Selfishly

Selfishly

limitation4



【注】!!

このお話では、ロイは非道で鬼畜な人間となっております。
  part2からは、エド子のキャラも歪んでおります。(平身低頭!)

  その点を苦手とする方は、読まずにいてもらえますように。
  ハッピーエンドでも、楽しいお話でもないと思われます。
  それでもお読みになられる方は、ご自身の判断でご了承頂き
  下記へスクロールしてお進みください。
   *性描写もややございますので、未成年者の閲覧はお止め頂けますように。m(__)m 






























・・・ 喩え、外道と堕ち果てても P3・・・




広すぎる事もなく、狭すぎる事も無い。二人ならゆったりと寛げる居間は、
穏やかな色調で造られた居心地の良い空間を提供してくれている。

なのに・・・。

先ほどから一言も口を利かず、無表情の仮面を付けた相手は淡々と口元にお茶を運んでいる。
話したい事など何もなかったが、――― 聞きたいことなら山ほどあった。
それが聞けないのは、目の前の相手が発しているオーラの所為だろう。
不機嫌、不愉快を軽く通り越しているその気配は、下手をしたら嫌悪、憎悪に近いのでは
ないだろうか。

――― 確かに、約束を守らなかった自分が悪いのだが・・・。

空間に不釣合いな空気に辟易しつつも、青年は我慢しつつ向かい合わせて座っていた。

飲み終わったカップを手放すと、相手は所在無げに視線を空に向けている。
その横顔を盗みしつつ、先ほどの二人のやりとりを思い返していた。



*****

「兎に角、中に入ろうぜ。あんたのたん瘤も冷やした方がいいしさ―」
その少女の申し出に、叱咤のような声が上がる。
「エド!!」
駄目だと云う様に名を呼ぶ男に、エドと呼ばれた少女は不思議そうに見返している。
「ロイ? ・・・どうしたんだよ」
彼の不機嫌の理由が判らないと云うように小首を傾げて見せる少女に、男は溜息を吐き出しつつ
言葉を足した。
「・・・入れる必要はない。たかが、たん瘤程度の傷だ。
 それに屋敷に帰れば、家の者達が手当てをする、必要ならな」
暗に構うなと告げている男に、エドは酷くつまらなさそうな表情を浮かべて。
「屋敷でも良いなら、別にここでも構わないだろ。
 それに・・・、折角見つけた人間なんだから、暇つぶしに付き合ってもらいたいし。

 なぁ、あんた。まだ暫くあそこに居るのか?」
急に話しかけられ戸惑いつつも「ああ」と小さく頷いて返すと、少女のの表情が明るく
嬉気になる。
「じゃあ、暫くは相手してくれるよな? 次回からは、俺もちゃんと手加減するし」
地面に座り込んだままの自分を覗き込むようして話しかけてくる少女の体が、
ふいに後ろへと戻された。

「エドワード!!」
少女の腰に手を回し強引に傍に引き寄せた男は、先ほどの声よりも険しく彼女の名を呼ぶ。

――― エドワード・・・? 何故、男名なのだろう。

ふとそんな疑問が頭に浮かんできつつも、目の前の二人のやりとりを呆然と見つめていた。


「ここには私しか入れない。だから相手は彼には無理だ」
彼女の言葉を撤回させようと説得にかかる男を、エドは不満顔で言い返している。
「あんたが入れてやれるようにすれば良いことだろ?
 折角目覚めても、ずっと一人なんて退屈で仕方ないんだよ。
 まだ俺が出れないってんなら、来てもらうしかないじゃないか」
口を尖らせて拗ねたように男に訴えている様子は、媚る事など知らぬ少女のままだ。
「―― 寂しい思いをさせているのは可哀想だが・・・。
 しかし、術者の私以外を組み込むことは―」
「出来るんだよな」
男の言葉を最後まで言わせずに、はっきりと断言した。
「エド・・・」
この男でもこんな表情をするのだ・・・。内心で驚きつつ、目の前の少女に言い負かされて
途方にくれている壮年の男性の表情を眺めた。
「術者だけが入れる陣を組めるなら、その逆も然り・・・だろ?
 あんたは陣を解除して入ってくるわけじゃないから、陣のどこかに自分のデーターを
 組み込んでるんだ。―― なら、同様にこいつのデーターを組み込んでやれば、
 ここに出入りできるようになる。そうだろ?」
出来ないとは言わせないぞと云うように、挑戦的な光を目に閃かしている。
「確かに・・・出来ないとは云わないが。――― してやりたいとは思わない」
誤魔化すことを断念した男は、あっさりと態度を変えて開き直ってくる。
「え~っ! 何でぇ?」
大ブーイングを上げる少女に、男は顔を顰めたまま首を横に振る。
「いやだ」「やりたくない」を繰り返す男に、最初はお願いの形で強請っていた少女が、
痺れを切らすまでは短かった。

