10月29日(木)
歌集「乳房喪失」(昭和29年)(5)(抜粋)中城ふみ子
音たかく夜空に花火うち開きわれは隈なく奪われてゐる
川鮭の紅き腹子をほぐしつつひそかなりき母の羞恥は
父の家にかくれて遊びに行きし子を待ちて出づれば黒き冬の川
冬の皺よせゐる海よ今少し生きて己れの無惨を見むか
メスのもとひらかれてゆく過去がありわが胎児らは闇に蹴り合ふ
(つづく)
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