして一か月後、東京へ引っ越した彼女が最初に企画した本のタイトルは――『悩んだら、とりあえず甘いもの』 だった。おわり今日は夜更かししたのにいつもの時間に起きたので眠いはずなんだけど、眠くもならず、昼寝もせずに過ごしていた。明日は眠くなるかもしれない。
2026.03.26
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今日は母を病院に連れて行った。んで、待ってる間、スタバでコーヒーを買ってメガドンキの駐車場で時間をつぶしていた。天気がいいので日高山脈がきれいに見えたのでついつい写真を撮ってしまった。スマホの写真ってなんかしょぼく写るなぁ。実際見たらもうちょっと迫力あるように見えるんだけどなぁ。って思ってたら、どっかのおばさんも同じように写真を撮ってた。俺よりだいぶ長めに撮ってた。 よっぽど気に行ったのかなぁ。でも今日はそんな気になるくらい山がきれいに見えた。今日は何の日拘留中または行方不明のスタッフと連帯する国際デー奴隷及び大西洋間奴隷貿易犠牲者追悼国際デー電気記念日散歩にゴーの日ドラマチック・デーサガミのみそ煮込の日ご自愛の日みんなでニッコリみんなで健康長寿の日EGSスリースマイルの日笑顔表情筋の日みつこの日ぷろぽりす幸子の日とちぎのいちごの日プリンの日いたわり肌の日蓮如忌天神の縁日タイトル:みつこの窓口商店街のはずれに、その窓口はあった。古いビルの一階、ガラス戸の向こうに、小さな木の机と、真鍮のランプがひとつ。夕方になると、街の灯りがにじみ始めるころ、そのランプだけが先に夜を引き受けるように灯された。窓口に立つのは、名札に「みつこ」と書かれた女性だった。年齢は七十前後だろうか。背筋はすっと伸び、話し方は静かで、相手の言葉を最後まで遮らずに聞く。そのせいか、この場所には不思議と、急いでいた人まで立ち止まってしまう空気があった。壁には、難しそうな掲示や、やさしい言葉の書かれた紙が並んでいる。「ご自愛」「拘留中または行方不明のスタッフと連帯」どれも少し重たくて、少しあたたかい。「ここは、何の窓口なんですか」初めて訪ねてきた高校生の真央が聞くと、みつこはランプの火を見ながら言った。「困ってる人が、自分で困ってるって言えないときに来る場所だよ」真央は、その答えが妙に胸に残った。学校でも家でも、誰も乱暴ではないのに、なんとなく息がつまる日がある。泣くほどではない。助けを呼ぶほどでもない。でも、少しだけ、自分がどこかに置き忘れられた気がする。そんな日だ。みつこは真央に、湯のみをひとつ差し出した。「ここではね、相談の前に、まず座るの」「相談の前に?」「立ったままだと、人は強がるから」真央は、ちょっと笑ってしまった。それから真央は、学校帰りに何度かそこへ寄るようになった。進路の話をした日もあった。友達に既読無視された話をした日もあった。特に話すことがなくて、ただ黙ってランプの火を眺めた日もあった。みつこは、いつも同じ調子だった。大げさに励まさない。かわいそうとも言わない。でも、話し終えるころには、少しだけ自分の輪郭が戻ってくる。ある日、真央は思いきって聞いた。「みつこさんって、前は何をしてた人なんですか」みつこは少し考えてから、机の上の冊子を整えた。「長いこと、人の顔を見てきたよ」「カウンセラー?」「まあ、似たようなものかねえ」その言い方が引っかかって、真央はますます気になった。数日後、商店街の福引き大会の日、真央はくじ引きの手伝いで早めに会場へ行った。すると、商店街の会長が拡声器を持って叫んでいた。「続きまして、特別企画! 今年もやります、“笑顔査定”! 審査員はもちろん、伝説のこの方! 元・全国百貨店お客様相談室主任、現・笑顔表情筋協会顧問、みつこ先生です!」ざわっと人が湧いた。真央は、思わず声が出た。「えっ」会場の端から、いつもの千鳥格子の上着で、みつこが現れた。だが、いつものみつこではなかった。片手にはクリッカー、首からは笛、胸には金色のバッジ。背後には「第一回・商店街笑顔持久選手権」の横断幕。みつこは壇上に立つと、驚くほど通る声で言った。「はい、口角二ミリ足りません! 次! あなた、目が笑ってない! でも素質はある! 次! その笑顔は作りすぎ、接客三年目のクセが出てる!」人々は次々に査定され、「自然な笑顔部門」「無理してないけど感じがいい部門」「雨の日でも返品対応できる顔部門」など、聞いたことのない部門で表彰されていった。真央は呆然としながら見ていた。相談者の話をじっと聞いていた、あの静かな人が。ランプの火を見つめていた、あの穏やかな人が。いまや商店街の真ん中で、町内会長の笑顔に向かって、「それは“愛想”です。“微笑”ではありません!」と、真顔でダメ出しをしている。競技が終わったあと、真央はみつこに駆け寄った。「みつこさん、何してるんですか……」「見ての通りだよ」「見ての通りが強すぎる」「困ってる人が、自分で困ってるって言えないときがあるだろう」「うん」「笑顔も同じなんだよ」「同じかなあ!?」みつこは少しだけ笑った。「だから私はね、長いこと、人の相談にも乗ってきたし、笑顔の矯正もしてきたの」「矯正」「口角は裏切らないからね」そして真央の顔をじっと見て、すっと指をさした。「真央ちゃん、最近ちょっと考えすぎ」「え」「右だけ半ミリ下がってる」「そんなのわかるんですか」「わかるよ。私はね」みつこは胸を張って言った。「元・百貨店クレーム対応主任で、現・商店街公認スマイル監査官だから」その瞬間、背後から会長が叫んだ。「みつこ先生! 次は“会釈の深さ選手権”お願いします!」みつこは真央に向かって、いつもの静かな声で言った。「また困ったらおいで。相談でも、笑顔でも」「その二択なんですか」「人生、だいたいその二つで何とかなるから」そう言って、みつこは笛をくわえ、壇上へ戻っていった。真央はしばらく立ち尽くしたあと、たまらず吹き出した。あの窓口がいつも妙に安心できた理由が、少しわかった気がした。たぶん、みつこは人の悩みを聞いていたんじゃない。顔つきを見ていたのだ。しかも、ものすごく本気で。おわり昼は回転寿司を食べて帰ってきました。釧路産の本マグロの中トロが美味しかった。隣の席のお兄さんがメバチマグロが準備中だからということで、メバチマグロの値段で出すので本マグロどうですか。って職人さんに言われていた。ちょっとずるいなぁ。って思った。
2026.03.25
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今朝、会社に行くときの気温は6℃だった。だいぶ暖かくなった気がするけど、家にいるとちょっと寒い気もする。そして今日も眠い。今週は色々忙しいなあ。毎日なんか予定がる。今日は何の日世界結核デー著しい人権侵害に関する真実に対する権利と犠牲者の尊厳のための国際人権デーホスピタリティ・デーマネキン記念日壇ノ浦の戦いの日連子鯛の日人力車発祥の日(日本橋人力車の日)恩師の日(「仰げば尊し」の日)未来を強くする日削り節の日ブルボン・プチの日檸檬忌マキノ忌地蔵の縁日愛宕の縁日タイトル:未来が見える男商店街のはずれに、変わった店があった。店の名前は「人力未来」。店の主人は、いつも静かな顔をした男だった。店の中には、難しそうな本や、木の札や、なぜか鯛の置物まで置いてある。町の人はみんな言っていた。「あの人は未来が見えるらしい」ある日、八百屋の佐藤さんが店に来た。最近、野菜が売れなくて困っていたのだ。「先生、うちの店、これからどうなりますかね」男は少し考えてから言った。「明日、店の前を掃除してください」「え?」「それから、にんじんを一番前に並べてください。