全61件 (61件中 1-50件目)
ついに手に入れたぞ。透明マント。長かったぜ、ここまでの道のり。だが、これで俺の野望を果たすことができる。でもこのマント、試作品だから、時間制限があるんだよな。3分か。15分で小説が書けるんだ、俺の野望を果たすには、3分もあれば十分さ。いざ、行かん、女風呂!わ、脱衣場には誰もいない、くっそ、タイミングが悪かった、だが浴室のほうからは若い女の子たちの声が聞こえてくるぞ。うおー!テンション上がるぜ。ホントに見えてないんだよな。脱衣場エリアで時間を食うわけにはいかないんだ、見つからないように急げ。ぐぁうっ・・・・・・・!くっそ、足の小指をぶつけちまった。うう。折れてるかもしれない。だが、ここで痛がってる時間はないんだ。ぐううぅ。もう少し、あの扉の向こうだ。でりゃあ!意を決して、浴室の中に突入した。だが何も見えない。何だこれは。しまった、湯煙で何も見えない。帰る時間を考慮するとここでタイムリミットだ。撤退だ。くっそ、霧で女湯は見えないうえに小指まで負傷させられた。なんてこの女湯の湯煙はなんて優秀な霧だ。おわり即興で小説を書くというサイトで15分間で書きました。お題:優秀な霧 必須要素:足の小指 制限時間:15分という縛りがありました。久しぶりなのでボチボチの出来です。最後の「なんて」が2つあるのはミスです。
2021.02.06
コメント(0)
リクエストフィクションです。 ももクロ、代理戦争、TPPのワードを入れたお話を作る事になりまして、 やってみました。 ももクロはあんまり詳しくないので許してください。 タイトル「合戦参戦記」 私は最近脱サラをして何でも屋をはじめた者です。 仮に松山あぞうという名前にしておきましょう。 と、いっても、今日が初仕事です。 どんな仕事かって? まぁ、簡単に言うと今、流行りのTPP関係ですよ。 実は依頼を受けて、あるイベント会場にやってきています。 ここは、合戦といわれる場所で、モノノフと呼ばれる殺気立った猛者たちがひしめき合っています。 まさに戦場です。この仕事はいわば依頼人の代理戦争なんです。 何もわからず飛び込んだ、この中でベストをつくしてなんとか勝利し、初仕事を成功させたいものです。 さぁ、MCが出てきました。 「おまたせいたしました!それでは登場してもらいましょう!ももいろクローバーZ!」 うおー!っという歓声とともにあちこちでカメラのフラッシュが炸裂します。 私も、なんとかいい場所で、いい仕事をしなければなりません。 それじゃあ、行ってきます! ふぅ。 イベントが終了しました。 写真撮影OKのももクロのスペシャルライブ。 AKB48の総選挙に行くから、代わりに行ってくれ。という依頼でしたが、なんとか、依頼人の好みのTPPがゲットできたはずです。 いやー、しんどかった。 でも、お宝なんだろうなこの・・・。 チラリパンツピクチャー。 おわり あれー、なんかしょぼい?
2013.05.18
コメント(0)
リクエストフィクションです。お題は、[雪だるま]、 [ロールケーキ]、 [美容室]です。タイトル「天使のピーチ2~出会い~」 「それじゃー、これ、いただきます、ありがとうございました。まいど~!」威勢のよい声とともに、民家から飛び出してきた一人の若い男は、そのまま駆け足で乗ってきた軽トラックに再び乗り込んだ。 「次の配達先は・・・、何だこれ?住所が公園になってる。公園に届けるのか?誰か住んでるってのかよ?これは、あの丘の上にある公園か。とりあえず、行ってみるか。ん。ちょうど昼だしな。こんな天気のいい日は公園で弁当を食べるのも悪くはないだろう。今もらったこれもあるしな。」 若い男は晴れ渡る秋空の下、軽やかに軽トラックを発進させた。 人口1万人足らずの北海道の真ん中より東に寄った所にある河岸段丘の小さな町、ポップ町。この町には人々に思いを届ける天使が住んでいる。 「この公園だ。滑り台も、ブランコもない、毎回思うけど、何もない公園だよな。だけど、割とキレイなトイレと、ベンチがいくつかある。・・・ん?」 一箇所、明らかに異様なベンチがある。ダンボールで囲まれいて、すぐ横には空色の自転車や、薪を燃やした跡まである。明らかに誰かが生活していそうだ。 「ホームレス?北海道だぞ。外で生活するのは厳しいだろ・・・」 なんかあんまり関わりたくない雰囲気になってきた。ホームレスがいるような公園で弁当を食べるのもなんか少し嫌だ。若い男は、車を下り、ここに届けることになってる、かなり大きな段ボール箱を抱えて、その異様なベンチに近づき、恐る恐る声をかけた。 「あのー、誰かいますか?」 よくよく考えれば、こんな声をかけること自体おかしい。それはわかってる。だけど、仕事だ。人がいようがいまいが、とりあえず、届けたのだということを、自分で納得できないような仕事はしたくない。 「・・・・。」 返事はない。そりゃそうだ。こんなところにホームレスが住んでいるわけはない。このあて先は、何かの間違いだろう。兄貴に文句を言ってやらないといけないな。若い男はそう思い、車に引き返そうとした。 「・・・ふぁい?」ベンチを囲むダンボールの中から女性の声がした。「え?誰かいるんですか?」若い男は返事があった事に驚いたが、その声が女性の声だった事に更に驚いた。「いましゅよー。でも寝てまちた」明らかに寝ていたふうの長髪の女性が目をこすりながら、ベンチの下から顔を出した。「もしかして、テンシノ ピーチさんですか?」変な人物には変な名前が付いてるものだ。「ふぁぃ。そうです、私が天使のピーチです」 そう。この町に住む天使は公園に住んでいる。しかも、本人はキャンプだと言い張るが、明らかにホームレス生活である。そして、天使のトレードマークの翼も、今は失っていた。自らのミスでなくしてしまったのだ。代わりに空色の自転車で町中を駆けずり回る事になっていた。 「あのぅ、お届け物なんですけど、ここにサインしてもらえますか?」 それは宅配業者をやっていても見たことのないダンボールだった。天 恵-GOD BLESS-MADE IN HEAVNなんて、書いてある。 「わぁ、神様からだ。最近、姿を見せないと思ったけど、私のこと、忘れていなかったのね」 ピーチは嬉しそうにダンボールを開け始めた。 若い男は荷物の中身が気になって、ちょっとその場で様子を見ていた。 「うぉ~、なにこれ、ソリ?子供用じゃん。こんなものいらないわよ。これは?スノーシュー?なにこれ、意味わかんない。わぁ、あったかそうな服!ヒートテック?なんかすごそうね・・・」 一喜一憂しながらダンボールからいろいろな荷物を取り出して見ている。が、後半出てきたのは缶詰と薪ばかりだったようだ。後半になるほどテンションが下がっていく。 「・・・なにこれ。びみょーなものばっかり。ん?手紙?」 箱の底には封筒に入った手紙のようなものがあった。 「読んでみよう・・・。コレッ、ちゃんと仕事しておるか?今月は会合があって、様子を見に行けんが、おぬしのことじゃから、相変わらずサボっていそうだな、目に浮かぶわい。うわっ、なんでわかったの?モトヤ君にもらったモンクエ8が面白かったのよね。そのあとモンクエ6も始めちゃって、仕事どころじゃないっつーの。それにしても、8の次が6って、順番が謎なのよね・・・。」 「天使の仕事って、なんなんですか?」 若い男はいつの間にか隣のベンチに座ってピーチの様子を観察していた。 「え?ホントはナイショなんだけど、人々に想いを届けるのが仕事よ。最近はモンクエばっかりやってるけどー」「へーぇ、それじゃ、僕の仕事と似てますねぇ」「そうかも、同業者ね。私はピーチ。あなたは?」「僕はユタカっていいます」 ユタカは自己紹介のあと、軽トラックから弁当を出してきて広げた。ちょうど昼時だった。そして、ピーチも缶詰をいくつか開けて、二人はそれらをつまみながら少し話をした。 ユタカは兄と下請けメインの運送会社をしていた。仕事はたくさんあるが単価が安く、忙しいけど儲からないが、仕事を取ってくる兄はそれを理解してくれない。とか、美容院で働く彼女がいて、将来結婚を考えているが、なかなかお金が貯まらなくて結婚に踏み込めないこと、それで彼女が最近不機嫌だが、お互い仕事が忙しくて話をする時間も取れない。など、気がつけば、ピーチに対して愚痴ばかり喋っていた。 「仕事はためると厄介じゃぞ。こないだのことを忘れたのか?想いは届けないと雪だるま式に増えるぞ。そうなると、さらに大変になるんだから、ちゃんとやりなさい。・・・だってー。自転車では無理だっつーの!」「そういえば、自転車で走ってる、ピーチさん、みたことありますよ」「やだー!はずかしー!ひっしこいてたでしょ?ケチなんだよ、神様って。何でもできるくせに、欲しいものはくれないんだから」 ピーチはもういちど翼が欲しかった。が、神様は翼も、テントもくれない。くれるのは缶詰や、薪、それに・・・封筒にはシルバーの十字架が入っていた。 「P.S.最近、趣味でシルバーアクセサリー作りを始めました。一緒に入れたので使ってください」 十字架の真ん中には小さなドクロもあしらわれていた。神様なのにドクロって、センスがおかしい。でも、結構細工は細かく、ドクロの目には虹色に輝く小さな石まではめ込まれている。ピーチはそれを同じく神様から借りた金色のポータブルボーイにつけた。なんとなく、自分のものにつけるのが嫌だった。 「さてと、僕はそろそろ仕事に戻りますよ」ユタカは、さっき配達先の家でもらった、ひとかけらのロールケーキの半分を口に入れると、再び軽自動車に乗り込んだ。 「そうだ、ピーチさん、この公園、冬になったら使えなくなるんですよ。これから寒くなりますし、うちのガレージを貸すんで、そこに来ませんか?」嬉しい誘いだった。だけど、ここはサチやユキコやモトヤと会える場所でもある、簡単に移動するわけにはいかない。 「うーん、今はまだいいよ。もう少しここでがんばる」3人とは時々ここで顔を合わせる。最近はみんな上手くやってるみたい。「わかりました、じゃあ、近くに寄ったらまた来ますね。それじゃー」 そういうと、ユタカの軽トラックは走り去って行った。 「よし、それじゃ、モンクエを・・・じゃなくて、私も久しぶりに、仕事するかー」 ピーチは残されたロールケーキのかけらをほおばると、空色の自転車を漕ぎ出した。つづく前半、書き込みすぎました。雪だるま式の用法はちょっと微妙かもしれないなぁ。またもや続くのでお題、よろしく~。
2010.02.13
コメント(6)
リクエストフィクションです。お題は、[救急車]、[プレゼント]、[引っ越し]です。あと、今回は恋愛モノという裏テーマがあるようです。タイトル「天使のピーチ2 ~とりあえず、ダイジェスト~ 」 まるでブリザード。 シベリアから50数年ぶりという寒波が来ているらしい。 吹き付ける風と、氷のような雪が頬に突き刺さり、まっすぐ前を見ることができない。借りてきた懐中電灯も足元を照らすので精一杯だ。 ピーチには世間ではクリスマスイブだという年末のこの時期、もう日がとっぷりと暮れてしまった真っ暗闇の中を、吹きすさぶ吹雪に耐えながら、一人、ひたすら足を前に踏み出す事しかできなかった。 「ユタカ君はここにはいなかった。」と引き返すこともできるかもしれない。探してもいないのに、見つからなかった。と戻っても責められないかもしれない。でももう少しだけ、力を振り絞って進んでみよう。この数ヶ月、自転車で鍛えた足腰はこんなもんじゃないはずだ。 ユタカとの出会いは秋の頃だった。 あの公園に神様からのプレゼントが久しぶりに届いた日だった。 プレゼントといっても趣味の悪い手作りのストラップだったっけ、神様が作ったのにドクロの付いた十字架って、いくらマイブームがシルバーアクセサリー作りって言ったって、あんまり欲しくない。だから、神様から借りてる携帯ゲーム機につける事にした。金色のポータブルボーイ。そういえば、これ自体趣味が悪かった。 一緒にベンチに座ってお弁当を食べながら話をしたのよね。そしたら、野宿をしている私を見て、冬場はこの公園は使えなくなるからうちの車庫を貸してあげるよって。自宅の車庫を貸してくれた。引っ越し、といっても、ダンボール2つ分の荷物しかないんだけど、のときは仕事で使う軽トラックまで貸してくれちゃって、すごくお世話になった。 雪はひざの上まで積もっている。さっきはアスファルトの路面が見えたのに、吹きだまるとやっかいなのはユタカが言ってたとおりの場所だった。そして、この坂。片方が崖になってて一度すべると車ごと転落しそうになるという。そうだ、崖の向こうを見ないと、やっぱり、もう少しだけ進もう。 ユタカには結婚を約束したアリナという彼女がいた。 彼女と結婚するために必死に働いていた。そして彼女に宿った小さな命。その子のためにもユタカを探さなければならない。 崖の下を覗き込む。 何も見えない。 いや、あの光はなんだろう? 間違いない、ユタカの軽トラックのヘッドライトの明かりだ。半分以上雪に埋もれているが雪の中で何かが横たわってるのはわかる。 回り道になるけどもう少し坂を下りたら、あそこにも行ける。神様からもらったスノーシュー、結構、役に立ってる。ヒートテックもこんなに活躍するとは思わなかった。 「この軽トラは兄貴の名義なんだ。」 ユタカはお兄さんと二人で小さな下請け専門の運送会社をやっていた。不景気の中、忙しいのに儲からないってぼやいていた。だけど、兄貴が仕事を取ってこなかったら何も出来ない。俺には運転しかできないから。そんな話をしていた。ホントは仲のいい兄弟のはずなんだけど、仲がこじれたのはもしかしたらピーチのせいだったのかも知れない。 ああ、罪悪感。 予想通り、車はユタカの軽トラックだった。割れたフロントガラスの中にはユタカが血まみれで横たわっていた。 死んじゃいないよね? 体はもうすっかり冷え切っている。さすってみても反応がない。 やっとのことで車から引きずり出し、神様がくれた空色のプラスチックのソリに寝かせた。これをこんなふうに使う事になるなんて・・・。 雪が太ももまで吹きだまった坂を上ってゆく。坂の上ではアリナが車で待っているはず。そこまで行けば救急車も呼べる。それまで、なんとか、もう少しがんばろう。この数ヶ月、自転車で鍛えた足腰はまだまだこんなもんじゃないはずなんだから。 先ほどより強くなった風と雪。冷たさも厳しさも増している。鼻水が凍ってる。鼻の中が冷たい。手の感覚はほとんどないが、ソリを放すわけにはいかない。 坂を上りきると、風がやんだ。 うそみたいに穏やかになった。 アリナの乗る軽自動車の明かりが見える。 アリナもこちらを確認したのか、車から飛び出してきた。「いや~~~っ!!」叫び声より、救急車呼ばないと。「電話・・・して、救急車・・・」ピーチはかすれる声でそういい、ユタカをアリナの車の狭いけど、暖かくて天国のような後部座席になんとか引きずり上げた。 「救急車、呼んだ?」「うっ、うん・・・。」しかし、アリナを見ると、携帯を握り締めたまま苦しそうにしている。「どうしたの?」アリナは力なく答えた。「破水、したみたい・・・」「はぁ~っ!?ハスイ!」つづくこんな感じです。あとで修正するかもしれません。続きが気になると思います。続きを書きたいのでお題をください。
2010.02.06
コメント(4)
