The Life Style in The New Millennium

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Master21

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2004.01.18
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幼稚園からの帰り道には菜の花畑を通った。
春から夏にかけてはミツバチがブンブン飛んでいる、
和夫もミドリも手づかみでミツバチを捕まえた。
不思議と刺されるとは思わなかった。
花に群がるミツバチを小さな手に一杯、
そう10匹くらい握っても、全然、刺されなかった。
「刺される」という言葉さえ知らないから
刺されなかったのかもしれない。
近所のおばさんが、和夫とミドリを見て
「何してるの?」
と話かけると和夫もミドリも両手を広げる。
手には、たくさんのミツバチがムンムンと
手の汗にまみれて飛べなくて足掻いている。
おばさんは
「ぎゃあ」と叫ぶと「刺されるよ」
と言い残して走って行った。
和夫もミドリも
「刺されないよね」
とニッコリ顔を見合わせた。
無知が力となることもある。
「今なら、一匹だって恐いよなあ」
あの頃を思い出すと、ゾッとする和夫だった。
ミドリは、お父さんの仕事の関係で
小学校に入ると間もなくスウェーデンという国に行った。

そんなミドリが戻ってきたのは
中学校1年生の頃だった。
幼なじみの和夫から見ても
まぶしいくらい綺麗な女の子に
なってミドリは戻ってきた。
久しぶりに和夫に会ってミドリは
「和夫君、あの菜の花畑は、まだあるの?」
「マンションが建ったからなあ」
和夫とミドリは、自転車に乗って
あの菜の花畑のあった辺りに行ってみた。
マンションが建ち並んで小さくなっていたが、
やっぱり、菜の花畑はあった。
「スウェーデンの私の家の近くにも
菜の花じゃないけれど、花畑があったのよ」
ミドリは、幼稚園児の気持ちのまま
中学生になっていた。
そのミドリは、1ヶ月だけ日本にいて
またスウェーデンに戻って行った。

それから、和夫はどんな女の子と出会っても
どうしてもピンと来なかったそうだ。
恋多き多感な年頃なのに
心が時めくことはなかった。
1年過ぎてクラスが変われば
また別の女の子に出会うけれど
やはり同じだった。
そんな中学3年間を終えた、ある春休みの日、
ミドリがまた帰って来た。
ミドリは、完全に大人の女の人のような
色っぽい女の子になっていた。
とても、同じ15歳とは思えなかった。
「和夫君、あの菜の花畑残ってるの?
マンションになってない?」
和夫とミドリが、あの辺りまで行ってみると
菜の花畑は、さらに小さくなっていた。
「もう、あと一つマンションが建ったら
菜の花畑なくなるね」
和夫は悲しい目でミドリを見た
「スウェーデンの花畑は変わらないのに
どうして、日本はこんなに変わるの?変なの・・・」
と言うとミドリは首を可愛く傾げた。
見た感じは変わっても、ミドリの心は
スウェーデンの花畑と同じで幼稚園児の頃のままだった。
春休みが終わる頃になると
ミドリは、またスウェーデンに帰って行った。
ただ、和夫とミドリは、この頃から
エアメールで、文通するようになっていた。
高校2年生の時には、和夫がスウェーデンの
ミドリの家に行ったりもした。
いつしか、二人は将来を誓い合うようになった。

高校を卒業すると和夫は大正時代にお爺ちゃんが
創業したうどん屋の3代目になっていた。
和夫の店は、ランチタイムや休日には行列もできるほど繁盛していた。
繁盛の理由はお爺ちゃんが悪戦苦闘の末に
編み出したというノウハウのおかげなのだ。
お父さんも和夫も、その恩恵に預かっている。
そのノウハウってのが、今風に言えば、ピザの
トッピングようなものなのだ。
「油あげ」や「ネギ」や「たまご」「海老天ぷら」と言った定番の具から
「納豆」「トマト」「きゅうり」「キウイ」「パイナップル」「りんご」
と言った風変わりなものまで30種類、自由に選ぶことができる。
お父さんの時代に「納豆」が加わり、和夫の代になって
「トマト」などの野菜が加わった。そして、「キウイ」などの
果物を加えたのは、何を隠そう色白の美人の奥さんミドリだった。

さて、例の菜の花畑だが、バブルの崩壊が幸いして
マンション工事予定が無期延期となり、今でも春になると、
菜の花が咲き誇りミツバチならぬ
和夫とミドリ、そして可愛い4代目?の憩いの場となっている。





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Last updated  2015.08.29 10:31:28
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