あと、大きな声であいさつを」佐藤さんはがっかりした。未来を言ってくれるのかと思ったのに、ただのアドバイスだったからだ。でも、せっかくだからやってみた。すると次の日、前より少しだけ客が来た。その次の日もやってみたら、また少し売れた。一週間後には、店に前より人が集まるようになっていた。「すごい……本当に未来が見えてるのかもしれない」そのうわさは、あっという間に町中に広がった。受験を控えた学生も来た。「合格できますか?」男は言った。「今日から三時間、毎日勉強してください」ダイエットしたい人も来た。「やせられますか?」男は言った。「夜のおやつをやめて、毎日二十分歩いてください」仲直りしたい夫婦も来た。「元に戻れますか?」男は言った。「まず、相手の話を最後まで聞いてください」みんな最初は「それ、未来じゃなくて努力の話では?」と思った。でも、言われた通りにやると、本当に少しずつうまくいくのだった。そのうち、町の新聞記者が取材に来た。「あなたは本当に未来が見えるんですか?」男は静かに答えた。「見えません」記者はびっくりした。「えっ、見えないんですか?」「はい」「じゃあ、どうしてみんな当たるんです?」男はまじめな顔で言った。「みんな、やればよくなることを、やってないだけです」記者はぽかんとした。男は続けた。「私は未来を見ているんじゃありません。その人に足りないことを言ってるだけです」次の日、新聞には大きくこう載った。『未来が見える男の正体、ただの“正しいことを言う人”だった』町の人はその記事を読んで笑った。でも、そのあと少し考えた。たしかにそうだった。未来屋の男は、魔法みたいなことは何もしていない。ただ、面倒でみんなが後回しにしていることを、はっきり言っていただけだった。その日も新しいお客さんが来た。「先生、私の未来はどうなりますか?」男は落ち着いて答えた。「まず、朝ちゃんと起きてください」客はいやそうな顔をした。男はうなずいて言った。「はい。そこが一番の分かれ道です」結局この店で一番当たる“未来予言”は、いつも同じだった。『ちゃんとやれば、たぶん良くなる』そして町の人は、ようやく気づいた。この店は未来を売っているんじゃない。やる気を無理やり出させる店だったのだ。店の前の看板には、今日も大きくこう書いてある。人力未来つまり――この店の意味は「未来は人に頼るな、自分で動け」だった。おわり
2026.03.24
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今日もこの時間になると眠い。今日は朝から片道1時間のところに母を送ってきて、そのあと帰ってきて仕事して、また母を迎えに行ってきた。疲れた。眠いよ。途中の道端の畑に白鳥の群れがいた。年前に来たやつらが、越冬して帰る途中なのかな。白鳥たちのいる畑の道路を挟んだ向かい側には鶴のカップルもいた。いつもこの辺にいる鶴だろう。白鳥たちに、自分たちの縄張りだと静かに訴えてるようだった。今日は何の日世界気象デー彼岸ホットサンドを楽しむ日スジャータの日裏旬ぶどうの日国産小ねぎ消費拡大の日天ぷらの日乳酸菌の日不眠の日タイトル:『気球の見張り番と、三角サンドの午後』 山あいの小さな喫茶店「窓辺測候所」には、少し変わった決まりがあった。 それは、雨の日の夕方にだけ、窓際の席へ座った客は「外に浮かぶものをひとつ報告すること」。 鳥でもいい。雲でもいい。洗濯物でもいい。 とにかく何かを見つけて、店主に伝えなければならない。 その日、彼女は湯気の立つコーヒーと、焼き目のきれいなホットサンドを前に、静かに窓の外を眺めていた。 雨粒がガラスを細く流れ、夕焼けは雲のすき間でやわらかく燃えている。遠くの山にはまだ少しだけ冬の気配が残り、村の屋根はしんとしていた。「今日は、何が見えますかねえ」 カウンターの奥から、店主が言った。 彼女はサンドイッチを持ったまま、少し目を細めた。「……気球、ですね」 窓の外、夕空の下に、丸い影がいくつか浮かんでいる。 ひとつ、ふたつ、みっつ。 どれも静かで、妙に遠慮がちに、村の上に浮いていた。「やっぱり見えましたか」 店主は満足そうにうなずいた。「このあたりでは、年に一度だけ“気球の会議”があるんですよ」「気球の会議?」「ええ。風向き、雨上がりの匂い、山の雪の残り具合、あと人間がちゃんと冬物をしまう気になっているかを確認して、春を本格的に始めていいか決めるんです」 彼女は笑いそうになったが、店主の顔があまりに真剣だったので、いったん飲み込んだ。 この店はそういう店なのだ。冗談みたいな話を、冗談でなく語る。「じゃあ、あの気球たちは今、会議中なんですか」「そうです。議題はだいたい毎年同じです。“桜は少し急ぎすぎではないか”“上着は何枚で許されるか”“人はこたつを片づける覚悟ができているか”」「ずいぶん大事な会議ですね」「特に最後が揉めるんです」 彼女はつい笑った。 たしかに、こたつをしまう決心は、春の中でもかなり難しい部類に入る。 そのとき、店主がテーブルの隅にある古いはかりを指さした。 銀色の丸い文字盤が、雨の光を鈍く返している。「それ、気になります?」「ちょっとだけ」「昔はね、あれで“気持ちの重さ”を量ってたんです」「またすごいこと言いますね」「本当ですよ。落ち込んでる人が来たら二百グラムくらい増えるし、恋してる人は三百グラム軽くなる。春先は特に誤差が大きくて、なんとなく浮かれてる人が多いですから」「便利すぎませんか、そのはかり」「でも正確じゃないんです。見栄っ張りには弱い」 窓の外では、気球がまだ浮かんでいた。 灰色の雲、やわらかい夕焼け、そのあわいにぽつりぽつりと丸い影。 彼女はサンドイッチをひとくちかじり、ふうっと息をついた。「いいですね、こういうの」「何がです?」「ちゃんと説明できないけど、外に何かが浮かんでいて、自分はここであったかいものを食べてる感じ」 店主はうれしそうにうなずいた。「それが、この店のいちばん高いメニューです」「えっ」「景色代、空気代、安心代。合わせて千二百円です」「高っ」「冗談です」 店主はにやりとした。「会計は普通です」 彼女は笑って、コーヒーを飲んだ。 そのときだった。 店の奥から、がたん、と大きな音がした。 続いて、ばたばたと慌ただしい足音。 店主の顔色が変わる。「あっ、しまった」「どうしたんですか?」 店主は厨房の奥を見て、心底まずそうな声で言った。「気球、回収するの忘れてた」「……回収?」 彼女が立ち上がって奥をのぞくと、勝手口の向こう、裏庭に置かれた大きな送風機のそばで、数本の長い棒が風に揺れていた。 その先に結ばれていたのは―― さっきまで窓の外に浮かんで見えていた、丸い影。 白や茶色の、ただの巨大な風船だった。 しかも一本には、マジックでこう書かれていた。「春、始めていい?」 彼女はしばらく無言で店主を見た。 店主は観念したように肩をすくめた。「村の人に季節感を出すための、毎年の演出でして」「気球の会議じゃなかったんですか」「会議はしてます。私がひとりで」「議題は?」 店主は真顔で答えた。「今年もホットサンドを、三角のまま続行してよいかどうかです」 彼女はとうとう吹き出し、食べかけのサンドイッチを見た。 きつね色の焼き目のついた、完璧な三角形。「で、結論は?」 店主はうやうやしく一礼した。「満場一致で可決です」 窓の外では、回収しそびれた一個だけが、まだ夕空にふわふわ浮いていた。 春はたぶん、ああいう少し雑なやり方で始まるのだろうと、彼女は思った。おわり最初に出てきた話の時期が秋だったので、季節を変えてもらった。
2026.03.23
