明石海人歌集
白描(40)
岩波文庫より
(注)明石海人(本名野田勝太郎)は、大正7年沼津町立沼津商業学校(現:県立
沼津商業高等学校)卒業で、私の先輩であることを知りました。
春夏秋冬(1)
春(1)
裏山の歯朶のつもり葉ふふませて昨日も今日も雨のけむらふ
転(まろ)びゐる枯歯朶山の日だまりに近づく声は大瑠璃(るり)のたぐひか
鳶二つ舞ひもつれつつ草丘に昼の陽あしはうつるともなし
うつらうつら眼下海(まなしたうみ)に照り翳る春日のうつろひ見つつ遥けさ
海寄(うみより)の風に堪へつつ閑かなりさくら一むら昼をかがよふ
坂道をくだり来つれば薔薇苑は香に籠りつつうすら日の照る
いつしかもミシンの音はやみてをり立藤のはな黄なる曇りに
(つづく)
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