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2012.06.19
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カテゴリ: 文学鑑賞
ビギナーズ・クラシックス 日本の古典
百人一首(全)

谷知子 角川ソフィア文庫

かるた遊びとして広まり人口に膾炙され、日本文化に多大の影響を与えた百人一首を、手軽に楽しむ本。文法の知識や旧仮名の読み方を知らなくても、歌の意味がわかり声に出して朗読することができるように工夫。

心に深く響く歌、全く共感しえない歌など様々ありました。特に気に入った歌を挙げてみます。

5 猿丸大夫
奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の 声聞くときぞ秋は悲しき
情緒あるその場の雰囲気が感じられ、日本画を目にしているような歌です。百人一首で一番好きな歌かもしれません。

9 小野小町
花の色はうつりにけりないたづらに わが身世にふるながめせし間に
あっという間に萎れ、散る花。そして自分。無常を感じる歌で、しみじみします。

15 光孝天皇
君がため春の野に出でて若菜摘む わが衣手に雪は降りつつ
若菜から初々しい緑、雪から穢れの無い白が連想され、実に清々しい雰囲気が感じられます。そして、なによりも“君がため”という真心があるのが実に良いです。

33 紀友則
ひさかたの光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ
花はいつまでも、ゆっくりと咲いていてほしい。これは古今変わりなく人が思うことなのですね。花を楽しみつつ、散る花を侘しく思うという、微妙な機微が良いです。

37 文屋朝康
白露に風の吹きしく秋の野は つらぬきとめぬ玉ぞ散りける
白露を真珠に例えるという、シンプルながら美しい歌です。

44 中納言朝忠(藤原朝忠)
逢うことのたえてしなくはなかなかに 人をも身をも恨みざらまし
出会ってしまったが故に辛く思う。きっと誰もが失恋の時に思うことではないでしょうか。しみじみと、胸が痛みます。

61 伊勢大輔
いにしへの奈良の都の八重桜 けふ九重ににおりぬるかな
時間と場所が遷っても、桜は変わらず春に咲くという、無常と不変が感じられて良い歌だと思います。

66 前大僧正行尊
もろともにあはれと思へ山桜 花よりほかに知る人もなし
“花よりほかに知る人もなし”という、花だけを慰めにしているのがしみじと感傷的にさせてくれますし、映画やドラマの一場面のように感じられます。

77 崇徳院(崇徳天皇)
瀬をはやみ岩にせかるる滝川の われても末に逢はむとぞ思ふ
百人一首を読もうと思ったきっかけの一首。急流の様子と、恋する人との再会を願う気持ち重ねた歌で、実に良く出来ていると思います。自分にもそのような気持ちがあるからなのかもしれません。こうして百人一首の一つとして読むと、同じ歌でありながら落語の時とは全く違った印象を受けます。猿丸大夫の歌と共に、一番気に入った歌です。

79 左京大夫顕輔(藤原顕輔)
秋風にたなびく雲のたえ間より 漏れ出づる月の影のさやけさ
風流な場面をシンプルに歌った一首だと思います。自分は、和歌にこうした花鳥風月を求めているかもしれません。秋になったら、月を見ながらこの歌を暗唱してみたいです。

87 寂蓮法師(藤原定長)
村雨の露もまだ干ぬまきの葉に 霧立ちのぼる秋の夕暮れ
叙情的な風景が目に浮かぶようです。郷愁を誘う一首です。

91 後京極摂政前太政大臣(藤原良経)
きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに 衣かたしきひとりかも寝む
恋歌にはそれほど惹かれないのですが、これは恋と自然の情景を組み合わせているので、割と気に入りました。ちなみに、昔はコオロギのことをキリギリスと言ったそうで、この歌の“きりぎりす”はコオロギのことだそうです。言葉の変遷は面白いものです。

96 入道前太政大臣(藤原公経)
花さそう嵐の庭の雪ならで ふりゆくものはわが身なりけり
これも小野小町の歌と同じで、季節の流れと自分の老いを重ねていて、無常を感じる歌です。もののあわれは、日本の文化、伝統だと感じさせてくれます。

100 順徳院(順徳天皇)
ももしきや古き軒端のしのぶにも なほあまりある昔なりけり
栄枯盛衰、時の流れが感じられ、映画やドラマの一場面のようです。

巻末の解説を読むと、恋歌が43首で最も多く、次に四季の歌が32首とあり、個人的には、花鳥風月を歌った四季の歌がもっと多ければ更に良かったと思いました。逆に女性にはこうして恋歌が多い方が好まれるのかもしれません。落語がきっかけで、初めて歌集の本を読みましたが、現代語訳と解説を読むと魔法をかけらたように原文が理解できたのは驚きでした。これをきっかけに、また古典の歌集を読んでみようと思いました。同時代に編纂された新古今和歌集はどんな歌集なのか、興味があります。

★★★★★★★★☆☆

ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 百人一首(全)





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最終更新日  2012.06.22 21:51:03
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