マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2022.03.18
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カテゴリ: 歴史全般
~風土・戦争・歴史・文化~

  ウクライナの麦畑

 青と黄色のウクライナ国旗のような風景。どんな国にも歴史があり、文化があり、言語があり、民族がいる。島国の日本民族はほぼ単一のままで、文化も歴史も長く続いて来た。だが大陸は別。最大のユーラシア大陸では、古来幾つもの民族が移動し、殺し合い、干渉し合い、文化も言語も入り組んでいる。人類の歴史は戦いの歴史とも言えよう。しかしロシアのウクライナ侵攻を、一体どう考えたら良いのだろう。

  美しいウクライナの風景(以下同じ) 

 ロシア人もウクライナ人もスラブ民族だと言う。それにベラルーシを加えたのが東スラブ人で、スロバキアやポーランド人が西スラブ人。そしてかつてのユーゴスラビア周辺の民族を南スラブ人と呼ぶらしい。ベラルーシの「ルーシ」はロシアのこと。ウクライナも「キエフルーシ」と呼んだ時代があった由。スロバキアにもユーゴスラビアにも「スラブ」の意味が含まれている。



 かつて現在のウクライナを中心とした「キエフ大公国」と言う国があった。いわゆるキエフルーシだ。それ以前にはバイキングが定住した時代があり、その前後には東ローマ帝国の一部だったり、オスマントルコと国境を接したり、東から攻めて来たモンゴルに滅ぼされたりもした。キエフ大公国からは後年ロシア帝国が生まれ、革命で倒されてソ連となり、ソ連崩壊後に現在のロシアとなった。




 古来、人は移動し、民族は戦ったり交わったりした。そして宗教も変容した。野蛮なバイキングも遠征先に定着してキリスト教に改宗し、新しい文化を受け入れた。アメリカ大陸を最初に発見したのも彼らだ。殺戮し尽くしたモンゴルによって、民族は分散と定住を繰り返し、ウイグル民族のトルコも東アジアから現在地に長い年月をかけて移動し、20世紀のクリミア戦争では、領土を巡ってロシアと戦った。



 古代エジプト、古代ギリシャに古代ローマ帝国の興亡。アレキサンダーの東征のように世界制覇を目指す者が現れ、その結果文化の交流が行われたりもする。古代ペルシャも版図を広げた。だが産業革命以降の機械化によって、戦争の形も変化して行く。投石器が鉄砲や大砲へ。陸軍のみならず海軍が誕生し、飛行機の発明によって空軍が生まれ、現在では宇宙軍まで存在する。

    キエフ市街(以下同じ)   

 ウクライナは今ロシア軍に侵攻され、連日砲火にさらされている。かつては兄弟同様だった両国。同じスラブ系民族で文法も一緒。ソビエト連邦時代、ウクライナはその一部だった。そしてウクライナ東部のドネツク炭田には、職を求めてたくさんの労働者がロシアやソ連各地からやって来た。ロシア人とウクライナ人の結婚が増え、親戚が両国にもいる人も多い。だが、プーチンの歴史観がその関係を破壊した。



 第二次世界大戦で、ナチスドイツはヨーロッパ各地へ戦線を広げた。ポーランドも侵攻され、ウクライナやロシアも危うかったのだ。クリミア半島のヤルタで戦後処理に関する会談が持たれた。いわゆる「ヤルタ会談」だ。参加したのはイギリスのチャーチル、アメリカのルーズベルト、そしてソ連のスターリン。彼らによって東欧の境界線が決められ、ウクライナはソ連の一員となった。



 しかし独裁者のスターリンは、意図的にウクライナを飢餓に陥れ、数百万人のウクライナ人が餓死したこともあった。豊かなウクライナはソ連の食糧倉庫であり、石炭の産地であり、ロシア人の良き僕だったのだろう。ソ連が崩壊して独立した後も、何度か反ロシア政権が蜂起する度に、抑圧を繰り返して来たロシア。特にロシア人が多い東部2州ではロシアに迎合する動きが出た。それもプーチンの策謀だ。