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今日はずっとネトフリのワンピースを見ていた。面白かったよ。この続きが見たいけど、いつ見れるようになるんだろうね。今日の気になったニュースは、女子サッカー日本代表がアジアチャンピオンになったこと。やっぱ強いな。長谷川が澤的な存在なのかな。みんな海外リーグでやってるんだなぁ。そりゃあ強いわ。と、ロコソラーレが準決勝で敗退。3位決定戦へ。ってことかな。ロコソラーレ調子いいなぁ。負け試合でも楽しそうにやってるのがいいね。今日は何の日世界水の日彼岸放送記念日感動接客の日さくらねこの日面発光レーザーの日工場扇の日「Heart FM」の日夫婦の日ショートケーキの日禁煙の日デルちゃん誕生の日ラブラブサンドの日カニカマの日なないろSMSの日貝殻忌タイトル:『感動接客の日の午後四時』午後四時を少し回ったころ、地方FM局「Heart FM」の第2スタジオには、妙に静かな緊張感が漂っていた。ミキサー卓の前に座る男の名は、真壁慎一。この局で十七年、音楽番組も災害情報も交通速報も担当してきたベテランのラジオパーソナリティだ。声は落ち着いていて、言葉を急がない。そのせいか、リスナーからは「夜道でいちばん信じられる声」と呼ばれていた。だがその日の真壁には、いつもの余裕がなかった。スタジオの窓の外、満開の桜の下に、三匹の猫が並んで座っていたからである。一匹だけならいい。二匹でも、春だな、で済む。しかし三匹が、まるで何かを待つように一定の間隔で座り、しかもときどきこちらを見てくるとなると、話は少し変わってくる。「……来てますね」ディレクターの大塚が、ガラス越しに小声で言った。真壁は小さくうなずいた。「来てるね」何が来ているのかは誰も説明しなかったが、スタジオにいる全員が、なんとなく同じものを感じていた。今日は特別番組の日だった。局内のドアプレートにも貼られている通り、テーマは「感動接客の日」。商店街の店員、タクシー運転手、病院の受付、喫茶店のマスター――リスナーから寄せられた「忘れられない親切」のエピソードを読み上げる二時間生放送である。真壁は本番前、手元のメモにこう書いていた。・泣かせにいかない・静かに届く話を選ぶ・でも今日は猫がいる最後の一行は、自分でもなぜ書いたのかわからなかった。赤く光る「ON AIR」のサインが灯る。「こんにちは。Heart FM、午後の特別番組『まちのやさしさ通信』、お相手は真壁慎一です。今日は“感動接客の日”ということで、皆さんから届いた、胸に残る小さな親切のお話をお届けしていきます」いつもの低く澄んだ声がスタジオに満ちる。スタッフたちは少し安心した。やはり真壁は本番に強い。最初の便りは、七十代の女性からだった。雨の日、スーパーで転びそうになったとき、見知らぬ高校生の店員が、何も言わずにそっとカゴを持ってくれた話。二通目は、夜のコンビニで、疲れ切った看護師に「おつかれさまです」と言った新人アルバイトの話。三通目は、昔ながらの喫茶店で、注文を間違えた客に「今日はそういう気分の日ですよ」と笑ってナポリタンを出してくれたマスターの話。読まれるたび、真壁は少し間を置いて、言葉を添えた。「親切って、立派なことじゃなくていいんですね」「覚えているのは、してもらった内容より、そのときの顔だったりします」「人は、雑に扱われたことも忘れませんが、丁寧に扱われたことは、もっと忘れません」その声音に、メッセージは次々と届いた。メール、FAX、局のアプリ経由の投稿。スタッフが追いつかないほどだった。番組後半に入るころには、局内の空気も変わっていた。さっきまで“猫がいる”とざわついていた若いADまで、鼻をすすりながら投稿を仕分けている。「真壁さん、これ読んでください」ディレクターが差し出した一枚の紙には、短い投稿が印刷されていた。ラジオでいつも落ち着いた声を届けてくれる真壁さんへ。実は三年前、病院の待合室で、あなたにそっくりな人に声をかけられました。“大丈夫ですよ、今日はたぶん、ちゃんといい日になります”そう言われただけで救われました。あれがご本人なら、ありがとうございました。違う人でも、ありがとうございました。真壁はそれを読んだあと、しばらく黙った。生放送での沈黙は、本来なら事故に近い。だがその数秒は、不思議と誰にも長く感じられなかった。「……似てる人、いますからね」そう言って、真壁は少しだけ笑った。その笑い方が妙に誠実で、スタジオの外にいた営業部の課長まで、廊下でハンカチを出した。そして番組は終盤へ向かった。「それでは最後の一通です」真壁が選んだのは、差出人の名前のない、たった一行の投稿だった。いつも窓の外から聞いています。今日は魚の話がなくて残念です。スタジオ内が静まり返った。大塚が眉をひそめる。ADが原稿を見直す。放送作家が小声で言った。「……何これ?」真壁だけが、窓の外を見た。桜の木の下にいた三匹の猫が、きれいに一列に並んで、こちらを見ていた。真壁はゆっくりマイクに向き直り、落ち着いた声で言った。「えー、匿名希望の方、ありがとうございます。魚の話はまた次回、たっぷりお送りします」その瞬間だった。窓の外の三匹が、ぴたりと同時に立ち上がり、満足したように去っていったのである。放送終了後、スタジオは騒然となった。「怖い怖い怖い!」「誰が送ったんですかそのメール!」「外にいた猫、見ました! 絶対タイミング合わせてましたよね!?」だが真壁は、ヘッドホンを外しながら、いつもの調子で言った。「別に珍しいことじゃないよ」「珍しいです!」とスタッフ全員が言った。真壁は机の脇の小さな引き出しを開けた。そこには、きれいに小分けされた煮干しの袋が、ぎっしり詰まっていた。「この番組の前、毎回ちょっとだけ“放送内容の打ち合わせ”をしてるから」「誰とですか?」真壁は当然のように答えた。「地域猫の聴取モニターと」スタッフが固まる。さらに真壁は、卓上のメモ帳をひらりと見せた。そこには、今日の進行メモの下に、びっしりとこう書かれていた。・一匹目:トークは静かめ希望・二匹目:BGM長いと寝る・三匹目:魚トークは必須「三匹目、今日は不満だったみたいだね」真壁はそう言って、真面目な顔で煮干しを一本取り出した。そのとき、ずっと気になっていた若手ADが、ドアのプレートを見上げてぽつりと言った。「……“感動接客の日”じゃなくて、あれ“感動接客の口”って読めません?」全員で見た。プレートにはたしかに、やや達筆な書体で感動接客の日と書いてある……ように見えたが、言われてみれば最後の字は妙に縦長で、たしかに「口」にも見えなくはない。真壁は少し考えてから、静かにうなずいた。「なるほど。じゃあ今日のテーマ、最初から“感動接客の口”だったのかもしれないね」「どういう意味ですか」真壁は窓の外を見た。桜の木の下で、三匹の猫がまたこちらを見ていた。そして、いつもの“夜道でいちばん信じられる声”で、こう言った。「要するに――この局、本当のスポンサーは猫なんだよ」翌週から番組名はひっそり変わった。『真壁慎一の さかなとやさしさ通信』局内で反対した者は、一人もいなかった。なぜなら編成会議の席に、いつの間にか三匹、座っていたからである。おわり
2026.03.22
