マックの文弊録

マックの文弊録

2005.07.31
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多忙という便利な口実にかまけて、暫くブログをサボっていたからでもないけれど、今まで圧伏されていた思いが、何気の無いきっかけでどんどん凝結を始める。

先ほどまで、NHKの「義経」を観ていた。
実にまだるっこしい。苛々する。

「ひよどり越えの逆落とし」で目覚しい戦功を立てた義経は、頼朝によって京都守護職に任ぜられ、朝廷からは「判官」、つまり検非違使の長を賜る。
頼朝は公家社会から武家社会への権力革命を企図しているから、上洛もしない。朝廷の官位などありがたくも無いが、さりとて無視はできない。
京都のことは公家の伝統を無視しない程度の関心しか持たず、弟の義経にその監視させ、ライバル平家の衰勢を見極めつつ、旧勢力を骨抜きにしていこうと思っている。

しかし、義経が従五位下に任ぜられ、程なく昇殿を許されたとの報に接すると、さすがに心穏やかではない。中央の既成権力は、如何に威光が衰えたとはいえ、地方の新興勢力にとっては看過できない脅威である。
だから、身内のはずの義経が何を思って法皇から昇級昇格の受諾するのか、疑心暗鬼を生じる状態になっていく。

一方の義経は、在京の身として権力の狭間に置かれ、公的には日本の君主筋である法皇からの任命を断ることが出来ない。判官にしても従五位下にしても、受けざるを得ずして受けたのであるし、それは鎌倉の兄のためでもある。何れ頼朝はちゃんと理解してくれると信じている。

つまりは、京都で創業した企業が、社運を建て直し新機軸を打ち出すために、鎌倉に本社を移し、外様の社長を迎えた。この社長は、創業の地に自らの同族の一人を業務部長で派遣した。ところが京都に居座る創業者にして代表権を持つ会長は、この新任の業務部長を重用し、あまつさえ取締役にまで任命してしまった。代表取締役の任命だし、京都には有力株主も多い。
義経部長は会長の命を受けざるを得ないのだ。

つまりは、創業会長への忠誠が、兄である鎌倉の実権社長のためになると思い込んで職務に邁進する新任取締役に対するに、内心密かに創業会長の追い落としを目論み、だからこそその本拠地に斥候役若しくは監視役として弟を送り込んだ実権社長の相互の葛藤。
ま、つまりは義経の物語はそんなところに本質がある。

しかし、兄と弟がお互いに相手の真意を測りかねて悶々としているのを見るとじれったい。無論当時は、京都から鎌倉までは連絡を取り合うのに多分二週間ほどかったのだろう。それも通信の手段は書状だ。
文字は、余程の文章の達人の手にかからない限り、感情や本音を伝える力は弱いものである。それに何より、書状なんて一方通行だ。こちらの書状が届くのに二週間。それに対する返事が戻ってくるのに又二週間。
つまりは、最大でも年に十二往復の対話しか実現できないことになる。

若し義経の時代にインターネットが有ったらどうだったろうか?
今日のドラマのシーンであれば、義経と頼朝がインターネットで動画付きの音声チャットをすることになったはずだ。

「兄上、法皇様は従五位下を受けろといやはりますねん。どないします?返事おくれやす。」
「九郎、そりゃお前を自分の権力機構に取り込んで、俺を牽制しようという腹積もりに決まってるよ。」
「そんな気もします。特に今度は昇殿を許す、なんて云わはりますねん。そやけど、僕が源氏として偉ろなることは兄さんのためでもあるんでっしゃろ?」
「ばーか!俺はね、公家なんか屁でも無いんだよ。既得権に安住しているだけの公家から力を奪って、あくまでも民の力をベースにした武家の社会を実現するつもりなんだ。お前が既成権力の中で偉くなっちゃ却ってまずいんだよ。」
「えっ?そんなん知らんかった。ほなら僕はどないしますねん?法皇さんはすぐ傍にいはるし、会長命令には背けませんやろ。兄さん、会長にしっかり云ぅてください。あんじょう頼んまっさ。」
「・・・しかし、どうもあの会長は苦手だしなぁ。」
・・・・・

ね、こんな風に兄弟がインターネット会議をやっていれば、妙な誤解も生じなかったはずなんだが。

そうしたら、その後の日本の歴史は随分違ったものになったでしょうな。

でも、この場合でもやはり「メール送っておきました」じゃ駄目なのだ。やはりリアルで、対話的にやりとりしないと、良い結果にならないことは同じなのだ。





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最終更新日  2005.07.31 22:00:15
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