Angel

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全て | 日々の日記 | 小説
January 22, 2008
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カテゴリ: 小説
「...どうして、先に逝ってしまったの...?私を...置き去りにしないって約束したじゃない...!!」

彼女は、泣きながら、そう叫んでいた。それは、恋人が亡くなったような言い方。それを聞いて、止めてしまった。


“...何、考えているんだ。俺は...。人間如きに一瞬でも、心揺れるなんて...”

神様は、初めて興味を持った。しかし、想いを否定したが、胸にチクリと小さな痛みだけが残った。

それから、何事もなかったように過ごした。



ある日、彼女は、琴を弾いていた。あの日のように切ない音色ではなく、綺麗な音色、だけど心がないように、冷たさも感じる。


「...いと(とても)素晴らしい。やはり、貴女を我が者にしたい。」

下心が見え見えで、いかにも成り上がりな感じな貴族で、虫酸が走った。

「...いいえ、なりません。私は、亡き兄との約束がありますし、兄を馬鹿にした貴女の元に行きません!」

はっきりした口調で、返すと男は、怒り、彼女を無理に自分の者にしようとしていた。

気が付くと勝手に体が動き、鞠を蹴飛ばしていた。

彼女は、首の前に短剣を突き付け、穢されるくらいなら自らを死にと覚悟していたらしい。

男は、怖くなり逃げた。



「...貴方は、誰?どうして...私を助けたりなんかしたの?!!」

まるで、助けられたくないと言う口調だった。

「...綺麗な音色を弾く君を穢すのを見たくなかった。ただ、それだけだ。」

彼女は、下を向いて、悲しい表情を浮かべていた。

「...綺麗なんかじゃない!こんな音、あの人は好きじゃない。」

琴の音色を否定した。

「...音が死んでいる。君の大切な者が悲しむだけだ。笛の方が、君の心を表すように悲しかった...」

要らぬことを口走って、彼女は怒り出した。

「貴方に、何が解るって言うの!!...笛のこともなんで知ってるの!?何も知らないくせに、知ったように言わないで!!」

彼女は、泣きながら奥へと入って行ってしまった。


「...余計だったか。下らねー。人間に関わるだけ、無駄だ。」

そう呟きながら、神様はまたチクリと胸に痛みが走った。その感情の名を、まだ知らない。


また彼女も、彼に言われたことが気になり、彼を意識し始めた。他の人と違う何かを感じていたからだった。


しかし、依然として、心の暗闇に光を灯すことはなかった。


神様は、彼女のことを気にも止めないようにしていたが、聴こえてくる音色が初めて聴いた時より段々、悲しく、思わず切なさを誘い、涙が流れるような音色になっていた。


彼女に言われたとおり、関わらないようにしていたが、気になってしまう。


今年の祭りに、彼女の笛を聴きたいと言って、急遽、舞や楽器の演奏が加わったのだった。

勿論、誰も神様の姿を拝見したことがない。しかし、彼女だけは逢っている。印象としては、変なことを言う男で、だけど他の人と違うと思いつつも、嫌っていた。



「...私が彼女様に捧げる(笛の)演奏を?!」

思わず持っていた物を落としてしまった。

「すごいじゃん!!巴姉ちゃん!」

村の子供達は、自分のことのように喜んだ。

「...私の笛など、あの人に劣ります。」

「巴、お前とお前の兄は違うだろう。あいつは、確かに笛の才能に恵まれていて、神様に愛されていたのだろう。お前だって、兄に劣らぬ位、良い音色を響かせられる。だから、神様が巴を指名したんだろう。自信を持ちなさい!」

村長に押し切られるまま、参加することになった。

彼女の兄は、神様に愛されていた存在だった為、彼女のコンプレックスになっていた。


「...私、どうしたら良いの?教えてよ...」

彼女は部屋に灯りも付けず、笛を握り締め、呟いた。

彼女は、兄と4つしか違わないので、とても仲の良い兄弟だった。彼は、武士としても、強い人だが、笛の澄んだ音色は、彼の優しさを表していた。誰もが、彼に夢中だった。




ー改装

『...兄様。どうしたら、兄様みたいに上手に吹けるの?』

『...巴、上手に吹こうと思うんじゃなくて、こういう風に吹きたい。聴かせたい相手をイメージして、心を込めて吹くんだよ!』

『...ピュー...#$%&%$??????@?+***?』

やっぱり、上手くいかなくてガックリ。

『吹けないよ!』

『...ゆっくり時間を掛けて、たくさん練習しないとダメだよ!』

優しく兄に諭され、約束をした。

『...兄様、いつか私と一緒に合奏しましょうね!』

『...ああ、約束だ。楽しみにしているよ。』

幼き日の小さな約束は、もう叶わない。


「...これで、良かったでしょうか?」

神様の部下は、神様に尋ねた。

「...ああ。こうでもしないと、あいつは、やらないだろうしな。」

「何故に、あんな人間の娘なんぞに興味を抱いたんですか?」

思った通り、不思議そうに聞く。

「...初めて聴いた日、笛の音色が素晴らしいんだが、悲しみが伝わってくる感じでな、笛を壊そうとしたけど、出来ないといった所に惹かれたのさ。」

「はあ...。」

全く理解出来ないと言うように返事をする。

「...おなごは、楽器を持つなら、琴だろ?普通。何故、笛なのか?気になる。笛の思い入れが強いみたいだしな。」

「...確か、彼女には4つ程、年の離れた兄がいたようです。たった一人の肉親で、彼はかなり、笛の腕前が良いと評判だったようですから、その影響で、やっているんじゃないでしょうか?」