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昨日の夜また雪降ったのかな、今日、また少し白いものがあったなぁ。なかなか春にならないねえ。今日はちらっと高校野球を見たら北海道代表の北照が0-4で負けていた。昨日ちょうどキャプテン2を読んでたんで、マンガみたいな逆転劇はなかなかないなぁ。って思った。その裏で高木美保の最後のレースもちらっと見た。最後まで頑張ってたね。いい選手だったよ。お疲れさまでした。今日は何の日国際人種差別撤廃デー世界詩歌記念日世界ダウン症の日国際ノウルーズ・デー国際森林デー彼岸ランドセルの日催眠術の日カラー映画の日ツイッター誕生日日本手ぬぐいの日プリの日はじめようの日アジフライの日ベイブレードの日日南一本釣りかつおの日バルブの日自動販売機の日マリルージュの日myDIYの日ゼクシオの日(XXIOの日)漬物の日木挽BLUEの日オコパー・タコパーの日同窓会の日九山忌タイトル:ランドセル探偵、午後三時の張り込み商店街のはずれにある古い喫茶店「風待ち」には、午後三時を過ぎると、不思議と人が集まってくる。散歩の途中でひと休みする老人。買い物帰りの主婦。なぜか毎回同じ席で将棋の本を読む高校生。そして、窓際の席にきちんと座る、ひとりの若い女性。彼女の名は、真白さやか。年齢不詳。職業不詳。だが、この町ではちょっとした有名人だった。「見た目は穏やか、中身は執念」そんな勝手な標語を近所の文具店の店主につくられたほど、彼女は観察が得意だった。今日もさやかは、缶コーヒーを机の端に置き、古いカメラを手元に据え、店の外を静かに見ていた。背中には、つやつやした黒いランドセル。年齢にまったく似合っていないのに、なぜか異様に板についている。店主のマスターが、小声で言った。「今日は何を追ってるんです?」さやかは穏やかに笑った。「この町の“なくなりもの”です」「なくなりもの?」「今月に入ってから、商店街でいろんな物が消えてるんです。たい焼き屋の木札、薬局の招き猫、八百屋の値札、クリーニング店のハンガーまで」「ハンガー盗む人います?」「いるんです。少なくとも、なくなってます」マスターは腕を組んだ。「それは……地味ですねえ」「派手な事件は、だいたい最初から派手です。でも地味な事件は、最後に変な顔をします」名言のようでいて、よく考えると意味はあまりわからなかった。だが、さやかは本気だった。彼女は毎日この席に座り、通りを行き交う人々を眺めていた。カメラで撮るわけではない。ただ置いてあるだけだ。「カメラがあると、こちらが観察されているように見えないでしょう」と本人は言う。理屈はわかるような、わからないような。その日、店の前を、白い手ぬぐいを首に巻いた豆腐屋の主人が通った。続いて、自転車に乗った郵便配達員。それから、風に飛ばされそうな帽子を押さえながら歩く観光客の夫婦。さやかの目が、すっと細くなった。「来ました」「犯人ですか?」「いえ、“二番目に怪しくない人”です」「いちばん怪しくない人じゃなくて?」「いちばん怪しくない人は、たいてい本当に怪しくないので」そう言って立ち上がると、さやかはランドセルを背負い直し、店を出た。マスターは、気になって窓からのぞいた。さやかが追っていたのは、和菓子屋の前を掃いていたごく普通のおばあさんだった。町内でも評判の、腰の低い、やさしい人だ。人のものを盗むようには、とても見えない。さやかは声をかけ、しばらく穏やかに話し込んでいた。やがて、おばあさんが「あらあら」と笑いながら、買い物袋の中を見せる。すると、さやかは深くうなずいて何かを受け取り、喫茶店へ戻ってきた。「どうだったんです?」マスターが身を乗り出すと、さやかは机の上にそれを置いた。クリーニング店のハンガーだった。「当たりです」「えっ」「でも、犯人ではありません」「どういうことです?」「拾い物です。風で飛んできたハンガーを、親切に預かっていただけでした」「じゃあ、事件じゃなかった?」「いいえ」さやかは人差し指を立てた。「ハンガーが風で飛んだなら、ほかの“なくなりもの”も、持ち去られたとは限らない」マスターは、はっとした。その日の夕方、さやかは商店街じゅうを歩き回った。たい焼き屋の木札は、排水溝の脇で見つかった。薬局の招き猫は、向かいの雑貨屋の棚の陰から出てきた。八百屋の値札は、なぜか金物屋の風鈴にひっかかっていた。そして翌日、ついに真相が明らかになる。原因は、商店街の新名物として吊り下げられた大量の短冊飾りだった。見た目は風情があったが、風の通り道を微妙に変えてしまい、通りに局地的な強風を発生させていたのである。町内会長は頭を抱えた。「つまり犯人は……風?」「正確には、善意の飾りつけによる空力のいたずらです」さやかはそう言って、店先の短冊をひとつ指でつまんだ。みんなが感心した。「すごいなあ、真白さん」「名探偵だ」「やっぱり違うねえ」だが、マスターはひとつだけ気になっていた。「ところで真白さん」「はい」「そのランドセル、ずっと気になってたんですけど……何なんです?」さやかは少しだけきょとんとして、それから当然のことのように答えた。「探偵七つ道具が入ってます」「たとえば?」彼女はランドセルを開けた。中から出てきたのは、虫眼鏡、方位磁針、メジャー、付箋、折りたたみ傘、小型双眼鏡、どら焼き、替えの靴下、町内地図、絆創膏、割り箸、そして——ぴかぴかの小学校の連絡帳だった。マスターが固まる。「……連絡帳?」さやかは微笑んだ。「はい。今朝、母に“夕方までに帰ること”って書かれました」「お母さんに?」「ええ」「真白さん、おいくつでしたっけ」さやかは缶コーヒーをひとくち飲み、窓の外を見ながら静かに言った。「三十二です」その瞬間、店内にいた全員が同じことを思った。この町でいちばんの謎、まだ解決してないな。おわり三連休だけど特に出かける予定はない。が、来週はもしかしたら忙しかもしれない。そっか、年度末だもんな。
2026.03.21
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今日は春分の日で会社行かないかなぁ。って思ってたけど、朝歯磨きをして、いつものトレーニングをし終った後にメールが入って、あー、やることあったの忘れてた。ってなって、昼前にちょっとだけ会社に行って仕事してきた。んで帰ってきたときにクロネコの人が来て、この前はすいませんでした。なんて言われたけど、俺は別に何とも思ってない。もう扉は直ってるし、だから別にいいよ。と言っておいた。それより、同じ日に、別件でクロネコの人から電話があって、ガラスの件かと思ったら、荷物の方のガラスの瓶が割れて、返品するからアマゾンと話してってことだった。その件を忘れてたので、配達の人が帰った後アマゾンとチャットして返金してもらうことにした。ふと思い出した全く関係ない話なんだけど。ちょっと前にビジホに泊ったんだよね。朝ごはん付きだったんだけど、朝は食べずに帰ってきたんだよね。で、チェックアウトするときに1階の食堂から朝ごはんの匂いがするんだよ。実家に住んでた頃を思い出したよ。朝から煮魚の匂いとかするのがなんか嫌だったけど、それを懐かしく感じるようになってたんだよね。匂いってのは記憶に関係が深いなぁ。って思った。今日は何の日春分春分の日国際幸福デー彼岸電卓の日上野動物園開園記念日LPレコードの日サブレの日日やけ止めの日未病の日さつま揚げ(つけあげ)の日ミニオンの日はぴ活の日はらぺこあおむしの日理化学研究所創立の日アクションスポーツの日昔ピュアな乙女達の同窓会の日酒風呂の日ワインの日発芽野菜の日シチューライスの日信州ワインブレッドの日キャッシュレスの日竹冷忌あー春分か。お墓参り行かないといけないのか。タイトル:幸福係の午後町はずれの古い家では、毎週木曜日の午後になると、近所の人たちが自然と集まってきた。誰が呼ぶわけでもない。回覧板に書いてあるわけでもない。ただ、二時を少し過ぎるころになると、誰かが引き戸を開けて「こんにちは」と言い、誰かが湯のみを並べ、誰かが漬物の皿を置く。そんなふうにして、静かに会が始まるのだった。