Angel

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全て | 日々の日記 | 小説
January 4, 2009
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カテゴリ: 小説
「早く、追い掛けて下さい!私のことは良いから!きっと誤解しているはずだから...。」

「...しかし、珠姫様をおいてはいけません。」

彼女は、言った。

「貴方様は愛する人と心が繋がっている。簡単に切れない絆があるんでしょ?だったら、大丈夫!でも、すぐに追い掛けないと、不安が募り、心が壊れてしまうから早くから、行ってあげて!」

こうは言われても、やっぱり、このような場所に、女性、一人を置き去りにするのは、忍びなかった。

「...若様。こちらの姫君は、私が送り届けましょう。ですから、早く行って下さい!」

現れたのは、彼の護衛役の樹さんだった。

「...樹!頼んだ!椿ちゃんを追う!珠姫様、申し訳ありませんが、行かせていただきます。本当にごめんなさい!」

辰之介様は、走り出した。

「...本当にすみません!若様は、姫君が初恋なんで、失いたくない想いが強いのだと思います。どうぞ、お許し下さいませ!」

樹さんは、彼を見送った後、再び、主に代わり、謝罪の言葉を述べた。

「ヤダー!気にしないで下さい!辰之介様の気持ちの方が大事ですわ!...あの方くらい強くなりたかった...」

笑いながら涙を零すので、彼女を優しく抱き締めて、泣かせた。


不味いと解っているけど、涙が溢れ出して止まらない珠姫様は、暫く、声を殺して泣いていた。

「...暫く...もう暫く...ごめんなさい...」

誰を想って泣いているか、なんか知らない樹さんだったが、彼は、彼女の涙を受け止めるような寛大な空であり、優しい海の様な深い心で、彼女の涙を受け止める。




 「...椿ちゃん...椿ちゃん、どこに行ったの?」

辰之介様は、一生懸命に捜していた。

私は、目の前で起こったことを真実だと思い、真実を知ろうとせずにいた。




 いつしか、雨が降り、最悪の事態が頭に浮かんだ。

熱で浮かされ、フラフラの私、このまま、雨に濡れたままでいれば、更に風邪を拗らせて、肺炎などになり、死んでしまうかも知れない。

だけど、今、私の心の中を占めてるのは、辰之介様。

“....辰之介様...辰之介様...私は貴方の何ですか?やっぱり、私じゃダメですか...?...愛してる...貴方がいなければ、私は...”

