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2024.06.03
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カテゴリ: 映画感想

(c)ハピネットファントムスタジオ様公式 YouTubeより抜粋 関心領域 予告動画

関心領域見てきたよい!


舞台は第二次世界大戦中、ナチスドイツが支配するアウシュビッツ強制収容所…の隣の家、初代所長ルドルフ一家が住む裕福なお家が舞台。
それ以上でもそれ以下でもない。

高校生の頃「ライフイズビューティフル」という映画を自身で一度、学校でも何故か見せられました。内容は割愛しますが同じアウシュビッツ強制収容所をテーマにした映画です。興味があるならここから入るのがベストな気はします。

さて関心領域、観る前はどんな残虐なシーン見せられんのかと思ってました。
見せられないけど、見せられました。


全ては観ている人達の想像力に委ねられる。つまりアウシュビッツ強制収容所の構造やそこでのユダヤ人の生活の様、アウシュビッツに来るまでのユダヤ人たちの思い、ナチスがどうやってアウシュビッツまでユダヤ人たちを同行させたのか、そしてあの戦争下でのポーランドの情勢…そういった歴史の解像度が高ければ高い程"理解"ができて、初っ端からえっぐいな〜と思いました。


何人もの映画評論家が関心領域は「想像し、歴史を学び直す映画だ」と言ってましたが、まさにその通りの内容でした。
アウシュビッツ強制収容所についてやヒトラー下でのドイツの有様は割と詳しい気でいたのですが、林檎の少女の事は知りませんでした。勉強になる。

以下ネタバレ含む感想



冒頭暗がりにノイズだけのシーンが何分か続きます。これがガス室の様子なのかアウシュビッツ行きの列車での様子なのか…冒頭から想像力に委ねられます。
画面は変わり幸せそうな家族がピクニックをしている様子、父、母、息子たち、赤子とここでも"子供を産めること"からこの家族たちはドイツ人であることが理解できました。
家族たちはバラ、ダリア、ツツジなどの花々が咲くプール付きの庭を持つ家で裕福な生活を送ります。
その家族たちはアウシュビッツ強制収容所のルドルフ所長一家であり、幸せな家…の片側に高く隔たれたコンクリートの壁その向こうがアウシュビッツ強制収容所。
「おれんち隣が強制収容所なんだよね」みたいな軽いノリでそこに在る。

(c)ハピネットファントムスタジオ様公式YouTubeより

・そんな一家へ洋服が運ばれてきた。

(c)ハピネットファントムスタジオ様公式YouTubeより
ルドルフ所長の妻は高級な毛皮のコートを纏い姿見をチェックする、私はその瞬間「ユダヤ人の服だわ…」と察する。何でもないように妻はクリーニングに出すよう女中に言い渡す。
この女中…ユダヤ人だろ…と察する。

ルドルフの妻はお友達を呼んで優雅にお茶会をする。(勿論隣からは怒号や悲鳴が聞こえている)
そこで妻がつけていたダイヤの話になるのだが
「歯磨き粉に入っていた」という言葉が出る。
勿論これもユダヤ人のものだ。
ここでユダヤ人がアウシュビッツに同行した理由が分かる。

・何故歯磨き粉を持ち込む必要がユダヤ人にはあったのか?
それは「新しい生活を送るため」である。
当時ナチス支配下でユダヤ人は一ヶ所に集められ隔離された街に住んでいた。人口密度は考えられないほど高く、食糧もなく道端で餓死する人も多くおり、勿論処理なんてしてくれないので病原菌が発生する。そんなとてつもなく不衛生な場所に住んでいた。
そんな彼らにナチスは言った「ここより快適な所へ連れて行く」と。
食糧もない状態で脳が働くだろうか?ユダヤ人たちは藁にも縋る思いで新しい生活を求めた筈だ。
「新しい生活に必要なものは何だろう?食器、それから服、そうだ歯磨き粉と歯ブラシも持っていこう!このダイヤも持っていきたいけど検閲なんかあったら…」そんな思いでダイヤを歯磨き粉の中に忍ばせたのだろう。その先はもっと過酷な環境とも知らずに。

それを何の罪悪感も持たずに身につける妻、図太いぜ!

