今が生死

今が生死

2014.09.08
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カテゴリ: 政治
「大往生したけりゃ医療とかかわるなー自然死のすすめ」という本があった。もう先が分かっているような場合にはいたずらに医療に関わって、点滴、胃ろう、手足を縛られるなど苦しい思いをするより医療に関わらないほうが幸せな最期を迎えることができるという内容だが、実際にはそう簡単なものではない。国も在宅医療を推し進め、訪問診療等を推進する政策を打ち出しているが、現状の認識が不足していると考える。

昨日、日曜日の朝、83歳の男性をおみとりした。食道がんが再発して末期の状態で食事も食べられないし、声も出ない。リンパ節への転移などで胃ろうを作ることができないので、外から栄養を入れることができず、首の所から点滴で栄養補助を行っていた。最初大病院にいたが本人の強い希望で退院してきて在宅で数日訪問診療を受けていたが、点滴漏れなどのトラブルで当院に緊急入院した。

当院入院後はあまり退院のことを言わなくなり、当院での療養約1か月でお亡くなりになられた。ご家族の方から家ではとてもこのようにできなかったと大変感謝された。在宅医療が奨励されているが、口で言うほど在宅は簡単ではない。毎日看護師に訪問看護してもらうことも可能だが、看護師が帰った後や、夜間などの家族の心労は並大抵ではない。痰が絡まることもあるし、急に脈が速くなったり遅くなったり、血圧が下がったりすることもある。

家族はどうしたらいいかわからなくて困ってしまうこともあり、外出もできない。病院にいると点滴されたり、鼻管を入れられたり、時々痰取りのためにいやなチューブを鼻から入れられて苦しいこともあるが、本人も家族も安心して最期の数日間を送ることができる。

医療スタッフの対応の仕方にもよるが、少なくともこのケースでは、亡くなる前の日までこちらで声をかけると笑顔で答えてくれていたし、家族も毎日見舞いに来ており、本人家族とも幸せだったと考える。

政府は医療費削減政策として末期の患者さんは、入院させないで自宅で診てもらうようにしなさいと盛んに奨励しているが、人生の最終章は、どうせ亡くなるのだから安くてもいいというものではなく、必要な医療はすべきであると改めて認識してもらいたい。





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Last updated  2014.09.08 19:57:34
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