リクエストフィクションです。お題は、[コーラス]、[リング]、[祝い]です。さらに、お話の中にここの常連さんを登場させるということです。タイトル「ふしぎなゆびわ」 神様はここんとこ毎日ある一人の少女を見ていた。 その少女はもともと父親がいないうえに母親も病に倒れ、3ヶ月前から意識不明になったきりだった。その間、少女は施設で暮らす事になり、まだ母親が恋しい時期だろうに、いろんなことを我慢して、健気に暮らしていた。そして、今日こそ母親が目を覚ますのではと言う期待を抱いて母親が眠り続ける病室を訪れるのだった。 もちろん、神の力をもってすれば少女の母親の意識を回復させ、病を治し、元気にすることは簡単だ。だが、奇跡なんてめったに起こすもんじゃない。後々面倒なことが必ず起きる。今までがそうだった。なので、最近はいくら世の中が不景気で困っている人がたくさんいたとしても奇跡なんて起こす気はなくなっていた。 そこで神様は少女にあるアイテムを授ける事にした。 「魔法のリングじゃ」突然目の前に現れた、真っ白なライダースジャケットを着て真っ黒いサングラスをかけ、真っ白い髭を蓄えた謎の老人はなにやら小さな箱を少女に差し出した。 これが変質者か。 少女はとっさにそう思ったが、老人があまりにもしつこくその箱を差し出すのでついつい足を止めてその箱を手にとってしまった。これから母親のお見舞いに行かなくちゃ行けないのに、長くなったら嫌だなぁ。と、思いつつ。 その小箱には「天恵 -GOD BLESS-MADE IN HEAVN」と書かれており、ちょっとこじゃれたブランド品のようなGの文字を崩したようなロゴも付いていた。 「開けてみろぃ」 老人がしつこくそう言うので、少女はおっかなびっくり箱を開けてみた。 すると、箱の中には不思議の色の小さな石がはめられた銀色の指輪が入っていた。 「なっ?」 「なっ?」というのはやはり変質者に違いない。と、思いつつも指輪の放つ不思議な魅力には勝てず、少女は箱から指輪を出して眺めていた。 「ちょっと貸してみ」そういうと老人は少女の手から指輪を奪い取って、自らの左手の小指にはめた。 「いいか、さっきも言ったが、これは魔法のリングという物だ。どんな願いも3回まで叶えてくれる」 老人は得意げにそう言うと、あたりをキョロキョロ見渡した。 「少女よ、あれを見よ」老人が何かに気づき指差したところには段ボール箱を抱えて何かを叫んでいるおばさんがいた。 「ブラジャー!ブラジャーいりませんかー!ブラジャー!!」 どうやら、マッチ売りの少女ならぬ、ブラジャー売りのおばさんらしい。だが、道行く人は誰も見向きもしないで通り過ぎてゆく。 「こんな人通りの多い場所でブラジャーなど売れるわけないだろうに」老人がそうつぶやくと、少女もそりゃそうだ。と思った。 「だがな、見ておれ」 そう言うと老人はブラジャー売りのおばさんの前まで行き、こう言った。「指輪よ、この者のブラジャーを完売させたまえ!」 すると老人の指輪がキラッと輝いたと思うと、老人はそそくさとこっちへ戻ってきた。 「見ておれよ」老人がそう言うか言わないかのうちにどこからかママさんコーラス隊の一団が現れ、ブラジャー売りのおばさんを取り囲み、一時の間ワイワイとやったと思うとササーっと波が引くように去ってゆき、あとには空の段ボール箱と札束を抱えたブラジャー売りのおばさんが立っていた。 「なっ?」 老人はますます怪しかったが、目の前で何かすごいことが起きていたのは明らかだった。 「今のはデモンストレーションだからノーカウントだ。使い方は今やったように願いをかなえたい相手の前に立って、願いを言えばいいだけだ。ほれ、お前にやるから、好きな願いを叶えるがよい」 老人はニコニコしながら再び少女に指輪を渡した。 少女は言われるままに、左手の人差し指に指輪をはめてもう一度よく見た。 「3と書いてあるだろ」老人の言うとおり不思議な色の石には「3」と書かれていた。 「願いが叶うのは3回までじゃ、使うごとに数は減ってゆき、0になったら指輪は役目をおえて消えてしまうだろう。これを使って幸せになれ。」 少女は指輪を眺めながらその話を聞いていたが、気がつくと老人の姿はなくなっていた。 少女は再び母親の病院へ向かいながら考えていた。 あの老人の言っていたことが本当だとしたらどんなお願いをすればいいだろう。 まず、お母さんの意識が戻るようにお願いしよう。それから、病気が治るようにお願いしよう。いや、お母さんを元気にして。と願えば一度で済むかもしれない。そしたら、あとの願いは二人で何か美味しいものを食べに行こう。旅行にも行きたいなぁ。そんなことを考えているうちに病院に着いた。しかし、よく考えると、ここには病気で苦しんでいる人はたくさんいる。お母さんだけが助かるなんてほかの人に申し訳ない。みんなが元気になる方法があるだろうか。 しかし、そんな方法は思いつかなかった。するとなんだか、行き交う人の目線が怖くなって、なるべく目をあわさないように歩いていた。 ドンッ! 「あ痛ぁっ!」ちゃんと前を見て歩いていなかったから誰かにぶつかってしまった。目の前にはバイオリンケースを持ったサラリーマン風の若い男が倒れている。 「あっ、痛たたたたた。ちゃんと前見て歩けよなぁ」男はぶつかった拍子に足を痛めてしまったのか、足を痛そうにしてなかなか立ち上がろうとしても立てないでいる。 もしかしたら、自分のせいでこうなってしまったのではないだろうか。 そう考えると、少女は思わずこう言っていた。 「指輪よ、この者の足を治したまえ!」すると、指輪はキラッと輝き、不思議な色の石の数字は「2」になった。 「あ痛たたた・・・あれっ?痛くない。治った?治ってるぞ。まだ治療もしてないのに。やった!ラッキー!」 男は嬉しそうにその場でピョンピョンとび跳ねて喜んでいた。喜びのあまり、持っていたバイオリンを取り出し、それを弾き始めると、近くにいた看護師さんに怒られていたが、それでも喜んでいた。 どうやら、この男の足は少女のせいで痛めたわけではなかったようだ。ということは願い事をひとつ無駄にしてしまったことになるか。いや、誰かが幸せになったんだ。無駄ではない。それに、まだ2回も願い事は残ってる。それだけあれば十分だ。 「見ていたよ。お嬢ちゃん」 少女は突然何者かに肩をつかまれて振り返った。 するとそこには女性介護士に付き添われた太ったおじさんがニヤニヤとこっちを見ていた。 「今、君が何かしただろ?おじさん、見ちゃったんだよね。今のやつ、おじさんにもやってくれないかぁ」 全く図々しい話だ。こんな見ず知らずのおじさんのために残りの2回のうちの1回を使うなんてもったいなすぎる! 「おじさんは腰が痛いんだ。だからほら、こうして介護士さんに手伝ってもらわないと歩くこともできないんだ。かわいそうだと思わないかい?」 確かに、見るからに痛々しいのだが、言ってることには納得できなかった。 「ふぅ。・・・もういいよ。君はそういう人間なんだね。自分さえよければ他人のことなんて知ったこっちゃないもんな」 なんか今の一言は心外だった。カチンときた。いや、それは図星だったからだ。くやしいけど、さっきからの心の呵責がこれで少しは楽になるかもしれない。今ここで指輪を使ってしまってもあと1回分は残る。お母さんを治すにはそれだけあれば十分だ。 「指輪よ、この者の腰を治したまえ」 すると指輪はキラキラッと輝き、不思議の色の石の数字は「1」となり、「0」となった。 あれっ!? 少女が異変に気づくと同時に指輪は音もなく崩れ去った。 「おお~~!!腰が痛くないぞ!」喜ぶ太ったおじさん。 「私も~楽だわ~!」と、その横にいた介護士の女の人も喜んでいる。 すべてを理解したとき、少女の目の前は真っ暗になった。 少女は、母親の病を治すことなく3度の願いを使い切ってしまったのだ。 気がつくと涙がとめどなくあふれていた。 泣きながら母親の病室にたどり着いたが、もう母親を治すすべはなかった。悲しみと後悔の念に押しつぶされそうだった。 その時だった、「どうしたの?」少女にかけられた声は聞き覚えのある懐かしい声だった。そう、ここ3ヶ月間、ずっと聞きたかったあの声だった。 「お母さん!?」 「ふふふ・・・。さっき目が覚めたのよ。今までごめんね」 信じられなかったがお母さんの意識が回復したのだ。奇跡のようだった。 少女は今日起こった不思議出来事など、もうどうでもよかった。 ただ、こうして再びお母さんと話ができることが嬉しかったのだ。 「やぁ、この病室だったのか」 しばらくして、さっきのバイオリンを持ったサラリーマン風の若い男と、太ったおじさんと介護士の女の人が病室にやってきた。 「お祝いに一曲」 サラリーマン風の男がバイオリンを弾き始めると、看護師さんが飛んできて、また怒られていた。 でも笑っていた。 みんな笑っていた。 病院の外でも、真っ白なライダースジャケットを着て真っ黒いサングラスをかけ、真っ白い髭を蓄えた老人が笑っていた。 「なっ?」 なにが「なっ?」なのかはわからないが、老人はそう言うとアメリカンバイクにまたがりいずこかへ消えていった。おわり長さを感じさせない出来だと思います。
2009.10.26
コメント(10)
久しぶりにリクエストフィクションです。お題は「補欠」、「不眠症」、「ATM」の3つです。タイトル「ハコイリムスコの就職」 僕はある大手金融機関の入社試験に補欠ながら合格した。 今まで引きこもりだのニートだのと言われ、だらだらとさんざん不規則な生活をしてきたが、心機一転これをきっかけに真っ当にやり直すつもりだ。これで近所から「ハコイリムスコ」なんて噂されるのともおサラバだ。思えば親には迷惑をかけてきた。これからは存分に自慢してくれ。 さて、補欠と言っても研修みたいのにはちゃんと参加させられる。接客の仕方や、お札の数え方、強盗に遭ったときの対処方法なんかも教えられた。 どれも僕が今まで思ってきた銀行員とかのイメージとは少し違っていたが、所詮、世間知らずのニートのイメージだ。現実とのギャップがあっても仕方のないことだ。そんなギャップに戸惑うのをなるべく顔に出さないようにするのが大変だった。 研修が終るとすぐに勤務先が告げられた。 やった。補欠合格でもすぐに仕事ができるのか。研修を頑張った甲斐があった。 そう思って喜んだ僕の勤務先は近所のコンビニのATM機の中だった。 なんだコレ。ATM機って中に人が入っているのか。しかも、24時間営業だって。 そうか、それで求人の条件のところに不眠症の人。って書いてあったのか。 ってか、せめーし。 ってか、結局「ハコイリ」だし。おわり久々なんで、得意のモノローグ調です。
2009.09.10
コメント(2)
リクエストフィクションです。お題は、[赤][ジーパン][松ぼっくり]です。赤パレに出された、とんでブ~リンさんのお題で勝手に書いてます。前回までの内容はこちら、「LINK 01」、「LINK 02」、「LINK 03」。タイトル「LINK 04」 刑事としては派手すぎる、ビンテージのジーパンに真っ赤なジャケットで決めた、芳村順(45)はFBIでの研修を終え、ロスから帰国したばかりだった。 八洲の後輩に当たるが階級はずっと上だ。 八洲を育てた蛇野目という刑事に、芳村も若い頃についていたというから、二人は、言わば同じ師を持つ同門で、もともとかなり関係は深かったようなのだが、近田はあまり根掘り葉掘り聞くことができなかった。 それは、芳村の雰囲気がなにやら近寄りがたい雰囲気であったからで、更に、芳村と八洲の現在の関係が当時とは違っていることをなんとなく感じ取れたからだ。 千葉が逮捕され、事件の全貌も次々と見えてきたのだが、ここで富士野均という男が新たに事件に関わっていることがわかった。 じつは、江波はかつて薬物依存での逮捕歴があり、離脱治療のために精神病院に入っていたことがあった。そこで、入院患者の富士野と出会っていたのだ。 富士野は犯罪マニアで常に自分の手を汚さずに人を殺すことができる方法を考えてるような奴で、殺人請負サイトはもともとこの男のアイディアだったのだ。 「近田、富士野の件だが、今日は俺と行くぞ」 捜査会議が終了して、声をかけてきたのは芳村だった。「さっき電話があって、やっさんは今日は休みを取ったらしいからな」 八洲が休むのは珍しいことだった、いつもは病院によるときも遅刻はすれども、休むことなどなかった。それほど腰がよくないのか? 「たぶん病院に行ってるんですよ、いつもの松ぼっくり総合病院」 八洲のかかりつけの病院は変な名前だがインパクトのある覚えやすい名前の総合病院だった。 「あの人、まだ病院に通っているのか?だから出世できないんだ」 近田は、腰痛と出世が関係あるのか?と思ったが、それはあえて言わなかった。 かくして、新造コンビの二人は富士野を知る江波が入っている拘置所へ向かった。つづくこの先が問題なんだよな。進めるのか?
2009.05.04
コメント(4)
すっかりお待たせしました。リクエストフィクションです。お題は、[リプトン][歯医者][トンカツ定食][ヘナ][多忙]です。今回もなんとか全部使ってます。前回までの内容はこちら、「LINK 01」、「LINK 02」。タイトル「LINK 03」 行きつけの歯科医で治療中のところに踏み込むと、観念したのか千葉はヘナヘナとその場に座り込み、あっけなく身柄は確保された。 ただ、そのときのやっさんの一言は余計だった。「おまえみたいのが人生のハイシャって言うんだ」 確かに上手いこと言ってるのだが、協力してくれた歯医者の皆さんの目の前であのセリフは言ってはいけなかったと思う。 千葉の自供によると、殺された坂東は千葉の会社の先輩で、よく仕事のあとに飲みに行ったりする間柄だった。その席で千葉は好意を寄せている土居史子(26)という女性の話をした事があった。坂東も土居のことを知っており、上手く行くように応援してくれると言ってくれたはずだった。しかし、後日、その土居と坂東が一緒にトンカツ定食を食べに行っていたと知人から知らされ、坂東が抜け駆けして二人が付き合っていると思い込んだ千葉は、土居に対してストーカーまがいの行為を繰り返すようになり、警察沙汰になりかけたこともあった。以来、坂東に対する感情は憎悪となり、しまいには殺人請負サイトを介して坂東の殺害を新井に依頼するまでになっていた。 「殺人事件の実行者と、それを依頼した者が逮捕された。ってことは、これで事件は解決ってことですかね?」署内の片隅で自ら淹れたリプトンの紅茶を飲みながら、初めて自分が関わった事件が解決した満足さを味わうように近田が言った。 「ああ、ネットなんかで、見ず知らずの奴の殺人を請け負う奴がいて、また、その殺害の様子を生中継で見ようとする奴までいるなんて、困った世の中になったもんだ」八洲も下品に紅茶をすすりながらしみじみそうつぶやいた。 「まったくだ。多忙だって言うからアメリカから帰国したのに、問題の事件はもう解決しちまったって言うじゃないか、困ったもんだ」そこへ近田の知らない男が突然現れて会話に入り込んできた。 その男を見て八洲が言った。「芳村!?」つづく そうです、続きます。まだ事件は終わってはいないのです。
2009.05.02
コメント(6)
お待たせしました。リクエストフィクションです。今回のお題は、[姉妹][ガーベラ][不信感][ゴミ箱][喧嘩]です。この中から3つと言うことですが、またもや全部使ってます。前回の続きで刑事モノなんですが、ほとんど刑事は出てきません。ま、そういうときもありますよ。タイトル「LINK 02」 新井の取調べが始まった。 新井は国立の理系の四年制大学を卒業後、将来正社員になれるという触れ込みである一流企業の工場に工員として勤めるが、3年が過ぎても一向に正社員の話も昇進の話もなく、常に会社に対し不信感を抱いていた。 逆に周囲ではリストラの話が降って湧いたかのように出始め、以前、先輩の工員の江波雅彦(38)と、作業中にもめたことがあり、マイナスポイントのある新井は自分もリストラ候補に挙がっていると思い込み、それならいっそ、辞めてしまおうかと思い始めていた。 しかし、ただ辞めるのも癪なのでその前に工場長の裏金を盗んでやろうと企てていた。 この金は事務用品などを購入したという名目で計上されていた金だったが、領収書が回っているだけで実際に事務用品などは購入されておらず、レクリエーション費として工場長が密かにプールしていたものの、レクリエーションなどは、年に一度、忘年会が開かれるくらいしか行われることもなく、ほとんど消化されずに増え続けていた公にできない金であった。 理系と言うだけで、毎年忘年会の会計係をやらされていた新井は、ほとんどの工員が存在すら知らないその金の存在を知っていたのだ。 ある日、新井は誰にも見られないように工場長室に忍び込みこっそりと裏金を持ち出すことに成功する。 金は百万近くあった。 急に大金を手にしても使い道など思いつかず、とりあえず、寿司屋でたらふく食べ、前から気になっていた、汚れたスニーカーを買い替え、たまたま店員が好みの顔だった花屋でガーベラを一輪買った。そんなもんだ。 あのボロアパートに帰り、花を生けてみたが、虚しさがこみ上げるだけで、残りの金はやっぱり明日返そうと思った。 使ってしまった分もすぐに返そうと思った。だけど、急に金を作るにはどうすればいい?ギャンブルなんてやったことないぞ。増やすどころか使い切ってしまっては元も子もない。かと言って金を貸してくれそうな知人もいない。 ・・・知人! そういえば、江波と以前にもめた時のことを思い出した。 江波と言う男は愛読書が裏モノジャパンというだけあって、妙な事に詳しかった。そんな江波がネットで一儲けできないかということばかり考えている時期があった。そのときに理系と言うだけの理由で新井も江波の企みの片棒を担がせられそうになったのだ。 それが、殺人請負サイトと、会員制殺人生中継サイトという、姉妹サイトの作成であった。新井は先輩の頼みなのでしょうがなく本を見ながらそれらのサイトを作りかけたのだが、実際に依頼が来ても殺人なんてできるわけもなく、「抜けたい」と言ったら喧嘩になった。という事があったのだ。 今はそんなキレイゴトを言ってる暇なんてない。上手いこと騙してでもなんでもいいから金を造ればなんとか会社には残れるかもしれない。 「・・・そうして坂東明の殺害を依頼してきたのが千葉健(26)という男だった。と言うわけか」 病院に寄ってきた為に捜査会議に遅刻した八洲刑事が近田刑事の報告を聞いていた。 「ええ。新たな人物が関わってきましたね」 近田は難しそうな顔でそう言ってみた。 「さぁて、それでは、千葉ってやつをしょっ引きに行きましょうか」 そう言うと、八洲は食べていたバナナの皮をゴミ箱に放り込んだ。 「この前のバナナ、まだ食べてたんですか」 「だって、お前が一房も買って来るからだろ」つづくはい。続きます。お題の消化は上手かったと思います。てか、登場人物、覚えてる?
