新しい時代が幕を開けました。以前は女性の間でも決して公に話題にはのぼらなかった閉経(母親からこの事に関してアドバイスや相談を受けた人は少ないと思います)。つい最近まで「生理が終わる頃に生じる人には言えないのぼせやほてりといった経験」と片付けられてきた症状。閉経を説明する科学的文献からは:形態学的に見る萎縮、身体の退化、躁鬱、憂鬱症、などと気の滅入るような言葉が飛び交っていました。しかしここ数年で、閉経に対する考え方に非常に大きな変化が見られてきました。ベビーブーム世代の女性達がこういった年代に突入し始め、積極的にこの症状に取組む姿勢を見せ始めたのもきっかけになっているのでしょう。なぐさめや一辺倒の処方箋だけでは納得しない新しい世代の女性達に背中を押されるようにして、医者(ヘルスプラクショナー)や研究者達は「閉経」について更なる科学的解明や不快な症状を乗り越えるための様々な方法の発見に努力を注ぐよう余儀なくされたのです。 Not An Overnight Sensation(一夜にして起こるものではない閉経) 閉経は女性の生涯の中で決してシンプルで型通りのイベントに終わるものではないことが今はっきりと認識されてきました。「人生の変遷期」は一夜にして訪れるものではないのです。最後の月経を迎えるのが平均で51歳と言われていますが、女性が閉経という身体の大きな変化を遂げるまでには、40代前半から少しずつその準備が行われてきているのです。
最後の卵子が排出される展開的時期を「閉経周辺期」と言います。一月に放出されるホルモン値が不安定になってくることに伴い、突然不快な症状に悩まされることがあるのです。身体が、加齢に伴うエストロゲン・プロゲステロン・テストステロン値の低下に反応するとはいうものの、女性によっては、最終月経が終わるまでは特に閉経周辺期特有の症状に気が付かないケースもあるようです。1/3の幸運な女性が、閉経期の不快な症状をほとんどまたは全く感じないまま更年期を迎えていることも判明しています。 Hormones: How They Work(ホルモン:そのはたらき) 生殖ホルモンはステロイド・ホルモンに属し、脳、骨、循環器系、消化器系、肝臓、腎臓、神経系、筋肉、生殖器、免疫機能などに作用しています。このホルモンは、身体の病気:特に癌や骨粗しょう症、心臓病、呼吸器・脳・循環器の疾患に対する抵抗力を向上させる上で大切な役割を果たしています。 Hormonal Events(ホルモン作用) John R. Lee, Jesse Hanley, Virginia Hopkins医師らの著書:『What Your Doctor May NOT Tell You About Premenopause (Warner Books出版)(閉経周辺期に関して医師が教えてくれないこと)』の中で指摘されていることは以下のようになっています:
1940年代、医師らが結論に達したことは:不快な症状がエストロゲン値の低下によるものである場合(プロゲステロンやテストステロンとの相互作用は当時、未だ考えられていませんでした)、このホルモンを補充すれば症状が和らぐのでは、というものでした。しかし、未検査のエストロゲンを安易に補充したため、子宮癌などの発症率が増加したことをきっかけに、医師らは補充治療に急いでプロゲステロンを加え、そういった副作用の問題は解決したかに見えました。しかし結局、この治療の流れを見ていた女性達は「ホルモン補充療法(HRT)」というものに疑いの目を向けるようになりました。特に(5年から10年の)長期ホルモン補充療法が乳癌や子宮内膜の癌などの発生率を高めるとの報告がされたときには、論争が巻き起こったほどでした。(参考資料:Journal of Clinical Pharmacology 37, 1997)。
結果:女性達は医者に対し、一線を引いてしまうこととなったのです。 Resolving The Impasse(難局を乗り越えて) ホルモン補充療法(HRT)が、ホルモン値が低下することに起因する多くの疾患:心臓病、骨粗しょう症、アルツハイマー、結腸癌、糖尿病などを予防することが確認されていることから、多くの医師達は月経が終了した女性にこの治療を受けることを勧めています。ホルモン補充療法は閉経期の不快な症状も和らげます。しかし、HRT療法を受ける女性は半分ほどに留まっており、受けた者も1年未満でその治療を止めているケースがほとんどです。中にはこの治療の持つメディカルリスクに無関心な方もいますが、多くの女性の場合、この治療に関心はあるものの、その安全性に未だ疑問を感じているのが現状のようです。実際、治療を受けた女性の中には、その副作用として;むくみ、頭痛、めまいなどを訴えている方もいます。
