今日の気持ちを短歌におよび短歌鑑賞

今日の気持ちを短歌におよび短歌鑑賞

2014.12.13
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                                A子さん


寒さ増し外出できず家の中テレビにすがり一日楽しむ



連休に孫曾孫里帰(かえ)り大家族振る舞う箸の賑やかみとれる


1.急に寒くなりました。作者の日常生活を述べたのでしょう。これはこれでよいと思います。「すがり」という言葉に思いがこもっているようです。こういった歌は、「今日は」とか、「昨日は」とか、特定のある一日としたほうがよいでしょう。いつも、とか、皆に共通するような歌い方は、歌を弱くします。「一日楽しむ」という言い方は気をつけたいと思います。「楽しんだ」のか、「これから楽しもうとする」のか、あいまいです。


参考: 寒さ増し外出できず籠(こも)りいてテレビをすがるごとく見ている

2.この歌も作者の歌いたいこと、「孫や曾孫さんたちが里帰りして、大家族になって賑やかに食事をしている光景」が想像出来ます。ただ、「大家族」「賑やか」という言葉が気になりました。あまりにも強調しすぎるのは、過ぎたるは及ばざるがごとしというように、逆に感じられるのです。逆、そうです、寂しさというようなものがわたしには感じられるのです。


参考: 連休に孫や曾孫が里帰り振る舞う箸にわれはみとれる



                   B子さん


赤黄色さくさくさくと踏みしめてふかふかもみじ絨毯の道


ふかふかの紅葉の枯れ葉踏みしめる赤き林に木洩れ日光る


1. ちょっと非日常ないっときなのでしょう。「さくさくさく」「ふかふか」といった擬音語がそんな効果をあげているようです。なにか童話の世界に入り込んだ感じでしょうか。


2.これも前作との連作なのでしょう。「赤き林に」あたりがやはり非日常といいますか、作者だけが感じられる世界を歩いているようです。そういった現実から離れたようなひとときに憩いをもとめているのでしょうか。



                 H子さん(新人)



六十三きみよりとうとう一つ越え途方にくれる我は一歳

気に入りの辺見庸読む冬の午後青い思考をよみがえらせて

老猫をひざに眠らせ活字追う空気ゆるくて本も伏せたり

1.なんと言っても、結句の「我は一歳」が、この大胆な発想が、すばらしいと思いました。「きみよりとうとう一つ越え」と「途方にくれる」は直接的には関係がない言葉です、でも読者には関連性が理解されます。これは、説明ではないからいいと思います。「途方にくれる」と「我は一歳」も直接的には関係はないし説明でもありません、しかし読者には何を言わんとしているか分るでしょう。「君のいない我はまるで一歳の赤子のようだ」と言っているように感じます。

2.辺見庸氏については、詩を少し読んだことがある程度です。宮城県の出身で、震災に関した詩を読んだことがあります。ただ、難解なというか、大変鋭い感性の人といった印象がありました。その辺見氏を作者は気に入っているという。ここにひとつのポイントがあるでしょう。それによって、「冬の午後」「青い思考」という言葉が命を与えられ、生きてくると思います。この「青」は純粋さを連想します。

3.前作の連作でしょうか。「老猫をひざに眠らせ」も事実、単なる写生のようでいてなかなかうまいとわたしなどは思います。「空気ゆるくて」がなかなかすごい表現というか、新鮮な表現だと思いました。前作の「青い思考をよみがえらせている」作者と、この歌の作者、どちらも作者のある一面を表しているのでしょう。前作があって、この歌が引き立つこともあるでしょう、もちろん逆もあるでしょう。


C子さん

お母さんおばあちゃんとよんでくれ九十路のわれは温もりている

娘よりディサービスで着なさいとふかふかコート購いくれる

辛かった悲しかったは過ぎた事老後(今)幸福ならばそれが一番

1. この歌もなかなか味わい深い歌のように思います。「お母さんおばあちゃんとよんでくれ」と「九十路のわれは温もりている」がどう関係するか、直接的な関係はないでしょう。しかしやはり響きあっているものがある、それがこの歌の良さだと思います。言葉の表現もなかなか含みのある表現になっています。「呼んでくれ」、息子、娘たちよ、あるいは孫たちよわたしの所に来ておくれと言っているのでしょう。九十歳になったけれどもまだまだお前達の心を温めることが出来るんだよと言っているようです。

2.「娘より」で一文字開けたいところです。「デイサービスで着なさいとふかふかコート購いくれる」、そのコートを娘さんより贈られたということでしょう。そのコートはふかふかで暖かかったのでしょう。作者は、娘さんへの「ありがとう」という思いを一首にまとめました。事実だけを述べたところがよかったと思います。それだけで、思いは表れます。

3. 詩人谷川俊太郎氏は、「詩はメッセージ(何かを伝えること)ではない」と言っています。何かを伝えるというよりむしろ、つぶやき、独り言、のようなものに近いということでしょうか、そんなことを思い出しました。ここで作者が述べていることを、言葉でなくて感じさせることが歌の力のように感じます。

参考:


(つづく)






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最終更新日  2014.12.13 17:33:31
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