2009.01.31
コメント(4)
お待たせしました。リクエストフィクションです。今回のお題は[うし]・[絵本]・[電車]・[バナナ]・[腰痛]この中から3つと言うことですが、強引に全部使ってます。今回はたまたま気分的に刑事モノを連続でやりたくなったので、最後は「つづく」ってしました。もちろん続きはお題が出れば書きますよ。と、いうわけで、次にお題を出してくれるときはそういう話にもってきやすいやつでお願いしまーす。タイトル「LINK 01」 築63年(リフォーム済)、フロなし、キッチン・トイレ共用、六畳一間12,000円。JRの線路に寄り添うように建てられ、電車が通るたびに震度4クラスの揺れが起こるというその物件に、今回の殺人事件の容疑者、新井則義(25)は住んでいる。 そのアパートから少し離れた路上の、アパートの入り口付近が見える場所に、もう丸1日になるが、一台の覆面パトカーが止まっている。 そして、真新しいスーツに身を包み、白いビニール袋を下げ、そこに近づく男が一人。 コンコン。助手席側のウインドウをノックすると、その男は車に乗り込んだ。 「やっさん、差し入れ買ってきましたよ」 俺の名前は近田初男。刑事になって初めての張り込みで、緊張感とワクワク感を抑えきれない27歳だ。 「なんだ。差し入れってバナナかよ。しかも、一房も。普通はホットコーヒーとか、アンパンとかを買って来るもんだろ」「すいません。そうも思ったんですけど、やっさんの顔を思い出したらどうしてもこっちのほうが似合いそうだったもんで、つい…」「なにっ?どういう意味だ」そう言いながらも、バナナにかぶりつく、このゴリラ、いや、おっさんが、八洲太郎刑事(58)もう引退が近いベテラン刑事だが、俺の相棒、兼、教育係である。刑事のイロハは何たるかを教わるべく、毎日追っかけまわさせていただいている。「事件発生から四日、このアパートに張り付いて丸一日。俺の経験とカンが言ってる。そろそろ何か動きがあってもおかしくない頃だ。出入りするやつを見逃すなよ。いいか、特に、目を見ろ。なんかやってるやつは、目が違うんだよ」この根拠の無い自信。長年の経験から来るものだろう。根拠は無くても、きっとそれが正しいと思えてくる。この感覚は現場じゃないと教わることはできないだろう。「はい。わかりました」 ちょうど四日前の未明。板東明(28)という男が何者かによって殺害された。はじめは手口から怨恨の線が疑われたのだが、しばらくして、とある殺人請負サイトの存在が事件に大きな関わりがあることが判明する。 そのサイトの管理人こそ新井則義だったのだ。 新井は典型的なワーキングプアで、派遣会社の下で仕事をするも、この薄汚れたアパート暮らしから抜け出せずにいた。しかも、職場の金の使い込みまでやっていた形跡があり、その穴埋めをするつもりだったのか、金には困っていたようだ。一度でかなりの額の金が手に入る殺人請負サイトなんてのを始めたのもそれがきっかけだったのだろう。 しばらくして、無線が鳴った。「被疑者と思われる人物を確認。アパートに向かっている模様」一気に緊張感が走る。「聞いたか。いいか、先に言っとくが、俺は腰を痛めているから、走れんぞ。やつを見つけたら、お前が全力で走れよ」「わかってますよ。そのかわり援護はお願いしますよ」 やっさんは腰に持病があるらしい。数年前には休職してしばらく入院治療していたと言う話も聞いたことがある。ここは、俺の活躍どころだ。いつもは足を引っ張ってばかりだけど、たまには役に立つと言うところを見せてやろう。「おい、来たぞ。やつがあの塀の所の角を曲がったら飛び出せ」新井と思しき男が逃亡生活で汚れてしまったのか、薄汚れた服を着て、疲れ果てた面持ちで現れた。「まて、まてっ、あいつじゃない。その後ろだ」そして、その男はそのままアパートの前を通り過ぎた。「え、ほんとですか?」俺は一瞬、飛び出そうとしたのだが、やっさんの一言でギリギリ思いとどまった。 たしかに、先ほどの男のすぐ後ろから、別の男が現れた。 まさしく、この男こそ新井だ。俺もそう直感した。身なりは前の男よりも小奇麗だが、目が違っていた。これが殺人者の目か。明らかに先ほどの疲れきった男の目とは何か別のものを感じる。 男はアパートの前まで来ると、さっと身を隠すようにアパートの塀の陰に消えた。「今だ!行くぞっ!」「うしっ!」やっさんの声とともに俺たちは車を飛び出した。俺は全力疾走でアパートの塀の陰が見える場所まで走り、そして叫んだ。「新井っ!まてぇっ!」俺の声に反応しその男は狭いアパートの前の路地を奥のほうへ走り出した。そして、路地の突き当たりから塀を乗り越えようと足をかけたその時だった。「止まれ!!止まらないと撃つぞっ!!」やっさんのものすごい怒鳴り声が背後から響いた。 さすがにその声に男も塀に足をかけたまま一瞬動きが止まった。そこに俺が飛び掛った。男は塀から引きずり下ろされ、さらに同じタイミングで動き出していた別の刑事たち数人にも押さえつけられ、抵抗をやめた。 こうして殺人容疑者、新井則義は確保された。 騒然とした中、振り返るとバナナを構えたまま立ち尽くすやっさんがいた。「やっさん、それバナナですよ」「知ってらぁ。もともと銃なんて持ってねぇからな」やっぱりこのおっさんにはバナナがよく似合う。つづく
2008.10.05
コメント(6)
リクエストフィクションです。 お題は「ほれ薬」で、ストーリーの中で絶対誰かに使わないといけないということと、「広島焼」と「オリンピック」を使ってお話を作ると言うことです。今回はお題の形式がいつもとちょっと違いますね。でも関係ないです。タイトル「ほれ薬」 僕の名前はナカタヨシツナ。田舎の小さな会社に勤める、しがないサラリーマンだ。趣味は読書とDVD鑑賞。スポーツも勉強も昔から中の中で、とりたてて得意なものも無く、ルックスも地味で、いつイケてない男の代名詞になっても不思議じゃない存在だ。 だけど、そんな僕にも自慢できるものが一つだけある。 奥さんだ。 彼女は僕の幼なじみで昔から美人で優しくて、そのうえ、勉強もスポーツもよくできて、男子の中ではいつも人気ナンバーワン。僕なんかとは決してつりあわない、マドンナ的な存在だった。 それでも僕はずっと彼女にあこがれていた。いつか、彼女を自分のものにしたいと、おこがましくも思い続けていた。 あるとき、僕はついに見つけてしまった。ほれ薬の製造法が書かれた本を。 これさえあれば彼女を手に入れることができるはずだ! 薬の材料は、身の回りにあるものや、ちょっと入手が難しいものまであったのだが、そこはなんとかやりくりして、さらに、試行錯誤に数年の時を費やして、ついにほれ薬は完成した。気がつくと、僕らはすっかり大人になっていた。 早速、僕は仕事帰りの彼女を食事に誘い出すことに成功した。 もちろん、偶然出合ったかのように装ってはいたが、あらかじめリサーチはしていた。彼女の職場、通勤ルート、通勤時間、彼女の好きな食べ物、マイブーム、など、ちょっとしたストーカーと言われれば否定はできない。食事の場所は彼女のお気に入りの広島焼の店。これももちろんリサーチ済みだ。 そしてついに、僕はあのほれ薬を彼女に飲ませる事に成功した! 僕はその場で、彼女にプロポーズした。彼女は薬の効果が的面で、なんと、その場でOKしてくれた。 それから話はとんとん拍子に進み、結婚式では花嫁姿の彼女を見た親戚連中から、「ヨシツナがオリンピックの金メダル並みの花嫁をもらった。」っていうほど喜ばれた。ちょっと照れくさかったが、まんざらでもなかった。まぁ、そんなこんなで、現在に至る。 しかし、ここに来てこの結婚生活に最大のピンチが訪れた。 じつは、ほれ薬は一日三回、食後に飲まないと効果がなくなるのだ。そこで、彼女が自然な流れでほれ薬を飲めるように、また、入ってるいろんなものもごまかせるように、リサーチで知った、彼女の好物の生キャラメルっぽく作ってある。 ところが、その材料である、バターがどうしても手に入らないのだ。 どうなってるんだ?僕はバターを探して方々の店を歩き回ったが品切ればかり。バターはついに手に入れることはできなかった。生キャラメルは保存の利かないお菓子なので、作り置きの在庫ももうない。今日の夜、彼女が口にしたので最後の一粒になっていた。残念だが、彼女とはこれでお終いになってしまうだろう。 翌朝。 いつものように朝食を食べる。これが二人で食べる最後の食事だ。「あら、今日はいつもの食後のデザートはないのかしら?」彼女がいつも食卓の片隅に置かれているはずの生キャラメルを装ったほれ薬が無いのに気づいたようだ。「実は、材料のバターが手に入らなくて、作れなくなってしまったんだ…」僕は今までの彼女との生活を思い出すと、なぜだか涙が溢れ出してきた。「どうしたの?」彼女が僕のただならぬ様子を気にして、たまらず聞いてきた。「今まで、君には秘密にしていたんだが、実は、あの生キャラメルは…」僕はあの生キャラメルはほれ薬で、その作用で僕たちが結婚するということになったと、彼女に正直に話した。「ふーん。そうだったの…」彼女の反応は意外なものだった。「今まで…ごめん…」とにかく、謝るしかないと思った。「ううん。そんなものが無くたって、私の気持ちは変わらないわよ」「えっ?どういうこと?」ね、意外な展開でしょ?「ほれ薬なんて無くたって私もあなたのことが好きよ。あなたの誠実さは昔からよくわかってるつもり。奥さんのために毎日手作りで生キャラメルを作ってくれるダンナさんなんてなかなかいないわよ。素敵じゃない」 そう。ほれ薬なんてまやかしだったのだ。 僕はずっと抱き続けていた後ろめたい気持ち抜きで改めて彼女を見た。 やっぱり、最高に素敵な女性だ。おわりオーヘンリーばりのいい話にはならなかったなぁ。主人公の名前は中田義綱。はてなっちさんがタナカを使っていたので、ナカタにしてみました。
2008.09.01
コメント(10)
リクエストフィクションです。お題は[富士山][さくらんぼ][すり傷][バス][トルマリン][タヌキ]です。この中から三つ選んで書くということです。タイトル「山奥」 近くで雷が鳴り響いている。 雨脚も強くなり、バスのワイパーはもうフルスロットルで回っているが、それでも前が見にくくなっている。 いつもならまだ明るい時間のはずなのに、天気のせいか、場所のせいか、もうすっかり暗くなっている。やっぱり、こんな雨の中、来るんじゃなかった。 私は一部上場企業、さくらんぼ商事に勤めている。日々、億単位の金を動かすプレッシャーとストレスといったら他人にはなかなか想像できないだろう。私はそれらに負けそうになった時、都会の雑踏を抜け出し、人気のない山奥に出かけて過ごす。近間の日帰りで帰れる山奥は大体行きつくしたといっていいほどの、近間の山奥フリークだ。 今日来ているこの山は数年前、ある会社によるゴルフ場開発の話があったが、私が株価を操り、その会社をつぶしたのでその計画自体がなくなった山だ。誰にも教えないが、あの山の上から見る富士山にかかる夕日は私の心を癒してくれる。ここは私だけの癒しスポットだったのだ。それにしても、こんな天気になるのなら、夕日なんて見えるわけがない。ああ、やっぱり来なければよかった。 ふとバスが止まった。運転手がなにやら雨の中にいる人物と話をしている。「どうやら、土砂崩れがあったようで、この先は通行止めになってるので、迂回路を通りますね」運転手は私にそう告げると、バスは細い林道に突っ込んでいった。 ひどい道だ。でこぼこが多く、道幅も狭い。木の枝が道の上まではみ出して車体に当たって、バキバキ音を立てている。 バスの乗客は私のほかにはおばあさんが一人、そのおばあさんの娘と思われるおばさんが一人、さらにその娘と思われる女の子が一人乗っていて、バスの揺れに合わせて3人とも同じ動きで体を揺らしている。女の子はさっきからずっと顔をこわばらせたままだ。 ふと、木の枝の音がしなくなったと思うと、バスの前の様子が開けた。迂回路を抜けたのか。と、思ったそのとたん、大きな衝撃がバスを襲った。 私は一瞬空中に浮いたような感覚になり、そのあとは今までとは比べ物にならないほどバスが揺れて、まるで、地獄の底にまっさかさまに落ちてゆくようだった。 気がつくと私は傾いたバスの中、割れたガラスから入ってくる雨と、泥にまみれていた。周りの様子は暗くてよくわからないが、時々光る雷の閃光でかろうじてうかがい知ることができる。 体を動かそうにも、動けない。足が動かないのだ。どうやら足が折れているようだ。だけどふしぎとそれほど痛みは感じない。ちくしょう、やっぱり来なければよかった。 「大丈夫ですか?」先ほどのおばあさんらしき乗客が声をかけてきた。「足が折れているようです。動けません。おばあさんたちは大丈夫ですか?」「ええ、私たちは大丈夫です。いま、娘と孫が助けを呼びに行ってます」「この雨の中を?危険じゃないでしょうか?」「あの子らは、このあたりの山道は慣れたもんで、心配は要りませんよ。それより、あなたの足にこのトルマリンを当ててください。傷が癒えると思いますよ」「トルマリン?」変な石を手渡された。私は言われるままにその石を足に当ててみた。不思議とすこしずつよくなっていく気がする。 そのおばあさんは助けが来るまでずっと私のそばにいて、私を勇気付けるようにいろんな話をしてくれました。この山の昔話、ゴルフ場開発があった話、だけど、計画は中止になり、山の自然が守られた話、今でもその感謝は忘れないという話、などなど。そのおかげか、思ったよりも早く救助の人が来てくれて、おそらく土砂崩れの復旧工事をしていた人たちだったんでしょう、クレーンで私は引き上げられ、私はそのまま病院へ搬送されました。幸いなことに私の足は折れてはいませんでした。ほんのかすり傷程度だったようです。足が動かなかったのはただ足が挟まっていただけだったようです。 ただ、どうしても不思議なことがあるのです。 救助されたのが私と、バスの運転手の二人だけしかいなかったのです。後日、その運転手に聞いたけども、あのおばあさんやその娘や孫なんてバスには乗っていなかったというのです。 それでは、誰が助けを呼んでくれたんだ?誰が、私を勇気付けてくれたんだ? おそらくその謎を解く鍵は、あのあたりがタヌキのよくでる狸沢という場所だったということと、おばあさんが話していた話が握っていると思うんですが、定かではありません。 数日後、退院した私は過酷な仕事に復帰しました。相変わらずものすごいプレッシャーとストレスですが、今は時々、あの不思議な石に触れてエネルギーをもらうようにしています。 癒される上にこんな不思議な体験もできる山奥、やっぱり行ってよかったと思ってます。おわりトルマリンにこのお話のような癒し効果があるかはわかりません。
2008.07.06
コメント(4)
リクエストフィクションです。[引力][アジサイ][キリン][エビフライ][写真]です。この中から三つ選んで書くということです。タイトル「怪物物語」 私はキリン男。 満月を見ると狼に変身するのが狼男なら、キリンに変身するのが、私、キリン男です。以後、お見知りおきを。 満月といっても、写真やテレビで見ただけじゃ変身はしませんよ。おそらく月の引力のようなものの影響を受けているんだと思います。 それと、案外知られてないんですけど、変身には結構時間がかかるんです。昆虫の脱皮とか見るとわかるでしょう。あ、専門用語では「変態」って言うんですけどね、響きがイマイチですよね。イメージも悪いし。とにかく、生き物の体が変わるんですから、それなりの時間ってのが必要なんです。なので、半キリン男の状態で過ごす時間も結構バカにならないんですよ。しかも、この半キリン状態ってのがちょっと厄介なんです。 普通の人間の首から上だけがキリンになったところを想像してください。それが半キリン状態です。ちょっと不恰好ですよね。あらゆるところに頭をぶつけるし。毎回なんですけどね、なかなか慣れない。 待ち合わせのときは首が長いからすぐ相手を見つけれてよさそうなんですけどね、いくら「今来たところだ」って言っても誰も信じてくれないんですよ。これもちょっと苦手ですね。 熱いものを食べたときなんかは大変ですよ。なっかなかのど元を通り過ぎてくれないんです。ちなみに好きな食べ物はエビフライです。キリンだからって草ばっかり食べるわけじゃないですよ。半分は人間なんですから。 車はオープンカーですよ。ただ、高いんですよね。値段が。なので、最近は首だけ出してサンルーフでもいいかなぁ。って。どっちにしても信号待ちとかで止まってると小学生の子供に指差されるんですけどね。まえに、車が追突されたときがあったんですけど、ムチウチ症になっちゃいましてね、もんのすごく長―いコルセットで首を固定しなくちゃいけなくて、足元が見れなくて大変だったなぁ。あと、梅雨時は雨が多くて大変ですね。傘差して乗るわけにも行きませんからね。ちなみに、好きな花は梅雨がよく似合うアジサイです。 いいところはですね、あんまりないんですけど、しいて言えば、女湯が覗けるところですかねぇ。あんまりあからさまに覗くとまずいので、ふとしたときにちょっと見えちゃったくらいの感じで見るんですけどね。捕まっちゃうんで。あとは、自己紹介のとき「キリンです」っていったら確実にウケるくらいですねぇ。そんなもんですね、あんまりないですよ。いいところは。おわりなんか変な話になっちゃったなぁ。
2008.06.15
コメント(6)
リクエストフィクションです。お題は[組体操][お茶][ししゃも]です。タイトル「世界が平和になる新発明」 「できたぞ!これで世の中が平和になる」「博士、今日は何を発明したんですか?」「これだっ!」そういいながら博士が持っていたのは一見、ごく普通の急須だった。「急須?ですか?これで世の中が平和に?」「うむ。昔から、茶柱が立つといいことがあるというだろう?そこでだ、誰でも、いつでも、好きなだけ茶柱が立てられるという急須を発明したのだ」「はははは。回りくどい方法ですね」「平和的な方法と言って欲しいなぁ。たとえば、核兵器から守るために核武装するなんておかしな話だと思わないか?我々、科学者の脳は平和のために使われてこそなんぼだ!と、私は思う」 この博士は時々すごいことを言う。いつもは何を考えているかわからない、もしかしたらマッドサイエンティストか?と思うこともあるほどなのだが、こういうことをいわれると、今までついて来たのは間違いではなかったと改めて思わずにはいられなくなる。 「ほら、これを見てみろ」博士が持っている湯飲みの中には確かに茶柱の立ったお茶が入っていた。「おお、確かに立ってますね、茶柱」「うむ、さらにこういうこともできる」 博士が再び淹れたお茶には円を描くように無数の茶柱が立っていた。「おお、すごいですね、茶柱がいっぱい」「だろ。ちょっと嬉しくなってくるだろ」「そうですね、だんだん楽しくなってきました」「そうだろう。君もやってみたまえ」「はい」「まず、用意するのは、この急須と、茎茶だけだ。あとは普通にお茶を入れる。すると、水分子の働きの影響でプログラムどおりに茶柱を立てることが出来る」「なるほど、プログラムで茶柱をコントロールできるんですね」「うむ、たとえば、茶柱でピラミッドを作るなど、組体操みたいなことをさせることも可能だ」「おおー、タワーなんか作ったら派手ですね」「そうだな、実際に人間で作って、もしも倒れたりしたら、ししゃも出るような10段なんて高さのタワーでも湯飲みの中になら完璧に作れるぞ」「それはおもしろそうですね。やってみましょう」 「どうだ?できたか?」「ええ、すごいですよ。10段のタワーとその横に5段のタワー、さらに両サイドにブリッジを作りました」「おお、すでに湯のみじゃなくて、どんぶりでやっているのか、君の貪欲さはさすがだな」助手が用意したどんぶりの中には、小さいながらも10段のタワーを中心に両サイドに5段のタワー、さらにその外側にはブリッジがきれいに出来上がっていた。「でも、博士、この、ブリッジの横にある、丸いのって何ですかね?」「むむっ?」確かにブリッジの外側に丸い物が2つ並んでいる。「取り出してみてみよう」それは、丸まった茶柱だった。「私のプログラムミスですかね?」「いや、プログラムは完璧だよ。これは体育座りしている茶柱だ。人数的に余ったんだろうな」おわり
2008.06.01
コメント(10)
