日々のあぶく?

日々のあぶく?

January 10, 2006
XML
カテゴリ:
仕事始め前日だから少しにして、電車内で読んでいこうと思っていたのに、
ぐいぐい引き込まれて一気に読んでしまった。
お陰で今日一日、寝不足気味でした(爆)

NECROPOLIS(:特に古代都市の"大(共同)墓地"の意)
装画 藤田親策
装丁 鈴木成一デザイン室

日本が英国領になったこともあると言うパラレルワールド設定。
イギリスにあるV.ファー。
東京大学の大学院生で民俗学よりの文化人類学を学ぶジュンイチロウ・イトウは
親戚のツテで初めてヒガン(彼岸)にアナザー・ヒルに足を踏み入れる許可を得る。
同行者は常連である親戚でヴィクトリア大学の学生・ハナ、同じく女子校の教師・マリコ、
ハナとマリコの叔母で映画館の経営者・リンデ、ビクトリア大学教授・シノダ、
船を操縦するバイトで同乗した・ジミー。
ジミーは周囲の勧めで死んだ兄・テリーに会う為に来たが、彼は兄に殺されると怯えていた。

アナザー・ヒルにはナロー・ボート(長期滞在が可能な、屋形船に似た船)で夜通し(出発はもちろん逢魔が時だ)鴨の親子の速度で走ってほぼ半日かかる。
アナザー・ヒルは普段は水門がしまっていて、ヒガンの時だけ3日おきに開く陸の孤島だ。
ヒガンは11月の1日からの1ヶ月間。
アナザー・ヒルには基本的にはその年1年間に死亡したV.ファーの人・死者(「お客さん」)が実体を伴って帰ってくる。
全員が、ではないし、行っても出会えない人もいる。
朝、祈りの鐘が鳴ってから日の入りにまた鳴るまでは、基本的に単独で、静かに行動、
「お客さん」とは個別でコミュニケーションをとることが基本とされている。
そして、「お客さん」は嘘をつかないので彼らの言葉は裁判でも有効。
そのため、入島した人々には一人一冊黒い手帳が渡され、彼らとの会話を逐一記録することが義務付けられている。
(死者の写真が載った本もある)

いつもはつつがなく始まるはずのヒガンは初っ端から躓く。
水門の前(アナザー・ヒルの入口)にある鳥居に死体がぶら下がっていたのだ。
しかも、被害者は今、V.ファーを震撼とさせ、今年のヒガンに被害者が帰ってくることで捜査に進展が期待されている「血塗れジャック」と同じ手口で殺されているようだった―
元々ここを聖地として崇めてきた先住民で、普段は周囲で遊牧し、有事には審判の役割を持ったラインマンは外界(現世)とアナザー・ヒルの境界線上での事件と判定する。
警察の介入を拒んできたアナザー・ヒルのユイ(結)の三役が取った対策は、
警察が推薦する、コロンビア大学のジョナサン・グレイ博士による捜査許可。
普段は姿をあらわさないラインマンもここに滞在し、均衡を保つことに。

お喋り、推理大好きのV.ファーの人にかかっても捜査は進まず、
犬が殺され、第二の殺人が起こる。
手荒い「お客さん」の歓迎のその名のとおりの嵐、悪い風、精霊による審判、ガッチの開催、いたずらっ子マチアスや連続夫殺しの噂が耐えない「血塗れメアリ」、謎の少女・サマンサ、死んだジミーの兄・テリーの登場、
感度良好・初参加にして次々に「お客さん」に遭遇するジュン(イチロウ)は連鎖する事件の渦中に投げ込まれた!

私の中で渦巻状の丘(孤島)、そびえ立つ塔、とくると想像するのはモンサンミッシェルだった。
卵が中心のV.ファーの人にとっては占いに使うのも、毎朝配達されるのも、お稲荷さんにお供えするのも"卵"と言うのが面白い。
そういう文化圏なんだと妙に納得してしまう。
イギリスと日本の文化の融合(奇妙なミックス→本来の意味が変わっていたりする)、
でも、やはり紅茶好きな人々が微笑ましく、実際にそんな国があっても楽しそうだと思ってしまう。
恩田氏お得意の集団心理、パニックも上手くミックスし、不思議な世界を違和感なく作り出していた。
非日常の融合、大衆意見・意識が常識になるというのもすんなり入ってくる。
突然の死に見舞われても、ヒガンで死者が帰ってくれば最後の別れが出来る。
それは幸せなこと、でもあるだろう。
皆が叶う訳でもないが。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  January 11, 2006 12:02:58 AM


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: