3月27日(金)
萬葉集入門(3)
著者:土屋文明
発行:筑摩書房 昭和56年4月
(注):作品を中心にして、簡略化してあります(後藤)
岩代 の浜松が 枝 を引き結びま 幸 くあらばまたかへり見む
(二巻:141) 有間皇子
百伝 ふ 磐余 の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲がくりなむ
(二巻:416) 大津皇子
ともに死に臨んだ歌。
有間皇子は、謀叛の裁判を受けるため、護送の途中、岩代と
いう所の海岸の松の枝を、当時の習慣に従って、結び、無事を
祈りながらも、不安な旅行を、つづけようとしている時の作品。
大津皇子は、謀叛により、死刑を執行される刑場に臨んで、眼
前の、磐余という池の水の上に、浮かび鳴き合う鴨に、思いをよ
せている。「百伝ふ」は磐余についた枕詞。
厳粛な死を前にしての、厳粛な心持ちを、厳粛な調子で歌って
いる。ただ厳粛ではあるが、陰惨な影の見られないのは注意して
よい。これは、当時の生死観に、どこか明るい調子があり、死に
臨んでも生の希望のなお、別な光にかがやいていた、というよう
なことの、あったためであろう。
(つづく)
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