遅くなりましたが、リクエストフィクションです。お題は、「サッカー」「アントニオ猪木」「伝統・ニンニク卵黄」です。駄洒落満載でとのことでした。てか、固有名詞はきついって。タイトル「帰ってきたスーパーサブ」覚えているかい?俺の名前は町井公星(まちいこうせい)。まぐろヶ丘FCに所属するFWだ。ニックネームは名前をもじってハムスター。プレイスタイルもハムスターらしくちょこまか動いて点を取る。リクエストフィクションでサッカーといえば俺だろ。今日は上級生が抜けて、新チームになって最初の練習試合だ。俺もいつまでたってもスーパーサブってわけには行かないからな、そろそろスタメン定着を狙っていくぜ。「伝統~!にんにく~!RUN!オー!」おや、変なかけ声とともにランニングしながら登場したのは今日の対戦相手、古豪、星丘ガーリックボーイズだ。最近は優勝から遠ざかっているものの、この辺じゃ名門と言われるクラブチームで、今年のチームは5戦全勝と乗りに乗っているチームだ。というのも、俺と同い年のルーキーが入ったかららしい。おっと、ライバル出現か!?「よーし、全員集合だ!ミーティングするぞ!」今のがうちの監督だ。ないしょだが、実は俺はこの監督に気に入られている。なにかというと「町井!」って呼んでくる。いくら俺のプレーが気に入っていたとしても、まったく世話が焼けるぜ。「今日、マークすべき選手は、去年からレギュラーだったトップ下の仁王とボランチの安藤だ。この二人が起点になって攻撃を組み立ててくるぞ。それと、おそらく、途中から投入される、FWの稲木。こいつが現在、5試合で13得点の要注意人物だ」おお、稲木っていうやつか。こいつが俺のライバルだな。「町井、お前にはこの稲木をマンマークで潰してもらうからな」「うっす!」よっしゃ、気合い入るぜー!試合は膠着状態が続き、お互い無得点のまま前半が終わった。そして、後半5分、ついに相手ベンチが動いた。「稲木が出てくるぞ、町井、頼んだぞ」「うっす!」稲木ってのはかなりの大柄なやつで、どっかのプロレスラーみたいにアゴが出ている。稲木というよりはイノキって感じの奴だった。こんな奴にサッカーが出来るのか?来るとしたらポストプレイか?予想通り、相手は稲木を使ってきた。安藤、仁王、稲木。幾度となくこの流れでボールが運ばれてくる。だが、俺が稲木についている限り、プレーはさせないぜ。またきた、安藤、仁王…、稲木にはつながせないぜ!俺がクリアする!安藤、仁王、稲木、あんどにおういなき、アントニオ猪木…。パシリで鍛えたスタミナが俺にはあるからな、ことごとく抑えてやるぜ。うおっ、今度は浮き球に合わせてきた。なんの、空中戦も得意だぜ!どりゃっ!ヘディング勝負だっ!スカッ!なにっ!ガツッ!ふぁさっ。ピッピー!!それは一瞬の出来事だった。稲木に合わせた浮き球は稲木の頭をかすめ、稲木のアゴに当たってゴールしたのだ。稲木のヘッドを予想した俺は完全にタイミングを外された。まさに一人時間差。その次に同じような形になったときも、俺は逆に稲木のアゴシュートを読んだのだが、今度は頭に合わされて、得点されてしまった。完敗だ。結局、稲木一人に3点も取られ俺たちは負けてしまった。「町井!」監督が呼んでいる。「うっす!」「今日は俺のミスだ。お前の責任はない。まさか、敵があんな作戦で来ようとは、あからさますぎて読めなかった」いつもの監督らしくない弱気なコメントだ。この敗戦が相当こたえているのか?「でも練習試合ですし、次は抑えてみせますよ」「おお、頼もしいな。町井、お前がいるから大丈夫かも知れんな。よし、タバコ買ってきてくれ」「うっす!」相変わらずだぜ、監督。おわりだじゃれ?ちょこっとあったでしょ。まぁ、こんなもんですよ。
2008.04.03
コメント(2)
リクエストフィクションです。お題は「横綱」「闘牛」「生協」です。タイトル「汚名挽回」俺様が泣く子もだまる、第68代横綱だ。最近の相撲界はいろいろ騒がれているが、何も知らないおばさんが口を挟むなって言うんだよ。要は強けりゃいいんだよ。ここは強けりゃなにをしても許される、そんな世界なんだよ。だから俺様だって稽古は欠かさないぜ。最近は横綱の中の横綱になるため、世界中の横綱と戦っているところさ。今日の相手は、見ろよ、デカイだろ?体重、約1トン、闘牛界の横綱だ。すげぇ迫力だろ、あの猛々しさ。草しか食べていないとはとても思えない。きっと、あいつは隠れて、血の滴る生肉とかを食べているはずだ。それじゃないとあの迫力は説明がつかないよ。だが、今日は俺様がたおしてやるからな。そのために、気合も入るように、生協で買った塩もたっぷり用意したし。負ける気がしねーよ。さてと、そろそろ試合を始めようじゃないか?用意はいいか?いくぜ、闘牛界の横綱!キックオフ!!おわり久しぶりにコンパクトにまとめられました。タイトルの汚名挽回っていう言葉は本来は間違った言葉です。汚名は返上するものです。挽回するのは名誉ね。
2008.03.21
コメント(4)
出ました、お題。「クロッカス」「オーラ」「三寒四温」「ウーパールーパー」「お茶漬け」ということで、リクエストフィクションです。タイトル「フユコ 後編」 フユコが夜の町で働くようになって数年が過ぎていた。 店も何度か変わり、出会いと別れを幾度となく繰り返すうちに、フユコの名は夜の町でも知られるようになっていた。同時にフユコに言い寄ってくる男は後を絶たなくなったが、フユコが特定の男と深い関係になる事はなかった。 「あなたからは関わった人を不幸にするオーラが出ている」 いつか占い師にそう言われた事があった。特に気にしていたわけではないのだが、それ以来、なんとなくそういう関係には至らなかったのだ。 夜の町でも1、2を争う、「ウーパールーパー」という、大きな店にいた頃、フユコはある運命的な出会いをする。その相手はヤミ金の帝王を自称する男だった。妙に羽振りのいい男で、いつも下品な飲み方をする取り巻きを連れていた。この男にはそんなに魅力を感じなかったのだが、この男の金は魅力的だった。何度か言いよられるうちに、フユコはこの男と付き合うようになり、料理なんてお茶漬けくらいしか作れないフユコでも結婚目前というところまで関係は進んだ。 この頃のヤミ金業界はものすごい熱気だった。多くの人を不幸のどん底に陥れた金で豪遊する男たち。フユコもいつしか彼らと同じ生活をするようになっていた。 そんな金で工場をつぶしたときの両親の負債は肩代わりした親戚に返済された。それで、今まで病気の両親に代わり、コツコツと返済してきたフユコ自身の足かせとなるものが解かれたような気になっていたのかも知れない。ヤミ金の帝王を自称する男と、フユコはいつも行動をともにするようになっていた。 しかし、ヤミ金規制法が成立すると、状況は一変する。 ヤミ金の帝王を自称する男は逮捕され、フユコにまで捜査の手が伸びる事はなかったが、豪遊生活は終焉を迎えた。 確かに、自分と関わる人間は必ず不幸になる。そう思うとフユコという名前も、淋しい冬の景色を連想させ、孤独が似合う自分にはこの名前はぴったりだと思うようになっていた。 それでも、かつての豪遊グセがそう簡単に抜けるわけはなく、金を得るためフユコはやがて風俗で働くようになる。 そのころ、フユコの弟が高校を中退してフユコの所に転がり込んでくる。最初の何日かは泊めてあげてもいいと思ったが、特に仕事を探すでもなくぶらぶらとしているので、1週間目に追い出した。行くあてのない若い者が行く先は決まっていた。悪の世界だ。風のうわさで弟がヤクザの事務所に出入りしていると聞いたのはそれから半年くらい経った頃だろうか。さらに半年くらい経った頃には、覚せい剤で捕まったという知らせが届く。弟の身を案じながらも、弟が転がり込んできたあの時、なんとかしてやればよかったという後悔と、何も出来ない無力感に苛まれていた。 不幸な出来事は続くもので、同じ頃、入退院を繰り返していた母が急変して亡くなり、父も高額な移植手術を受けないと長くはないと診断された。 そんな中、フユコには再び運命の出会いが訪れる。その男はホスト風のチャラチャラとしたサラリーマン。やたらとモテそうだが、フユコの今までの不幸な身の上話を親身になって聞いてくれた上に、「俺がなんとかしてやる」って言ってのける、無駄な正義感のある男だった。 あるときは、鉢植えの花をもってきて、「この花は春の訪れを知らせるクロッカスの花だよ。君にとって今は雪解け間近の三寒四温の時なんだ、僕と一緒に春を迎えよう」と、まで言ってくれた。この一言がフユコの心を動かした。 以来、フユコの他にも何人かの女の影が見え隠れはしたが、何となくずるずるとその男との付き合いは続いた。そして、いつしかその男の存在はフユコの心にぽっかりと開いた大きな穴を埋める存在になっていた。 あるときは、フユコの専属の運転手になってもいいと言うから自分の車をその男に譲った事もあった。客から貰った高価なワインをあげた事もあった。それは心と心のつながりだけでは不安を感じていたからかも知れない。 ある時、その男が、父親の手術費用に。と、1億もの金を持って現れた。 この金があれば、父の手術は可能だ。しかし、これ以上関わるとこの男も不幸になってしまうだろう。 そう考えたフユコはすべてを棄てる事にした。 一億をもって飛行機に飛び乗った。行くあてなんて考えていない、ただ、冬のない南の国へ向おうと思ったのだ。 翌日、インサイダー取引の疑いでその男が逮捕された事をフユコが知る事はなかった。おわりなんだかつまらない話になっちゃった。もっと、じっくり書ければ面白い展開もあったかも知れないけど、上手くまとめきれなかったような感じ。
2008.03.14
コメント(2)
遅くなりました。リクエストフィクションです。お題は「デンチ」「跳び箱」「パソコン」「西岡すみこ」「ポテトチップス」です。タイトル「フユコ 前編」 小学6年のあるときまでフユコはどこにでもいる活発な女の子だった。スポーツが得意で、跳び箱はクラスで唯一8段まで飛べた。球技も得意でバスケやバレーではいつもエースだった。ドッジボールだって「使える女子」って男子に言われるほど上手かった。 ところがクラスのレクリエーションでドッジボールをした時、それは一変する。 フユコの放ったボールがクラスメイトの西岡すみこの顔面にヒットしたのだ。しかも運の悪い事に、すみこは鼻血を垂らして気絶してしまい、保健室にそのまま運ばれた。クラスのレクリエーションもそこで終了してしまった。 もちろん狙ったわけじゃない、たまたますみこの運動神経が悪かっただけだ。変なふうによけるから顔面になんて当たるんだ。フユコはそう思ったのだが、周りはそうは思っていなかった。 すみこの親はカンリョウとかいう仕事をしていて、立派なマンションに住み、なんか鼻につくようなお嬢様キャラだったのだ。なぜかいつも取り巻きもいたし。男子からも人気があった。そんなもんだからいつの間にかフユコはクラスいちの嫌われ者になっていた。 以来フユコは友達と上手く接する事が出来なくなってしまった。 フユコの父は小さな工場を経営していた。工場ではおもちゃのデンチケースに使われる、小さな金具を作っていた。しかし、第2次ミニ四駆ブームの終焉とともに売り上げは激減し、「これからはパソコンだ」とウインドウズ95ブームに乗るべく、新たに設備投資したものの、パソコンの部品の発注はコストの安い海外に流れ、フユコが高校1年の時に工場は負債を抱えたまま倒産してしまう。 ほぼ同時に両親ともに心労がたたったのか、体調を崩し、入院。フユコと、弟はそれぞれ別の親戚の家に引き取られる事になった。 それからのフユコはさらに孤独になり、学校でも家でも一人で過ごす事が多くなった。 高校を卒業すると、親戚の家からも飛び出し、一人暮らしを始める。仕事はホステスだった。 フユコの勤めた店は「ポテトチップス」という、小さなキャバクラだった。 そこで様々な人と出会い、フユコは今まで封印していた人と接するという事をもう一度学ぶ事になる。 また、出会いという点では夜の町でフユコは意外な人物と再会する。SMクラブで女王様をしているという、あの西岡すみこだ。 私立のお嬢様校に進学するためフユコとは別の中学に進んだので小学校の卒業式以来の再会だったのだが、かつての同級生は名前を呼ばれても気付かないほど変わっていた。 中学以降のすみこは、父親が公金の使い込みで逮捕され、母親も別の男と家を出て行ってしまい、フユコよりももっと早く夜の町で仕事をしていたと言う。 最初は嫌な奴に会ってしまったと思ったが、話を聞くうちに他人事とは思えなくなっていた。だけど、交換した電話番号にかける事はないだろうな。と、フユコは何となく思った。つづく次のお題が出れば続きを書きますよ。
2008.03.12
コメント(8)
リクエストフィクションです。お題は「アリ」「臨月」「資源ごみ」です。タイトル「スペースレンジャー」 「隊長!あれがSOSを出していた船です」パトロール船の船外モニターに全長800m級の巨大な恒星間資源ごみ輸送船の姿が映し出された。「ああ、見たところ外傷はないなぁ。中で何かが起きたということか。よし、乗り込むぞ」「ラジャー!」 私はスペースレンジャーの隊長をしている。 宇宙開拓時代は終わりを告げ、資源を求めて次の惑星を切り拓くことがなくなり、未開の星へ資源を運搬する恒星間輸送船が活躍するようになった。 しかし、同時に輸送船が宇宙海賊や未知の宇宙生物に襲われる事例も増えた。 そこで、我々スペースレンジャーはそれらの脅威から輸送船を守り、宇宙の輸送の安全を維持するために作られたのだ。 巨大な輸送船の中は不気味な程静まり返っていた。大抵この規模の輸送船には20人程度の乗員が乗っている。しかし、SOS発信以後、我々が無線で呼びかけても、このとおり、乗船したあとでも何のリアクションもないことを考えると、乗員の身に何かトラブルが起きたことに間違いはなさそうだ。しかも、船体に外傷がないとなると、事故や宇宙海賊に襲われたということはなさそうだ。そうなると考えられるのは、宇宙生物に襲われたという疑いだ。宇宙生物といっても、全長数kmにもなる巨大な宇宙ワームや、目に見えない宇宙ウイルスなんてのもいる。ある意味、海賊より厄介な存在なのだ。 「隊長!見てください!腹を割かれた死体があります!」そこには乗組員のものと思われる死体が転がっていた。無残にも腹は切り裂かれ、悶絶の表情をうかべたまま仰向けに横たわっていた。「これはおそらく宇宙アリの仕業だ」 宇宙アリは刃物のような鋭利な手足を持ち、鞭のようにしなやかでハンマーのような破壊力を兼ね備えた尻尾を持つ、体長3~5mの巨大な生物だ。 人間の体内に卵を産みつけ、それは1時間程度で孵化し、まるで臨月の妊婦のようにぷっくりと膨れ上がったその人間の腹を中から切り裂いて生まれてくるという恐ろしいやつだ。 「SOSが出されてから5時間あまりか…。生存者はいないかも知れないな…」そのとき、背後で音がした。プシュー!「何の音だ?」「大丈夫です、スチームのようです」突然、真っ白い蒸気が飛び出したので驚いたが、どうやら宇宙アリではなさそうだ。「このレバーで止まるはずです」そう言って、隊員がレバーを動かしたその時だった。 消えた蒸気の向こうに黒い影が!宇宙アリだ!! 我々は身構えた。やつらとまともにやりあうのは得策ではない。しかし、この状況では戦わざるを得ない。 と、思ったが、宇宙アリは何事もなかったように我々の目の前から去っていった。「ふぅ~。助かった。一体どういうことだ?」「きっと我々の運がよかっただけだろう。どんなアリの巣にも必ず働いていない働きアリがいるというだろう。おそらく、今の奴がそれだ。いいか、どんなことがあっても奴らとまともにやり合おうとは考えるな。今は生存者の捜索と救出が最優先だ。奴らを退治するのは応援部隊が来てからだぞ」「ラジャー、隊長」 いくつかの死体を見つけながら船の上部へと向かってゆく。死体はどれも腹を割かれて死んでいた。 「この上がブリッジのようだな。そこに生存者がいなければいったん退却するぞ」「このエレベーターが使えるようです」「よし、行くぞ」ウイィ~ン…。エレベーターの扉が閉まり、少ない重力の世界だが上昇してゆく感覚が体に伝わる。ガシャ~ン…。到着したようだ。ウイィ~ン。再び扉が開く…「!!」エレベーターの扉が開くと、そこはまるで宇宙アリの巣になっていた。不気味にうごめく無数の宇宙アリたち。こんなところからはさっさと去るに限る!「いかん!閉じろ!」私が叫んだと同時に宇宙アリたちも一斉にこちらに向かってきた。ガシャーン!!エレベーターの扉が閉まったと思ったら宇宙アリの刃物のように鋭い腕がそれを阻止した。万事休すか!と思ったその時だった。 再び開いた扉の向こう側にいたはずの宇宙アリの一団は一瞬のうちにその姿を消した。「何だ?」「今がチャンスだ!もう一度閉じるボタンを押すんだ!」「はっ、はい、ラジャー!」 こうして、我々は命からがら宇宙アリに襲われた輸送船を脱出し、パトロール船に戻ることが出来た。「隊長、さっきのは一体何が起こったんですか?」「今日の我々はやはり運がいい。みてみろ、あの巨大な影を」船外モニターに映し出されていたのは巨大な輸送船より、さらに巨大なうごめく影だった。「あれは宇宙アリを主食とする宇宙生物、宇宙アリクイだよ」おわり久しぶりに真面目に書けました。
2008.03.06
コメント(4)
お題は「和太鼓」「おたべ」「カラオケ」です。タイトル「ロス疑惑ってどんな事件だっだっけ?」 1981年11月、米国ロサンゼルス市内で三浦和義容疑者(カラオケ店経営)の妻、おたべちゃんが頭に銃撃を受け、約1年後に死亡、一緒にいた三浦容疑者も左足に重傷を負った。 84年、週刊文春の連載「疑惑の銃弾」をきっかけにマスコミが保険金殺人疑惑として報道。警視庁は85年9月、銃撃事件の3カ月前におたべちゃんがロス市内で和太鼓のバチのようなもので殴られけがをした殴打事件の殺人未遂容疑で三浦容疑者らを逮捕。88年11月に東京地検が銃撃事件の殺人罪で起訴した。 殴打事件は98年9月、三浦容疑者の実刑判決が確定し、01年1月に刑期満了。銃撃事件は一審で無期懲役だったが、二審は逆転無罪に。最高裁も03年3月に検察側の上告を棄却し、無罪が確定した。おわり今回は書けませんでした。これで勘弁してください。あと、フィクションですので、実在の人物等とは一切関係ありません。
2008.02.26
コメント(6)
お題は「かくれんぼ」「はまぐり」「昔話」です。タイトル「まさるくん」 僕は時々、ある不思議な体験を思い出す。 それは僕が小学校1年生の頃の話だから今から25年以上も前の昔話になる。 まだ少年団なんかにも入ってなくて、午前中で授業が終わると、昼過ぎには学校から帰る僕らは、放課後、いつもの仲間4、5人と、学校の帰り道の途中にある、はまぐりのカンヅメかなんかを造っていた工場の跡地にある空き地で遊んで行くのが日課になっていた。 その日もいつものように空き地で鬼ごっこやかくれんぼをして遊んでいると、突然知らない子がやってきて、「一緒にあそばない?」と、笑って言ったんだ。 その子は見た感じ、僕らと同年代だけど、誰も一度も見た事のない子だった。服装はやたらとコギレイで、僕も入学前に写真館で一回だけ着たことがあるような服を着て、変に青白い顔が印象的な子だった。 僕らは最初、彼の事を無視して遊んでいたんだ。だけど、あんまり淋しそうにこっちを見ているから仕方なく、仲間に入れてやる事にしたんだ。 彼の名前はまさるくんと言った。 まさるくんはかくれんぼとかははじめてやったらしくて、すぐ鬼になっちゃうんだけど、いったん鬼になるとなかなか終わらなくてさ、実は僕らは手加減をしながらやってたんだ。それでもまさるくんは楽しそうに僕らと走り回っていたよ。 気がつくと僕らは、まるでずっと以前から友達だったみたいに打ち解けていた。 その次の日も、その次の次の日もまさるくんとは一緒に遊んだ。 そして、「また明日も遊ぼうな」って、別れたんだ。 だけど、次の日、まさるくんは現れなかった。 その翌日、学校に行くと、教室の空き机だった席に花瓶に入った花が置いてあるんだ。確か、その席は僕らと一緒に入学するはずだったけど、病気で入院しているから遅れて入学してくるって話だった子の席だった。 担任の先生の話によると、その子の病気が悪化して、三日前から意識不明だったんだけど、昨日亡くなったらしい。 僕らはその子の名前を聞いて驚いた。 まさるという名だったのだ。 僕らはあれ以来、まさるくんと会う事はなかった。僕らと一緒に遊んだまさるくんが、病気で亡くなったまさるくんと同一人物だったかは定かではない。だけど、あの日僕らが一緒に遊んだのは事実だ。あの日、僕らの友情は間違いなく存在したんだ。 今でもあの頃の友人と飲む事がある。そんな時、僕らは決まってテーブルの隅っこにまさるくんの席を用意する事にしている。おわり
