Angel

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全て | 日々の日記 | 小説
September 6, 2009
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カテゴリ: 小説
娘時代の私は、何不自由なく育った。お稽古事や勉強はちょっと辛かったが、御婆様やお母様が作ってるくれるおやつが楽しみだった。

哲兄様は、昔から勉強が出来、人柄が良い為、人望が厚い人だった。何をするのも、兄を参謀にやっていた。何でもやってのける彼は、私の憧れだった。

だから、あの日が来るまで、私は彼だけが世界だと信じていた。





 その出逢いは、突然であった。舞踊の講演会が村で開かれると言うので、友人らと、稽古帰りに立ち寄ったのだ。

丁度、話の中盤であった。ヒラヒラと舞いながら、演じていく男の人が、妖艶で、目に留まった。私の中で、何かが弾けたようだった。

「...綺麗。」

男の人なのに、本当にそう思ってしまった。私は、この一瞬にして、恋に墜ちてしまったようだが、まだ、気が付かない。



 終わってからも、暫く呆然としていると、人にぶつかった。

「...キャッ!」

小さな悲鳴を上げ、尻餅を着いた。するとぶつかったであろう相手が手を差し出された。

「...大丈夫か?」

哲兄様より、低くく冷たく落ち着いた声に聞き惚れてしまいながら、手を掴んだ。

「...あっ、ごめんなさい。」

この人を呼ぶ声がした。

「若様」



ビックリしてしまった。

“若様って?!私、もしかして?!”

百面相しながら、混乱する。彼は、私に言った。

「そなたの名は?」

「...奈緒です!あの、本当に申し訳ありませんでした!では、失礼します。」

逃げるように去りつつ、走り転けた。



 そんなマヌケな姿を見られたショックとぶつかって、名前を聞かれたことにより、家に迷惑を掛けたらと不安になる。2、3日して、哲兄様に相談の手紙を書いて送ると翌日、逢いに来てくれた。



 「...なっちゃん。そんなに落ち込まなくても大丈夫だよ!」

「だけど...。見とれてボーっとしていたのが悪いし...」

「大丈夫だよ!」

慰めて、ヨシヨシと言った感じで頭を撫でられた。



 それから、結納の話が上がった。いよいよ、我が藤崎家と篠山家の結婚の話が上がり、ひと月後と言うことになったが、突然の来客で、私が呼ばれ、席を外した。





 「失礼致します...?!あの、何故、北条様が?!」

北条家の御当主様と若様が座敷に座って居られたので、戸惑いを隠しきれない。

「...先日、奈緒とぶつかり、その後、派手に転けたと疑ったんだが、どういうことじゃ?」

お爺様に聞かれて、どうしようと思った。


「...ええっと、あの...?!稽古帰りに偶々、立ち寄って、皆さんと見学をしていたんですが、あまりに素晴らしくって...」

もう逃げ出したかった。

「そんなに、怯えないで下さい!息子が、お嬢さんに怪我をさせたのではと気にしていたんですよ!お怪我はありませんでしたか?」

物腰柔らかい北条家の当主様に、顔を紅くしながら頷いた。哲兄様みたいな人だと思った。





 そこから、何故か村を案内することになり、哲兄様に着いて来て貰った。

若様は、何も喋らない。哲兄様が丁寧に説明していく。ハグレないように、哲兄様の隣にいた。




 「...ここの甘味が美味しいんですよ!食べて行かれてますか?」

「ああ。」

哲兄様が注文しに行き、二人きりになった。

「...わざわざ、案内させて申し訳ない。彼にも、悪いことをしたな。彼とは、どういう関係なんだ?」

「私の幼馴染みのお兄ちゃんで、婚約者です。私よりも、村のこととか詳しいので、頼みました。」

「婚約者...。君は、もっと、広い世界を知りたいと思わないのか?」

突然、こんなことを仰るので、驚いた。

「何故、そんなことを?」

「望むなら、私と一緒に来るか?」

この言葉が魔法の様だった。



哲兄様が戻ってきた。

「...お待たせしました。さぁ、どうぞ!」

「...ありがとう。」

さっきの言葉が耳に残り、彼の顔が見れない。

「どうかした?...元気無いけど?

