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rouge@ 偶然の一致? clos Rougeardを探していてこちらへ来たの…
古酒鳥@ Re[1]:別府、てんぷら 加とう(03/08) ミユウミリウさん、よくご存じですね。 …
古酒鳥@ Re[1]:パルメ垂直(写真のみ)^^(03/14) HABANDさん、いつもありがとうございます…
ミユウミリウ @ Re:別府、てんぷら 加とう(03/08) あら...おやど湯の丘、懐かしい!^^
HABAND @ Re:パルメ垂直(写真のみ)^^(03/14) 今晩は~、HABANDですっ! スゴイですね…
tanaka@ Re:春野菜(02/11) >こんにちは。 >春野菜がおいしいイ…
古酒鳥@ 春野菜 tanakaさん、こんにちは。 春野菜がおい…

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2009年07月09日
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カテゴリ: フランス旅行
足首の重い捻挫は今まで経験したことがない。足を地面に付けなくなり、歩けない状況がこれほどの不自由を人間にもたらすかを初めて知った。

問題のトイレは、十数メートル離れたカフェに行くか、他の方法を見つけるしかない。幸いアクセルとブレーキを踏む前後方向の動きは保たれていたので、運転はこの先の60kmも含め、限界の中でも自信はあった。
「村を一周して、トイレを探そう。」

思いは通じたのか、教会前広場を過ぎたあたりに村役場らしい建物があり、野外トイレが設置されていた。彼女の肩が本当にたくましい。「ふぅー」

この60kmの運転がこんなにも辛いものだったとは。足首の痛さより、心の痛さ。
「しまった! なぜやったのだろう。」
「申し訳ない。」
「本当に申し訳ない。」
それの繰り返し。

救急病院に着いたのは、15:00頃だったろうか。

こんな中でも、彼女は考え抜いていたようだ。
「ごめんなさいね。せっかく着いたけど、やっぱりまずSNCFのAVISに行って車を返しましょう。診断によっては、ギブス固定になる可能性もあるし。そうなれば運転が出来なくなる。その前にレンタカーを返すのよ。」

ぼくは専門家がいる病院の勤務時間内の診察を希望していると言うが、
「この程度のけがだったら、ERのドクターが診察してもそんなに変わらないと思う。それよりもレンタカー。私の判断に従って!」

駅の営業所に何度もTELするが、相手は出ない。
「直接行きましょう。だって営業時間だってHPにも書いているじゃないの。電話に出ない時も開いていることは、フランスでは良くあること。」
どうも、この辺から彼女は今回のトラブルを楽しむモードに切り替えたようだ。

駅のAVISでも、思った以上に手間取った。5日間の契約を3日で返却なのだが、PCでは上手く認識してくれない。結局、割安(5日)から割高(3日)への変更の問題だと分かった頃、ぼくは駅前で惨めな気持ちで彼女の帰りを待ち続けていた。

もちろん、バックライトの破損は保険で賄われることは当然だった。が、燃料を満タンで返却することは、このトラブルを話した後でも、強く要求された。

駅前のセルフスタンドで満タンにするも(もちろん彼女が操作した)、燃料計は1レベル下がったまま。ぼくは「チョンチョンとしないと」と言うが、彼女は担当の若い男性に助けを求めた。優しそうな男性で、彼女とのやりとりが微笑ましい。こういう時のために彼女は、日本の美しい切手を用意していて、「お礼の気持ち」を渡した。

さぁ、次はタクシーで病院だ。
【駅前のTaxi乗り場で、「亭主が捻挫して、まったく歩けない。ホテルで荷物を下ろして、救急病院に行きたい。今彼はAVISの前で待っている。」と説明すると「ガッテンだ!俺に任せておけ!! さぁ 乗りな!」って感じ。頼もしそう。】

実際、ぼくの身長からすると190cmはありそうなタクシードライバーが、がっしりと抱えるように車に乗せてくれた。病院に着いても、車椅子を持ってきて、ぼくを乗せ、受付まで運んでくれる。

ERはもうすでに10数人が待っていた。救急部の受付で状況説明と保険証書を提示する。この時の年配女性職員は最後まで、落ち着いた優しい対応をしてくれた。

恐らく、日本人のぼく達だからだろう、通常の待合ではなく、スタッフ側のスペースに案内してくれ、彼女用の椅子も用意してくれた。さりげない心遣いが嬉しい。

診察に呼ばれたのは、1時間20分後。
呼びに来た年配の看護婦と彼女は「あなたはフランス語が上手いわね。ご主人、フランス語は?」「全くダメ」
「英語は大丈夫?」
「うーん、英語も片言よ。」
「そうなの、じゃあ彼は、あなたに頼りっぱなしなのね。」「そうなのよね。」
なんてことを話している。そんなことは、表情と雰囲気と単語で何となく分かるさ。
まぁ、ぼくを出汁にすればいいさ。

ドクターは、30才くらいの若い女性。
「どっち向きに捻った?」
「ここは。痛い?」
まぁ、痛ければ、「うー、痛い」なんて言えば、ほとんど言葉の問題はないと思うが...

