明石海人歌集
白描(161)
岩波文庫より
(注)明石海人(本名野田勝太郎)は、大正7年沼津町立沼津商業学校(現:県立
沼津商業高等学校)卒業で、私の先輩であることを知りました。
作者の言葉(2)
第一部白猫は癩者としての生活感情を有りの儘に歌ったものです。けれども
私の歌心はまだ何か物足りないものを感じていました。あらゆる仮装をかなぐり
捨てて赤裸々な自我を思いの儘に跳躍させたい、こういう気持から生まれたもの
が第二部で、概ね日本歌人誌に発表したものです。しかし、仔細に見れば此処
にも現実の生活の翳がさしていることは否むべくもありません。この二つの行き
方は所詮一つに帰すべきものなのでしょうが、私の未熟さはまだ其処に至ってい
ません。第一部第二部共に昭和十二年より十三年に至る作で、中には回想に拠
ったものも少なくありませんが、西郷さんの銅像の紙礫も縊れた病友の袷の縞目
も、私にとっては今朝の粥の味よりも鮮やかな現実です。
に満たない点が少なく有りませんが、今は健康が赦されないので満身創痍の儘世
に送る外はありません。
(つづく)
後藤瑞義入選歌(平成31年度:令和元年… 2026.05.28
渡辺順三歌集「日本の地図」 1952年… 2026.05.28
与謝晶子の歌(369)花のある風景――(… 2026.05.28