マックの文弊録

マックの文弊録

2005.08.30
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カテゴリ: 小言こうべえ
◇火曜日:旧暦七月二十六日 丙戌(ひのえ いぬ)
夏の夕雲ー1
日のブログで「ゴミ箱減少現象」について触れたが、もう一つこのところ際立って減ったものがある。ホテルのロビーの椅子だ。

ちょっと前までは、一流の、或は一流のフリをしているホテルのロビーには必ず上質のクッションを張ったゆったりした椅子が何脚も置かれていた。だから、そういうホテルに行けば、泊り客ならざる身でも、一時の休息を心地よく過ごす事が出来た。海外からの客を迎えに行って待っている間も、肘掛付きの椅子に座って待っている内に、次第に「外交モード」に調子を合わせていくことが出来た。会合の待ち合わせに、ホテルのロビーを使う時も、日常の雑事から晴れがましい雰囲気に切り替えられる効用があった。

ところが最近この状況はどんどん様変わりしている。

何よりロビーの椅子自体が少なくなってしまった。
そして、わずかに置かれている椅子自体も総じて「貧しく」なった。

宿西口の、「日本初の高層ホテル」としてひところ騒がれた某私鉄会社系のホテルのロビーの椅子は、背もたれの無いベンチだ。差し渡し1.5メートル四方の「板」が数個繋がれて床に置いてある。それが二列だか三列だか並べてあるだけなのだ。
背もたれがないから、楽にしようとすると、どうしても前かがみに腰掛け、肘を膝に置いて上半身の体重を預ける形になる。この形である一定の時間以上座っているのは中々辛い。時々両手を後ろに突いて背中を反らせ、あらぬところを眺めたりしなければならない。
こういう椅子の「長屋」に背中合わせに座って、猫背になったり、逆に伸びをしている連中が並んでいるのは、美しい眺めとはとてもいえない。
これは、赤坂清水谷近くの私鉄系ホテルも、赤坂見附の別の電鉄系ホテルも同じだ。

有楽町の老舗ホテルは、背もたれ付きの椅子だが、この背もたれは、「背もたれのフリ」をしているに過ぎない。形はやはりベンチで、腰をおろす部分の奥が深くしかもクッションは途中までしかない。だから背もたれに背中を預けようとすれば、両手で体を支えて、お尻を浮かせ奥まで運ばないといけない。ところがそうすると、お尻はクッションの無い、一段低くなった非武装地帯の板の間に落ち込んでしまう。自然足先は床から離れて浮き、「足ぶらぶら状態」になる。立派なホテルのロビーで、「おまる」にはまり込んだ幼児のような格好をさらすのは、紳士淑女としては避けたいところだ。
だから要するに、背もたれもどきがあっても、実質「ベンチ長屋」と変わりはないのだ。
このホテルには中二階があって、ロビーから幅広の階段を上った空間に椅子が置かれてあった。そこが「通」としては、待ち合わせのための中々優れた場所であったのが、ここからも椅子がなくなってしまった。

じて、ホテルのロビーには「座る事を拒否する椅子」しか無くなりつつある。
どこかでホテル組合の寄り合いが開かれ、「そうしよう」と密かに決めた如くである。
ロビーは「タダの場所」だから、お客をなるべく有料の場所に誘導する。そういう意図の下にこういう事が行われているとすれば、どうにも世知辛い。実際どのホテルも、ロビーが狭く「貧しく」なったのに較べて、ラウンジなどの「有料スペース」は拡大し、置かれている調度も立派である。
これは、かつて「失業」していた期間、ヘッドハンターとの打ち合わせの間の空き時間を過ごすために、近場のホテルを歴訪せざるを得なかった際に発見した事実だ。

どのホテルも以前はこうではなかったのだから、この変化の裏に何がしかの経営判断が潜んでいるのは間違いない。
しかし「カネを落とす客しか客ではない」というのは、元来の「一流ホテル」のポリシーと較べて大いに様変わりしたと云わざるを得ない。
最早都会の「フォーラム」や「広場」は、お金を払わない限り手に入らないものになったのだ。

も、無論例外もある。
神谷町の老舗中の老舗として名高いホテルは、未だにちゃんとした調度としての椅子が置いてある。椅子ばかりかテーブルまであって、シェードのついた電気スタントまで置いた席まである。

永田町のホテルも、それほど豪華ではないけれど、一応「座る事を受容する」姿勢の椅子が何脚か置いてある。

天王洲アイルのホテルは、ロビーというほどの広さは無いが、フロントの前に置いてある椅子は、ゆったりして心地よい。

うも、都心の利便性の高いホテルはどんどん「タダの客」には冷淡になっていく一方、公共交通の便が悪い、或は経営改善の余地があるホテルには、未だゆったりした椅子がしつらえてある・・・・そんな気がするのだが、どんなものだろう?





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最終更新日  2005.09.01 12:53:01
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