ドクターはX-rayのオーダーを出す。ペーパーレスのオーダリングだが、全体に2年前の標準的な日本のERな感じ。

ストレッチャーに乗って撮影室に行く。
撮影室は少し広いが暗め。装置はフィリップス。かなり寝心地の良いマットのストレッチャーの上で撮影される。
撮影は、50才くらいの男性技師。足への触り方が繊細で安心できる。

撮影後、ふとみると、操作室にその技師と別の男性技師と彼女がいる。

どうも彼女は、「私も日本の病院で同じ仕事をしている。使っている装置もFCR5000で、とても興味がある。」と自分の職業を告白したようだ。この日本が世界に誇れるFCR(Fuji Computed Radiography)を前に、すぐさま打ち解けたのだろう。

操作室では、技術的な話(二つの写真の合成、分割のレベル等)や「骨折がないようだ」との判断をしたようだ。3人の笑顔が感じ良く、今でも僕の脳裏に残っている。

診察室ではドクターがX線写真を見て、「骨折はないようです。やはり捻挫でしょう。今夜は氷で冷やして、足を高くして寝ること。重要なことは、痛くなければ歩く必要があるということ。長時間ベットにジッとしていると静脈炎になる可能性がある。」と

「処方箋を書くから、薬局で杖と薬をもらってね。」

ぼくの最後の質問(諦めてはいるが。)
「杖は、今日中に手に入る?」
「この時間、薬局は閉まっていて、明日になります。」まぁ、期待はしていなかったけれど

診断書をドクターに書いてもらうことを忘れていた彼女。
例の受付女性に恐る恐る「実は~。」とお願いすると、まったくいやな顔をせず、「待っててね。」
これまた彼女は、美しい日本の切手を差し出していた。

タクシーでホテルに着いたのが、21:30ごろ。
レセプションの長身で優しい若い男性は、ぼくをみるやいなや、すべてを理解し、部屋まで送ってくれる。

ここからが大問題。もう時間は21:30なのだ。

彼に「食べ物を買える所があるか?」と彼女が聞くと
「この時間では、まず無理だ。カフェでの可能性は否定しないけれど、極めて低い。」
また、ワインを手に入れることの可能性は?と聞くと
「当ホテルには、今は開いていないが、バーがある。」
「シャンパンは?」
「ブルーノ・パイヤールなら、すべての銘柄を用意できる。」

彼女は、「行ってくる。」といってカテドラル周辺のカフェに突撃する。
本来なら、「夜遅いので、もう行くな。」と止めるところだが、
ハイになった彼女を止めることは出来なかった。

【さて、カフェに行くと「持ち帰り」はないという。ただ、店のスタッフも客も優しい。「あそこの店で聞いてみたら?」と...教えてくれる。
結局4件目。
「夫が歩けなくてホテルで私が食べ物を持って帰るのを待っているの。」と懇願すると、スタッフ同士、相談している。
「シュークルートなら、持ち帰りように包んであげる。」
これは、後で考えると、無理な話だった。飲食店で提供する料理と、持ち帰りの食べ物は、税法上で区別されている。サービスの問題ではないのだ。】

ホテルで待っているぼくに、電話がかかる。
「4件目で何とか食料をゲット。もう少し待っててね。」とやけに明るい。
まぁ、そうだろう「待っている間、1664ビールを飲んでいるの。」である。

帰ってきた彼女の手には、凄い量の「シュークルート」、パンとマスタード。

すぐ、ブルーノ・パイヤールとベルジュラックの赤ワインが運ばれてきた。
最初、赤用のグラスだけだったが、レセプションの男性は、シャンパーニュグラスが必要でしょうと、わざわざ部屋まで持ってきてくれた。

かくして、素晴らしい夕食が始まった。
彼女は、「明細にビール代が入っていないし、安すぎる。」と言ったらしいが、「待たせたので、サービスよ。」だって。なんて優しいのか。

「お皿は?」
「自由にして。」

これが、その夕食である。

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Last updated  2009年07月18日 19時56分02秒
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