2002/07/15
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「忿翁」とも「白髪の唄」とも「仮往生伝試文」とも、特に「白髪の唄」に、似ている。もはやごっちゃになってどれがどれだか分からない。そういえば最近外国人作家の本を読んでいない。調べてみたら一月半も外国人作家の書いた本に触れていない。そもそも本を読むペースが極端に落ちている。特に理由は見つからない。
 ここまで来ると書くこともない。さて次は何を読もうと思った時、古井由吉以外を手に取る理由がない。いや、今はまた野坂昭如が手に入った。漢字四文字なので共通点もある。何を言っているか分からない。
 書き方を掴めば内容に頓着せずとも話は進むのか、同じエピソードでも違う話の中に取り込まれれば同じではないのか、書いたことは忘れるのか。

「狂ってました」と青年はかるくふきだした。「あれは一体、何事ですか、と脇からたずねられました。咎められた気分がして振り返ると、その片割れが口をあけて、乱闘に入っているのです。狂ってるよ、とそうつぶやくんです」
 そうつぶやいて、またふっと笑った。


 ふっと笑った、を、ふっと狂った、と読んだ。そうしてふっとした調子に狂うこともあるのかな、と思った。読み間違いから狂う、誰かの呼び間違いに真面目に自分の存在を疑う、疲れて帰途につくのもつらいと思っているうちに家へ帰ることを忘れる、というようなことが、私にはありそうもないが、世の中には、少しくらいはあるようにも、思えてくる。
 古井作品に頻出する言葉で言えば、人々は狂気を分有しているから、誰でも狂える。ふとバランスを崩せば、はみ出したまま帰ることを忘れることが出来る。狂うにも狂わないにも、大した理由は必要がない。
 そんなことはない、と書いた傍からすぐに思う。

古井由吉「楽天記」(新潮文庫 在庫切れ)





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Last updated  2002/07/15 07:59:51 PM
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