その家の主は、みよ子さんという。穏やかな笑顔をたやさず、話すときは相手の目を見て、うなずくのが上手い。誰かが孫の話をすれば「それは楽しみだねえ」と言い、畑の不作をこぼせば「今年の天気じゃ無理もないよ」と受け止める。言葉を返すたび、相手の肩から少しだけ力が抜けていくような、不思議な人だった。みよ子さんの家には、昔のレコードプレーヤーがある。木の箱に収まった立派なもので、透明なふたには細かい傷がいくつもついていた。木曜の会が始まると、みよ子さんはそこから一枚選び、針をそっと落とす。流れるのは古い歌謡曲だったり、軽快なジャズだったり、時には童謡だったりした。「音楽があると、みんな少しだけ昔に戻れるからね」それが、みよ子さんの口ぐせだった。その日の卓上には、皿に盛られた揚げ菓子、包み紙のまま積まれたバターサブレ、読み込まれた絵本、それから大きな電卓が置かれていた。初めて来た人は、だいたいそこで首をかしげる。お茶会に電卓。しかも業務用みたいにごつい。けれど常連たちは誰も気にしない。誰かが「最近、病院代がさあ」と言えば、みよ子さんは電卓を引き寄せ、ぴっ、ぴっ、と叩く。年金と食費と灯油代をざっと計算し、「大丈夫、今月あと三回は堂々とサブレが買える」と宣言する。すると部屋のあちこちで笑いが起きる。近所の人たちは、みよ子さんのことを陰でこう呼んでいた。“幸福係”悩みを聞いて、お茶を出して、甘いものをすすめて、だいたい最後にはなんとか笑わせる。胸元につけた丸いブローチには、赤い糸で少し不格好に「Hapiness」と刺繍されていた。本当は “Happiness” だろう、と何人かが指摘したこともある。けれど、みよ子さんは毎回こう言うのだ。「一個足りないくらいが、ちょうどいいの。幸せって、完璧すぎると落ち着かないから」それを聞くたび、みんなはなるほどと感心した。深い。じつに深い。さすが幸福係だ、と。その日も、六人ほどの近所の女性たちが卓を囲み、窓から入るやわらかい光のなかで、思い思いに喋っていた。息子夫婦の引っ越しのこと。最近読んだ本のこと。膝の痛みのこと。スーパーの値上がりのこと。みよ子さんは、揚げ菓子の皿をそっと前に寄せながら、一人ひとりの話を丁寧に受け止めていた。ときどき笑い、ときどき眉を寄せ、ときどき電卓を叩き、ときどきレコードの針を上げる。部屋の隅では、絵本の『はらぺこあおむし』が開かれたまま、鮮やかな緑をのぞかせていた。孫が置いていったものらしい。床には小さなぬいぐるみも転がっている。時間がそこで少しだけ溶けているような、やわらかな空間だった。やがて、誰かがぽつりと言った。「みよ子さんは、どうしてそんなに人を元気にできるの」部屋が少し静かになった。みよ子さんは窓の外を見た。遠くに見える洗濯物が、春の風にわずかに揺れている。「うーん」と彼女は言った。「若いころ、いろいろ失敗したからかもしれないねえ」誰も口を挟まない。みよ子さんは続けた。「怒ったり、焦ったり、見栄を張ったり。そういうのを一通りやるとね、最後は、お茶とお菓子と相づちが一番強いってわかるのよ」みんなはしみじみとうなずいた。ああ、そうだ。人生の答えって、案外そういうことかもしれない。窓の光、レコードのかすかなノイズ、湯のみの湯気。その場にいる全員が、木曜日のこの時間を少し神聖なもののように感じていた。すると、玄関のほうでガラリと戸が開いた。「すみませーん!」元気な声とともに、宅配便の若い配達員が顔をのぞかせた。「あ、みよ子さん。注文の品、届きました!」「はーい、そこ置いといて」配達員は慣れた様子で、細長い段ボール箱を二本、居間の隅に立てかけた。箱の側面には大きく品名が書いてある。『業務用 電卓 特大サイズ』『パーティー向け揚げ物盛付け皿 10枚セット』部屋の空気が、一瞬だけ止まった。常連の一人が、そっと聞いた。「……みよ子さん、これ何に使うの?」みよ子さんは、まるで隠す必要もないことのように答えた。「何にって、来月から本格的に始めるのよ」「何を?」みよ子さんは胸を張り、例の刺繍ブローチをちょんとつまんだ。「町内会公認・おやつ会計係。このバッジ、そのユニフォームなの」沈黙ののち、誰かが絞り出すように言った。「……幸福係じゃなかったの?」みよ子さんはきょとんとして、「違う違う。“Hapiness”でしょ?」と言った。「“ハピネス”じゃなくて、“ハイ・ピーナッツ”の略。落花生おやつ普及委員会。去年わたしが勝手につくったの」その瞬間、部屋じゅうに爆笑が起きた。深い話だと思っていた言い間違いも、人生訓も、幸せの哲学も、まさかの全部あとづけだったのである。みよ子さんは笑いながら、揚げ菓子の皿を差し出した。「ほら、笑ったらお腹すくでしょ。まず食べて。それで、会費は一人百五十円ね」そして脇の大きな電卓を引き寄せると、得意げにキーを叩いた。ぴっ。ぴっ。ぴぴっ。レコードの向こうで針が小さく跳ね、古い歌がまた流れ出す。その日から町の人たちは、木曜の集まりをこう呼ぶようになった。“しあわせの会”ではなく、“会計のしっかりしたお茶会”と。おわりロコソラーレの話題がXで流れてくるんだよね。絶好調なんだよ。でさ、この前のオリンピックの代表はロコソラーレじゃなかったんだけど、やっぱロコソラーレが出たほうがよかったんじゃねーの。って言ってる人がいるとかいないとか。いや、それは違うんだよ、ロコソラーレは、オリンピックで代表を争った仲間たちの戦いぶりを見て燃えてるんだよ。だから調子もいい。って、そういうことだと思ってるんだけど。どうでしょう?ちがうか。
2026.03.20
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WBCも、パラリンピックも、終わってしまったと思ったら、春の高校野球が始まったよ。見てないけどさ。あれ、ということは、もう春休みか。春休みって短いイメージだけど、大学の時は長かったなぁ。どっか旅行でも行っとけば行っとけばよかった。と今更ながらに思う。桜が咲いたニュースもやってたし春の話したけど、今朝は雪がちらついてました。今日はお日様も出ないからなんか寒いし。この辺は桜も春ももう少し先だね今日は何の日ミュージックの日彼岸カメラ発明記念日立庁記念日(神奈川県)ミックの日ウィッグ(Wig)の日眠育の日銀座コージーコーナー・ミルクレープの日目覚めスッキリの日クレープの日シュークリームの日熟カレーの日松阪牛の日共育の日いいきゅうりの日イクラの日食育の日熟成烏龍茶の日「森のたまご」の日タイトル:『午後二時十分の記録』 男は、毎週木曜日の午後二時十分に同じ路面電車に乗る。 港の脇を走るその車両の、進行方向に向かって左側、二人掛けの窓際。晴れの日も曇りの日も、雪まじりの風がガラスを鳴らす日も、ほとんど同じ席に腰を下ろす。灰色のジャケットに細い眼鏡、膝には古い文庫本が二冊ほど。手には使い込まれた小型のカメラ。足元には白い紙箱がひとつある。箱の中には、その日買った菓子が入っている。 何かの調査をしている人らしい、と最初に教えてくれたのは、停留所前の喫茶店の店主だった。「店ではあまり多くを話しません。ただ、窓際の席に座って、湯気の立ち方をよく見ておられます。飲み終える前に、必ず一度メモを取るんです」 古書店の主人も、その男のことを覚えていた。「時刻表や旅行記をよく買っていかれます。線の引き方が丁寧でね。どこを読んでいるのか見えることがあるんですが、土地の名所というより、乗り継ぎや待ち時間の記述を追っているようでした」 菓子店の店員は、白い箱を包みながらこう話した。「同じものを頼まれることが多いですね。