今日の気持ちを短歌におよび短歌鑑賞

今日の気持ちを短歌におよび短歌鑑賞

2013.06.23
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雑感:歌集「悲しき玩具」より(四)(結社誌「賀茂短歌」六月号)下書き  後藤瑞義



 前月号で、今月号は「分ける」について何か書くことを約束しました。勿論啄木の短



歌の分ち書きから、「分ける」ことが問題となるわけです。



 ちょっとその前に、啄木短歌といいますか、啄木で気がついたことがあります。次



の歌は、歌集『悲しき玩具』ではなく、『一握の砂』の中にある歌です。









ふるさとを出でしかなしみ



消ゆる時なし




 「石をもて追はるるごとく」は重い言葉です。啄木には色々な事情でふるさとから追



われた、という気持があったでしょう。しかし、啄木の不思議は、これはわたしだけ不



思議におもうのかもしれませんが、啄木くらい熱くふるさとのことを思った、なつかし



んだ、歌にした人はあまりいないのではないでしょうか。ふるさとから石をもて追われ



たような啄木なのにです。ここが啄木についてのわたしの不思議さがあるのです。ふ



るさとを憎んでもよかったのではなかったか。ふるさとなどと縁を切ってもよかったの



ではなかったか。



病のごと

思郷(しきょう)のこころ湧く日なり (

目にあをぞらの煙かなしも



ふるさとの訛なつかし

停車場の人ごみの中に

そを聴きにゆく



やまひある獣のごとき

わがこころ

ふるさとのこと聞けばおとなし



ふと思ふ

ふるさとにゐて日毎聴きし雀の鳴くを

三年 ( みとせ )聴かざり



ふるさとの

かの路傍 ( みちばた )のすて石よ

今年も草に埋もれしらむ



かにかくに渋民村は恋しかり

おもひでの山

おもひでの川



やはらかに柳あをめる

北上の岸辺目に見ゆ

泣けとごとくに



馬鈴薯のうす紫の花に降る

雨を思へり

都の雨に



汽車の窓

はるかに北にふるさとの山見え来れば

襟を正すも



ふるさとの停車場路の

川ばたの

胡桃の下に小石拾へり



ふるさとの山に向ひて

言ふことなし

ふるさとの山はありがたきかな



これらの歌は、すべて歌集『一握の砂』からの歌です、もっともっとありますが、このく



らいにしておきましょう。



啄木くん、君は、都会に、東京にあこがれをもって上京しました。そう、君の処女



詩集は『あこがれ』でした。あこがれ、もちろん東京へのあこがれがあるでしょう



が、もっと深いところに、明治維新によってもたらされた西洋へのあこがれ、西洋



文明へのあこがれがあったのではなかったですか。飛躍してしまいますが、君の



分ち書きは西洋文明へのあこがれの所産ではなかっただろうか。わたしは、そん



な気がするのです。分けることは西洋文明の特徴だからです。



 分けることについて、わたしは、少し簡単に考えていたかもしれません。喩がいい



かどうか分りませんが、水溜りに青空が写っています、水溜りですから、簡単に踏み



越えようとしたんですが、何故か足がすくんでしまったのです。水溜りと簡単に思って



いたのが、あるいは底なし沼、いや底なしの空のように感じたのです。今わたしは、



完全に足がすくんだ状態です。



今月号はこれくらいにして、終りにしたいと思います。「分ける」ということにつきま



して、わたしなりの体験がありますので、次号はそのことを少しお話出来るのでは



ないかと思っています。



(つづく)


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最終更新日  2013.06.23 08:33:11
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