うたたねの店

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『捨てていく話』 松谷みよ子


松谷みよ子 筑摩書房

松谷みよ子の本は、モモちゃんシリーズでおなじみで小学生の頃よく読んでいた。昨年の11月に講演会があり、身近で見ることができた。彼女をひとことで表すならば・・”おおらかな感性の人”。女性らしさと、同時に気前のよい男気も感じられた。お話がとてもお上手だった。

この本は松谷氏の実生活をつづったもの。表現がたくみで、読んでいるうちに感情移入してしまう。島根県への旅行の前の日に買ったので、列車の中で読んだりした。余りにも切ない気分で、苦しくなって前にすすめなくなったりした。

『捨てていく話』という題名の通り、・・ちょっと暗いのです。
結婚、出産、劇団の創設、離婚、子育て、本の出版。
ご主人とは離婚するのだけれど、でも定期的に会ったりやりとりをしている。
お互いに辛いときは、助け合っている。ご主人には愛人がいたのだけれど、
でも松谷さんへの愛の方がはるかに大きい気がした。
たとえば、心臓の発作が起きてご主人が倒れた。救急車の中で松谷さんの膝の上で横たわっているとき、<もし、このまま死ねたら絶対愛だ>と思ったというエピソード。いざ、離婚の印を押すというときに、<まさか、本当に離婚するみたいじゃないか>と泣いたとか。

松谷さんは、”主人への愛があるとしたらそれは戦友愛だ”と言う。ともに苦しみ、ともに戦った。何だか壮大なドラマ。
私がエッセイにはまるのは、とてもリアルだから。本当にあった話。泣いたり笑ったりした思いが、しっかりと凝縮されている。




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