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2015.10.17
白浜短歌会十月歌稿(十月二十一日歌会です)下書き
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白浜短歌会十月歌稿(十月二十一日歌会です)下書き
A子さん
毎夜ごと休まずバチ打つ太鼓の音(ね)若衆の熱意素晴し音響
御社の大樹の森もうつそうと北風受けて大ゆれ小ゆれ
1.祭の練習の音が聞こえてきます。それは、作者自身の若い頃を思い出させるかもしれません。また、待ちに待った祭を今年も見られるといった思いもあるかもしれません。「夜ごと」で毎夜のことです。若衆の熱意は、バチを打つことに対する思いでしょう。「素晴し」は終止形ですので、「素晴しい音響」あるいは、「素晴しき音響」となるでしょう。
参考:
よなよなを休まずバチ打つ若衆の熱意伝わる素晴らしき音
2.強風のなかの風景でしょうか。それで神社の森も見えたのでしょう。大きな樹木が揺れるのは壮大な風景だったでしょう。「ゆれ」のリフレイン(繰返し)は良いと思います。「うっそうと」は「大樹の森」のことだと思いますが、このままだと「うっそうと受けて」というように読まれる可能性もあります。
参考:
御社のうっそうとする大樹の森北風受けて大揺れ小ゆれ
B子さん
女郎花(おみなえし)哀しい名前野辺に咲く深い愛だと花言葉云う
折々の小さな花と文庫本テーブルの上ちょっと幸せ
祭用
笛太鼓祭に群がる子等もなく小さな里に秋風の吹く
1.「おみなえし」は、漢字で「女郎花」と書きます。作者はこの「女郎」という名前にあるいは、「遊女」を思い出したのでしょう。辞書には、「身分のある女性」とも書かれています。野辺に群り咲く「女郎花」、その花言葉が「深い愛」だと知った作者、複雑な思いにかられた作者なのでしょう。
2.「折々の小さな花」は、連作的な思いで読めば「おみなえし」のような感じもします。「折々」と書いてありますから、今回は「おみなえし」だったかもしれません。テーブルの上におみなえしを飾ってあった、そこに(読みかけの)文庫本が置いてあった。それを見たとき作者はなんともいえない幸せ感にうたれたのでしょう。
3.現在の祭風景をたんたんと描写している感じです。やはり、「秋風の吹く」がきいているでしょう。これは、作者の心風景のようにも感じました。そこに哀しみがあります。
C子さん
仲秋のスーパームーンに空財布ふりふりすれば願いがかなうと
新聞もテレビも見れる目と耳もただ年令(とし)だけはわれに従(つ)きくる
秋づきて畑に小粒の種を蒔く夕焼の空に雨雲をみる
祭用
年重ね思い出積もる御社の祭りの太鼓遠くきこえる
1.満月に空の財布をふると願いがかなう、金運がアップするという言い伝えみたいなものが確かにあるそうです。不思議な話です。作者も不思議に思ったことでしょう。実際に実行したのでしょうか。「仲秋」は「仲秋の候」などに使い、月の場合は、「中秋の名月」と書くのが正しいようです。
2.土屋さんのお歳で「目も耳も」しっかりしているとは、うらやましいかぎりです。そういう健康体であっても一年一年年齢は増えているのです。そして、人間はたいていの場合その年齢で判断され、ああしたほうがいい、こうしたほうがいいと規定されるのです。そういう年齢のマイナス面をかなしく思う作者のようです。
3.若い頃から、毎年祭を楽しみにしていた作者なのでしょう。「年重ね思い出積もる」ということばに実感がこもります。あるときは、子供の頃、あるときは子供さんと、いろいろな思い出がおありなのでしょう。その祭の太鼓が今は遠くにきこえる。「遠くきこえる」に思いがこもっています。
D子さん
手の届くところに浮ぶ七島よ呪文となえて訪ねてみたし
菩提寺に咲きほこりたる彼岸花風にゆられておじぎするごと
祭用
この郷土守り祈りて何千年若衆が舞う奉納三番叟(さんば)
1.伊豆七島を「手の届く」と思い切って表現しています。それに、「呪文」という言葉もなにか現実離れした感じ、たとえば仙人の世界のような感じを受けました。この発想、なにかはじけたような発想に興味を持ちました。
2.「菩提寺に咲きほこりたる彼岸花風にゆられて」までは、見たままを詠んでいるようです。やはり、「おじぎするごと」という発想はユニーク(特異)だと思います。「いらっしゃいませ」と言っているのでしょうか。帰りなら、「お気をつけて」とでも言っているのでしょうか。彼岸花がお寺さんと一体になった感じ、お寺さんの使用人のような感じ、なんかふしぎな感じが出ています。
3.下の句「若衆が舞う奉納三番叟」は、そのままよくわかります。上の句の「何千年」はすこし漠然としています。たとえば、「二千年」とか「千余年」とかもう少しはっきりさせたほうがよろしいのではないでしょうか。
参考:
わが郷土守り祈りて二千年若衆が舞う奉納三番叟
E子さん
夏過ぎて秋深みゆく砂浜は長く連らなる砂防垣のみ
台風を逃れて来たかキリギリス網戸をつかみピタッと動かず