 ドンバス地域の戦闘を治めるための協議が、2014年の「ミンスク合意」。調停の一員だったドイツのメルケル元首相は、仲が良かったプーチンに甘い処断をしたようで、その後も続いた紛争が今回のウクライナ侵攻の端緒になった。また同年黒海に通じ不凍港があるクリミア半島をウクライナから奪った。プーチンはEUに向かう第6代ゼレンスキー大統領を失職させ、傀儡政権を作るために侵攻した。



 ベラルーシ国内でも合同演習を行った上での侵攻だからたちが悪い。使用したミサイルは250発。当初の戦費は1日2兆円規模だった由。だがウクライナ側の反撃で、多くの兵器と兵士を失った。2日間で陥落するはずの首都キエフは、未だに落ちない。ロシア軍は4人の高級将官が戦死し、ロケット砲弾が尽きた。焦ったロシアの見境のない爆撃で、国外へ脱出したウクライナ人は360万人以上。



 ロシアの国教はギリシャ正教から変化したロシア正教。一方のウクライナはカトリック教からウクライナ正教へ改宗。文法は同じでも語彙が異なるロシア語とウクライナ語。だが双方の国出身の両親を持つ家族も多い。プーチンはその「兄弟国」に戦争を仕掛け、核兵器や化学生物兵器の使用をちらつかせて威嚇する。まさにジェノサイドそのもの。ヒットラーやスターリン並みの独裁者だ。



 美しいウクライナの国土を徹底的に破壊した結果、プーチンは理不尽な戦争を世界から非難され、厳しい経済制裁を受けた。世界は破壊される都市や、逃げ惑う国民を連日目の当たりにしている。休戦交渉が成立する保証はないが、ウクライナ兵の士気は衰えていない。拙い私の歴史認識だが、プーチンの歴史観よりは真っ当なはず。悪魔の所業のような戦争を呪い、ウクライナの平和と栄光を切に祈る。<続く>





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Last updated  2022.03.18 09:16:30
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Re:ウクライナの平和を祈って(17)(03/18)  
Kazu さん
Aさん,おはようございます~
久しぶりに書き込みさせて頂きます。

今日は彼岸の入り日,妻は仕事のためこれから一人で墓参りに行き花を供え
る予定です。昨年までは,他の親戚のお墓参りなので彼岸中に線香のみのお
参りでしたが,今回からはまず我が家がメインとなりました。

ウクライナ情勢,心を痛めていますがどうすることも出来ず,悲惨な記事か
らは目そ背けがちです。 (2022.03.18 08:42:29)

Re[1]:ウクライナの平和を祈って(17)(03/18)  
Kazuさんへ

今日は~!!お元気でしたか。
暫く姿を見せなかったので心配しておりました。
コメントありがとうございます。
とても嬉しく拝見しました。

ところで地震の被害はありませんでしたか。
我が家は物が散乱したくらいで、片付けも
楽でした。

理不尽で悲惨な今回の戦争。攻撃の凄さに
つい目を背けたくなりますよね。
でも私は歴史の生き証人として、連日のように
専門の報道番組を観、より真実に迫ろうと
しています。

ウクライナ「日常生活の紹介」の火にも
侵攻関係記事を含めて、とても長いシリーズに
なりました。
読まれる方もきっと食傷気味で嫌になると
思いつつ、これも老人の務めだと思って
書いていますが、書き手も疲れます。(;^_^A

プーチンがなぜこんな戦争を仕掛けたのか、
そしてなぜ長引いているのか。そんなことにも
触れながら、シリーズを書き続ける予定でいます。

気楽に読んでくださいませ。春のお彼岸の入りの
こと、すっかり頭から抜けていました。仏壇を
持ってない次男の気楽さです。(^_-)-☆ (2022.03.18 09:09:45)

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