今の私は、あの温かい太陽に照らされて、生きる花の様で、太陽に憧れる月みたい。

桜の花の様に優しい恋。だけど、花びらが散るように切ない想いが溢れ出す。

知りたくなかった痛み。甘くて、切なくて、涙が止まらない。


雨の冷たさを感じない。感覚が麻痺し、何も考える気力がなくなり、気を失った。

気を失う直前、誰かに名を呼ばれ、倒れていく体を受け止められた気がした。




 「...椿?!おい、椿、しっかりしろ!!」

「...ったく、しょうがねぇな!連れて帰るか。」

優しい背中に揺られながら、帰る。



 「...椿。すごい熱!何で、あんな場所に居たんだか...?」

「...辰之介...様。...辰之介様。どこにおられますか...?」

一瞬、目を覚ましたかのように、思えたが、寝言だった。

「...どうして、あいつなんだ!!」

「...和久!椿ちゃん、連れて帰って来たんだよね?」

「...ああ!寝てるぜ。かなり腹は立つけどな。」

苛々した様子で、話す和久様に、優兄様は何があったのか?と疑問に思った。

「...結構、熱が上がっちゃってるみたいだ。タオルと水を交換してくる!」


代わりの堅く絞ったタオルとを額に乗せたタオルと交換し、彼は部屋を出た。



 呼吸も荒く苦しい。ずっと魘されながら愛しい人の名を呼ぶ。

「...辰之介...様。...辰之介様...」

「...どうして?あいつなんだ!!...椿。...愛してる...あいつに負けなくらい好きだ...」

苛立ち、そして苦しそうに呟く。


そして、躊躇い、苦しそうな表情を浮かべながら、唇を私の唇に当てる。

少し触れて、罪悪感を感じていたようだ。

「...どうかしてるよな?俺...」

何となく触れられた感触があったのを感じたが、それは夢か辰之介様がしたものだと思い込んでいた。

「...辰之介様。...好き...」

涙を零しながら呟く私。その涙をそっと拭い、和久様は舐めた。

「...しょっぱい。」

切なくて、しょっぱい味がし、胸を締め付ける。

“悲しむ理由なんて、聞かなくたって解っている。椿があいつを想って泣くことも...。「苦しいくらいなら、逃げちまえ!」そう言ってしまいたいのに、言えない。こいつが望まないなら、俺は...俺は...。”

不器用に愛し、だけど、少し怒りぽっくて、意地悪な人。でも、ただ素直になれないだけで、不器用に護る、本当は優しい人。


「...タオル持ってきたよ...。あれ、寝ちゃったのか?」

優兄様が、戻って来ると和久様も隣で寝ていた。なので、薫さんに掛ける物を頼み、彼は私の額のタオルを堅く絞ったタオルと交換し、呟いた。

「...信じてあげて!辰之介君のことを...」



淡い優しい夢の中で、私は愛しい人の名を呼ぶ。それは、一時の幸せだとしても...



目覚めたら、読書をする優兄様がいて、隣に和久様が眠っていることに驚いた。

だけど、いつもと変わらない笑顔を向けてくれる優兄様を見て、涙が止まらなくなった。

「...ごめんなさい...ごめんなさい。」

涙混じりで、この言葉しか言えない。私の頭を優しく撫で、何も言わずに抱き締めるから、余計、涙が止まらなくなった。




 それから、数日が経ち、辰之介様がお見合いの話を断ったことを知った。だが、その間、逢いに来なければ、手紙もないので、もうこの恋は終わりだと思った。

「...椿様。優様に口止めされていたのですが...」

体調が少し良くなって、起き上がれるくらいになった私の前に、申し訳なさげに何かを話そうとする薫さんがやって来た。

「?」

「あのですね。辰之介様は、あの雨の日から毎日、逢いに来られては、優様に具合が悪いからと言って、帰されておりました。せめて、手紙やお見舞いの花束を渡して欲しいと言われていたのですが...」

この部屋に毎日、何かしらの花が活けられ、日に日に、彩り、種類が増えているから、不思議に感じていた。

「...敢えて、お伝えしないように言われておりましたが、少し安定されているので、お伝えします。」

「...どうして、言ってくれなかったのかしら?」

「...熱で魘され、苦しんでいる椿様、刺激したくなかったんじゃないでしょうか。落ち着いたら、話そうと思われたのかもしれません。内緒ですが、これ、辰之介様からの手紙です。」

渡された手紙の量は、結構あったので驚いた。

「...こんなに?!」

「はい。日に何通も出されていることがありまして...」

「...辰之介様。」

「とても、心配して下りましたわ!この花も椿様を想って、毎日、持って来られた。こんなに想われて、疑うなんて良くないですわ!」

「...でも、辰之介様は、もう、私のことなんて...。」

「そんなことありませんわ!初めて逢った時から、積極的な対応。好き好きという感じが溢れ出すあの方に限ってありえませんわ!」

すごい拳に力を込めるくらい、熱弁する薫さん

「...そうかな?」

「...そうですよ!椿様、命みたいなところがありますし!それに毎日、こんなにたくさんの花を持って来るのは、大変なはずです!お金も掛かるはずですし、それにこれだけの花を選ぶのも大変なはずですよ!」