「そうか。で、兄の方はどうしたんだ?」

「それは...」

言葉を詰まらせ、困っていた。

「...何だよ!ハッキリ言え!」

「戦で、戦死し、還らぬ人になってしまったようで...。もしかしたら、その兄を思い出すのが辛くて、壊そうとしたんじゃありませんか?」

「...じゃあ、あいつは、一人ぼっちで今日まで生きて来たと言うのか?」


「...多分、そうだと思います。だけど、村の子供達に好かれているので、大丈夫でしょう。しかし、大切な者を失った彼女にとって、心に開いた穴を埋められることはないでしょう。」

神様の部下は言った。

「埋められないか...。」

「神様、あの娘に興味があるんですか?ダメですよ!あの娘は、我々と違います。好きになったりしても、実らない恋。ただ一瞬のことに過ぎないのですから!」

釘を刺された。だけど、彼女のことが気になって、手紙を書くことにした。



その手紙とは、詩を交えた物であり、普通は遣いの者を出して、とどけさせるべきだが、そんな煩わしい真似をしたくない。他の誰にも知られたくなくて、自ら、届けに言った。


皆が寝静まったのを確認して、そっと抜け出した。


彼女の家の戸の前に、果物と花などの土産と一緒に、手紙を置いて帰ることにした。


これ以上関わらなければ、大丈夫だと思っていたが、彼女のことが気になっていた。


早く離れようと走り出したところで、声がした。


「...誰?誰なの、待って!!」

呼び止められて、仕方なく、止まった。声の主はこっちに向かって歩いて来る。


「貴方は、この間の...。」



「...。」

「...あの時は、ごめんなさい。私、頭に血が上ってイライラしてから...。だけど、どうしてこんな時間に?」

「君に謝らなければと思ったんだが、見知らぬ者から急に話し掛けられるのは無礼かと思って、手紙を書いた。何も知らないで色々言ってすまなかった。逢わない方が、良いと思って、この時間を選んだ。起こしてしまってすまなかった。」

「...いえ、偶然ですよ。気になさないで下さい!」

この間と違って、とても汐らしかった。そして、すっかり打ち解けて少しずつ自分のことを話してくれた。



「...兄さんが笛を教えてくれたの。いつか、一緒に合奏するって、約束したのに、私を置いて、逝ってしまったの。私には、この形見の笛しかない。で、水の神様が私に笛を吹けって言うけど、上手く吹けないし、兄さんがいなくなってからはどう吹いていたのか、忘れちゃった。だから、ちょっと神様を怨んでるの。兄さんを取り上げ、水の神様は私に奏でよって、勝手よね。」

内心、本当に申し訳なくって、今すぐにでも、詫びたい気持ちで一杯だった。

「...ずるい奴なのかもな、神は...。気紛れで、人を振り回したりして...。笛の演奏、巴殿が奏でるから素晴らしいのだろうな。」


「そんなことない!私は兄さんを超えるなんて出来ない。兄さんは神様に愛された天才。私が兄さんのようになれるわけない。」

兄の存在の大きさに彼女は押しつぶされそうになっていた。

「俺は、そんなことないと思う。誰でも、自分がここまでだと決めたら、後は成長しないが、もっと今より上手くなりたい、まだまだこれからと思えば、成長するはずさ!だから、自分で線を引いてはいけない。君が弾いたことの音は、とても美しくしかった。でも、楽しさは感じられない。何の楽器を持って奏でても、心から楽しい、誰かに聴かせたいと思えば、良いんじゃないかな?」

「聴かせたい...」

「例えば、お兄さんに聴かせたい。お兄さんがいる場所に届くように、弾いてみたら、どうだろうか?」

「...兄さんに。分かったやってみる。ところで、名前を教えて!」

神様は、困った。本名を証すわけにいかないし、困って影で言われている名を言った。

「...氷石(ひせき)。氷の石と書く。氷のように冷たくて、頑固者みたいだろう?」

そんな風に影で言われていることを口にした。

「...私は、素敵な名だと思うわ。氷のように透き通り、石のように意志が強くって、信念がある優しい人だと思う。」



そんな風に言われたのは、初めてだったから、少し驚いた。だが、彼女と過ごす時間は楽しくて、このまま、ここにいられたらなんて思う。



「...そろそろ失礼する。練習、頑張れよ!」

「待って!私の笛の練習を一緒にしてくれませんか?あの、大したことじゃなくて!///...ただ、聴いいて欲しくて...。毎日じゃなくて良いんです!でも、ご迷惑でしょうか?」

彼女のクルクル、変わる表情に惹かれる。だから、この話に断る訳がなかった。しかし、もっと深く考えるべきだったのかもしれない。




毎日、決まった時間に抜け出しては、聴きに行っていた。日に日に、上達し、まるで恋をしているかのように優しい音色、ちょっと嫉妬してしまう。相手は実の兄、彼女の支えになれたらなんて思っていたのが、日に日に強くなって、考えるだけで胸が痛くなる。これが、恋であると初めて自覚した。

好きになる程、彼女を騙していることに、胸が痛む。そして、いつかは別れが来ることも解っているけど、まだ彼女の笑顔を見ていられたら淡い夢を見る。最後まで、この笑顔を護りたいと思う程、心は成長していた。





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Last updated  August 20, 2008 09:18:40 AM
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