持ち歩きに向いているものを、ずっと考えておられるみたいでした」 私は地元の小さな冊子で人物記事を担当しており、その男への同行をお願いした。電話口の声は静かで、拍子抜けするほど事務的だった。「結構です。いつもの便にお乗りください。話せることは話します」 当日、男はすでに席についていた。車窓の向こうには赤レンガの建物が見え、そのさらに向こうに、淡く光る水面が続いていた。電車が動き出すと、彼は窓枠、吊り革の影、座席の端に落ちる午後の光、そうしたものを順番に写真に収めていった。どれも派手な被写体ではない。だが、視線にためらいがない。「何を記録されているんですか」 私がそう尋ねると、男は手元のノートを閉じて言った。「ある条件がそろった移動時間について調べています」「ある条件?」「車窓、光、揺れ、読書、甘味。この五つです」 車輪の音が一度大きく響いて、また遠のいた。男は続けた。「特別な日でなくても、移動の途中にだけ生まれる感触があります。目的地に着く前、何かになる前の時間です。そういう時間が、人の記憶にどう残るのかを見ています」 言葉は穏やかで、説明はよく整理されていた。ノートを見せてもらうと、そこには日付、天候、乗車区間、座席位置、菓子の種類、頁数、読書開始時刻、最初に窓の外を見た時刻などが整然と並んでいた。書き込みには迷いがなく、何年も同じ形式で続けてきたことが分かる。「いつから続けているんですか」「三年半になります」「ずいぶん長いですね」「一度では見えてこないので」 男はそう言って、しおりの挟まった文庫本を開いた。古い随筆だった。海辺の町を走る乗り物の中で、菓子の匂いと本の紙の匂いが混じり合い、理由もなく昔を思い出した、という一節に線が引かれている。「最初のきっかけは、こういう文章でしたか」「文章でもあり、経験でもあります」 男は窓の外に目を向けたまま答えた。「以前、何でもない午後の移動中に、不意に気持ちが整ったことがあったんです。景色がよかったのか、本の内容がよかったのか、たまたま甘いものを持っていたからなのか、自分でも分からなかった。ただ、その時間だけは、妙に正確に残ったんです」 路面電車は海沿いのカーブに差しかかっていた。窓ガラスに斜めの光が入り、男の指先とカメラの金属部分が一瞬だけ明るくなる。彼はその光を見て、時計を確認し、ノートに数字を書いた。「再現しようと?」「再現というより、条件を確かめるためです。個人的な感覚でも、繰り返し観察すると輪郭が出てきます」 車内には地元の高齢客が何人かいて、男に軽く会釈する人もいた。そのうちのひとりが、通路越しに声をかけた。「先月の集まり、面白かったですよ」「ありがとうございます」「今度は秋にもやるんですか」「比較対象がそろえば」 そのやり取りのあとで事情を聞くと、男は町内会館で折々に小さな話をしているのだという。移動時間と読書、菓子と車窓について。誰に頼まれたでもなく始めたが、聞きに来る人が少しずつ増えたらしい。「地域の記憶にも関係があると思っています」と男は言った。「町の印象は名所だけでできるわけではありません。移動中の眺め、待ち時間の匂い、そこで手に持っていたもの。そういう細部で、その土地が残ることがあります」 終点が近づくころ、男は足元の白い箱を膝に載せた。中には、丸く切られたバウムクーヘンがひとつ入っていた。箱の蓋を開け、まず断面を撮影し、それから窓際に少し寄せて光の入り方を見た。ノートに時刻を書き込み、本を閉じ、ようやく一口だけ食べる。 私は黙ってその手順を見ていた。動きに無駄がない。長く続けてきた人の所作だった。 しばらくして男は言った。「今日は湿度のせいか、甘さの輪郭が遅れてきます」「それも記録するんですか」「はい。舌に届く印象と、景色に意識が向く順序には関係があるようなので」 車窓の向こうに、海が少しだけ近づいて見えた。光はやわらかく、港の倉庫の壁は古い写真のような色をしていた。男は視線を外へ向けたまま、静かに続けた。「大きな出来事は、なくてもいいと思うんです。人によっては、こういう途中の時間のほうが、あとになって役に立つことがあります」 その言葉には実感があった。私は取材者として質問を重ねながら、同時に、何か筋の通った営みに立ち会っている気持ちにもなっていた。華やかな仕事ではない。だが、ひとつの感覚を長く観察し、土地と結びつけ、人に共有できるところまで整理していくのは、立派な記録の仕事に見えた。 終点に着き、乗客が一人ずつ降りていく。私も立ち上がり、最後に聞いた。「この記録は、最終的に何になるんですか」 男は紙箱を閉じ、カメラをしまい、ノートを鞄に入れた。すべての動作を終えてから、一枚の印刷物を取り出して私に渡した。 上質紙に、整った書体でこう書かれていた。『第一回 車窓と読書に最も適した携帯菓子選定会 審査員募集』 下には部門名が並んでいた。「層の美しさ部門」「ページを汚しにくい部門」「郷愁の立ち上がり部門」「揺れへの耐性部門」 私は顔を上げた。男はいつもの調子で説明した。「記録が十分に蓄積されたので、今年から公開選定に入ります。個人研究の段階は終わりました」「公開選定」「はい。できれば将来的には、この町の新しい指標にしたいと思っています」「指標」「移動時間における最適携帯菓子の」 電車の扉が閉まりかける合図音が鳴った。 海の匂いがうっすらと風に混じる。 男はきわめて真面目な顔のまま、続けた。「現在の暫定首位はバウムクーヘンです。ただ、羊羹が非常に強い」 その瞬間、三年半にわたる車窓、読書、光、湿度、揺れ、沈黙、すべての記録が、ひとつの方向に向かっていたことを私は知った。 この人は、土地の記憶を調べていたのだと思う。 移動中の感情の輪郭を、丁寧に集めていたのだと思う。 それはたしかに本当だった。 ただ、その先にあったのが、「車内でいちばん情緒が出るお菓子の公式ランキング」だっただけである。おわり画像はミルクレープに見えるのだが、AIはミルクレープを知らなかったのかなぁ。
2026.03.19
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会社の玄関のガラスはもう直っていた。早いな。今日はWBCの試合速報をチェックしながら先週やったはずの仕事をもう一度やってた。なぜか保存していなかったみたい。なんでだ?試合は日本を破ったベネズエラがアメリカも破って初優勝した。強かったもんなぁ。今日は何の日精霊の日彼岸明治村開村記念日点字ブロックの日春の睡眠の日高校生パーラメンタリーディベートの日米食の日防犯の日人麻呂忌小町忌タイトル:『春休みの最終講義』桜が咲く頃になると、町の古い通りの軒先に、ひとりの老人が現れる。名前は誰も知らない。けれど近所の高校生たちは、勝手に「先生」と呼んでいた。先生は、紺色の着物をきちんと着て、古びた杖を持ち、毎年同じ石の腰掛けに座る。そして膝の上には、表紙の擦り切れた一冊の和綴じ本。表紙には達筆で、何やら難しそうな字が並んでいる。「見ろよ、今年もいる」「たぶん昔の偉い学者だよ」「いや、絶対ただ者じゃない。オーラがすごいもん」通学路の高校生たちは、最初こそ遠巻きに見ていたが、春休みで暇を持て余すうちに、だんだん先生の前に集まるようになった。ある日、ひとりの男子が勇気を出して聞いた。「先生、それ何の本なんですか?」先生は少し目を細めて、本の表紙を見下ろし、静かに答えた。「人生に必要なことが、だいたい書いてある」その瞬間、全員の目の色が変わった。人生に必要なこと。そんなの、進路に悩み、恋愛に敗れ、SNSで意味もなく他人と比べている高校生たちにとって、あまりにも強い言葉だった。翌日から、先生のまわりには放課後のたびに人だかりができた。