2008.02.19
コメント(8)
お題は「たいいん」、「キャンプファイヤー」、「かめ」です。タイトル「グレートシャーマン2」 「きっ、きさまっ!」長老はまじないしカプリコにつかみかかった。改めて近くで見ると不気味な顔だった。それに、ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべている。「やめて!おじいさま」その声は確かに長老の孫娘の声だった。しかし、声のする方に孫娘の姿はなく、かわりに一匹のかめがいるだけだった。「踏みつけないように、気をつけてください。そんな姿ですけど、あなたのお孫さんですよ」カプリコが冷たくそういうと、長老はショックのあまり意識を失ってしまった。 しばらくして、気がつくと辺りはすっかり暗くなっていた。空には満月が輝いており、目の前にある小さなキャンプファイヤーが肌寒さを和らげていた。そこは、さっきまでいたどうくつの入口であった。やはりさっきの出来事は夢ではなかったのだ。 長老は体を起こし、かめの姿になってしまった孫娘を捜すため辺りを見回した。「おじいさま!」声の方を見て長老は我が目を疑った。すっかりかめになってしまったとばかり思っていた孫娘が元の姿で現れたのだ。「月の光のおかげで呪いが一時的に解けたのですよ」孫娘のあとから現れたのは、服装からわかるものの、さっきまでとは明らかに別人のジャニーズ系の顔のまじないしカプリコであった。「お前は…あのまじないしか?」「ええ、とりあえずこれ、食べますか?本当はワタシが作った肉まんですけど」そういいながらカプリコは話を始めた。「あなたならワタシの顔に見覚えはありますよね。そうです、ワタシの正体はこの国の王子です。いや、正しくは、元王子でした。実は、ワタシも呪いをかけられ、今回はその呪いを解く力を借りるためにお孫さんを利用させていただきました。申し訳ありませんでした」「いっ、いや、あの…つまり、どういうこと?」元とは言え、一国の王子に頭を下げられて長老は恐縮した。 カプリコの正体はこの国の王子だったのだ。しかし、悪い魔法使いに国王は殺され、国王に姿を変えた魔法使いに国は乗っ取られ、王子であったカプリコはその姿をみにくく変える呪いをかけられ、城を追い出されてしまったのだ。そしてその呪いを解くには長老の村に伝わる秘宝「うーの鏡」が必要だったのだ。「では、「うーの鏡」さえあれば孫娘も元の姿に戻れるというのだな」「ええ、約束いたします。そのかわり、ひとつお願いがあるのですが…」「いいだろう」 そうして、長老の孫娘とカプリコは「うーの鏡」によりもとの姿に戻る事が出来た。「うぉ~、よかった、よかった」長老は泣いて喜んだ。「助かりました。こんな方法しか思いつかなくて申し訳ありませんでした。では、もう少しの間だけこの「うーの鏡」をお貸しいただけないでしょうか」「城に乗り込むのか?」「ええ、親衛隊のたいいんの中には今のワタシの姿を見れば協力してくれるものもいるはずですから」「わかった。事がすんだら鏡を返しに、またこの村に来るが良い」 そして、カプリコは悪い魔法使いの正体を暴き、新たな王になった。 それ以来、国の人々は干ばつや飢饉に苦しむ事はなくなり、国も末永く栄えたと言う。それには新国王の政策がよかったというだけでなく、新国王が使っていたまじないのおかげだったという噂もあるのだが、真偽のほどはさだかではない。おわり
2008.02.15
コメント(4)
リクエストフィクションです。お題は[うさぎ][えのぐ][ぼうし]です。京都のエンジェルさんの娘さんからです。タイトル「タイトルは最後に。ってか、タイトルを予想しながら読んでください」ギャーギャーギャー、チチチチチ、ホワホホホッ、ジーコ、ジーコ…ザッ!グルグルッ!シュタッ!俺が誰か知ってるか?なに?知らない?そんなはずないだろ?この山が三つあるカウボーイハットを見ろ!ジャジャーン!このぼうしこそ公認スーパーハンターの証、そう!俺こそスーパーハンターだ!ジャジャヤーン!!正直、今、ドキドキしたろ?ザッ、ザッ、ザッ…今日はこのジャングルに高級えのぐの原料となるコペコペ虫を採りに来ているのだ。ガサガサガサ…こんな草むらにコペコペ虫はいない。コペコペ虫を捕まえるのは非常に困難なのだ。なぜならその生態が…、非常に…、珍しく…。ピタッ。いいか足音を立てるな…しーっ!しーん…。ジャングルが静まり返った。奴が現れるぞ。バキバキバキッ!出た!身長9メートル、世界最大の肉食獣、五耳(ファイブイヤー)うさぎだ!ギャワワオーン!!実はコペコペ虫は奴の毛皮に寄生しているんだ。コペコペ虫を捕まえたければ奴をたおせってことだ。しかも、奴をタダのでかいうさぎと思うなよ、五耳といっても耳が五つあるわけじゃない、三つは巨大なツノだ。牛も一撃でザックリと貫くぞ。ダダッ!気をつけろ!ここからがハントだ。黙ってそこで俺の戦いっぷりをよく見ていろ。どりゃっ!バキッ!ドカッ!だぁっ!ギュルルッ!ザサザッ!ビシュッ!ぐおっ!ザクザクッ!ザザッ!ダッ!こなくそぉ!シュルッ!ヒュッ!ジュバッ!ぐっ!ドドッ!ダッダン!バキバキ!がぁぁっ!ダダーン、ダーン!バタナバタ!ザッ!ハァ、ハァ…ふぅ。どうだ、見たか、俺の戦いっぷり、正直、ドキドキしたろ?おっと、ほれるなよ。ハッハッハ…おわりチャンチャン。タイトル「ぎおんまつり」赤パレがハードルを下げてくれたんで助かりました。
2008.02.08
コメント(12)
今日はリクエストフィクションを考えたときにボツになった話を書いてみます。てか、設定みたいなもんしかないんだけどね。まず、ハンドボール、水性ボールペン、ポイントカードのときの話。これはもう、最初っから新しいスポーツをでっち上げようと思ってたんですよ。ドッジボールとハンドボールを足したようなスポーツで、相手のチームのターゲットとなる選手にボールを当てたら1点みたいなやつ。んで、ポイントカードはポジションの名前。中盤でゲームを組み立てる役割。ポイントガードじゃないのは、このゲームがもともとテーブルトークカードゲームから派生したとか書こうと思ってた。だからポジションのことはカード、チームのことはデッキとかって呼ぶことにしよう。とかね。ほかのカードは攻撃専門のアタックカード、ターゲットを守る、ディフェンスカード。1デッキの人数は5人で、アタックカードは1人、ポイントカードは2人、ディフェンスカードは2人。だけどこれだけじゃ、それぞれのカードに特色がないから、アタックカードはボールを持って4歩まで歩けるとか、コートの両端にあるポイントエリアにはターゲットになっていないディフェンスカードは入れないとか、あと、シュートには芸術点があって、その点数がたまるとカードが復活できるとかね。でもこれじゃ、水性ボールペンが消化できないんだよ、シュートの技の名前でもいいんだけどさ、説明がめんどくさそうだし、それなら、スター選手で、吹田誠一郎(スイセイ)とポールとベンのコンビネーションが水性ボールペン攻撃とかって言うのもありかなぁ、なんて考えたんだけど、結局、ルールがわかんないとどうもならないんだよね、このまえのファンタジーみたいなのはやったばっかりだからさ、ルールの説明して、水性ボールペン攻撃までもっていくのは果てしないでしょ、だからボツになりました。最後にはポールとベンだけ生き残りました。せんたく、だるま(ちゃん)、そらいろのときは、最初考えてたのは、だるまが未完成のまま出荷されてしまったっていう話。だけど、巨額贈収賄事件直後の総選挙を占う注目の予備選挙の場面で、その未完成のだるまに目を入れて当選を喜ぶところがテレビで中継されて、それが慣例になった。みたいな話。ところが、赤パレの書いたやつを見て、これはボツになった。その後考えたのは同じような話で、だるまちゃんは生まれたときから目が見えなかったという話。これもなんかいまいちな感じがしたので、ボツ。その後考えたのがかっこつけマン。だるま(ちゃん)が気になってたんだよね。(ちゃん)があるのとないのではどう違うんだろう?ってとこから始まりました。んで、なんにでも(かっこ)をつけれる存在、赤パレが神様を使ってるんで、神様よりは、ヒーローがいいかなぁって。んで、それぞれのストーリーは七つの大罪をモチーフにしています。高慢はかっこつけマン、強欲は国会議員(これだけ、最初のアイディアの生き残り)、暴食は遭難者、色情はOL、嫉妬はカラス、怠惰はサラリーマン、憤怒がだるまちゃん。って感じ。だからちょっと長くなった。でもかっこつけマンがだんだん高慢になっていく様子が表現できてよかったと思う。と、いうように、毎回けっこう考えているんです。太山商事はモデルがあるのであんまり考えてないです。
2008.02.06
コメント(6)
エンジェルさんからの出題です。お題は「せんたく」「だるま(ちゃん)」「そらいろ」です。タイトル「かっこつけマン」 かっこつけマンは正義のヒーロー、かっこをつけるだけで、あら不思議、どんな悩みもあっという間に解決してしまう。 すごいぞ、かっこつけマン。 おや、あんなところに雪山で遭難した人がいるぞ、もう3日も何も食べてないので腹ぺこで意識ももうろうとしてるんだってさ、かっこつけマン、助けてあげて。「ようし、わかった」するとかっこつけマンは遭難者に何が欲しいか聞いてみました。「腹が減ったでごわす、何か食べ物が欲しいでごわす」遭難者は、消え入りそうな声でそう言いました。「おやすいごようさ!」そういうと、かっこつけマンは遭難者にかっこをつけて、遭難者(満腹)にしたぞ。 すごいぞ、かっこつけマン。これで腹ぺこともおさらばだ。だけど、無事に下山できるかはわからないけどね。 おやっ、今度は電線の上のカラスが文句を言ってるぞ。みんなから真っ黒で地味だって言われてるんだってさ。そりゃそうだよな、同じ鳥でもオウムやインコはきれいな色をしている。あいつらばっかり目立ってずるいよな。「ようし、わかった」するとかっこつけマンはカラスに好きな色をせんたくさせました。「そうだなー、鳥と言えば、空だよ。この青空のようなきれいなそらいろがいいなぁ」「おやすいごようさ!」そういうと、かっこつけマンはカラスにかっこをつけてカラス(そらいろ)にしたぞ。 すごいぞ、かっこつけマン。これでカラスの悩み事ともおさらばだ。だけど、空の色と同化してどこにいるかわからなくなっちゃった。 おややっ、こんどはあんなところでだるまが怒ってるぞ、なんとかして、かっこつけマン。「ようし、わかった!」するとかっこつけマンはだるまがなぜ怒っているかを聞いた。なるほど、まだこどもなのに顔がコワいからみんながかわいがってくれないのか。「おやすいごようさ!」そういうとかっこつけマンはだるまにかっこをつけてだるま(ちゃん)にしたぞ。 すごいぞ、かっこつけマン。これでだるま(ちゃん)はみんなからかわいがられるね。だけど、願いを叶えただるまはその年のうちに焼かれちゃうんだよね。 おやおやっ、こんどは偉そうな国会議員がかっこつけマンを呼んでいるぞ。何か困っているのかな、手伝ってあげて、かっこつけマン。「ようし、わかったぃ!」「ワシはもっともっとお金が欲しいんだ。なんとかしてくれ、かっこつけマン」「おやすいごようだとも!」そういうと、かっこつけマンは国会議員にかっこをつけて国会議員(金まみれ)にしたぞ。するとどうだろう、あっちこっちの企業からどんどん金が入ってきた。 すごいぞ、かっこつけマン。これで国会議員(金まみれ)もウハウハだね。でも、贈収賄で捕まらなきゃいいけどね。 おやおややっ、今度はOLが困っているぞ。助けてあげてよ、かっこつけマン。「よっしゃ!」彼氏が出来なくて困っているんだって、ここはいっちょ、派手にやってあげてよ。「おやすいごようさ!!」そういうと、かっこつけマンはOLにかっこをつけてOL(モテモテ)にしたぞ。 うわー!すごいよ、かっこつけマン。モテモテだよ。あっちでも、こっちでも告白されてる。あっ、でもOL(モテモテ)を取り合って男どもがケンカを始めたぞ、あっ、刺した、刺した。でも気付かなかった事にしようか、さっさと行こう、かっこつけマン。 と、思ったら、横では仕事に追われてゲッソリしたサラリーマンがいるぞ。なんとか出来るよね、かっこつけマン。「おうよ!」もう半年以上も休みがないんだってさ。このままじゃ過労死しちゃうよ。「おやすいごようさ」そういうと、かっこつけマンはサラリーマンにかっこをつけてサラリーマン(失業中)にしたぞ。 よかったね、これでいくらでも休めるね。家族サービスし放題、海外旅行にも行き放題だね。すごいぞ、かっこつけマン。まぁ、再就職できるかどうかは知ったこっちゃないけどね。 こうして、かっこつけマンは次々に困った人たちを助けてきました。未だかつてこれほどまでにすごいヒーローはいなかった。ってか、かっこさえつけてやれば、この世の中はうまく行くもんだなんて得意げです。 そしてある日、かっこつけマンはふと気付きます。 こんなすごい自分にかっこがついていないのはもの足りない。かっこさえついていればさらにすごいヒーローになれるはずだ。 そう思ってかっこつけマンは自分にもかっこをつけてみました。 かっこつけマンはかっこつけ(マン)になりました。 するとどうでしょう、かっこつけ(マン)はみんなからうとましい目で見られるようになってしまいました。冷たいものです。あれだけみんなを助けてあげたのに。 それからかっこつけ(マン)が人助けをする事はありませんでした。おわり
2008.02.05
コメント(8)
お待たせしました。リクエストフィクションです。お題は、ハンドボール、ポイントカード、水性ボールペンです。ちょっと長いけど勘弁してください。タイトル「太山商事」 僕の住む町に太山商事というお店がある。 このお店はかなり昔からあるようで、地上3階、地下1階からなる、おそらく出来た当時はかなり立派だったと思われる店構えで、品揃えは、ネジ一本から、鍋、茶碗、プロ用の工具、道具、家具、家電、プロパンガス、家を建てるときに使う建材まで、なんでも一通り手に入るようになっている。さらに、道を挟んだ向かい側には小さなガソリンスタンドも所有し、店の裏側には変な外国人が住んでいるという噂のある、築ン十年というアパートまで所有している。 今風に言えばホームセンターみたいなものだが、まさに雑貨屋、なまもの以外は何でもあるお店である。 ただ、気になる点もある。 あまりにも商品がいろいろありすぎて、素人には目的の品物を探し出せないということと、ちょっと珍しいものは明らかに僕が生まれてくる前くらいに仕入れたんじゃない?って物まで平気で売られていることだ。 僕はその日、ハンドボールという、料理に使う片手用のボウルを買いに太山商事に行った。 店番は名物のばぁさんが一人。最近は耳も遠いし、ちょっと頭のほうも衰えているようで、同じことを何度も聞いてくる。この前来たときはポイントカード、といっても、ただのスタンプカードなんだけど、その、ポイントカードのハンコを間違って多く押したりもしていた。それはそれで、貯まると商品券として使えるから嬉しいので、こっちも気がつかなかったことにしていたんだけど。また間違えないかな、なんて期待を抱いたりもしている。 「ハンドボールありますか?」「えっ、何?」ほら、やっぱり聞き返してきた。「ハンドボール、片手用のボウルですよ」僕は軽くジェスチャーを交えながらもう一度言った。「ああ、あるよ」そう言うとばぁさんはゆっくりとした足取りで天井まで届きそうなくらい高い棚と棚の間の闇の中に消えていった。 僕はばぁさんを待つ間、手近な棚にある何に使うかわからない金具なんかを手にとって時間を潰す。そんな時、この店では独特のゆったりとした時間が流れているような錯覚を覚える。 そういえば、ボールペンのインクが切れていたんだった。水性ボールペンは書き心地はいいのだが、いたずら書きに使うとすぐインクがなくなる。もちろん、この店なら僕のお気に入りの水性ボールペンも手に入るだろう。ただ、どこに置いてあるかはわからないけど。 「あったよ」ばぁさんはすっかり黄ばんだビニール袋からピカピカのハンドボールを取り出して僕に見せた。 確かに。僕が欲しかったのはこれだ。だけど、これは一体どこにあったんだ?見つけてきたというより、発掘してきたと言ったほうがよさそうだった。「あんた、○○さんとこのマゴさんだよね?」突然、ばぁさんが聞いてきた。「え?違いますけど」○○さんって誰だ?ちゃんと聞き取れなかったから聞き違いかもしれないけど、もうこの町に30年くらい住んでいるけど、一度も聞いたことのない名前だ。「ありゃ、違ったかい」ってか、この前来たときも同じようなやりとりをした記憶があるのだが、「ええ、ちがいますね。それと、おばさん、水性ボールペンってありますか?」もうこのやり取りはたくさんだ。僕は強引に話しを進めることにした。「えっ、何?」やっぱり聞き返してきた。「ボールペンです、ボールペンってどこにあります?」やっぱり、使いやすいのを選びたいからね、今度は置いてある場所を聞いてみることにした。「ああ、ちょっと待ってよ」そう言うとばぁさんは、今度は店の奥に消えて行った。 店の奥は事務所になっているはずだが、ここからはよく見えない。 奥から箱に入ったボールペンでも出してくるのだろうか? ばぁさんはなかなか戻ってこない。 僕は、こんなに長い間、店番がいなかったら万引きなんてし放題だな。と、思ったが、自分の欲しいものがどこにあるかわからないんじゃどうしようもないか。なんて、へんなことを考えていた。 しばらくして、別の客らしい二人組が店内に入ってきた。 彼らは何も言わず少し間隔を開けて僕の後ろのほうに立っている。 早く、ばぁさん、戻ってこないかなぁ。 と、思ってたら来た。そして、僕の顔を見ている。「ん?ありました?」「ああ、あんたの後ろだよ」「え?」僕は振り返った、すると先ほど入ってきた別の客が僕の顔をじっと見てきた。このときわかった。彼らが噂の変な外国人か。なるほど、たしかに日本人とは明らかに違うんだけど、どこの国から来たのかわからないような顔をしている。「ポールデス」「ベンデス」二人は小さく手を振りながらカタコトの日本語でそう言った。そうか、ポールとベンというのか。って、間違ってるじゃん!「おばさん、僕が欲しいのは、ポールとベンじゃなくて…」 それから僕は、じつはこの店の店員で、普段は建材とかを置いてある倉庫でフォークリフトなんかに乗っているというポールとベンとともにボールペンのコーナーを探し出し、なんとかお目当ての水性ボールペンを手に入れることに成功した。 思わぬ時間を食ってしまったがこれでお会計だ。 僕はハンドボールと水性ボールペンの代金を払ってポイントカードを差し出して、ハンコを押してもらった。今回も多めに押してあるかな?という期待を抱きつつ、ちらっとポイントカードを覗いてみたが、今度は押されるべきハンコの数が明らかに一つ足りない。「ちょっと、おばさん、ハンコの数、足りないよ」「えっ、何?」ここで聞き返すのはもはやお約束だ。「おばさん、ハンコ、足りなくない?」「いや、あんた、この前来たときに間違って一個多く押しちゃったから、今回、一つ少なくしといたから」 って、それは覚えているのかよ。おわり
2008.02.03
コメント(8)
