明石海人歌集
白描(169)
岩波文庫より
(注)明石海人(本名野田勝太郎)は、大正7年沼津町立沼津商業学校(現:県立
沼津商業高等学校)卒業で、私の先輩であることを知りました。
白描以後(7)
御快癒を待ちつつ(長歌)
「小島の春」の著者小川正子先生二捧ぐ
いとけなき
少女
の子らの ある日わが家に来て云ふ にこにこと笑みて
物云はすは園長先生 おいしき藥下さるは小川先生と 幼子は心の直
ぐ いみじくも云へるものかな 良薬は口に苦しと 古の人は云へど
も たはや女の心やさしく 良き藥味ひ甘く ととのへてたまはる君
を 幼子も少女の子らも むくつけき不自由者我らも 母のごとまた姉
のごと 敬ひつつなつきつつ経にけるものを 明暮のみとりのわざの
劇しきあまりにか 医局にもおん姿の無きは 此の頃をこもりたまふと
か 秋たてど未だは暑き朝夕をいかにますらむ いたつきの
疾
く癒えま
して ほがらなる御声を聞かむと 人も云ひ我も
願
ぐなり 島里の秋を
さやかに 風渡る頃ともならば すこやけき君をこそ見む 島の子ら心
をこめて かくもこそ祈れ やがてまたゆたけき笑顔に 園を
守
りま
せ 良き薬も甘く盛りませ うつくしき御歌も詠みませ 待たるるは其
の日ぞ 待たるるは
実
にもその日ぞ
反歌
こもりますわが師の君のおもかげも現に見えておもひの傷む
ひたごころひたぶるに願ぐわが恃む
医師
の君のまさきくとこそ
(つづく)
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