少し意味深に話す、薫さんの言葉に疑問を感じた。

「...たしかにそう思うけど、花の種類や色なんて拘りないんじゃない?」

そう言うと

「...そんなことありませんわ!例えば、この花、花言葉は永久の愛です!で、こちらの花は愛ですが、色によって、情熱的だとか清らかなと言う意味合いも持ちます。やっぱり、彩りや花言葉まで考えて送られているんだと思います!」

「そうなの?」

「ええ、きっとそうですよ!それに辰之介様は、易々と甘い言葉を仰ったり、こんな贈り物をするはずありませんわ!ことあることに、椿様の話をしては、椿様の熱烈な想いを語っております!それに本当ならベッタリしていたいくらいなのではないでしょうか?」

想像するだけで、ちょっと嫌になりそう。

「こんな時だからこそ、二人の絆を深める機会ですわ!殿方の優しさに絆されるだけじゃなりません。さぁ、まずは辰之介様にお手紙の返事を書きましょう!」

「えっ?」

次の瞬間、どこから取り出したのかごとく、色とりどりの用紙が現れ、更に筆に硯まで出され、薫さん式!殿方の心をガッチリ掴む方法の講義が始まった。




ポイント!

その1 女の子らしい可愛い便箋を使いましょう!

その2 相手を想っていることを書く。

その3 逢いたいと想う気持ちを隠し、さり気なく応援&自分を良く見せる文を書く!



延々と続き、やっと最後の注意点だが!



そのX 手紙にちょっとした贈り物を添えると良いでしょ!
例えば、お花の栞や季節に馴染んだものなど、とにかく心を込めた贈り物をしましょう!
なお、お菓子でも良いでしょ!




 こうして、薫先生(さん)による殿方に送るお手紙の書き方講座が終わった。
ここだけの話だが、最近、平安時代の文化にちょっと凝っているらしく。

「何時の世も!手紙は人へ気持ちを伝える一つの手段であり、贈り物よ!」

と言う薫さん。何となく解るが、何でこんなに燃えているのか解らない。

“病み上がりだから、もう少し、休んでいたいんですが...”

そうは思っても口には出せない。


それから、30分後

「...薫先生!出来ました...。」

今にも魂が抜け出しそうになりながら、伝えて、薫先生による厳しい採点確認が開始された。



 「...椿様。薫さん。お茶をお持ちしました。」

「あっ、捺さんありがとう!ちょっと...良い?」

お茶を出す彼女を呼んで、ヒソヒソと話す。


 「...何ですか?」

「あのさ、薫さん?いつになく燃えているみたいだけど、何かあったの?手紙の書き方について熱く語られたのだけど?」

聞いてみた。


「...あっ、薫さん!ここだけの話ですが、色んな貴族の方と最近、交流が増えたらしく。結構、マメに手紙をお書きになられているみたいです。だけど、振られたのでしょうか?なんか落ち込んでおりました。」

「そうなんだ。何となく理由が解る気がする。薫さん、押しが強過ぎることあるしね。」

「...そうですね。でも、少し、わたす(私)も見習いたいと思ってます!」

「そうだね。」

「薫さんは、樹様が好きなのかと思ったんですが、違うのでしょうか?」

捺さんのこの爆弾発言に驚いた。

「えっ?!」

「何?そこ静かにしなさい!」

薫さんに怒られてしまった。

「「すみません!」」

「...樹様の名を時々、呟いていました。」

「...えっ、接点なさそうな感じがするんだけど...」

「...ええ、詳しいことは知りませんが、何か知り合いらしいです!」

「そうなんだ。」

私は思った。

“あそこまで、熱心に指導が出来て、手紙の書き方を心得ているのに、どうして、自分で書かないんだろ?”




 それから数十分後、薫さんの採点が終わった。半分以上、駄目だしされ、この様な言い回しの方が良いとか、もっと付け足して書くなど、やっぱり厳しい。薫さんの文を手本に書き直し。





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Last updated  January 25, 2009 11:59:03 AM
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