「将来、何になればいいですか」「好きな人に告白したほうがいいですか」「友達って、無理して作るもんですか」「勉強って、何の意味があるんですか」先生は毎回、少し間を置いてから答えた。「急がんでよい」「言わねば伝わらん」「無理した縁は、たいてい肩がこる」「意味はあとからついてくる」短いのに妙に沁みる。説教くさくないのに、なぜか胸に残る。生徒たちは感動した。「すげえ……」「名言メーカーじゃん……」「TikTokやってたら絶対バズる」やがて噂は広がり、先生は“桜坂の賢人”と呼ばれるようになった。中には、ノートに先生の言葉を書き留める者まで現れた。女子生徒のひとりは、そのノートに『先生語録』というタイトルまでつけていた。そんなある日、クラスでもっとも疑い深い女子、真希が言った。「でもさ、あの本、ちゃんと中身見た人いないよね?」たしかにそうだった。先生は本をいつも閉じたまま持っているだけで、一度も開いたことがない。「……ハッタリじゃない?」「いやいや、あの貫禄で?」「でも気になる」そして数日後、事件は起きた。春風が少し強く吹いた午後、先生が立ち上がろうとした拍子に、本を膝から取り落としたのだ。「あっ」真希が反射的に駆け寄り、本を拾い上げる。その拍子に、ぱらりと表紙が開いた。生徒たちは息をのんだ。そこには、びっしりと……何も書いてなかった。白紙だった。正確には、最初の数ページだけに、震える字でこう書いてあった。『聞かれたら、いったん間を置いてから答えること』『難しい顔をすると、だいたい納得してもらえる』『最後は短く言い切ると深そうに聞こえる』そして最後のページに、ひとことだけ。『困ったら “それもまた春じゃ” と言え』沈黙。完全な沈黙。真希は本を持ったまま、先生を見た。他の生徒たちも、先生を見た。先生は観念したように、ふっと笑った。「……いやあ」「若い人は、意外と真面目に聞いてくれるもんでな」「え、ウソだったの!?」「じゃあ人生に必要なことって!?」「ていうか賢人じゃないの!?」先生は杖を握り直し、少しだけ申し訳なさそうに肩をすくめた。「最初は、孫を待つあいだ手持ち無沙汰で座っておっただけなんじゃ」「そしたら、最初の子が“先生、どう生きたらいいですか”なんて聞くから……」「つい、それっぽく答えてしもうた」「つい、で済む!?」生徒たちは大騒ぎになったが、しばらくすると、ひとり、またひとりと笑い出した。たしかに本は白紙だった。先生も別に、山にこもって悟りを開いた仙人ではなかった。ただの、しゃべるのがうまいおじいさんだった。でも、不思議なことに、誰も腹は立てなかった。なぜなら、先生の言葉で少し元気が出たのも、少し気が楽になったのも、それ自体は本当だったからだ。真希があきれ顔で言った。「じゃあ先生、今までの名言、全部てきとう?」先生は少し考えて、桜を見上げた。「てきとうじゃよ」「だが、てきとうに言ったことが、たまたま誰かの役に立つこともある」生徒たちは一瞬黙って、それからまた感心しかけたが、すぐに「いや、またそれっぽいこと言ってる!」と総ツッコミした。その日の帰り道、真希は先生の白紙の本をもう一度見せてもらった。そして最後の空いたページに、こっそりこう書き足した。『案外、大人もノリで生きている』翌年の春。同じ場所、同じ桜、同じ石の腰掛け。また新しい高校生たちが、先生の前に集まっていた。「先生、その本には何が書いてあるんですか?」先生はすました顔で、少し間を置いた。そして静かに答えた。「人生に必要なことが、だいたい書いてある」その横で、去年の卒業生になった真希が通りがかりに吹き出した。「先生、その本ほぼメモ帳じゃん」すると先生はニヤリとして、こう返した。「いや、去年からはちゃんと一行増えた」そう言って開いたページには、大きくこう書かれていた。『JKは意外と鋭い』その瞬間、真希の笑い声が通りいっぱいに響き、先生は初めて、本当に先生らしく見えた。おわり長いね。割と面白いけど、もっと短くまとめてもよかったんじゃないかと思う。
2026.03.18
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昨日の夜からなんかおかしいなとは思ってたんだけど、今朝もなんかおかしい。鼻水とくしゃみ。事務所が寒かったせいだな。ということで、薬を飲んで寝ていようと思ったけど、ついつい作業をしてしまっていた。んで、くしゃみも鼻水もだいぶ良くなってた。鼻をかむときに、鼻の中にできてるできものが地味に痛い。今日は何の日漫画週刊誌の日彼岸聖パトリックの祝日みんなで考えるSDGsの日ミユキ野球教室の日Dr.MICHAELと始めるスローエイジングの日家族と終活を話し合う日国産なす消費拡大の日いなりの日減塩の日薔薇忌月斗忌タイトル:「ファミリーヒストリーと、知らない四番」昼下がりの古い家は、障子越しの光でやわらかく満ちていた。卓上には、年季の入ったアルバムが何冊も重なっている。地球儀、使い込まれたグローブ、そしてなぜか白い彼岸花。部屋の空気は静かで、少しだけ昔の匂いがした。美咲は、そっと一枚の写真をめくった。そこには、見覚えのない男が写っていた。緑のユニフォーム、ぎこちない笑顔、手にはバット。「……この人、誰だろう」向かいの棚の前でアルバムを見ていた息子の蒼太が顔を上げた。緑の帽子をかぶったまま、写真をのぞきこむ。「おじいちゃん?」「いや、おじいちゃんではないかな……顔、全然似てないし」「じゃあ、お母さんの昔の彼氏?」「そんな堂々とアルバムに入れないでしょ」蒼太は妙に納得した顔でうなずいた。「たしかに。じゃあ、隠し子のお父さん?」「どこでそんな言葉覚えたの!」美咲は慌てて次のページをめくる。だが次も、その次も、また同じ男。バットを持っていたり、ベンチに座っていたり、なぜかおにぎりを食べていたりする。「いる……ずっといる……」蒼太もじわじわ怖くなってきた。「この人、うちの親戚会議にもいたりする?」「やめてよ、その可能性ありそうで嫌だから」ふたりは急に真剣になった。家族の古いアルバムに、知らない男が何枚も紛れ込んでいる。これはもしかして、何十年も隠されてきた一族の秘密ではないか。美咲はテーブルの上の「FAMILY HISTORY」と書かれた大きなアルバムを引き寄せた。最初のページには、曾祖父母の結婚式。次は祖父の出征前の写真。その次は、母の七五三。そしてその次に、またあの男。今度はスライディングしていた。「なんでよ!」蒼太がごくりとつばを飲む。「お母さん……もしかして、この家には“野球の守り神”がいるのかも」「守り神、ずいぶん具体的ね」その時だった。奥の廊下から、ガラガラと戸の開く音がした。「何をそんなに騒いでるの」現れたのは、美咲の母、つまり蒼太の祖母・和江だった。買い物袋を提げ、ふたりの前に来ると、問題の写真を見て「あら」と声を漏らした。「まだあったのね、その人」「知ってるの!?」「もちろん知ってるわよ」美咲と蒼太は身を乗り出した。和江はふたりをじらすように麦茶を一口飲み、ゆっくり言った。「昔ね、おじいちゃんがアルバム作りを頼まれてたの。町内会の家族アルバムと、少年野球チームの卒業アルバムを、同じ日に」「うん……」「で、のりで貼ってる途中に、途中で阪神戦の中継が始まっちゃって」「うん……」「興奮して手元が雑になって、何枚か混ざったの」しばし沈黙。「……それだけ?」と美咲。「それだけ」と和江。蒼太が写真を見つめる。「じゃあこの人、うちと何の関係もないの?」「たぶんないわね。知らない四番バッター」美咲は力が抜けて笑い出した。一族の秘密でも、禁断の恋でも、隠された血筋でもない。ただ祖父の“野球を見ながらアルバムを作るな”案件だった。