メリークリスマス


お互いの家を出て、彼は奥さんから失踪という形
私たちは小さなワンルームを借りた
これからどうなるのかも想像できず
自分たちのしていることの重大さに時々震えながら、
でも彼と一緒にいられるだけで
何もいらないとにかく幸せだと思った

そんな二人の初めてのクリスマス
彼がレストランを予約してくれて、お祝いしようねと言っていた
そして前日休日の12月23日
一緒に美容院に行って髪を切ってもらっていた頃から
彼が胃が痛いと言い出して、それでもたいしたことはないだろうと思っていたら帰り道で、もう立っていられないほど
彼が苦しみだした

我慢強い彼が唸るように苦しんでいる
どうしよう

彼も私たちのこと、奥さんのこと、心配している親兄弟のこと、いろいろなことで身体も心も限界にきていたんだろう


近くから電話をして休日急患でも見てくれている病院を探して行ったら
胃がものすごく傷ついていて、腹水までたまっているとのこと。とにかくすぐ入院してくださいと。


彼との暮らしが始まったばかりで
明日はクリスマスイブ・・・・


とにかく入院の準備をして 彼に付き添っていたら
完全介護なので帰ってください。と

小さなワンルームに戻って、まだ家具も何もない部屋で
一人で不安な夜を過ごした

クリスマスイブ
少し落ち着いたけれど彼はしばらくの入院が必要との事

本当は私たち神様から罰を与えられたのだと思ったが
そういう風に考えてしまうと彼とのすべてのことを
否定し崩れ去ってしまうので、考えないようにしていた罪深い私

ただただ彼が早く良くなるようにと祈りながら
一人ぼっちで狭いワンルームでクリスマスを過ごした

メリークリスマスもいえないまま



そして八ヵ月後の暑い日に彼が私のところから去っていったのもその小さなワンルームで
今度は交通事故がきっかけだった

最初も最後も小さなワンルームで一人ぼっちで彼の無事を祈った私


今思うとはじめからそういうストーリーができていたんだなぁって。。


だけどそのときはただただ彼の事を思っていた
一緒にいられるのならどんな罪を犯していても怖くなかった


そんな終わってしまった小さな恋愛
一人泣きながら過ごしたクリスマス
二人の最初で最後のクリスマス




四年たって、やっとこうやって泣かずに振り返られるようになりました


ずっと一緒にいることはできなかったけれど

一生で一度の想いをありがとう



彼も今幸せなクリスマスをすごしていると思います




あの日いえなかったメリークリスマスを 貴方に



つよし2


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