「えっ?何でもないよ!哲兄様は、色々知っていらっしゃるのね。」

「うん。他に行きたい場所があるなら、後日、連れて行ってあげるよ!」

そっと耳元で、囁かれ。私はホッとしていた。だけど、北条家の若様の言葉が、頭から離れからない。悪魔の様な甘い囁きのだった。




 それから、北条家は帰り、一緒にいた時間が夢の様だったと思った。そして、結納の日取りが決まりつつある時に、北条家からの縁談が舞い込み、丁度、哲兄様は、海外への遠征中でいない。だから、相談出来ずに縁談に臨んだ。





 縁談の席で、再び、彼の舞を目にした。蝶が舞うが如く、美しく、目が離せない。何時の間にか、心まで捕らえていた。
だけど、哲兄様のことを想うと罪悪感を感じ、断らないと思うのに、惹かれずにはいられなかった。




 二人で話すことに、緊張して、頭の中が、真っ白になった。

「...舞、どうでしたか?」

いきなりそんなことを聞くから驚いた。

「えっ?ええっと...綺麗だと思います。」

そう答えると

「...貴女には、そう見えるのですね。父上には、まだまだ未熟者と言われております。まだ、何が足りないのか、自分には解らない。貴女の様に、素直さも必要でしょうが、私にはどうして良いか、解らない...。」

真剣な眼差しで、そんなことを言うから、吹いてしまった。

「...ップ。あっ、あのごめんなさい!真剣に悩んでいらっしゃる姿が何というか、面白かったと言うか...。その、あまり深く考えず、笑ったり、悲しんだり、寂しがったりとかで良いと思われます!私に、兄上や哲兄様にありのままでいる方が良いと仰られていまして...」

