今が生死

今が生死

2023.07.05
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カテゴリ: 読書

万座毛海に顔を出している人の頭のような岩

沖縄旅行は透明の海とサンゴ礁、首里城や水族館、万座毛など楽しいことが沢山あったが6月28日には甲府に帰ってきた。帰りの汽車の中で『季刊文科』という雑誌を読んできた。
その中に土井荘平さんが書かれた『終夢、没イチ男子九十歳超』という短編があった。
92歳の土井さんという男性は奥さんを亡くされ、子供達はそれぞれの地で暮らしておりマンションで一人暮らしをしていた。自分はある程度のことができて自分で入浴もできるレベルだったが1週間に一回デーサービスに通っていた。
バスで送り迎えしてくれて、ゲームをしたり手作業したり体操したりして結構楽しかったが土井さんにはそんなことより、もっともっと楽しくて待ち焦がれていたことがあった。それは土井さん達を面倒見てくれる介護士を好きになってしまったのである。年齢は不詳で、細面、マスクしているので目しか見えないが美人だと想像していた。Tシャツを着て短パンをはき老人達の面倒を見てくれていた。その人が休みの時が事前にわかる時は自分もデーサービスを休んだ。いると思ってきたのに休みだった時には帰ってしまおうと思ったりした。
自分は自宅で入浴できるのでデーサービスでは入浴サービスは受けていなかったがほとんどの老人はそこで入浴させてもらっていたので入浴の時間帯には彼女もそちらに行ってしまい一人ぼっちになってしまって寂しかった。ある時その人と写真を撮ってもらって嬉しくてその写真を使ってカレンダーを作ったりした。
週に1回その人にあえるのが楽しみで生きがいになっていた。ところが3~4年たった頃彼女のお父さんの介護の関係で引っ越しをしなくてはならず彼女はその介護施設を辞めることになった。突然の別離に生きる希望を無くしてしまった。めぐってきた誕生日にも生きる希望もなく呆然とソファー座っていたら何と彼女が「以前土井さんに誕生日を祝ってもらったから」と訪ねてきてくれたのである。家の風呂で入浴介助もしてくれたのである。夢かうつつか分からないが天にも昇る気持ちになったという物語である。

介護老人は毎日見ているし、介護士も見ているがその両者で恋心が起こるとは考えてもみなかったがありえることだと思った。介護士は全ての通所利用者の面倒を見なければならないし、皺だらけの特定の老人に恋心を抱くことはないと思うが老人が特定の介護士に恋心を持つことはあるかなと思った。
小説なので多少のフィクションはあると思われるが土井さんの実体験が主体ではないかと思った。





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Last updated  2023.07.05 21:15:17
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