リクエストフィクションです。久しぶりなんで上手く書けるか心配です。お題ははてなっちさんから。綾鷹…ペットボトルのお茶の名前ですか。飲んだことありません。フレンチーウーラー…キャラクター?はやってるの?エルモア…ティッシュの銘柄か。タイトル「旅路の果て」 勇者ティシュウは広大なダンジョンの最深部にたどり着いた。目の前にはまがまがしいオーラを放ち、魔王イレッド・ベハードが鎮座している。「勇者ティシュウよ、よくここまでたどり着けたな。ほめてやるぞ。だが我輩に勝てるなどと思っておるわけではないだろう。我が輩には物理攻撃はおろか、魔法も効かないのだぞ」魔王はふてぶてしい笑みをうかべながらそう言った。「それはどうかな。これを見よ」勇者は腰に下げていたつるぎを掲げた。「そ、それはエルモアのつるぎ!まさか、フレンチウーラーの封印を解き、綾鷹の力を得ることができたというのか?魔獣チャバはどうしたのだ!?」「この私がたおした!」この勇者の一言で魔王の表情が明らかに一変した。「…ふっ、ふはははは。見事だ。これはもう、見事としか言いようがない。よし、その活躍を認め、今までのことはすべて忘れて我輩の仲間になれば世界の半分をお前にやることにしよう」「今までのことをすべて水に流せというのか?」「そうだ。世界の半分だぞ。破格の条件ではないか」 勇者は即答した。「それは無理だな」「な、なぜだ?」魔王はあきらかにあせっているようだ。じつはエルモアのつるぎは魔王に対抗できる唯一の武器であり、魔王の最大の弱点であるのだ。「詰まるからに決まってるだろう!ゆくぞっ!!」そういいながら勇者は魔王に切りかかった!「えっ?ちょっ、それ、どういう意味…」ズシャア!! 一瞬の出来事だった。勇者のエルモアのつるぎが魔王を一刀両断した。「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ…!!」 こうして、勇者ティシュウにより、魔王イレッド・ベハードはたおされ、世界に平和が訪れた。(「戦記 かみがみのたたかい」第651章より)おわりファンタジーものです。よくわからないお題なのでよくわからない使い方をしてみました。
2008.01.23
コメント(12)
お題はビリーズブートキャンプホタテプーさんの3つです。久しぶりなんで、力技です。タイトル「カルチャー教室」 昼下がりのスーパーは主婦の交流の場である。「あら、麻生さんの奥さん、今晩何にするの?」「あら福田さんの奥さん、そうね、じゃがいもと人参が特売だったからカレーね」「いいわね、うちもそうしようかしら」そう言いつつも福田婦人はさつまいもをかごに入れた。「さつまいももカレーに入れるの?」「ちがうのよ、最近便秘がちで、食物繊維を取ろうと思って」「あら、ピンクの小粒、飲んでないの?」「私、あれ体質に合わないのよ」「それならヨーグルトがいいわよ、私は毎日食べてるわ」主婦同士が顔を合わせるととりとめもない会話が始まる。買い物もそっちのけで話し込む事もある。 「ちょっとすいませーん」二人の間に手が伸びてきた。「あら、ごめんなさいね」「ごめんなさいね」シンクロの選手のように息のあった二人同時の会釈。会話に夢中のようでも見るべき所はちゃんと見ている。 ここからの会話は少し小声になる。「いまの、安倍さんの奥さんよね、高いお刺身の盛り合わせ買っていったわね」「ウニが入っていたわよ」「ホタテなんかこんなに厚かったわ」「それにしても、相変わらずスタイルいいわねぇ」「本当ね、子ども生んでるとは思えないわ」「なんか、エクササイズに通っているそうよ」「エクササイズ?どんな?」「ビリーズブートキャンプって、通販のコマーシャルでやってたでしょ、あんなやつですって」「まぁ、そんなのに通ってるの?さすがねぇ。でもお月謝とか、高いんでしょ?」「そうでもないらしいわよ、ここのスーパーの2階のカルチャー教室でやってるそうよ」そんな話をしながらも買うべきものはきちんとチェックしている。「あら、カレールー高いわね。今日は肉じゃがにするわ」「そういえば値上げするっていってたわ。今度からは特売の時にしかできないわね、カレー」「なんでも、値上げされるわねぇ。うちの給料は上がらないのに」「ほんとよねー。ところで、さっきのカルチャー教室、帰りに覗いてみない?」「いいわよ、安倍さんの奥さんみたいなナイスバディになったらどうしようかしら」 カルチャー教室ではレッスンの真っ最中だった。 壁の一面が鏡張りの部屋の中心に一人の男の人がいてその後ろに数人の主婦が並び、音楽に合わせて体を動かしている。「テレビのやつよりハードじゃないみたいね」「あら、真ん中の男の人、プーさんだわ」「プーさん?」「そうよ、夫の元同僚。脱サラして何でも屋をやるっていってたけど、こんな事をしてたのね」「へぇ~、でも、なんでプーさんって名前なの?」「それが、おかしいのよ。あのひと、プープー、プープー、おならばっかりしてるの。普通の人より腸の活動が活発なんだって」「へぇー、ちょっとうらやましいわね」「そうねぇ」部屋の入り口にある窓から中を覗き込む二人の背後に人の気配がした。「すいませーん」現れたのは先ほどの安倍夫人だった。「あら、安倍さん、またお会いしましたね」ちょっと気まずいが、よく考えればここで会うのは当たり前だった。「お二人はこの教室に興味があるの?インストラクターさんに紹介するから、よければ見学していかない?」「いいの?じゃあ、ちょっとだけ」こういうときはずうずうしさなんて関係ない。安倍夫人が二人をプーさんに紹介する。「どうも!」見学者が顔見知りだとわかるとプーさんが笑顔で挨拶してきた。二人はシンクロの選手のように息のあった会釈を同時にする。 二人が部屋の端で見つめる中、レッスンは再開された。軽快な音楽と一緒に体を動かす生徒たち。安倍夫人も真剣なまなざしで取り組んでいる。 しかし、よく耳を澄ませると音楽とは別な音が聞こえてくる。「ワンツー」ブッブー、「ワンツー」ブッブー。顔を見合わせる二人。よく見ると教室の看板にはこう書いてあった。「今日も快腸オナラエクササイズ、ぶり~ズびぃ~トキャンプ」おわり
2007.09.21
コメント(2)
お題はサボテンわさび茶漬けカメハメ派です。タイトル「テロリスト2」コンコン。「…山」ハセガワがいつものように現れた。「おう、入れ」しかし、アオシマの返事はいつもとは違っていた。「え?川は?いいんですか?」「ああ、前回、大家に家賃を払っちまったからもう必要はない」「…合い言葉って、大家さんのためにあったのか」そこは薄汚れたアパートの一室である。大きな声では言えないが、この二人は国際テログループ、アリカイナ日本支部に所属しているテロリストだ。「先輩、郵便が来てましたよ。暗号になってますがアリカイナの環太平洋地区本部からのようです」「なに?内職に忙しくて気がつかなかったぞ」「え?先輩、内職もやってるんですか?」「ああ、今月は家賃も払っちまったし、ヘルメット代っていう予定外の出費があったからなぁ。おかげで食事は3食わさび茶漬けだ」「なんですか?ヘルメット代って?」「クールビズ用ヘルメットあっただろ、あれ、現場監督に怒られちまってよう。あのヘルメットは備品だから、弁償だってよ。まったく、あんないいヘルメットないだろうが」「やっぱり。私は安全性に問題があると思ってたんですよ」「何が安全性だ!こっちは命がかかってるんだぞ!毛根の」アオシマは最近、毛根の心配ばかりしている。「で、手紙にはなんて書いてある?」「え、えーとですねぇ」ハセガワは暗号を照合表と照らし合わせながら読み始めた。「来月、の、最初の週末に、環太平洋支部の、総会が、行われるようです」「なに?場所はどこだ?」「えーとでっすね。アメリカ、ハワイ諸島ですね」「なにぃ!ハワイだと?行けるはずがないだろう!そんな金、どこにあるってんだ!」「次期環太平洋地区長選をにらんだハワイ支部のカメハメ氏の自らの株を上げようっていう策略のようですね」「カメハメ氏か。我々も一応はカメハメ派に所属しているからな、なんとしても出席せねばなるまい」アオシマは少し考えて言った。「…仕方ない、金はなんとしても稼ぐぞ」「お母さんから借りればいいのに」「貴様はまだそんなことを言ってるのか!テロリストのくせに、いいか、お前も内職を手伝え!」「えーっ、めんどくせー」二人はしばらく黙々と作業を続けた。「ところで先輩、これって一個いくらになるんですか?」「うーんと…一個2.5円だな」「2.5円って!さっきから、私、3つしか出来上がってないんですけど」「ばかやろ、手を動かせ!とかなんとか言いながらサボテンじゃねーよ!」「へーい…」果たして彼らはハワイにたどり着くことができるのであろうか。おわり。カメハメ波じゃなくて派でやってみました。
2007.06.22
コメント(7)
お題はすいかにんにくクールビズです。シモネタが多く含まれますので、そういうのが嫌いな方は見ないほうがいいでしょう。タイトル「テロリスト」コンコン。「…山」「…川」「よし入れ」そこは薄汚れたアパートの一室である。薄汚れた一人の若者が住人だ。彼の名はアオシマ。大きな声では言えないが国際テログループ、アリカイナの日本支部に所属するテロリストだ。「すごいですよ、先輩!」「しーっ!大きな声を出すな。最近、大家の取立てがうるさいんだ」「わかりました。それより、見ましたか?テレビ」アオシマを訪ねてきたこの人物は、彼の後輩に当たるハセガワだ。「テレビ?んなもん、見るか、私はこのクールビズ用ヘルメットの開発に忙しいのだ」アオシマはすっかり穴だらけになったヘルメットを振りかざしながら言った。「そのヘルメット、穴だらけじゃないですか?そんなんじゃ危なくないですか?」「クールビズ用と言っただろうが、これで夏場でも蒸れないのだ」アオシマは日雇いで活動費や生活費を稼いでいた。最近は毛根のほうが心配らしく、常々夏場のヘルメットのつらさを訴えていたのだ。「そうですか、それじゃあ、とりあえず、見るだけ見てくださいよ」ハセガワはアオシマの部屋にある薄汚れたテレビのスイッチを入れた。テレビからは昼のニュースが流れてきている。「これです、見てくださいよ」そこには瓦礫の山が映し出されていた。「なんだこれは!?もしかして、自爆テロか?日本でも起こったのか?どこの奴らが!?」「いいえ、違いますよ、メタンガスが爆発したらしいんですよ」「なに?ガス爆発?なんだ、テロじゃないのか。…って、メタンガスっておならだろ、メタンガスってこんなにすごい爆発起きるの?」「そうらしいですね。これって、テロに使えませんかね?」「なるほど!メタンガス爆弾を作ってテロに使うわけだな。いいアイディアじゃないか」「ありがとうございます」「よし、そうと決まれば、早速この袋におならを貯めたまえ」アオシマは薄汚れたゴミ袋をハセガワに手渡した。「…え?ええっ?私がおならをするのですか?こんなに?」「そうだ、これは君のアイディアだ、私が手柄を横取りするわけにはいかんだろう」「はぁ、わかりました」…数分後。「出ませんねぇ」「そういえば、ここに来る前に何か食べたか?」「はい、おかあさんがすいかを買ってきたのでそれを」「おいおい、テロリストが親のすねをかじるなって言ってるだろうが、それにすいかじゃ、おならは期待できんだろ、イモ食って来いよ」「わかりました。行ってきます」そういうとハセガワはアパートを飛び出していった。数時間後。コンコン。「山」「川」「よし、入れ」ハセガワがアパートに戻ってきた。「おい、ここに入ってくるところを誰にも見られなかったろうな」「はい、大丈夫です。あたりを確認してから来ましたから」「そうか、じつは、ついさっきも大家が来たのだが、なんとか居留守をしてごまかしたところだ。今月も厳しいからな、今、家賃を払うと生活していけなくなるのだ」「大変ですねぇ。先輩も実家に住めばいいのに」「またその話か、かっこ悪いだろうが、テロリストが実家に住んでいるなんて」「そうですかねぇ。便利ですよ、なにかと」「まぁ、いい。で、食べてきたのか?イモは」「ええ、なかなか焼きイモ屋がみつからなかったんですけど、なんとか見つけました。ばっちりですよ」「ほほう。ではこれを見てくれ」アオシマは薄汚れた掃除機を得意げに取り出した。「なんですか、その掃除機」「名づけて集臭機。この掃除機の後ろのところに袋をセットして、おならを吸い込むのだ。これで、無駄なくおならを収集できる」「へぇ~。いつのまにこんなものを作ったんですか」「よし、じゃあ、この装置で…。ん?お前、もうしたのか?」「え?おならですか?嫌ですねぇ、まだしてませんよぉ」「じゃあ、なんだ、この不快なニオイは?」「あ。すいません、たぶんそれ、にんにくのニオイです」「なんだと?」「いや、焼きイモ屋をラーメン屋の前でよく見かけるってんで、待ってたんですよ、ラーメン屋の前で。そしたら美味そうなにおいがしてきて、腹も減ってたんで、つい」「はぁ?つい?ラーメンを食ってきたのか?」「いいえ、ラーメンを食べたら、イモが入らなくなるとマズイのでサイドメニューのにんにくもりもりギョーザを」「そうか。わかったから、ちょっと離れてくれ」さらに数時間後。「けっこう溜まりましたよ」「そうだな。意外と溜まるもんだな」ハセガワのおならは思ったよりも早く袋いっぱいに溜まっていた。「ところで、これ、本当に全部おならなんでしょうね」「どういう意味だ?」「いや、おならを吸い込むときに周りのふつうの空気も吸い取ってたんじゃないかと思って」そういいながらハセガワは袋の中のニオイを嗅いでみた。「う~ん…」バタン!突然ハセガワが倒れた。どういうことだ?メタンガスに毒性はないはず。「むっ!?」突然、アオシマも意識を失ってしまった。原因は、にんにくを含んだおならのニオイの臭さだった。翌日の昼のニュースでアパートで意識不明の若者が発見されたというニュースが流れた。発見者は取り立てに来た大家だった。おわり。なんか思ったよりあんまり面白くなかった。
2007.06.21
コメント(6)
やっと挑戦できます。お題は無水エタノールフィッシュアイズC言語だそうです。タイトル「果実酒戦隊リターンズ」俺はソムリエン2号。あんまり活躍はしてないが奥樣方がほっとかないイケメンのヒーローだ。今日も六本木ヒルズにある本部にやってきたぜ。「おっす!4号、今日も宿題やってるのか?」「残念でした。春休みは宿題はありません」「じゃあ、何やってんだよ?」4号は今年5年生になる男の子だ。アメリカ帰りで向こうの大学はもう卒業してしまったという、まぁいわゆるナマイキ小僧だ。「ソムリエンロボのプログラムを強化しているんです。今までのように我々が操縦しなければ動かないようでは、いざというときに役に立ちませんから、人工知能で敵と戦えるようにしようと思ってるんです」「すげー、そんなことできるの?」「C言語を知ってれば簡単ですよ」ソムリエンは飲酒で血中アルコール値が上昇することによって変身する。しかし、そうなるとソムリエンロボを操縦する時は常に飲酒運転状態になってしまうのだ。そのためソムリエンには違反歴がある。「ところで、1号はどうしてる?」「向こうの部屋で変身していますよ」「あぁん?」確かに1号は変身した姿で倒れていた。「どうしたんだ?1号!」「うるせー!ばかやろー」うわっ、酔っぱらってる。「あら、2号、来ていたの?」「おお、6号、どうしちゃったんだ、1号は」6号は新メンバーだ。芋焼酎で変身する。女の子だ。しかも巨乳だ。だけど、このコが入ったためにヤキモチを焼いて3号が行方不明になってしまった。「なんでも、会社が何者かに乗っ取られちゃったんだって」1号はボンボンで親父さんの会社の子会社のスポーツジムの会長をしている。「はぁ、それで荒れてるのか。こんな大人、4号に見せられんな」「ありゃだめだな」2号は落胆しながら4号のところへ戻ってきた。「いやー、悪いことしちゃったんですよね。1号さんの会社、乗っ取ったの僕なんですよ」「なにー?月の小遣いが500円のお前がどうやってそんなことできるんだ?」「それがですね、大学の頃に研究していた無水エタノールの特許に関するお金が毎月100万ドル入ってくるんですよ。それで、節税対策で会社を作ったんですよね。フィッシュアイズって会社。その資金運用を同級生にまかせっぱなしにしていたらいつのまにかそうなっていたんですよ」「まじかよ!同級生って、大学の?」「ええ、そうですよ。今はウォール街にいますけどね」「すげえなぁ。お前も、その友達も」「僕はあんまり目立ちたくないんですけどね、彼が頑張ってくれちゃって、フィッシュアイズもまだまだ株価が上がりそうですよ」「ほほーう…。そういえば、俺、用事思い出したから、帰るわ。1号にヨロシク~」そう言い残すと2号は姿を消した。しかしこの後、2号はインサイダー取引の容疑で逮捕されることになる。おわり久しぶりにソムリエンで行ってみました。
2007.04.04
コメント(6)
机の上の写真 微笑むあなたの隣恥ずかしそうに もじもじの私恋はチャンスよ フルカウントだけど決めるときは決めるわ スクイズでもね監督さんも言っていた ピンチはチャンス決めるときは決めるわ 振り逃げでもねああ 女の子はいつでも 夢見る生き物よ夢の数だけ 愛もあふれるああ 女の子はいつでも 桃色ドリーミン愛の数だけ 夢もあふれるいつか決めるわ ウイニングショットバブルビブルビーバブルでWill Be魔法のしゃぼんだま天までとどけだけど~るるるる~せっけんが目にしみるのそんなときは空を見上げてみて涙が作った虹が見えるはずいつかかなうわ 私の夢バブルビブルビーバブルでWill Be魔法のしゃぼんだま虹色の魔球
2007.03.30
コメント(2)
今日のお題は着メロ秋葉原桜餅です。タイトル「地球の危機」我々の母星は食糧難になり滅亡の寸前まで来ていた。そこで我々は主食である桜餅が手に入る惑星を探して、この地球という惑星にたどり着いた。「よし、早速この惑星を調べるのだ。この惑星に住む奴らが好戦的な種族でなければ一気にこの惑星と桜餅をいただくぞ」「提督、モニターをご覧下さい。ここが地球という惑星の中心地の秋葉原という街らしいです」巨大モニターには秋葉原の様子が映し出された。「なるほど。確かに華やかだなぁ。あれがこの惑星の文字か。翻訳できるか」「えーとですね、石丸電気。と、書かれていますね。看板のようです」「看板だと?あのような巨大な看板で戦意を煽っているのではないだろうな」「わかりません。まだ情報が少なすぎます」さらにモニターは周辺を拡大して映し出した。「あれを見ろ、同じような格好の奴らが大勢いるぞ。ゴーグルにバックパック。戦闘員ではないのか」「どうやら、この辺りを根城にしているヲタという種族のようです」「ということは、この惑星を仕切っている種族ということになるのか」「あ、別の種族もいます。メイドという種族のようです」巨大モニターにはメイド喫茶が映し出された。「ヲタの召使いのようだな。ヲタとは主従関係にあるのか?」「そのようです、ヲタはあそこで癒されるということです。ヒーリングポイントのようです」「ということは戦闘で傷ついているということか。やはり、奴らは戦闘員かも知れんな。奴らが持っている袋からはみ出している白い筒は武器かも知れん」「提督、大変です。奴らの持ってる袋の中身を解析したら、小型のロボットのような物がありました」巨大モニターにはヲタが持つ袋の透視画像が映し出された。「信じられん。奴ら、あんな小型の兵器を大量に持っているのか。なんという戦力だ」「あの、電車という乗り物で戦地に向うようです」今度は秋葉原駅周辺が映し出された。「うおお、なんという人数が乗り降りするのだ。この人数が次々と投入されるとは、かなりの激戦が繰り広げられているに違いない」ピロリローン、ピロリローン。着メロが鳴った。B班からの報告だ。「提督!大変です」「どうした」「B班の報告をご覧下さい。ネトゲといわれる戦闘シミュレーターのようです。この国のほとんどの家にこれに接続できるマシンがあり、ヲタ以外の種族もこれを利用しているようです」巨大モニターにはパソコンでネットゲームをしている様子が映し出された。「なに?ほとんどの奴が戦闘員になりうるということか。なんという好戦的な種族なんだ。持久戦になると兵糧の乏しい我々に勝ち目はないかもしれん」「提督、それだけではないんです。このマシンのツウハンという機能で何でも買ったりもできるようです」巨大モニターには通販サイトが映し出された。「なに?やつらの補給線でもあるのか?」「しかも、これで桜餅も買えるようです」「まさか?そんな簡単に桜餅が手に入るわけが…」「提督!B班がツウハンで買った桜餅の画像が送られてきました」巨大モニターには巨大な桜餅の画像が映し出された。「おおー。これでこんな危険な奴らと戦闘をしなくても我が母星の食糧難を解決できるぞ!」こうして地球の危機は救われた。おわりえーと。秋葉原なんてよくわかりません。
2007.03.29
コメント(4)