この家族の裕福さはすべてユダヤ人の犠牲の上で成り立っているんですね〜。

ルドルフの妻は一貫して図太さを映画の中で発揮します。何故自分の母が幸せな我が家を出て行ったのか?彼女にはわからないどころか女中に「母が残した手紙はお前の嫌がらせか?旦那に伝えてころしてやる」と当たり散らす始末。(やっぱり女中はユダヤ人か!)
完全にポケモンでいったら性格ずぶとい特性どんかんだよ。
憶測ですがお母様が出て行かれたのは恐らく隣の強制収容所から聞こえる音の不快感からでしょう。

幸せな家族の映像、アウシュビッツ強制収容所から聞こえる怒号や悲鳴、銃声の音の中、映画は淡々と進みます。

そう、強制収容所の中を一切映しません!
アウシュビッツ強制収容所から聞こえる銃声は
ユダヤ人たちの寝床、収容施設の建物と建物の間で行われた見せしめの処刑だろうな。
(収容所内にはそういった見せしめ処刑の場所が実際にあったんですね、何千人そこで亡くなったとか…)
強制収容所は排泄行為が1日2回決まった時間に行われるのですが、その時間ルドルフ一家は優雅にユダヤ人の女中が作ったであろう朝食を摂っているのでしょう。
排泄は自分のタイミングで行けない為その時間外では糞尿垂れ流しでの過酷な労働になります。人間の尊厳破壊ですね…。着替えもありません。


そして何といってもこの場面

(c)ハピネットファントムスタジオ様公式YouTubeより
この場面はルドルフ所長のバースデー。テーブルに置かれたケーキ。なんと贅沢な…
強制収容所のユダヤ人の食事は1日に2回「固い小さなパンとマーガリンらしきものが1つ、腐りかけのまたは腐ったクズ野菜のスープ1杯」
ここでも食事の対比が凄まじい


(c)ハピネットファントムスタジオ様公式YouTubeより
このベッドで寝ているシーンすらも、1人1つのベッド清潔なシーツにナイトウェア、隣の強制収容所では複数のユダヤ人が1つの狭いベッドでかける布もなく、着替える服もなく、不衛生な姿のまま眠ります。
た、対比よ………


この映画は銃声や叫び声、怒号だけではなく
強制収容所の構造やどんな風にそこでユダヤ人が扱われていたのか知っていれば知っているほどに恐ろしいものになります。
あと当時のポーランドの情勢も知っていると殊更解像度が上がります。


この映画には完結がありません。
最後は現在博物館となっている収容所を清掃している内部映像が流れます。
最終的に我々の知っているジェノサイドの結果を見せられます。
最後のシーンは過去から未来へ未来から過去へと時間の逆行がある為、解釈はそれぞれになると思います。
私は博物館を綺麗に保つ清掃と、ナチスドイツがユダヤ人に触れた後手や体を洗う衛生行為が皮肉になっているのかな?と推測しています。
難解です。


そして我々の関心に問いかけます。
例えば今も世界の至る所で紛争や戦争が起きていますが、対岸の火事です。
すぐ近くでジェノサイドが行われ自身の安全が保障されていた場合、関心は向きますか?

私は恐らく向かないかもなと思いました。
人間なんてそんなものです。

この映画はホロコースト映画史上の名作になることは間違いありません。
歴史に詳しい人ほど悍ましく、また知らなかった事への探究心を擽られるからです。
現に私はユダヤ人のために林檎を土に埋めている少女が実在したことを知りませんでした(映画の中で出てきます)
1番関心をもっていたのは隣人でもルドルフ所長でもなくその少女だった。然しその親切も残酷な行動になってしまう。

関心とは何たるか?考えても考えても、私には理解ができていません。







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最終更新日  2024.06.03 00:18:27


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