彼は、私の頭の方に手を伸ばした。

「...あの、気に障りましたなら、謝ります。ごめんなさい!」

「何故、謝る?謝る必要はない。貴女は本当に素直な方だ。私は、ただ、この落ち葉を取ろうとしただけだ。」

「えっ?あっ、勘違い...恥ずかしいです...!//////」

自分の勘違いに本当に恥ずかしくなった。

「貴女は、可愛い人だ。」

「えっ!//////」

サラリとそんなことを仰るから恥ずかしくなった。

「...えっ、あの...そうだ。君に、これを...」

彼は、どこからか、可愛い百合の花の髪飾りを取り出し、渡した。

「これを...」


「...髪飾り?」

「君にとても、よく似合うと思うのだが...」

真面目な顔して、やることが可愛い。

「えっと...戴けません。私、やっぱり、哲兄様を裏切ることは出来ません。ですから、これはお返しします。」

突き返すが、真っ直ぐで、冷たい瞳に捕らわれ続ける。

「...君の意思なのか?それは...」

「...そうです!哲兄様のお嫁さんになることが、私の夢であり、家の為であります!」

嘘を付いた。彼に心も体も捕らわれるのを恐れて





 私は、宿に向かう為、馬車を待っていた。すると、どこからか、顔を隠し、複数の黒装束の男達が現れ、私を捕らえ、馬車に連れ込まれそうになった。

「...ん?!何するの?!...嫌!離してー!誰かー...ん...ん...」

口を塞がれ、駄目だと思った瞬間だった

「...その人の手を放さぬか!」

赤い血が飛び散り、一人の男は悲鳴を上げた。そして、周りの者達は、剣を構え、私は目眩がし、具合が悪くなっていた。

「...悪いけど、姫君は返していただくよ!」

後ろから声がしたと思ったら、バタバタと倒れて行き、私は優しく抱き締められた。

「...大丈夫?なっちゃん!」

その声に安心したら、力が抜けてしまい、立っていられなかった。


「...退け!」

しかし、再び、拉致をしようとする者が、こちらに向かって走って来る。

「...なっちゃん。そこの影に隠れてて!」

囁かれて、それだけで腰が抜けそうになったが、気をしっかり持って、頷き、言われた通りに隠れながら、顔を赤らめていた。

だけど、心配だった。




 ーそれから、10分後

血だらけ、ボロボロになりながらもやっつけた。

「...哲兄様!大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ!」

近付くと笑いながら、私の方に倒れ込んできた。声を掛けようとした瞬間だった。

「死ねー!」

まだ、体力が残っていたらしく、殴り掛かろうとしていた。

「...イヤー!!」

悲鳴を上げた。

「...バーン。」

目の前の男が弾き飛ばされ、聞き憶ぼえのある声がした。


「...私をお忘れのようですね!そちらの姫君に出だしは無用だー!!」

剣を鞘から抜こうとした所で、男は逃げて行った。

「...ごめん。なっちゃん。」

哲兄様は、弱りながら仰る。

「...大丈夫よ!哲兄様...ありがとう...」

そう呟くと、意識を失った。

「哲兄様...?!」

「大丈夫か?怪我は?」

「...若様!助けていただきありがとうございます。私は、哲兄様がいたので、大丈です!」


哲兄様の方を見ながら、続けた。

「...哲兄様が...哲兄様が、私の代わりに怪我を...」

そう告げると、彼は素早く馬車と医者を手配してくれた。




 哲兄様は、軽い怪我で済んだが、私の縁談の話は更に拗れ、私は決断に迫られた。




 「...私はどうしたら、良いのでしょ...」

一人呟くと御婆様が隣に座り、仰った。

「...奈緒ちゃんは、どちらと傍にいたいんじゃ?家のことは抜きで、考えてご覧なさい。」

「...私は...」

涙が溢れ出していた。

「...私、お二人が好き。だけど...若様が忘れられない。若様の踊りを見てから、若様が気になる。でも、私を大事に想う哲兄様を裏切れない。」

頭を撫でられ

「奈緒ちゃんは、本当に二人が好きなのね。焦らなくて良いから、ちゃんと答えを出しなさい。」

その言葉が今は重い。




 療養中の哲兄様の元を訪れ、話をした。

「...ごめんなさい。私との婚約を無かったことにして下さい!」

突然のお願いに戸惑う。

「ど、ど、どういうこと?」

「...私は、哲兄様が好きです。だけど、北条家の若様と出逢ってから、若様のことが...。」

「...そうか。若様の所に行くんだね。」

彼は、とても落ち着いていた。


首を横に振り、否定した。

「...私、出家しようと思ってます。このまま、お二人を傷付けたくない。誠に勝手ながら、お許し下さいませ。」

私は、二人を選ばない決断をした。若様に惹かれているのに、気付きながら、哲兄様の傍にいることは、失礼だと思った。だから、誰とも結婚しない選択肢を選んだ。

しかし、腕を掴まれ、引き寄せられた。

「...知ってるよ。北条の若様に君は惹かれ続けているのだろ?僕のことも大事に思っているから、選ばないんだろ?でもね。君が幸せじゃなっきゃ、僕は嫌なんだ!だから、行っても良いよ!だけど、辛くなったり、君が泣くようなことがあったら、君を攫って行くからね。」

最後まで、優しい幼馴染みのお兄ちゃんな哲兄様の言葉に涙が止まらない。




 私は、その後、若様の元に嫁いだ。




 ー IN 現代

「...旦那様は、きっと、愛想を尽かしていらっしゃるでしょ...」

月を見上げながら、悲しげに呟く。
嫁ぐ前から、本当に愛されているか不安だった。

だけど、ずっと、大丈夫だと思っていた。和久が生まれて、周りに祝福され、だけど、奈緒子が出来た時、私は...

思い出すだけで、辛くて涙が溢れてしまう。

「母様?」





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Last updated  October 3, 2009 03:18:05 PM
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