今日のお題はのだめカンタービレアオモレンジャーオールナイト日暮里で、時代劇だそうです。無理難題もいいとこです。とりあえずタイトルだけは時代劇っぽいのでいきますか。タイトル「仇討ち」父の仇の青茂 蓮という剣士をさがして、私は日暮里という土地を目指していた。しかし、船頭がなかなか船を出してくれないので渡れない。「おい、船頭のじいさん、船を出してくれぬか」「無理じゃて」「なぜだ?」「出したくても出せんのだ」「なぜだ?」「船を漕げん」どうやら、船のオールが流されてしまったらしい。困った。オールナイト日暮里には行けない。「私は父の仇の青茂 蓮という男を倒さなければいけないのだ」「なにっ!?青茂 蓮だと?奴は俺も知っている。俺は今でこそこんな落ちぶれた生活をしているが元は武士だったのだ、しかし、青茂との御前試合に敗れてもう剣は握れんくなってしまった」船頭のじいさんは指のなくなった右手を見せた。「だが、奴は強いぞ」「ふん。大丈夫だ私には秘策がある」「よしっ、若いの、川を渡してやるから青茂を倒してくれ」「ああ。青茂は必ず倒すよ。しかし、この川をどうやって渡る?」「安心せい、川沿いに1里ほど上ったところに橋がある」「それを先に言えよ」かくして、俺は仇の青茂 蓮を倒すための障害であった川を渡ることができた。「で、じいさんはどうしてついてきてるのだ」「おぬしが青茂の顔を知らんと言うからじゃ」そうなのだ。私は父の仇である青茂の顔を知らなかったのだ。このじいさんに出会ってちょうど良かった。船には乗れなかったが渡りに船だった。「じいさん、日暮里ってあとどのくらいだ?」「ばかもん、もう日暮里界隈に入っておる。奴が出入りしている飲み屋もほら、もう目の前だ…!!」突然じいさんの表情がこわばった。「奴だ、奴がアオモレンジャー!」じいさんの指差す先には確かに独特の雰囲気を持った侍がたたずんでいた。「ありがとう、じいさん」私はそういうと父の仇の前におどり出た。「おまえが青茂 蓮か?」「いかにも、拙者が青茂 蓮だ。おぬし、誰ぞの仇でも討ちに来たという顔だな」ふてぶてしい男だ。だが、怯んでいる場合ではない。先手必勝だ、あの技をおみまいしてやる。「父の仇!覚悟~!」「ほほう、まいられい!」青茂が腰の剣を抜くか否やの瞬間、剣にかけた手に石つぶてを当てた。「イテっ!」青茂が怯んだ隙を逃さず歌うように斬りつけた。「どぅりゃ~!マ~マ~マ~マ~マ~!」「ぐはぁ、っ!」崩れ落ちる青茂。「やったぞ、若いの、グッジョブ!」喜ぶじいさん。「見たかこれぞ、秘技、腰のだめカンタービレだっ!」きまった。かくして、私は父の仇討ちに成功した。「で、じいさんはどうしてついてきてるのだ?」「帰り道がこっちだからじゃ」おわり
2007.03.27
コメント(6)
お題はスクール水着ウオッカロリコンです。オーソドックスなやつでいきますね。タイトル「誘惑」女子高の新米体育教師は誘惑が多い。特にこのプール授業。マジでなんとかしてほしい。「せんせー!見て見てー!ハイレグー!」「ブファ!!何をやっとるかー!」スクール水着の端を引っ張り上げてハイレグってやってる。やめてくれー!ハイレグより、食い込みが気になるんだよ。「せんせー!大変です!あけみちゃんがおぼれちゃった!」「なにー!!」ほらみろ、ふざけているからこんなことになるんだ。ザブーン!「大丈夫か!?」「せんせい、もうダメです…人工呼吸を…」「ばかやろー!嘘なのか?嘘だったのか?たちが悪いぞ~!」あわてて飛び込んだのにこれだ。ジャージがびしょぬれだよ。「せ、せんせい…今ので肩ひもが…」ウォッカンベンしてくれ~!、おっぱいがポロリだよ!早くしまえよ。「せんせー!私も、肩ひもが~」「わたしもー」「わたしも~」ぐぅお~~!おっぱいポロリコンテストかよ~!!「おまえら~!いいかげんにしろ~!!」って、いう妄想をあのお題でしたらいけないでしょうか?おわりフィクションですからね。
2007.03.26
コメント(8)
本日2本目のリクエストフィクションです。かるーく行きますね。今度のお題はノーネクタイノーコメントノーカウントだそうです。タイトル「名物社長」「本日から社内の身だしなみチェックをする。マイナス点が10ポイントに達したものは給料を10%カットする」 社長がまたふざけたことを言い出した。 たしかに、うちの社長は紳士録に載るなど、その辺じゃちょっと知れた名物社長で通ってるんだけど、社員にしてみればやることはめちゃめちゃだ。このあいだなんて掃除当番を流行のダーツで決めるって言い出したんだけど、へたくそで的に当たらないんだぜ。お昼の電話当番を前の日の弁当のおかずで決めるって言い出したんだけど、みんな一緒に弁当を食べるわけじゃないから結局、自己申告でうやむやになるし。お茶当番のために出張茶道教室をひらかせたりさ、お茶はお茶でも茶道のお茶とは別もんだろってな。まあ、とにかく変わってると言ったらない、それに付き合わないといけない社員の身にもなってくれー。と、叫ばずにはいられない。 今回は、身だしなみだって?ノーネクタイはマイナス2ポイント?やべぇ、俺、今日、ネクタイ忘れちゃったよ。しょうがねー、マジックで描くか。 キュッキュッっと。よし、これでノーカウントだな。「あまいぞ!」うわっ!社長に見られていた。「お前はそんなインチキをやって、自分を偽ってていいのか?」「じゃあ、社長のそのヅラはインチキじゃないんですか!」「な、なにぃ、バカヤロー!ノーコメントだっ」おわりノーコメントです。
2007.03.25
コメント(12)
今回のお題は金色の瞳からくり歌地図にない村をつかって都市伝説の話を書くってことです。都市伝説ぅ~?タイトル「富士山の秘密」 今日はお円札にまつわる都市伝説を皆さんにお話しよう。 まず、旧五千円札に描かれてる新渡戸稲造を見ていただきたい。じっと見ていただきたい。ほら、だんだんマギー司郎に見えてきたでしょ。 って、そんな話ではない。 じつはこの新渡戸さんはあの秘密結社、フリーメイソンのメンバーだったらしいのです。海外に留学しキリスト教の洗礼も受けていることからあながち嘘ともいえないようですが、その深い結びつきがこのお札にも描かれているのです。そこで、お札の裏側を見てください。見事な富士山の絵が描かれていますよね。この絵がどういうからくりがあったのか新しい千円札にも描かれているのです。新しい千円札に描かれている人物は野口英世。彼もまたフリーメイソンとかかわりの深いロックフェラー財団の研究所で働いていた経歴を持っておりその関係を疑わずに入られません。 ここで、千円札に描かれている富士山に戻ります。富士山の絵を透かして見てください。山頂付近に裏側の野口英世の目がありますよね。これこそがフリーメイソンのシンボル、「万物を見渡す目」と同じ構図になるのです。1ドル札に描かれているあのイラストです。ピラミッドとその上に輝く金色の瞳。同じ構図です。 では、なぜピラミッドではなくて富士山なのでしょう?富士山は万葉集にも詠んだ歌が残されており、昔から日本人とはなじみの深い山だったことと、不死山とも言われ、霊的なパワーを持つ山だったからだと思われます。かつて元寇が行われたのもペリーが来たのも富士山のパワーを得るためだったといわれています。オウム真理教が富士の裾野の今はもう地図にない村、上九一色村に本拠地を置いたのもそのパワーを得るためだといわれています。ちなみに、千円札や旧五千円札に描かれている富士山は上九一色村から見た富士山です。 日本全国にフジと名のつく企業が多いのも富士山の写真を見るとなんだか落ち着くのも日本人のDNAに富士山にパワーがあるということが刻まれているからかもしれません。そういえば、私のお財布にいつも壱万円札じゃなく千円札が入っているのもそのせいかもしれません。 信じるか信じないかはあなた次第です。おわりはい。ハローバイバイ 関暁夫の都市伝説の一部をパクってます。ま、一部なんで問題ないでしょう。
2007.03.25
コメント(9)
今回のお題は真夜中の森羽セクシィなおかしを使って、ミステリーを書くってことです。タイトル「ノワール」 俺は長年、傭兵として世界の戦場を渡り歩いていたが、命がけのビジネスなんて長く続けるものじゃない。ある仲間の死をきっかけに、傭兵稼業から引退することを決意し、今はこの北海道の片田舎でハンターのガイドみたいなことをして暮らしている。 ハンターと言っても、本州から鹿撃ちにやってくる金持ちのボンボンばかりだ、やつらは腕はいいがマナーは悪い。ギャラがよくなければあんなやつらの相手は俺だって願い下げだった。だけど、この辺に住んでいる地元の人たちとの暮らしは心地良い。俺のような怪しい人間も温かく受け入れてくれた。おそらく俺はここで死んでゆくんだろう。なんとなくそんな人生も悪くないと思っていた。 ある日、ガイド仲間からの一報が入ったときは耳を疑った。羽根の生えた黒猫が人間を襲ったというのだ。 その場所は俺の村からは100キロほど離れた、山あいの農村だ。このあたりでは野生の鹿の食害から農作物を守るため、森と人間の生活圏の間にはフェンスが張られている。当然、人間はゲートを開ければ行き来も出来るが、動物はそうはいかない。それでも時々フェンスを越えて入ってくる鹿やヒグマを駆除するのも俺たちの仕事になっていた。 通常100キロも離れた森のことなんて俺には関心ない話だが、羽根の生えた黒猫など、聞いた事もない生き物だ。その生き物への興味が俺を惹きつけた。 現地で情報収集するとあることがわかった。 人間が襲われたという話と、羽根の生えた黒猫の話はまったく別の話で、人を襲ったのは熊のような大型の動物で、たまたまその近くで羽根の生えた黒猫のような動物が目撃されていたというだけの話だった。そう、話に尾ひれが付くなんてことはよくあることだ。しかもその黒猫がしゃべるなんて、酔っ払いのたわごとに決まってる。この犯人はおそらくヒグマだ。羽根の生えた黒猫もそのへんの野良猫やカラスかなんかを見間違えたんだろう。俺は一気にモチベーションが下がったのだが、それでも乗りかかった舟だ。仲間たちと、森に入りヒグマを探した。いかなる理由があろうと、人を襲ったヒグマは駆除しなければならないのだ。 「あんた、初めての顔だな。おかしは何を使うんだ?」俺を今回の件にさそってくれたガイドの仲間のハンターが話しかけてきた。「おかし?ああ、弾のことか。今回は麻酔弾をメインに使うよ」よく、弾を「食らわせる」という。それから派生していつしかハンターの間では弾の隠語が「おかし」ということになったらしい。「なにぃ?セクシィなおかしだと?あんた、けっこうな腕利きらしいが、そんな甘い考えじゃ、やられるぞ。やつらをしとめるなら一発で殺せ。頭を狙ってな」「セクシィなおかし」とは麻酔弾のことだ。麻酔弾を食らって動物が横になって寝てる姿が「セクシィ」だって、誰かが言ったのだろう。この男の言うとおり、麻酔弾を使うのは危険と隣りあわせだった。ヒグマのような大きな動物だと麻酔が効くまでの時間が命取りになりかねないからだ。それでも俺は何でも殺せばいいという考えだけは気に入らなかったのだ。 分散して森の中を歩き回ること数時間。仲間たちと無線でやり取りしながらヒグマを追い詰めていく。山を登っては下り、上っては下り、その繰り返し。いつしか空は曇り、雨が降り始めてきた。今日はこれで中止だな。そろそろ無線が入るだろう。そう思って空を見上げたとき、俺は足を滑らせた。 滑落した。 しばらく意識を失っていたのか、あたりは日が暮れて真っ暗になっていた。俺としたことが。骨は折れていないか?無線機は?ライフルは?くそ、体が動かない。この雨の中だと動けないでいると死ぬかもしれないな。銃弾の飛び交う戦場で死ななかったのにこんな真夜中の森で死ぬのか… ずるっ、ずるっ。 俺は誰かに引きずられているのか?そうか、誰かが見つけてくれたんだな。「ぐっ、誰だか知らないが、すまない…」「気が付いたか。すぐそこに雨をしのげるところがある、そこまで我慢しろ」声は若い女のものだった。おかしい。俺たちのパーティーに女はいなかったはずだ。だとすると地元の人か。「安心しろ、さっき見たら骨は折れていないようだ」「ああ、骨は折れていないと思うがおそらく脱臼をしているのだろう、左腕と右足が付け根から全く動かない」「そうだな。着いたら治療をしよう」 妙だ。 この女の声。俺の耳元のすぐ近くから聞こえてくる。しかも、口に何かくわえているようなしゃべり方だ。「あんた、お嬢さん、この辺の人か」「そうだ、生まれたころからこの森に住んでいる。森のことなら何でも知っているぞ。お前たちはハンターだろ。村人を襲ったやつを殺しに来たんだろ」俺は違う。といいたかった。だが、反論はできなかった。「あいつは村人を襲う気はなかったんだ、ただ、人間と突然出会ってしまったから驚いたんだ」「ああ、俺もそう思う。人間が野生動物を恐れるように野生動物も人間を恐れるはずだ。好き好んで人間を襲うなんてありえない」そう。好き好んで人間を殺すのは人間だけだ。かつての俺みたいな。「そういえば、村人が見たという羽根の生えた黒猫って知っているか」「…ああ、もちろんよく知っている」 ゴゴゴゴゴ~!! 雷がとどろいた、一瞬あたりが明るくなる。そして目の前の人物の姿も明らかになる。 俺は目を疑った。そこにいたのはまさに羽根の生えた黒猫だったのだ。「お、お前は!」「安心しろ、とって食ったりはしない。私も自分の姿の異様さには気がついているのだよ」 しばらく沈黙が続いた。だが雨の音と俺を引きずる音、そして時々聞こえる雷の音は止むことがなかった。「そこだ。上が崖になっていてあのくぼみにいれば雨は当たらない」俺は彼女に引きずられ、岩のくぼみに腰を下ろした。「ありがとう。助かったよ」「今夜はここで過ごしてもらう。明日の朝になればお前の仲間をここに連れてこれるだろう」「行ってしまうのか?」「ああ、人間と馴れ合う気はないからな」「わかった、じゃあ、君の名前を教えてくれ」「ノワール」 そう一言、言い残すと、彼女は真っ暗な闇の中に溶けていった。 翌朝、俺は彼女の言ったとおりに仲間たちに発見され無事救助された。標的のヒグマも昨日のうちに射殺されていたらしい。俺の昨夜の記憶はあいまいだ。ノワール。彼女は幻だったのか? 怪我から回復した俺は、いつか彼女に再会するためにこの森を住処にすることにした。おわりこれって、ミステリー?
2007.03.24
コメント(8)
ふぅ。リクエストフィクションです。お題はRomanticが止まらないおはなしの国古いオルゴール都市伝説4つか。3つにまけてくれない?タイトル「ニュービジネス」 バブルの時代、かつてない好景気の中、日本にはテーマパークと呼ばれる施設がいくつも作られた。しかし、景気の後退とともにそれらは棄てられ、今では廃墟となり果ててしまった物件が数多くある。 蔦が生い茂り、見るも無惨なこの、おはなしの国というテーマパークも童話の中の世界のような世界観と、当時一台数千万円もしたというアンティークの古いオルゴールが数十台も並べられ、その美しい音色が「Romanticが止まらない童話の世界へあなたをいざなう」という謳い文句で、かつては恋人同士や家族連れで賑わっていた。だが、バブルの崩壊とともに運営会社が倒産。さらに転売先も次々と倒産、おはなしの国に関わると長生きできないという都市伝説まで生まれるほどだった。 しかし現在、廃墟ブームという新たなムーブメントとともに、廃墟ビジネスという新たな商売が生み出された。 管理者が持て余している巨大な廃墟を買い取り、それを最小限に手を入れることで廃墟テーマパークとして再生させるという物だ。 そのモデルケースとなったのがこのおはなしの国なのだ。閉鎖された広大な空間と美しいけれどどこか不気味なヨーロッパの建物。まるでタイムスリップしてきたかのような世界観。自然と生い茂った蔦さえも雰囲気を作り出す演出になる。 さあ行こう、廃墟の世界へ。いま、廃墟ビジネスが「Nostalgicがとまらない廃墟の世界へあなたをいざなう」。おわり力技で終らせました。って、技って程でもないな。力ずくで終らせました。
2007.03.23
コメント(10)
リクエストフィクション、2本目です。今回のお題は「さるのこしかけ」「天地無用」「天空の花嫁」だそうです。さぁ、いってみよう。タイトル「さるの三兄弟」 あるところにさるの三兄弟がいた。 三兄弟は一番上から、天空、天海、天地という名前で、シロー調教師のもと、世界一の武闘家になるための修行を積んでいた。 ある日、三兄弟の噂を聞きつけたTV局が取材に来た。 シロー調教師の言いつけ通りに奇妙奇天烈な修行に励む三兄弟の姿はお茶の間の話題になり、視聴率もよかったらしく、TV局は三兄弟のバックアップをすることになった。 やがて、TV局のお膳立てで一番上の天空が世界一の武闘家になるとますます世の中はわきあがった。兄弟のさるのこしかけた椅子にヤフオクで高値がついたり、天空の花嫁になってもいいという者まで現れるくらいだった。 次に、真ん中の天海もTV局のお膳立てと、派手なパフォーマンスで世の中をもりあげた。しかし、その頃からTV局の演出じみたやり方に対する批判の声も大きくなり、それとともに三兄弟に対する風当たりも強くなっていった。 一方、兄たちとは違い、アマチュアで世界を目指そうとした末っ子の天地だったのだが、兄たちと一緒にTVに出過ぎたためにアマチュア協会から「お前は大会に出さんぞ」と、天地無用の知らせが届いてしまう。 結局、三兄弟の思惑とは裏腹に、TVの力で手に入れた地位は実力で手に入れた物ではなく、一番上の天空でさえも世界の評価を得られることはなかった。真ん中の天海は対戦相手がガチンコになると途端に勝てなくなり、しだいに露出もなくなっていった。末っ子の天地にいたっては日の目を見ることなく消えていった。 お茶の間の人気者も、所詮、TV局という巨大なさるまわしに回されていたさるにすぎなかった。という悲しい話である。おわり
2007.03.22
コメント(7)
リクエストフィクションです。今日は二本立てでいきますよ。まず、一本目のお題はローマ法皇。ランジェリーパブ。スナイパスカヤなんちゃらかんちゃらドラグノーバライフル。ってことです。本当はローマ教皇らしいね。でも、本編ではあくまでローマ法皇ってことで、実在の人物、団体とは一切関係がないよってことでお願いしますね。タイトル「聖職者」 私、日本にあるローマ法皇庁大使館につとめる、まぁ、いわゆる外交官ってヤツですヨ。 当然、本国では司祭という肩書も持ってて、禁欲生活をして聖職者と呼ばれているんだけど、ニッポンは怖いね。悪魔の誘惑が多いヨ。 まず、どこの飲み屋に行ってもガイジンというだけでモテる。コレスゴイヨ。天国だヨ。夜の街サイコー! この前なんか、街を歩いていたら声をかけられて、ランジェリーパブってトコに入ったヨ。 この店スゴイヨ。女の子みんな下着姿だヨ。タマラン、タマラン。薦められるままにナンバーワンの女の子指名したヨ。そしたら、来たのがスナイパスカヤなんちゃらかんちゃらドラグノーバライフルっていうロシア娘だったヨ。 確かに、ロシア娘もかわいいけど、気が強そうでダメですヨ。チェンジ、チェンジ!ニッポンの女の子出してヨ。 ほんだら、来たヨ。ニッポンの女の子。やっぱりニッポンに来たんだから女の子もニッポンの女がイイネ~。 イヤ~。天国、天国。神サマに感謝!これも日頃のお勤めの成果ネ。私、聖職者でよかったと思ったヨ。 だけど、お会計のとき地獄に堕ちたヨ。この店、ボッタクリだったヨ。 私、全財産奪われて、サンザンだったヨ。神サマの罰当たったネ。やっぱり、ニッポン怖いところだヨ。 私、本国帰りたいヨー。でも、帰れないヨ、お金使っちゃったから。 これ天罰、神サマゴメンナサイ。アーメン。おわりです。アーメン。
2007.03.22
コメント(4)
