1月26日(水)
岡井 隆「私の文学」(47)
(対談:聞きて田中和生)
三田文学(2003年夏季号)より
前衛短歌運動をふり返って(5)
岡井:あの後、「アララギ」から飛びだしていろいろやりま
したでしょう。あのときは「短歌」とか「短歌研究」といっ
た総合雑誌の編集者が、中井英夫さんや杉山正樹さんという
優秀な人だったものですから、バックアップしてくれまし
た。案外ああいうところが、われわれの同人誌の親玉みたい
なところになって、今おっしゃったような、表現の可能性を
自分のやれる範囲内でとことんやってごらんよという雰囲気
を作り出してくれたのは「短歌」と「短歌研究」です。それ
を旧結社的制度とぶつかっていたんですから、表現的な改革
というのはものすごくたくさん行われました。
それはぜんぶ成功したわけじゃありませんけれども、少な
くとも、たとえばさっき話に挙がった虚構的なもの、そうい
うものが表現のなかには含まれるんだ、そんなことを言うけ
れども物とか事とかいうのはけっこう大事だ、とかいってそ
れこそ何千年来言われてきている文学というもの、あるいは
文学表現のオーソドキシーみたいなものがそこで確かめられ
た。今若い人たちが百花斉放であらゆることをやって、だれ
もなにも言いませんよね。ああいう雰囲気、もちろん自分は
写実だといって頑張っている人もいて、そういう人もこちら
の人を十分認めた上でやっているというようなごく普通の雰
囲気ができていて、あれはひょっとするとわれわれがああい
うことをやったために生じたのかもしれないから、よかった
かと思います。
(つづく)
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