片桐早希 おむすびころりん

片桐早希 おむすびころりん

PR

×

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

片桐早希

片桐早希

Calendar

Comments

総徳 @ あんれ~? もう1ヶ月! なんだ、なんだ? ど…

Favorite Blog

ブーリン家の姉妹 New! ジャスティン・ヒーさん

本を読もう!!VIV… viva-bookさん
FLOWER GARDEN 2 小山千鶴さん
2009.03.14
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
 それまでどことなく沈みがちだった理生が、急に得意げになって話したことは、僕が研究室

に入るということが決まったと同時に、ある企業から大学に多額の寄付金があったという話が

またたく間に広まったということだった。


 寄付者は、会長の村木浩一郎だった。

 僕は会長から何も知らされていなかったが、そのことを教授から告げられた時、会長が僕へ

の餞別として寄付したことはすぐに想像できた。しかし、会長がそのことを僕に何も言わない

ということは、僕も会長に礼など言う必要はないということだった。

 会長は必要なことは必ず言葉にする人間だった。


 その時、研究室の実質的なボスであったMにとって、突然の僕の出現が好ましくなかったの

はすぐに想像できることだった。だから、初対面で僕に先制パンチを食らわせておかなければ

ならなかったのだろう。寄付金ごときで、お前に大きな顔はさせない、と。


 僕は思う、Mは何と器の小さい男なのだろう、と。

 僕が、上司だった人間の寄付金を看板にして行動する人間かどうか、少し観察すればよか

ったのだ。言葉は悪いが、僕を研究チームに取り込み、僕を利用して会長から再び寄付を

募ることもできたのだ。

 研究にお金は切り離せない。今はどの研究室も資金難に苦しんでいる。

 会長の寄付金は何のしがらみもない、研究に自由に使えるお金だ。

 このお金を研究に生かし、その結果人々の幸せに少しでも貢献できれば、こんな喜ばしい

ことはない。まさに、お金の有効利用なのに・・・・・。


 まあ、今さらMの了見の狭さに驚くことはない。それに、Mは、もう僕にとって何の縁も

ない人間なのだから、あれこれ考えることはないのだった。


「理生、お前さあ、Mのことでもっと話したいことがあるんだろう。会長の寄付金のことなん

かもういいからさ、早く話してしまいな。」

 僕は自分の言葉が崩れていることを感じていたが、これは秘書をしていた頃の、まあ、何と

言うか、成果のようなものだった。


 理生は、僕の言葉で、頬をさっと赤らめた。


「それで、お前はあの夜、Mととびきり素敵な夜を過ごしたのか? ふかふかのベッド、モー

ニングコーヒー付でさ。」

 理生は、フォークとナイフを静かに皿の上に置くと、

「そうなのよ、そうなることをあの時、私は期待していたのよ。」

と言った。

「でもね・・・・・。」

 そう言って僕を見つめる理生の目は、またいつもの理生に戻っていた。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009.03.14 19:11:24
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: