マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2018.12.29
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カテゴリ: 俳句
~イメージと創作~



 俳句は単純なようで難解。わずか17音の中に自然観や独特の世界が展開し、厳しい約束事もある。また芭蕉につながる伝統を貴ぶ派もあれば、表現方法や詠む対象が異なる現代俳句もある。俳句作り1年生は、諸先輩の句を参考にしつつ頭をひねる日々だ。今日は空想の句を試みたい。



     年の果狂女の旅のはるかなる    

 一人の女が家を出た。夫が他に女をこしらえ、自分の金を盗んだと家庭裁判所に調停を訴えた末のこと。その言を信じ、「あなたとは縁を切った」と父親に宣言した娘。娘は今、母親と新しい家に住み、やもめ男は2度目の暮れを迎えた。連絡もしない息子たちと老後の不安。そんな中でも男は、去った女の安否を思う。高齢化社会の日本では、これもさほど珍しくなくなった光景か。



     筋塀や北山寺町しぐれ過ぐ

 格式が高いお寺の塀に白線が入っていることは知っていたが、それを筋塀(すじべい)と呼ぶことは知らなった。そこで早速その言葉を使って俳句を詠んでみる。仙台で筋塀の寺と言えば、北山付近に何か所かあったはず。その光景を頭に思い浮かべつつ詠んだのが揚句。「時雨」(しぐれ)が冬の季語。実際に見た風景だと良いのだが、年寄りが冬出かけることは滅多にない。



     雪おんな星ふる夜ぞ眠れかし

 雪女は妖怪で実在のものではないため、句に取り上げない派もある由。もちろん私もまだ出会ったことはない。冬の夜、凍てつく寒さの中で「おいでおいで」と人を誘う雪女。だが暖冬続きの昨今では、あまり出番は多くなさそうだ。雪が降らず、星が美しい夜はせめて「仕事」を休み、ぐっすり眠ればと、お節介な爺さんは思うのだ。



     冬ざれや縁切寺の塀の穴

 「駆け込み寺」と言うのがある。別名「縁切寺」。住職は尼僧で、ここに逃げ込んだ女性は、一定期間後に世俗の婚姻関係が解消されたと言う。女性の人権が軽視された時代の特例だった。だが女を守るべき寺の塀にも穴が開いて、そこから世俗の風が入って来るという想定。人間は一人では生きて行けない動物。句はそれをユーモラスに描いて見たが、今や女性と靴下の強さは格別。時代は変わった。



     鳴れよかし旗巻峠の虎落笛

 虎落笛(もがりぶえ)は切った竹などに北風が当たって鳴り響く音で、冬の季語。旗巻(はたまき)峠は宮城県丸森町と福島県相馬市の境にある峠。「鳴れよかし」は鳴ってくださいほどの意味だが、「もがり=殯」には、死者を悼む意もある。私は現地を訪れたことはなく、これは想像上の句だ。

 幕末、この地で官軍と仙台藩の戦いがあった。強力な官軍の大砲に対して、仙台藩の大砲は木製で弾丸は陶製。結果は火を見るよりも明らかで仙台藩は敗走。だが、討ち死にした薩摩の兵士の遺体をねんごろに葬ったと聞く。今でも虎落笛の嫋々たる音色が聞こえて来そうな峠道。今年はあたかも「戊辰戦争」から150年目。その後明治、大正、昭和、平成と続いた御代から、新たな時代を迎える今。





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Last updated  2018.12.29 00:00:27
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