The Life Style in The New Millennium

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2005.01.19
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由美のお父さんは、八百屋だった。
お父さんは3人兄弟の末っ子の由美を
目の中に入れても痛くないと、それは
それは可愛がってくれた。

たしか由美が小学校3年生の時、お父さんは
1枚の絵を買ってきた。街で名も知れぬ
画家が描いていた絵だそうだ。
「なあ、母さんや、この女の子、由美に
似てると思わないか・・・」
その絵には、若い男女が仲睦ましく庭で
語り合っている光景が描かれていた。

ある日、由美は、お父さんに聞いた
「ねえ、お父さん・・・小さな女の子、
いないね・・・昨日の夜はいたのに」
お父さんは、驚いて絵をジッと見て
「由美は夢でも見たんじゃないのか
この絵には、お兄さんと由美に
そっくりのお姉さんが描いてあるだけだぞ」
と言ったのだった。
しかし、由美は、たしかに、たった一度だけだが
女の子をその絵に見た記憶があった。

それから、その絵は、ずっと由美の家の居間に
飾ってあったが、由美の目に女の子が
映ることはなかった。由美が、高校生になった頃、
和生という男の子と同じクラスになった。
由美は何故か、和生のことが気になった。
というのも、和生は、お父さんが買ってきた絵の
男の子とそっくりだったからだ。
でも、和生は別の女の子と付き合ったりして
由美のことは眼中にない様子だった。

由美が高校を卒業して、印刷会社に就職が
決まった頃、お父さんは、急に倒れて入院した。
お父さんが入院すると、あの絵は、いつの間にか
由美の兄たちの手で倉庫に仕舞われた。

お父さんが入院していた頃、由美は、病室で
バッタリと和生と再会した。隣のベッドで
寝ていたのが和生の父だったのだ。そんなわけで
由美と和生は自然と親しくなって行く。
お父さんは、1年後帰ってきたが、少しボケて
しまったようで、もう八百屋の商売はできない様子
だった。

1年間の交際期間を経て、めでたく20歳になった
由美と和生は所帯を持つことになった。内緒だが、
できちゃった結婚だ。

由美が結婚して3年目だった。
3歳になった娘の菜穂の笑顔を見て、由美は
ハッとした。あの女の子だ。一度しか見てないけど
間違いない。あの絵の女の子に菜穂は生き写しだった。

由美は和生と菜穂といっしょに里帰りした日、
お父さんに尋ねた
「お父さん、あの絵、まだ倉庫に残ってる?」
かなりボケてしまったお父さんは、
「あの絵?」
と言っただけで考え込んでしまった。
「あの、私が小学校3年生の時に買った。
若い男の人と私にそっくりな女の人の描かれた絵よ」
お父さんは、思い出したようで手を叩いた
「ああ・・・若い男と女と子供の絵だろ・・
あああ・・・捨ててなかったら倉庫にあるぞ」
由美はびっくりして
「何言ってるの・・・お父さん、あの絵には
子供なんか描いてなかったわよ・・あれは、
私の夢・・・」
そんな話をしながら、倉庫から埃まみれの絵を
引っ張りだしてきた由美は、また、びっくりした。
あの由美が一度だけ見た女の子が、
菜穂にそっくりの女の子が可愛い笑顔で
描かれているではないか。
そして、その女の子の両脇には、由美に
そっくりな女の人と和生にそっくりな男の人が
描かれている。由美は、その絵をまじまじ眺めながら
「お父さん、この絵、持って行っていい」
と、お父さんに言うと、お父さんは
「ああ・・・買った時から、由美の嫁入りの時に
持って行かせようと思ってたんだから・・」
と言い微笑むのだった。








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Last updated  2015.08.26 11:05:47
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