多くの研究から、植物ホルモン(フィトエストロゲン)はエストロゲンの持つ発癌作用を抑制し、その間に安全なかたちでホルモン効果を施すことが解りました。また、薬用効果が見られる他の様々なハーブも発見され、それらが身体全体の機能を向上させる作用があることも判明しています。 Help From Herbs(ハーブの助け) 植物学をベースとした臨床試験や科学技術の発展から、大豆や他の植物から生成されたサプリメント(補助剤)が、女性のエストロゲンの形成と機能を再生出来ることが判明しました。また、代替医療界が西洋医療に提言していることとして、女性の閉経期の健康を維持させるにはエストロゲンよりもプロゲステロンの存在に注目することが挙げられています。
天然の大豆またはMexican yam(ヤムイモ)から摂れるプロゲステロンが、薬理学者によりクリームやジェルとして形を変え、エストロゲンの変動から発症する子宮体癌(子宮内膜癌)を予防し、心臓病や骨粗しょう症といった疾病も抑制し、ほてり・のぼせなどの更年期障害も緩和することが報告されています。(参考資料:Fertility and Sterility 69,(多産と不妊)1998: 96-101)
人気のプロゲステロン合成物質を調合された女性の1/4に:テンションが上がった、疲れや不安感が出た、などの症状がみられました;しかし、天然の製品の方が、副作用が少ないことも判明しています。このような“quasi-medicines(準医薬品)”の効能を提唱しているのが、オレゴン州、ポートランドにあるNational Collegeで自然療法学を教える教授で自然療法医でもあるTori Hudson 医師です。彼は、これら準医薬品の効力が、「植物よりは強く、化学薬品よりは弱い」ことを指摘しています。(Hudson医師は著書:『Gynecology and Naturopathic Medicine: A Treatment Manual』(婦人科医学と自然療法医学:治療法)の筆者です)。
サンフランシスコ、カルフォルニア大学のHarry K. Genant博士率いる研究結果によると;大豆やサツマイモなどの植物エストロゲンをカルシウムなどと「少量だけ」服用することで、骨の損傷、性器出血、子宮内膜の萎縮、子宮細胞の異常増殖、など最後には子宮内膜癌を引き起こすことにつながると恐れられていた副作用を抑制出来ることが判明しています。(参考資料:Archives of Internal Medicine 157, 1997: 2609-2615)。
このようなハーブ製品は、天然のプロゲステロンとエストロゲンを含んでいることから、エストリオールまたはエストロンなどのホルモン値が弱く、結果、作用が最も強いDNA破壊因子エストラジオールのはたらきをブロックします。「大豆」は数多くの食品に使用されており、サプリメント(栄養補助剤)とという形からでも摂取可能になっています。この人気食品の大豆の中には、イソフラボンとフィトステロールと呼ばれる物質が含まれており、これらは穏やかなエストロゲン効果を発揮することから、ダメージを受けた膣壁の修復を促すとも言われています。(参考資料:『Journal of the National Cancer Institute』( 癌国立研究所ジャーナル)83, 1991: 541-46)。
Susun Weed 氏の著書:『 Menopausal Years: The Wise Women Way (Ash Tree 出版)(閉経期:賢い女性の過ごし方)』の中では、他にもフィトエストロゲン豊富な植物が紹介されています。ここにそのうちの幾つかをご紹介しましょう:マザーワート、lactobacillus acidophilusなどは膣前庭の乾燥感を緩和し;ホップやイラクサは不眠症を改善;アメリカマンサクやナズナ(ペンペングサ)は止血剤になり;マザーワートとイタリアニンジンボクの果実は神経過敏による気分の激しい変動を抑制;そしてセイヨウタンポポとムラサキツメクサがほてり・のぼせといった症状を緩和します。