その時、蒼太が別のアルバムを開いて叫んだ。「お母さん! こっちは逆だ!」「え?」そこには、少年野球チームの記念写真の中に、七五三姿の幼い美咲が、ど真ん中で澄ました顔をして写っていた。周りの少年たちは全員ユニフォーム、美咲だけが千歳飴を持っている。和江はしれっと言った。「その年のチーム、なぜか“謎の女児”がセンターだったのよね」美咲は額を押さえた。「じゃあ私、どこかの家で“知らない七五三”として語り継がれてるってこと?」蒼太は腹を抱えて笑った。「よかったね、お母さん。家族の秘密じゃなくて、町内の怪談だったよ」障子の向こうで、午後の光が少し傾く。テーブルの上には、家族の歴史と、関係ない四番と、どこかの野球チームに紛れ込んだ七五三の少女。美咲は写真を見下ろして、ふっと笑った。「まあいいか。こういうのも、家の歴史ってことで」すると蒼太が真顔で言った。「でもお母さん」「なに?」「この四番、打ちそうな顔してる。うちで応援する?」美咲は少し考えてから、アルバムを閉じた。「うん。せっかくだし、親戚ってことにしようか」その日からその家では、毎年夏になると、仏壇にスイカと麦茶とともに、“知らない四番”の写真がそっと供えられるようになった。おわり風邪は関係ないと思うけど、今日はおしっこもちかい。なんかやってるときにトイレ行きたくなるから煩わしい。
2026.03.17
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今日は朝から仕事。でも朝から事件。荷物を持って会社にやってきたクロネコヤマトの配達の人が帰るときに会社の玄関の自動ドアのガラスに突っ込んでガラスをぶち割った。よっぽど急いでたんだろうね。てかさ、自動ドアのガラスっていつ直るんだ?相当日数かかりそうな予感。外扉あるけどまだちょっと寒いんだよ。今日は雪もちらついてたし。今日は何の日国立公園指定記念日十六団子の日財務の日ミドルの日おかでんチャギントンの日赤いサイロの日ステンレス316Lジュエリーの日折りたたみ傘の日ミールオンデマンドの給食サービスの日トロの日十六茶の日いい色髪の日横超忌タイトル:赤い傘の駅前会議雨の朝、ローカル線の小さな駅前市場に、毎週きっちり現れる男がいた。名前は真壁修一、五十二歳。町内会では「段取りの鬼」、駅前商店街では「紙の人」と呼ばれている。なにしろ彼は、どんな集まりでも必ず分厚い書類を抱え、表紙に日付と議題を書き込み、参加者より先に議事録の枠線まで引いて待っているのだ。その日も真壁は、赤い傘を差しながら、駅前の木のテーブルに座っていた。目の前には、みたらし団子。脇には「ミールオンデマンド」と書かれた箱。さらに観光パンフレットと、開きかけの書類。足元にはなぜか、小さな電車のおもちゃ。知らない人が見れば、「出張帰りの会社員が、地方創生の企画会議でもしているのかな」と思うだろう。だが、事情を知る者は眉をひそめる。真壁が今日まとめようとしているのは、“駅前マルシェ雨天時における団子の最適提供方法と、観光客の満足度向上に関する臨時対策会議”だった。議題だけで、すでに団子が冷めそうである。「まず現状分析だな……」真壁は書類をめくりながらつぶやいた。「雨の日は人の滞留時間が短い。すると団子の販売数に影響が出る。一方で、傘を差しながらパンフレットを開くのは難しい。さらに列車待ちの子どもは退屈しやすい……」そこで彼は、団子、観光、列車玩具。この三つを一つのテーブルに並べて、実地検証していたのだ。「団子は三本ずつ小分けがいいかもしれん」彼は真剣な顔で串を一本つまんだ。「パンフレットは、片手で開ける折り方に改善が必要だ」さらに一枚めくる。「子ども向けには、おもちゃの列車をテーブルに置いて足止めを図る……む、これは有効かもしれん」そこへ、商店街の惣菜屋のおばちゃんが通りかかった。「真壁さん、朝からまたやってるの?」「やってるんじゃない。検証です」「団子食べながら?」「食べながらじゃない。食味データの収集です」「おもちゃで遊びながら?」「遊んでない。乗客心理の再現です」おばちゃんは少し黙ってから、「それ、ぜんぶただの寄り道じゃないの」と言った。真壁はぴたりと止まった。寄り道。たしかに、そう見えなくもない。だが彼には譲れない理由があった。去年の秋、町の観光課から「駅前市場をもっと親しみやすくできないか」と相談を受けたとき、真壁は燃えた。若いころ鉄道が好きで、団子も好きで、旅先のパンフレットを集めるのも好きだった彼にとって、それは人生の好物が全部そろったような依頼だったのだ。だから彼は本気だった。本気で、駅前に来た人が「なんかこの町、いいな」と思える仕掛けを作ろうとしていた。ただし、少しだけ本気の方向が細かすぎた。彼が資料に書き込んだ項目はすでに四十三。「団子の照りと雨粒の視覚的相性」「観光パンフレットと湯気の親和性」「赤い傘が安心感に及ぼす心理的効果」「列車玩具の向きによる子どもの注視時間の変化」など、もはや誰も頼んでいない領域に突入していた。そのとき、駅のほうから小さな男の子が走ってきた。母親に手を引かれながらも、おもちゃの列車を見つけて目を輝かせる。「わあ、でんしゃ!」真壁は一瞬、資料から顔を上げた。男の子は列車をちょんと触り、みたらし団子を見て、パンフレットの表紙をのぞきこんだ。「ママ、ここたのしいね」母親は笑って、「ほんとだね。雨だけど、なんかいいね」と言った。その一言に、真壁の胸が少し熱くなった。――これだ。これが欲しかったのだ。数字ではなく、会議でもなく、「なんかいいね」の一言。真壁はそっとペンを置いた。長すぎる議題も、四十三項目の検証表も、少しだけどうでもよくなった。必要なのは、きっともっと単純なことだったのだ。雨の日でも、駅前でちょっと立ち止まりたくなること。大人がふっと気を抜けて、子どもが「たのしい」と言えること。真壁は晴れやかな顔で立ち上がり、惣菜屋のおばちゃんに言った。「わかりました」「何が?」「この町に必要なのは、複雑な分析じゃない」「へえ」「団子と赤い傘と、ちょっとした電車です」おばちゃんは吹き出した。「結局ぜんぶそのまんまじゃないの」真壁は真顔でうなずいた。「はい。検証の結果、全部必要でした」その日の夕方、彼は意気揚々と町内会に企画書を提出した。企画名は、『雨の日おもてなしセット(団子・観光パンフ・ミニ列車展示付き)』ところが一週間後、役場から返ってきた返答は実にあっさりしていた。「大変すばらしい着想ですが、ミニ列車展示は対象年齢の設定が難しく、団子は衛生管理上の都合により屋外常設不可、赤い傘は備品予算外です。なお、パンフレットのみ採用させていただきます。」真壁はしばらく黙って、その紙を見つめた。そして、静かに言った。「……つまり俺は、三週間かけて**“駅前にパンフレットを置こう”**って結論を出したのか」そのつぶやきを聞いた惣菜屋のおばちゃんは、腹を抱えて笑った。「真壁さん、遠回りしすぎだよ!」真壁は苦笑し、机の上のおもちゃの列車を指で走らせた。「まあいいさ」「何が?」「パンフレット置き場の横に、私物の列車をそっと置くくらいはできる」数日後、駅前のパンフレット棚の端には、誰が置いたとも知れない小さな列車のおもちゃがちょこんと飾られていた。そしてその横には、手書きの小さな紙。『ご自由にパンフレットをどうぞ。団子は気分で。』町内会はその貼り紙をすぐ剥がしたが、なぜかその日だけ、パンフレットの減りがいつもの三倍だったという。おわり長い。読む気にならん。
2026.03.16
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