「ああそうかよ! あんたがそんだけ頭が固い、心の狭い奴だってんなら、もういい!
 俺は俺で勝手にさせてもらう!」
そう啖呵を切ると、スタスタと男二人を置いて家の方へと足を運んでいく。
「エドワード、待ちなさい! 勝手にって、・・・一体、何をする気だ」
慌てて追いすがる男に、少女は澄ました表情で見上げている。
「さぁ~てどうすっかなぁ? また珠の中に戻っても良いし。
 けど・・・その場合、もう出てこないかもな。
 ――― それか、自分で試してみるのも良いかもな」
そう告げながら、視線を陣の方へと流して見せる。
「なっ!?」
絶句している男に少女は詰め寄るかのように顎をしゃくって、返答を要求している。
今度は先ほどとは違って、男が何とか説得を試みようとするのだが、
少女は首を縦には振ろうとはしなかった。


結局、暫くの問答の後で。
「・・・・・・・・仕方が無い。が、今回限りだぞ?」
と肩を落として渋々少女の願いを認めたのだった。

男の気が変わらない内にと、少女が二人を急かして陣に青年の血印を組み込ましてゆく。
試してみろと言ってくる少女の催促に、恐る恐る足を踏み出してみるが
確かに最初の時のように警告で火花が上がる事もなく、何事もなく歩いて通れるようになっていた。
そんな事を試している間も、エドワードの上機嫌とは正反対に男の機嫌は
一向に浮上する様子を見せなかったのだった。




*****

結局、家に入れるにも一悶着があったが、――― どうやら、どこまでもこの少女には
男は甘いらしいと云う事が判った。

汗を流してくると言って、二人にお茶を出すと少女は姿を消した。
重い空気の中、まんじりと少女が戻ってくるのを待つしかなく、
何度も心中で嘆息を吐き出しながら、ひたすら耐え待ち続ける。

内心の嘆息が思わず喉から出そうになって、慌てて止めるのに意識を戻すと、
じっと眇めた目で自分を見つめている相手に気が付いた。
何か?と問いかけた方が良いのかと逡巡している間に、相手が口を開くのが先だった。

「――― 間違っても、彼女に手を出そうとは思わないことだ」
直球の牽制の言葉に唖然となる。
「万が一にも彼女がその気になることは無いが、逆は大いに有り得るからな。
 少しでも彼女を損なうようなことがあれば・・・。

 ―――― 君のご家族の方の長年の苦労が水泡に帰すと、胸に刻んでおくように」
「なっ・・・!?」
低く呪詛のように告げられた言葉が、背筋を凍らせてゆく。
男の本気が伝わってくる気配は、思考を凍らせ体を硬直させる。
額に嫌な冷や汗が浮かんできては、米神を伝いそうになる。
そして男の気配は唐突に解きほぐされたのだった。

パタパタと足音と共に近づいてくる気配を感じ、解かれた圧迫感に体が脱力する。

「熱~。ロイ、俺もジュース頂戴」
「エ、エド・・・」
風呂上りの姿を現した少女に、目の前で座っていた男は慌てて立ち上がり、
視線を遮るように立ち塞がってしまうと、少女が肩にかけるようにしていた
バスタオルを取って、少女の肢体を包み隠す。

「そんな格好で出てくるんじゃない!」
慌てて背を押して、入ってきた扉から少女を連れ出していく。
「・・・何で? いつもと同じだぜ?」
男の仰天振りが判らないと問いかけている声だけが聞こえてくる。
「それは今まで二人っきりだったからだ。今後以降、二人の時以外は
 ちゃんと服を着ていなさい。いいね? 絶対に他の者の前で服は脱がないこと!」
「ふ~ん? 判った」
意味は判らないままも、言われた事に逆らう気はないのか、そう返事を返し
二人の気配は遠くなっていく。