Our Need For Supplements(我々に必要なサプリメント) 人生の半ばにさしかかったところで、今までの不摂生や悪い食習慣を打ち返すためにも、「微量栄養素」とも呼ばれる身体にとって少量だけ必要な必須食品成分をきちんと摂るよう心掛けることが必要となってきます。この姿勢が、やがて加齢に伴い発症してくる様々な更年期障害を予防するための第一歩となるのです。
先述のサプリメントに付け加えるものとして:全天然カロチノイド色素の親物質であるリコペン、アルファカロチン、ビタミンC;そして細胞分裂を助け、歯茎・赤血球細胞・胃腸のはたらき・免疫機構の健康を支える葉酸などが必須栄養素として挙げられます。心臓の冠状動脈疾患、血管の障害(狭窄、拡張、硬化など)、発作などに悩まされている患者の30%に葉酸が不足していることも報告されています。葉酸の欠如は心臓病を引き起こす深刻な要因となっていることも確認されています。(参考資料:OB.GYN News, July 15, 1997, page 28)。
65歳以上の女性がビタミンEを余分に摂る事で、乳癌を予防し、免疫力を増強出来るといわれています。(Journal of the American Medical Associationアメリカ医療協会誌277, 1997: 1380-86)。また、ビタミンEは膣の乾燥感や乳房嚢胞病、甲状腺疾患などを緩和するほか、最近では、アルツハイマー病や心臓病も予防することが判明し、専らの話題となっています。更には、頚動脈の壁が肥厚するのを抑制し、動脈硬化の原因となるLDL(悪玉コレステロール)の酸化を止めるのでは、とも言われています。セレニウムもまた、癌の進行を食い止める要素のひとつであることが確認されています。(JAMA 276, 1996: 1957-63)
The Omegas To The Rescue(救い手となるオメガ) 必須脂肪酸は:寒い海で捕れる魚、亜麻の種、サクラソウ(ツキミソウ)やルリヂシャ油、ナッツや種子類、などから摂ることができます。必須脂肪酸は、体内のプロスタグランジンと呼ばれるホルモン調整を行う生化学体の生成を助け、その他筋肉の収縮や血管の拡張、子宮内層部の流出といった生理的はたらきに必要不可欠な成分です。この必須脂肪酸は、ホルモンのバランスに影響を与え、乾燥感やのぼせといった症状を緩和します。
更に、亜麻の種中に含まれる成分は、エストロゲンと同じような作用を成すため、乳癌を撃退出来ることが、トロント大学での実験から明らかになっています。(参考資料:Nutr Cancer 26, 1996: 159-65)。
オメガ-3、オメガ-6といったこれら必須脂肪酸には、放射能による発癌も含め、その他様々な発癌性物質を打ち消す作用があることが多くの研究で実証されました。(Journal of the National Cancer Institute癌国立研究所発行誌,74, 1985: 1145-50)。こういった栄養素の欠如は膨張、凝血、乳房の痛み、のぼせ、子宮の疾患または生理痛そして便秘などを引き起こします。疲れを感じやすかったり、耐久力が落ちたり、肌や髪が乾燥したり、風邪をひきやすくなってきたら、必須脂肪酸(EFA)が欠損してきている注意信号だと思ってください。また、魚油脂とビタミンD、乳糖(ラクトース)を併用することで、カルシウムの吸収を助け、骨の密度を保つことが出来ます。
更に、天然補酵素Aが閉経後の女性のコレステロール値を下げ、脂肪の燃焼を助けます。(参考資料:Med Hyp 1995: 44, 403, 405)。この補酵素Aが、免疫機構を向上することから、女性の感じるストレスを緩和させる主だった役割を担っていると、多くの研究者達は考えているようです。 Still Suffering ?(未だお悩みですか?) 閉経による諸症状に未だお悩みですか?それはあなたが閉経という事実を恐れ、苦しいという錯覚に陥っているからなのです。人生も半ばまで来れば、甲状腺の異常も、様々なストレスも、PMS(月経前症候群)の苦痛も、副腎機能や胃腸の衰弱も、低血糖症も、どの疾患にしてもかなり高い確率で起きてくるようになるのは当然です。そんな時に来る閉経は、そういった身体の具合の悪さをすべてなすり付ける恰好の的なのです。そしてそういうときにこそ、後ろに隠れている本当の病気を見逃してしまいがちになるのです。ですから、中年期にさしかかった女性は、自分の健康のベースラインを見極めるべく、適切な検査を受け、しっかりと健康のチェックをしておきましょう。適切な分析が行われた上でしか、あなたもあなたの主治医も正確な処方と満足のいく治療は見つけられないのです。