今日の気持ちを短歌におよび短歌鑑賞

今日の気持ちを短歌におよび短歌鑑賞

2014.01.23
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一月号歌評(同人誌「賀茂短歌」一月号)下書き                 後藤瑞義


原 明男

欠伸してはしゃぎ終えたり七五三をさなの頬(かほ)に盛る万両

 この歌の中心は、お孫さんの七五三です。上の句でお孫さんの情景を述べ、下の句で作者の思い

を述べていると思われます。「欠伸してはしゃぎ終えたり」は、時間の流れ的には、「はしゃぎ終

えて欠伸している」のが正しいと思われます。ただ、観察的には「欠伸しているのを見て、はしゃ

ぎ終えた」と推察したのでしょう。さて、下の句ですが、「頬」を「かほ」とルビをしています。

頬が高揚して紅がさしていたのかもしれません。それが万両を連想させたのではないでしょうか。

そして「万両」は言葉通り「富の象徴」でもあるでしょう。お孫さんに将来の生活の安定を望むの

は当然のことです。お孫さんへの愛情が溢れている、そんな感じを受けました。


渡辺つぎ

この地球(ほし)の百と二年の変貌と共に生き抜き老の身さらす


 作者は満百二歳で、今年の三月で満百三歳となられます。「この地球の百と二年の変貌」が実感

として伝わります。作者は、明治、大正、昭和、平成のめまぐるしい変貌の百年余りを生きてきま

した。いやまさに「生き抜いて」きたのでした。問題は結句でした。「老の身さらす」とはどうい

うことでしょうか。文字通りの「百二歳の老いた身体になってしまった」という感慨なのでしょう

が、上の句と思い合わせますと、なにか「老いの身」に誇りすら感じているようにも思えてなりま

せん。百二年の風雪に耐え生き抜いたこの身体を見てくれとでも言っているようにもかんじられる

のです。堂々と白昼のもとにさらしてよろしいのではないでしょうか。


鈴木菊江

秋空にゆらゆらゆるる干柿は空の散歩を楽しんでゐる


 これは、ひとつの発見でしょう。二つの柿を紐で結んで竿に掛け柿を干します。その干柿がゆれ

ているのです。その二つの柿があたかも靴のように、そして歩くように見えたのでしょう。もっと

いえば、柿の実ですから小さいです、あるいはお孫さんを思い出しているのかもしれません。空の

散歩からあるいはなくなられたご主人をおもわれているのかもしれません。



                                 黒田幸子

世の中にカタカナ言葉の溢るなか清水寺の「輪」の文字のよき


 「世の中にカタカナ言葉溢るなか」と作者は言っています。インターネット、メール、スマホ、

オリンピックもそうです。毎年今年一年の世相を漢字一文字で表すことを清水寺で発表していま

す。そして今年は「輪」に決まったわけです。昨年は、七年後のオリンピックが東京で開催される

ことが決まりました。まさに五輪の「輪」であるわけです、それだけではありません、多くの災害

が続きそのつど人々の支援の輪も出来ました。作者ならずとも「輪の文字のよき」が実感として伝

わります。



                              後藤早苗

誰も彼も口を閉ざして帰路につく癌に逝きたる友を送りて


この通りの歌で、よく分るし説明を加えることもないかもしれませんが、作者にとっては深い思い

を歌っているように思います。亡くなられたのは、娘さんを施設に預けている友です。障害のある

子供を残して亡くなった友に、同じ境遇の作者や連れの人達は無言にて帰るのです。他人事ではな

い思いにかられたのではないでしょうか。もし自分ならと思いつつ「誰も彼も口を閉ざして帰路に

つく」だったのでしょう。


                                藤井美智子

人の世の変りはてゆく年の瀬に変らぬ富士の姿ま白き


 昨年一年色々なことが起こりました。上の句の「人の世の変りはてゆく」のが何をさしているの

かわかりませんが、「はてゆく」とは強いことばです。あるいは、猪瀬知事辞任のことなどもある

のかもしれません。そうしてみますと、富士の「ま白き」が重くひびきます。



                                小池美恵子

化粧する鏡の我を見つめいる視力の落ちて皺見えにくく


 複雑といえば複雑の心理描写のようです。男性では入り込めないこともあるかもしれません。そ

んなことも考えながら、老化で作者の視力の落ちたことについて考えたのです。老化は勿論憂うべ

きことです。でも作者は「皺見えにくく」といっています。老化することによって良かったことが

あったのです。そこに作者は気がついた、そしてそれを短歌にした、そこがすばらしいと思うので

す。


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最終更新日  2014.01.24 01:45:27
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