夏の日を咲きさかりたる百日紅まろき実残して秋風に散る
祭用
連綿と続く社の大祭(おおまつり)立てたる幟(のぼり)秋空を突く
1.夏の賑わい、秋のさびれた風景を対比して詠んでいます。「長く連なる砂防垣のみ」の実景の描写がさびれた感じを伝えます。それとともにあるいは作者の心の中のある風景がそこに表れているのかもしれません。風景描写は自分の内面の描写でもあるのです。人は自分と無関係なことは詠まないと思っています。
2.細かい描写、昆虫にすなわち一匹のきりぎりすに目を止めている作者です。「網戸をつかみピタッと動かず」と細かに描写している作者、小さな弱い生き物に対する愛のまなざしを感じさせます。
3.さるすべりの花、百日紅とも呼ばれ真夏の日射しをむしろ好むように赤くあるいは白く、あるいは桃色などに咲きます。その花もたぶん散ってしまったのでしょう、よく見ると丸い実が残っているということだと思います。この歌も夏の激しさと秋のさみしさのようなものを表現しています。
参考:
夏の日を咲きさかりたる百日紅秋風に散るまるき実残して
F子さん
久々に娘とともに行く道は赤き彼岸の花さきさかる
真夏日にばっさり剪りし石路は秋深くなり花芽生(お)い立つ
祭用
戦なき世の続けよと願いつゝ今年の茅の輪つゝしみてくぐる
1.久しぶりに娘さんが、帰られたのでしょう、そして、お墓詣りかなにか行ったのではないでしょうか。「娘とともに行く道は」と強調しています。普段はあまり感じなかったのでしょう。「赤き彼岸の花さきさかる」、彼岸花は普通赤い色をしています。それをわざわざ赤きと強調しています。これはむしろ「明るき」に近い「赤き」のようにわたしには感じました。ぱっとあかるくなったような道を歩いているイメージです。
2.つわぶきもあじさいなどのように剪定したほうがよいのでしょうか。その習性をくわしく知りませんが、夏の暑いうちにつわぶきの茎を刈り込んでおいたところ、花芽が(たぶん、いっぱい)出ていた。「花芽生い立つ」とその生命力に感動をしている作者です。読者にもそれが伝わります。
3.「茅の輪」をくぐる行事はいろいろな神社で行われているようです。六月や十二月に行われることが多いように書かれていました。疫病や罪穢を祓う行事と聞いています。作者は「戦のない世が続くようにと願って」輪をくぐっているのでしょう。それは、疫病や罪穢にもまして戦争の恐ろしさを知っている作者の切なる願いなのでしょう。戦争は昔のことではなく、現実に今行われている国が地球上に存在し、それが日本を巻き込まないとも限らないという作者の恐怖心がそのようにさせているのでしょう。神にその願いが届くようにわたしも祈りたいと思います。
ふるさとの海 原 明男
老いふりてふるさと遠くする兄と今宵しみじみ潮鳴りをきく
ふるさとは遠くに在りてといふ兄に遠くなりゆくふるさとの海
祭用
伝統も継承されつさんさんと余韻のごとき昭和に還る
1.作者の兄さんは静岡に住んでいらっしゃるようです。同じ県内とはいえ静岡市は遠方ですなかなか故郷に帰ることが出来ないのでしょう。「老いふりてふるさと遠くする兄」がそれです。その兄さんが帰ってきた、そして二人で「今宵しみじみ潮鳴りをきく」です。まず、この歌を読みまして感じたのは、作者の兄さんの思いです。「しみじみ潮鳴り」を聞いたのはたぶん兄さんのほうでしょう。それが、作者にも通じたのでしょう。兄さんの心がよくわかる作者のようです。また作者にもあらためて潮鳴りの音が胸に迫ってきたのでしょう。なにはともあれ、一首全体にうつくしい兄弟愛を感じるわたしです。
2.「ふるさとは遠くにありて」は、室生犀星の「小景異情」の一節「ふるさとは/遠きにありて思ふもの/そして悲しくうたうもの」を踏まえているようです。兄さんとどんな会話をしたかわかりませんが、「遠くにありて」と兄さんが言っているところをみると、故郷の変貌ぶりが話題になったのかもしれません。兄さんの思い描いていた故郷と現実の故郷の違いに失望しているふうにもみえます。そして、故郷は遠くにいて思うものものだと言った、そこで実際の故郷の海が兄さんにはいよいよ遠くになってゆく、その哀しい思いを作者は歌っているように思うのです。
3.「伝統も継承されつ」、「伝統も」といっていますので、なにか他のものも継承されているのでしょう。「つ」は、意思的な完了形といわれます。人々が努力して継承してきた意味合いがあるでしょう。「さんさんと」は、燦燦(たいへんきらびやかなこと)でしょうか、あるいは、太陽(sun)のサンサンでしょうか、あるいは単なる擬音語(オノマトペ)でしょうか。昭和は終ったが余韻が残っていて、なつかしく、かがやかしいものと感じる作者なのでしょう。祭となるとその昭和に還ったように感じる作者なのでしょう。
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最終更新日 2015.10.17 16:55:39
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