残された自分は、驚きと羞恥で真っ赤にさせたまま座り込んでいた。




*****

「で、あんたの名前は?」
「・・・えっ?」

漸く3人で落ち着いて向かい合うと、エドワードはそう訊ねてきた。

「名前だよ、名前。呼ぶ時に名前が判らないと困るだろ?」
「あ、ああ・・・。――― アルブレヒト、だ」
名前を告げる時に躊躇いが浮かぶのはいつもの事だ。
「アルブレヒト・・・長いな。
 んーーーー、じゃあ、アルで良いか?」
そんな自然な流れの会話に、アルブレヒトは頷き、ロイは・・・僅かに口元を強張らしたのだが、
他の二人はその一瞬の彼の変化には気がつかずにいた。
「アル、アルな。・・・何か良いよな。その呼び名の感じ」
何度も声に出して繰り返していたエドワードは、自分が決めた呼び名が酷く気に入ったようだった。
そんな無邪気なエドワードの様子に勇気付けられて、アルブレヒトも聞いてみる。
「・・・じゃあ、―― 君の事は、何と呼んだら良いんだい?」
「俺? 別に、何でも好きなので良いけど」
特に拘りを見せないエドワードに、アルブレヒトは暫し考えて一般的な呼び名を告げてみる。
「じゃあ・・・、エディで?」
エドワードの愛称はエドが多いだろうが、女性の愛称ならエディの方が合うだろう。
そんな風に単純に思っただけなのだが、考えてみればエドワードの男性名の方がおかしいのだ。
「エディ・・・なんか可愛すぎないか、それ」
むーっと腕組して吟味しているエドワードがそんな事を言うものだから、思わず微笑が浮かぶ。
可愛いもなにも、彼女は十分に可愛らしい容姿をしているのに。
「いや・・・、良く似合っていると思うけど」
言葉遣いや態度は、お世辞にも可憐でも丁寧とも言えないが、見た目は正真正銘の美少女なのだ。
・・・見た目とは違う凄さは具えているが。

「そっかぁ?――― まぁ、別にどんな呼び名でもいいけどさ・・・。
 それにしてもアルブレヒト、か。良い名だけど、あんたが付けたのか?」
横で黙り込んで会話に入ってこないロイに、エドワードは話を向けてみる。
「まさか。――― 付けられたのは、確か・・・彼の祖父だったと思うが」
当然のように否定して、記憶を手繰って告げてくる。
「だろうな。あんたがそんな俗な名前付けるって思えないもん」
「『輝かしい血統』・・・か。確かに、私の血が混じって輝かしいもなにも
 あったもんじゃないだろうからな」
皮肉な笑みを口元に浮かべそう返すロイに、エドワードはムッとなって言い返す。
「俺は、別にそう云う意味で言ったんじゃない。あんたなら血筋を誇るよりは、
 その子への祝福を籠めた名前を付けるだろうと思っただけだ」
そう言ってそっぽを向いてエドワードを、ロイは腕を伸ばして彼女を引き寄せる。
済まなかったと謝りながら、その米神に口付けを落とす。
「そうだな・・・、君のような名前を付けてやる親は素敵だろうね」
「『繁栄の守護者』、か。悪くないと思うけど・・・。
 別に・・・俺は、あんただけの守護者で良いさ」
米神からあちらこちらに移る口付けを、くすぐったそうに受けながら返されたエドワードの
言葉に、ロイは嬉しそうに微笑んだ。
「ああ・・・、ぜひとも、ずっとそうであってくれ」
願いの言葉を吐息に混じらせ、エドワードの耳朶へと囁いた。
「んっ・・・・。な、に? ここで、すんの・・・?」
腰に巻かれていた手は、シャツを潜って素肌の手触りを愉しむように這わされている。
呼吸が甘い吐息になってエドワードの唇から零れだすと、ロイはそれを惜しむように
口の端を啄ばんだ。
「――― 私は君が言ったように狭量な男でね。
 君の艶姿を他の奴に見せる気など毛頭ない、さ」
チラリと向かいに座るアルブレヒトに視線を向ける。彼は先ほどから、言葉も出せずに
二人の睦言を凝視している。
「あっ、ん。じゃあ・・・止めちゃうの・・・・・・?」
潤んだ瞳が切なげに揺れているエドワードは、明らかに欲情し始めている。

ガタン ――― と派手な音を立てて立ち上がると、アルブレヒトは一目散に部屋から
飛び出していった。邪魔者は出て行けと、隠すことなく示す二人の傍には
これ以上居るのが耐え切れなくなったからだ。


