今が生死

今が生死

2007.10.07
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カテゴリ: 読書
今回も「人間の絆」の中の話である。フィリップは自分を心から愛してくれていたノラを心底悲しませて別れ、男に捨てられて戻ってきた身重のミルドレッドのもとに走って、彼女の住居や衣服、分娩費用や、子供の養育費なども全て負担して、しばらくは彼女との幸せな関係を味わっていた。

ある時、自分の友人グリフィス(フィリップに女と親しくなるのは優しいが、別れるのは至難の業と忠告してくれた友人)を彼女に紹介し、一緒に食事した。プレイボーイのグリフィスとミルドレッドは恋に落ち、フィリップがあれほど楽しみにしていたパリ行きを彼女はキャンセルしてくれと言い出した。

汽車の切符から宿泊施設まで全て予約しているので断れないと言うフィッリップに対して、彼女は「今まで面倒みて頂いたことはありがたいが、自分の心に嘘をつくことはできない。私はグリフィスさんを好きだ。貴方と一緒にパリに行くことはできない。貴方は最初から好きではなかった。あまりに熱心だから好意に甘えたにすぎない。貴方がキスをしてくるのをいやでたまらなかった」と答えた。

フィリップの心も体も怒りで震えた。なぐってやりたいと思った。助けてくれと転がり込んで着て以来、」住居のこと、衣服のこと、子供を生む為の医療代、子供の養育費等、全て彼が、自分の身をけずって払ってきてやった。そのことも言ったが、彼女はそれとこれとは別だと答えた。女は冷静で強いと思った。ここで怒り狂った男性から殺されるかも知れないのに、平然とそれが言える女性、男にはとてもできないと思った。

それにしてもフィリップは可哀相な男だ。本中に書いてあることを額面通りに受け止めると彼女は心も容姿もあまりよくない女らしい。骸骨のように痩せていて、胸も男の子のようにぺっシャンコで、唇は薄くて、皮膚の色は白というより透き通っていて青色に近い。それなのにフィリップは熱烈に好きになってしまい、困った時にはいいように利用されて、好きな人がでたらさっさと捨てられてしまう運命、気の毒で胸が苦しくなった。

先日ラジオを聴いていたら、恋を実らせるには熱くなってもそれを相手に見せてはだめだと言っていた。相手はその熱さに反って引いてしまう。フィリップはその原理を知らなかったのだと思う。

フィリップは頭も良かったし、ある程度の経済力もあった。ルックスだってそれほど悪くなかった。ノラだけでなく、外の女にも結構もてたのに、ミルドレッドのように馬鹿で下品な女に首ったけになってしまって、いつも冷たくあしらわれ、最後は少しその気になってくれたかなと思ったらまた捨てられてしまった。

熱くなっていることを表面に出さず、心に秘めてつきあったたなら、別の結果が出たかも知れないと思った。世の青年男女は教訓にしてもらいたいと思う。





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Last updated  2007.10.08 13:09:25
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