リクエストフィクションです。お題は、カレー、ハンバーグ、ビーフシチュー、ヨカジマ族、ペンタゴンです。いやー、なかなか苦戦しました。タイトル「スーパーグルメ鍋」「できた!これでいつでもすぐに好きな料理を食べることが出来るぞ」「博士、なんですかこれ?普通の鍋じゃないですか」確かに、博士の目の前にある物体は、普通の家庭にしてはちょっと大き目だけど、ラーメン屋にしてはちょっと小さめといったサイズの寸胴鍋であった。ただ一つ違うところは蓋の一部にいくつかのスイッチとメカが付いているだけであった。「何を言っているのだ、君が『レトルトやインスタントばかりじゃなく、たまには高級店のビーフシチューなんかが食べたい』なんて言ったからこれを作ったのだぞ。私は食にはこだわりがないから、食べれればなんでもいいんだ。私ひとりなら、こんなもの必要ない」確かに、博士は食にはこだわりのない人で、いつもカップラーメンや、ボンカレーばっかり食べていた。「ほんとですか!ほんとになんでもつくれるんですか?」「当たり前だ、私が嘘を付いてどうする」「すげー!さすが博士!いやっほ~い!じゃあ、早速なにか作ってみましょう!」「作りたい料理の名前を入力して、材料を入れれば後はスタートボタンを押すだけでよいのだ、簡単だろ」「なるほど!料理の名前を知らないといけないんですね」「そうじゃ。名前も知らないような料理はさすがに作れん」「じゃあ、早速、ハンバーグ、っと。これで材料を入れて、スタート!」助手はうれしそうにスタートボタンを押した。「なに?ハンバーグ?ビーフシチューが食べたかったのではないのか?」「さっきまではそうだったんですけど、やっぱり、ハンバーグにしました」「気が変わるのが早いやつだな。まぁ、よい。それでもうまくいくに違いない。それにしても、この発明、もしたかしたらものすごく儲かるかもしれんなぁ。そうだ、ペンタゴン(アメリカ国防総省)にいる学生時代の友達にでも売り込んでみようか」「うわっ!マジっすか?博士、そんなすごいところに友達がいるんですか?」「まぁな」「すげー!さすが博士!」ぷしゅー。蒸気が吹き出るような音がして鍋の蓋が開いた。助手はわくわくしながら中を覗き込んだ。「はかせ~、なんですかこれ~?」鍋の中にはどう見てもハンバーグとはいえない、真っ黒な塊があるだけだった。「ばかな!失敗だと?そんなはずはない!ちゃんと料理名を入力したか?」「はい」「材料は?ちゃんと肉を入れたのか?」「え?肉を入れないといけないんですか?」「あたりまえだ。君はいったい何を入れたんだ?」「えっと、やさいとか、くだものとか、冷蔵庫にあったものを適当に。あと、牛乳も入れたかな」「そんな材料じゃハンバーグなど無理に決まってる。ちゃんと料理名を入れて、ちゃんと材料を入れればどんな料理も作れる機械だぞ、これは」「じゃあ、材料さえ入れればヨカジマ族の名物料理のニタッゴノモルアなんかも作れちゃうんですか?」「何だ?その料理?私は知らんが、おそらくこの機械なら作れるだろう」「無理ですよ、僕が今考えた料理なんですから」「なにー!ふざけるな!じゃあ、誰でも知ってる料理、カレーでも作ってみろ」「わかりました」ぷしゅー。蒸気が吹き出るような音がして鍋の蓋が開いた。「おおー!」中を見る前からわかる。このにおい。まさにカレーだ。「うまくいきましたね!博士!」「当たり前だ!私が作った機械だぞ」「すげー!さすが博士!」機械が作り出したカレーは、紛れもなくどこかで食べたことのあるような味のカレーだった。「ところで、このカレーの材料、どんなものを入れた?」「ええ、材料をそろえるのが面倒なんで、そこにあったボンカレーをそのまま入れました」おわり
2007.03.18
コメント(8)
学園 水戸黄門 最終話 翌朝、元禄学園の周りから自警団の姿は消えていた。同時に、水戸光子、助川三郎、格野ススムも学園から姿を消していた。 唯野マチ子は朝から3人の姿を探したがついに見つけることはできなかった。まるで、すべての出来事が夢か幻だったような数日間だった。だが、あれは本当に起きた出来事だったのだ。その証拠に元禄学園だけでなく、この出来事は大きく世間を騒がせた。 亜久代寛の父は薬物の違法な横流しに関与したとされ、逮捕された。大学病院の次期学長とうたわれた教授の逮捕である、新聞、ニュースなどでも大きく取り上げられた。同時に、息子の寛の関与も噂されたがそれは大きく報道されることはなかった。しかし、事件以来、寛が学園に姿を現すことはなかった。 越後屋麗子は学園には姿を見せていた。しかし、事件の噂が広がり、前のような権力は失い、残りの学園生活を孤独に過ごすことになる。さらに、それからすこしあとになるが越後屋百貨店はTOKUGAWAグループに株を買い占められ、乗っ取られ、前社長の麗子の父は経営権を失って失業することになる。この買い占めにはシルバ=ヘイズという敏腕の女ブローカーが関わっていたと言われているが、定かではない。 そして、学園ぐるみのドーピング問題で元禄学園の全運動部は1年間の対外試合を禁止された。同時に体育科も翌年度から廃止されることになり、現1、2年の体育科の生徒はそのまま普通科に吸収されることになった。事件を受け、学園の経営陣も大きく入れ替わった。また、高すぎる授業料なども問題になり、事件をきっかけに伝統ある元禄学園の悪しき伝統も変わることになりそうだ。 マチ子の家庭でも大きな変化があった。越後屋百貨店がTOKUGAWAグループの傘下になったことにより、マチ子の父は逆に出世していた。マチ子の兄はドーピング問題で元禄学園を去ることになったのだが、それでも、薬物を使用して大会に出たことはなかったことが幸いして、別のスポーツ有名校から誘いがあり、春からはそちらに通えることになりそうだ。 マチ子自身は次期生徒会会長選に立候補し、見事当選した。クリーンさをアピールしたのが支持されたようだ。 そんなマチ子の生徒会長としての最初の仕事が、事件の顛末を全国生徒会自治連盟に報告することであった。 緊張した面持ちで赴いた連盟本部だが、そこでマチ子を迎えたのは光子であった。 「マチ子、久しぶり!」「光子!会いたかったよ。何も言わずに行っちゃうんだもん」「ごめんね。次の学校に行かなければならなかったの。今もその学校の調査の途中なんだけど、あなたが来るって聞いたから無理矢理抜けてきちゃった」 二人は学園でのこと、事件のこと、そして事件の後のことなど、短い時間だったけどたくさん話をした。 そして、またいつか再会することを約束して別れた。 二人がこのあと再会することはないかもしれない。だが、困難なことに直面しても、どこかで親友が頑張っていると思えるだけで乗り越えて行ける。マチ子はそんな強さを光子から貰ったような気がしていた。おわりおわりです。疲れました。
2007.02.02
コメント(6)
学園 水戸黄門 第十九話「じゃあ、やはりこの薬はアンタがバラまいたんだな」格野が言い放った。これには麗子も動揺を隠せなかった。「で、この薬、どこで手に入れたんだ?やましいことがないなら言えるはずだろ?」さらに助川が追い討ちをかけた。周りの取り巻きたちの視線も麗子に集中している。その圧力に耐えられなくなった麗子は寛の方を少しだけ見た。「れ、麗子君、その話は本当なのか?」寛は麗子と目が合うと動揺しながらそう言った。「…会長、あなた、私を切り捨てるつもり?」麗子は怒りにうち震えながら呟いた。そして、取り巻きたちに言った。「もう隠せないわ、そうよ、その薬は禁止薬物よ。そこにいる生徒会長が横流ししていたのよ。でもあなたたちも同罪よ、こうなったら、このコたちの口を封じるしかないわ、やっておしまい!」いくら麗子がけしかけても取り巻きたちはもう動こうとはしなかった。寛も呆然としている。「唯野君。あなた、わかってるの?私に歯向かうとあなたのお父さんが会社にいられなくなるわよ」マチ子の兄は少し迷いを見せた。だが、昨日の夜、マチ子と話したことを思い出した。 たとえ、麗子に逆らうようなことになっても、父の立場に影響を与えることになっても、自分の気持ちを裏切らない。そう決めていたのだ。マチ子はそれでもいいと言ってくれた。父も反対することはないだろう。「かまわないね。俺はスポーツマンだ。フェアじゃなければ勝っても嬉しくない」「バカね!学園にもいられなくなるのよ」「バカはどっちだ、周りを見てみろ」助川の声とともに麗子周りを見回した。恐ろしいことに麗子の取り巻きたちは麗子の方を睨みつけていた。「麗子様、いや、麗子さん、俺たちもスポーツマンなんですよ。もうあなたについて行く奴はいませんよ」麗子は堪らず逃げ出した。「まてっ!」追いかけようとした助川を光子がたしなめた。「もういいわ。すでに手は打ってあるから」「もしかして、シルバ=ヘイズですか?」「そうよ」「あの女を使うなんて、お嬢も手厳しい」シルバ=ヘイズの名を聞いて助川は麗子を追うのをやめた。「それより、生徒会長、この事件は連盟に報告します。あなたがやっていたこと、やろうとしていたことにも調査が入るはずです。覚悟しておいてください」「ま、待ってくれ、俺は何もやってない。何も知らないぞ」「見苦しいぞ、今更シラを切るのか、お前の親父の病院にも今頃調査が入っているはずだ。薬を横流ししていた証拠が見つかるとお前も、お前の親父も今の地位は失うことになるだろう」 あくまでもとぼける気の寛に格野が冷たく放った一言で寛の目の前は真っ白になった。つづく次回が最終回です。ふう。やっと終る。
2007.02.01
コメント(4)
学園 水戸黄門 第十八話 亜久代寛がもたらした一瞬の静寂の中、麗子の取り巻きたちに光子が言った。「あなたたちもこの薬に見覚えがあるんじゃない?」そして、助川が手に入れてきた例の薬を掲げた。「この薬はドーピングでひっかかる禁止薬物よ。こんなものを使っていい成績を残せたとしてもそれはまやかしに過ぎないわ」しかし麗子の取り巻きたちにはそんなことは関係ない様子だった。再び乱闘は始まってしまった。もう、ちょっとやそっとでは収拾がつかないと光子が思ったとき、格野が懐から何かを取り出した。「おまえたち!いいかげんにしろ!この方を誰だと思ってる?この方こそ全国生徒会自治連盟の元副総裁、TOKUGAWAグループの御三家のひとつ、水戸家御令嬢、水戸光子様であるぞ!」 格野が取り出したのは光子のソーイングセットだった。金の三ツ葉葵が輝いている。「おおーっ」 ビックリしたのはマチ子の兄であった。単なる妹の友達だと思っていた光子がそんな人物だとは思いもよらなかったのだ。 麗子も驚きを隠せない。まさかとは思っていたが、本当にTOKUGAWAグループの水戸家だったとは。 寛は全国生徒会自治連盟の存在に驚いていた。昨夜起きた暴力事件、そのとき襲われ逮捕されたのは寛の作ったグループだったのだ。不思議なことにあれだけの乱闘騒ぎなのに襲った方からは逮捕者が出ておらず、寛も腑に落ちないところがあったのだ。だが、TOKUGAWAグループや全国生徒会自治連盟などという組織が裏で何か工作をして、それをもみ消すことができるようならそれも納得いく。 これには麗子の取り巻きたちも戦いの手を止めてしまった。 確かにこの時の光子には何とも言えない存在感を感じずにはいられなかった。というのはマチ子の兄の後の言葉である。「どうしたのあなたたち、こんな人たちの言うことを信じてはダメよ。私がそんな薬を使わせるわけがないじゃない」麗子が叫んだ。つづくはい、あのシーンです。こんな感じにしてみました。
2007.01.31
コメント(4)
学園 水戸黄門 第十七話 「あらぁ、あなたが水戸光子さん、はじめまして。いい、ここはあなたがシャシャリ出てくるような場所じゃなくてよ。さっさとご自分の教室にお戻りなさい」 麗子は蔑んだような目線で光子にそう言った。「そうはいかないわ。学園にはびこる悪を見逃すわけにはいかないもの」「悪?そういうこと…。この薬が禁止薬物だってこの方に吹き込んだのはあなたね。よけいなことをしてくれるじゃないの。この学園で私に歯向かうなんて愚かなコ。二度とそんな気を起こさないようにしないといけないわね。誰かーっ!」 ガラガラーッ!麗子の声とともに突然、生徒会室のとなりの教室の扉が開いた。「麗子様、いかように致しましょうか?」その中から麗子の取り巻き連中が次々と顔を出した。どうやらこの部屋は彼らのたまり場になっているらしい。「このコたちに、この学園のしきたりを教えて差し上げて」「わかりました」ガタイのいい取り巻きたち数人が不敵な笑みを浮かべ、光子とマチ子の兄を取り囲んだ。「光子さん、ここは俺に任せて」体格では負けていないマチ子の兄は光子を守るように立ちふさがった。「お兄さん、俺も手伝うぜ」そう言いながら現れたのは竹刀を持った格野だった。「おそいよ格野!…先輩」格野は走りながら二人を打ちのめしていた。「すいません、向こうにいた奴らを片付けてきたんで」「なにぃ?あいつら全員を一人でやったってのか?」どうやら、どこかに伏兵がいたらしい。「一人じゃないぜ。俺もいるぜ」助川はテニスラケットを持って現れた。「お前ら空手部には借りがあるからな」助川はテニスラケットで数人を打ちのめしながら言った。 ハンマーで鍛えた光子の兄も相当強かった。数人相手にしても怯むことがなかった。 気がつくとあたりはすっかり乱戦状態になっていた。 そんな中、「なんのさわぎだ!」声の主は生徒会室から現れた亜久代寛であった。つづく盛り上がってきました。だけどこの続きが難しい。
2007.01.30
コメント(0)
学園 水戸黄門 第十六話 翌朝、通学路の自警団は数を増していた。昨夜、この近所で乱闘事件があり、街のチンピラから逮捕者も出たらしいのだ。 朝からピリピリとした空気の中、陣頭指揮をとり校門に立つ亜久代寛は一段と厳しい表情を見せていた。 それでも午前の授業は通常通り行われ、昼休みになった。「ちゃ~らら~ら~、ちゃ~ら~ら~ら~、ちゃ~らら~ら~ら~♪」光子の携帯が鳴った。 格野からのメールだ、「麗子が動きました。生徒会室の前です」光子は教室を飛び出した。 ついに取引が行われるのだ。現場を押さえれば事件は解決する。はずだ。 すでに生徒会室の前の廊下には麗子とマチ子の兄が来ていた。先ほどからなにやら話をしている。「あなた、今更何言ってるの?昨日言ったでしょ、私が立て替えてきたんだから、お金がないじゃすまないのよ」高圧的な口調で麗子がまくし立てる。「それでも、もういらないんです。その薬、もう使わないことにしたんです」「どういう意味よ!?この薬について誰かに何か言われたの?」「そうです。その薬、禁止薬物ですよね。たとえ記録が出てもそれじゃ、意味ないじゃないですか」「フン。誰に言われたか知らないけど、そんなデタラメ、これはただの栄養剤よ。何の問題もないのよ」麗子はなだめるような口調に切り替えた。そのとき、「それなら、どこか専門の機関に調べてもらいましょうよ」光子がその場に駆けつけた。「あなた誰!?」「私は2年C組、水戸光子。先輩、その薬、どういう薬か説明してください」つづく携帯の着信音は水戸黄門のテーマ曲です。本当はマナーモードにしたかったんだけど、何となく水戸黄門のテーマ曲を使ってみたかったんでこうなりました。
2007.01.29
コメント(2)
学園 水戸黄門 第十五話 光子はカバンの中からソーイングセットを取り出した。これは光子が母から貰ったもので三ツ葉葵の紋が入った漆塗りの豪華なものだ。「…でも、俺、手は出しませんでしたから。ここで俺が手を出せば警戒されて動きにくくなるはずですから。そのかわり、いつかあいつらにはきっちり借りを返させてもらいますよ」「ところで、お嬢、我々を呼び出したということは何かわかったんですか?」「ええ。例の薬を売りさばいていたのはおそらく…」「越後屋麗子ですね」助川が言った。「そうよ。どうしてわかったの?」光子は針を動かしながら言った。ソーイングセット自体は作業の邪魔になるので格野が持っている。「いや、俺を襲ってきた奴ら、越後屋麗子の取り巻きの連中でしたから」「なるほど。薬と金が繋がりましたね」格野が頷きながら言った。「いいえ、まだよ。この事件の裏には本当の黒幕がいるわ。薬を流してる奴。それが誰か確かめる必要があるのよ。そこで明日、取引が行われるから、その現場を押さえようと思うの」「わかりました。朝から越後屋麗子の様子を見張ります」助川が言った。「いや、お前は目をつけられているだろ、俺がやるよ」しかし、その役目は格野がかって出た。「しかたねーな。でも、美味しいところを独り占めするなよ」「わかってるってお前は、一秒でも早く傷を治せ」「じゃあ、明日。お願いね」気がつくと車は大きな屋敷の前に止まっていた。水戸家のお屋敷だ。「もちろんです」助川と格野は頼もしい返事をした。「えっと、制服、まだできてないから預かっておくわ。ついでにクリーニングもしておくわ」「すいません、ハンカチは洗って返します」八兵衛が車のドアを開けた。「いいのよ、気を使わなくても、返すのもいつでもいいし。それじゃあ、八兵衛、二人を寮まで送って差し上げて」「わかりました」「あ、お嬢様、ソーイングセット!」 格野が持ったままのソーイングセットを忘れるところだった。 しかし、光子はカバンと助川の制服で両手が塞がっていた。「ごめん、預かってて」つづく助川と格野は寮にすんでいるんですねー。
2007.01.28
コメント(5)
学園 水戸黄門 第十四話 光子は走りながら携帯を取り出すと八兵衛を呼び出した。間もなく、光子の目の前にロールスロイスが姿を現した。光子は自らドアを開け乗り込んだ。「ただいま、八兵衛。あの二人は?」「すでに、招集をかけております。それと、指示があったウインドミル87もすでに動き出しております」 ウインドミル87は水戸家直属の諜報機関である。そのユニホームの左肩にあるエンブレムが風車を模したものなのでその名がついている。今回、生徒会長の亜久代寛が率いる学園外の組織を壊滅するために投入されていたのだ。「さすがね、八兵衛。仕事が早いわ」「これくらい当然ですよ」八兵衛は得意げに言った。同時に車のスピードが少し増したような気がした。 しばらく行くと道端にあの二人が立っていた。助川と格野だ。車が止まると二人は素早く乗り込んだ。「どうしたの?」 助川がボロボロになっていたのだ。口の周りに血が付いていて、制服も数カ所、破れている。「いや、なんでもないっす」強がる助川。だがどう見てもなんでもないわけがない。「こいつ、空手部の奴にやられたんですよ。例の薬をとられたテニス部の奴が密告したらしくて…」「言うなよ。カッコ悪いじゃないか」助川は口の周りの血を拭いながら言った。「これを使って」光子はハンカチをさしだした。「…すいません」助川は申し訳なさそうにハンカチを受け取った。「ついでに、上着を脱いで。縫ってあげるから」助川は制服が破れているのには気づいていなかったようだ。「…すいません」「いいのよ」つづく中途半端なところで終わってしまいました。ウインドミル87が出てきました。もうなんでもありです。
2007.01.27
コメント(2)
学園 水戸黄門 第十三話 光子は元禄学園にはびこるドーピング疑惑のことを話した。「信じられない。あれは栄養剤の一種だって聞いていたのに。禁止薬物だったなんて…それじゃあ、あの記録も認められないのか…」「認められないどころか、失格になってしまいますよ」「そんな…」マチ子の兄はその場に座り込んでしまった。「お兄ちゃん…」「おそらく、お兄さんと同じように騙されてあの薬を使ってる人は他にも大勢いるはずです」「光子、それって、本当の話なの?お兄ちゃんが使ってる薬は本当に禁止薬物なの?」「それは売った人に聞くのが一番なんじゃない?お兄さん、あの薬誰から買ったんですか?」「買ってはいない。もらったんだ」「誰にですか?」光子は問いつめた。「………」マチ子の兄は口を堅く閉ざしたままだ。「あの薬が禁止薬物と知らないで今も使い続けている人がいるかも知れないんですよ。そんな人たちの限られた青春の時間を無駄にしてもいいんですか?」「………やっぱり、言えない」「お兄ちゃん、お願い、話して」「これを言ったらお前にも迷惑がかかるかも知れない。俺はこの件が明るみになってもこの学園を去ればいいだけだ、だけど、お前にまで迷惑をかけたくないんだ」「どういうこと?去るなんて言わないで。私はきっと迷惑だなんて思わないわ。だから話して」光子はマチ子の兄の様子から薬を売っているのが誰かだいたい見当がついてきた。「わかったわ。もう言わなくてもいいわ。そのかわり予定通り、薬を受け取りに行ってください」「えっ?」光子の言葉にマチ子の兄は少し驚いたようだった。「光子?」当然マチ子も驚いていた。そんな二人を尻目に、光子は突然立ち上がり、駆け出した。「マチ子、ごめん、急用なの。先に帰るねー」つづくまたもや話の展開は強引です。でも、もう少しの辛抱です。カタルシスが待ってますよ。
2007.01.26
コメント(4)
全61件 (61件中 1-50件目)