ジョナサンズ・ウェイク

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半島を出よ(村上龍)



村上龍の仕掛けた、近未来日本の最悪のシナリオ。しかし最も最悪なのは、これが現在考えうる最悪のシナリオとは言い切れないことだ。

村上龍のこれまでの作品の様々なエッセンスが、随所で生かされていると思った。『五分後の世界』でも光っていた近未来シュミレーションの緻密さ、『共生虫』での豊富な軍事関係のデータ、挙げていくと切りがないが、とにかく彼の集大成がここに表れたのではないかとさえ思えてくる。この作品に関しては賛否両論だが、物議を醸し出すに充分なパワーを感じた。下巻に続く?

半島を出よ(上)


さらなるテロの危険に日本は福岡を封鎖した。切離された福岡市民と政府との間で軋りあう感情の摩擦。一方、福岡を占拠した高麗遠征軍は重犯罪人の逮捕、拷問、粛清、さらには白昼での銃撃戦を展開する。そこへ北朝鮮の後続部隊12万人が出港の準備を整えているという知らせが・・・。

あとがきで著者が明かしているように、「書けるわけがないが、書かないと始まらない」作品だった。現実ではありえないような展開に妙なリアリティがあったり、またその逆で、極端に非現実的であったり。ただ断片の積み重ねで登場人物の視点の切り替わりについていけず、緊張感が続かなかったのが残念。
政治的なところでは、今回はコメントを控えたい。
蛇足だが、巻末の参考資料集は蛇足なのでは。

ふ~、読むのに一月かかった。満腹感と空腹感を同時に感じるってこういうことか。

半島を出よ(下)


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