想いのままに
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東日本大震災からしばらくして、東京へ出張する機会があった。 その帰り、新幹線の車窓から見る景色は夕暮れどき。丸の内あたりの街路樹に明かりが灯った。その洗練されたデザインと青く輝く光束に高級感とともに都会の冷たさを感じた。 震災後、日本中に浸透した自粛ムードは、被災地に住む自分も含めて「これを良しとしない」思いがあった。なぜならば、被災地以外の地域は被災地の分まで生活・産業活動面で停滞した日本を牽引して欲しい願いがあったから。 被災地以外の人まで過度に「被災者」となる必要はないという想いが強かった。 あれから数ヶ月。その思いを汲み取るかのように、今、目にしているイルミネーションはあの頃の自粛ムードに満ち溢れた反動とも思えるくらい光り輝いていた。 北に向かって走り出した新幹線は、しばらくすると風景が徐々に変化する。ここは栃木あたりか?遠くの稜線が沈んだ太陽の残光に浮かび上がり、目を近くにやると広がった田んぼが続く。その中にはっきりとは見えないけど、おそらく集落があるんだろう。木立に囲まれた近くに何件かの建物らしきものが点々と存在し、時折漏れる明かりから民家ということがわかる。 そこは、ほぼ真っ暗な世界。おそらく集落と集落とを結ぶ道路もあるのだろうが、それを確認することは難しい。 あの、東京駅で見た景色とは全く違う環境が今ここにある。 ふと、福島のことが頭に浮かんだ。 このもっと北にある福島は、もっと暗いんだろう。今見ている景色には人々の営みがあるけど、人っこひとりいない景色がこの先にある。 同じ日本でこうも違うのか・・・というわかってはいたけどそういった思いが湧いてくる。 震災前は東京方面へ電力を供給していた地が、今は誰も住めなくなっている。だけれども、今、東京は別の発電所からの電力供給によって鮮やかなイルミネーションを放ち、そこに住む人々はそれを見て癒されたり楽しんだりしている。 今更だがどう見ても、理不尽な思いを感じる。 その時、受益者負担という単語が頭に浮かんだ。 利益を享受しているものが、それに相応した対価を支払うという意味のこのことばは、合理的で理解しやすいものであるが、この福島・原発問題でそう言った言葉はあまり聞いたことがない。 電力料金の値上げという話はあったが、各電力会社一斉に行ってしまっているから、あまり特異な条件のものではないと理解している。 福島・フクシマと言ってるマスコミなども、自分たちが今まで享受してきた恩恵に対する対価をどうやら支払いたくないようである。 ふと、そんなことを感じた帰郷の途であった。
July 2, 2016
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