無我夢中で走り、気がつけば陣を越した森の中へと戻っていた。
荒い息を吐き出しながら傍の木の幹に手を付くと、じんわりと這い上がる熱を
散じるように頭を振った。そして、木に背を預け1つ大きく息を吐き出すと、
ズッズッズッと背を滑り落としてしゃがみこむ。

――― あの程度で・・・。

彼とてそれなりの女性経験を積んできたのだから、あの程度の色事のシーンを目にしたからと
興奮する筈はないのだが、――― 二人の濃密な空気に中てられたとしか言いようの無い
変調をもよおしているのだ。

「っ・・・く、そぉ」
白い肢体がちらつく残像が瞼に浮かべば、腹の奥底に凝る熱がジリジリと焼け付くように
広がっていく。粗雑な言動で色気も素っ気もないような少女が、あの男が触れていくと
見事に変容して姿を変えていく。
そのギャップの大きさが衝撃的過ぎて、脳裏から消えないだけなのだ。
頭ではそう思い込もうとするのに、溜まっていく熱は、どんどんとヒートしていく。
荒い息が熱くなり、治まりそうも無い熱病に浮かされたように思考が霞んでいく。
「んっ・・・あ、あっ・・・」
忙しなくなる呼吸を吐き出しながら、アルブレヒトはただただ熱の本流に呑まれてゆく。





*****

「あっ、んン あ、あ、っう――― あ、あああぁぁぁ―――」

一際高い声で啼き声を靡かせると、エドワードはぐったりとロイの上へと崩れ落ちた。
そんなエドワードをしっかりと抱きとめると、ロイは体勢を入れ替えてソファに
エドワードを横たえてやる。
頬に汗で張り付いた髪を直してやりながら、その額に触れるだけの優しいキスを落とす。
「少しは気が済んだかな、お嬢さん。・・・残念だが時間切れだ」
「ん・・・・・」
小さく声を漏らしたエドワードの体を名残惜しそうに一撫でしながら、ロイはソファの
端に掛けられていたブランケットと取り上げて、エドワードの体に掛けてやる。
そんなロイの動きを、エドワードは余韻の濃い目でぼんやりと見つめている。
「――― 今日は出来るだけ早く戻ってくる。・・・続きはその後に」
薄く開いている唇に、そう囁きながら口付けをすると、ロイは手早く自分の後始末を終えて
乱れていた着衣を直していく。
「ん―――――。また、戻んの・・・?」
「ああ・・・・・残念だが、仕事の途中で立ち寄っただけでね。
 1度戻らねばならない」
眠そうにしているエドワードの顔を覗き込むようにしてそう告げると、了承したように
瞼を閉じるエドワードの顔を眺めている。
早く戻ると約束したからには、さっさと戻った方が良いのだが、
エドワードが眠りに付くまで傍に居てやりたい。
頬に触れて撫でている間に、エドワードはゆっくりと寝息を吐き始めた。
ロイは立ち上がる前にもう1度だけその頬に触れ、静かに立って部屋を立ち去っていく。


送迎の者が痺れを切らせている事だろう。そう思いながら屋敷の方へと歩いていく。

――― 無垢なままの魂。

今のエドワードは見かけ通りの年齢ではない。
そして、逆の意味でも見かけ通りの精神年齢でもない。

人生の半分以上の年月を眠って過ごしていた彼女は、本来の歳の半分程の姿で
止まっている。そして、精神年齢は生まれたばかりの赤子に近い。
知識と頭脳、思考は大人顔負けの癖に、精神面は綺麗にリセットされているのだ。
自分の直感と感情に素直で、妙な遠慮や、気遣い、羞恥もない。
だからこそアルブレヒトの事に関しても、正論にたどり着いて堂々と告げてくるのだ。

偶に昔の記憶や感覚が浮かんでくるそうだが、彼女にとってはそれは知識の1つにしか過ぎず、
それに引きずられることもないのが幸いだった。

彼女は過去の感情を全て無くし、今新たな自分を生きている。
そしてその命を握っているのは、ロイなのだ。――― ロイだけなのだから・・・。

彼女を失う恐怖と喪失感を、ロイがもう抱くことは無くなった。
その意味の大きさに彼女が気づくことは無いかもしれない。
が、それでも良いのだ。
彼女は決して自分を置いて、去ってはいけなくなったのだから・・・。

それこそが至福で、この上ない至高の喜びで唯一の願いなのだ。










  ↓面白かったら、ポチッとな。
拍手



© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: