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敵は虫である。昆虫型宇宙生物、アラクニド・バグズ。地面を埋め尽くしてやってくる大量のバグスに、地球連邦軍の兵士など一溜まりもない。巨大な蟷螂の刃に蟻のようで蜘蛛のような造詣、有機体というよりは無機物なデザインには、敵と認識した者をただただ殺しまくる残虐性を見る。バグズの尖った刃に、人間は次から次へと串差し状態。ロバート・A・ハインライン原作のSFを、ポール・バーホーベン監督が映像化。エロスとバイオレンスで定評ある監督は、名作SFの原作も眼中の外のようである。映像化する場合、原作の意図も勿論大事であろうが、バーホーベン監督は映像化することによって、全く違う意図を与えてくれている。人種、男女差別はないが、軍歴のある者だけが市民権を得る近未来。大した戦争が勃発していなければ、軍歴は免許のようなものであっただろうが、銀河全体に殖民をはじめていた人類は、先住民にバグスのいるクレンダス星という地雷を踏んだ。全面戦争への突入はバグズの奇襲攻撃から。戦争を始めるのは兵士ではない。だが戦争をするのは兵士なのである。主人公のジョニー・リコも高卒の青年である。りりしい女性陣もまた串刺しにされるには若すぎる。国のために命をかけて戦う姿が、どうのこうのと言うお涙頂戴な演出はない。主義主張を語れるようなテーマ性はないし、B級の誉れ高い戦闘シーンは見せ場にはならない。だが、ウジャウジャやってくる敵が気持ち悪く、残虐で命という概念が全くない。だからこそ、戦争というのはそういう敵の中に、若い命が放りこまれるものだとわかる映像になっているのである。しかも兵士は立派に戦っている。登場人物たちが、幼く等身大の若者だからこそ、まるで、ブラックジョークに見えるのだ。映像化によって描きだされたのは、戦争という、ブラック・ジョーク。話は映画から少しそれるが、映画のレビューをまとめる中で、司馬遼太郎「坂の上の雲」の原作で、203高地の描写をかぶるような気がした。詳しいことを書く力量はないが、旅順攻略の軍の方針と言えば、兵士が機関銃に向かって進んでいくというもの。死体の上に死体が折り重ねるような戦闘だと、書かれていたように記憶している。同作を参考にしたと言われる映画「二百三高地」では、兵士の葛藤もしっかり描かれている。バーホーベン監督が描いた本作品の戦場と、重なるところがあるのではと思うのは穿ちすぎだろうか。バグズとの戦闘に、若者たちは熱を帯びたように進んでいく。国家もまた英雄志願の若者を過大な宣伝で募集する。アメリカ国旗がたなびく場面はブラック・ジョーク的名シーンである。ストーリーはともあれ、バグズに関する造詣や設定は見事である。アメリカ公開は1997年。「2」に続き「3」公開の話も伝わってくる。「エイリアン」「プレデター」などと一線を画し、鮮烈な印象を与える宇宙生命体であろう。そして、希有な反戦映画のひとつ。
2007.08.13
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さあ、身体を前倒しにして、ブラの中にオッパイをしっかり入れて・・男二人が恥じらいながら装着するのはブラジャー。日本の大手下着メーカー「シス」の香港支社ではじめて男性デザイナーが採用された。ブリーフのデザイナーだったのジョニーは、オッパイの代わりに水の入った袋を赤いブラに入れている。工業デザイナーだったウェインは、人工乳房をどんな感触でブルーのブラの中に入れているのか。指導する女性チーフデザイナーのレナの声は二人の様子に笑いをこらえている。あ、人工乳房がはみ出ている。女性だらけの「シス」の香港支社に男性デザイナーが配属されたのは新ブランドを立ち上げて売り上げをあげるため。日本側の命令に香港支部長のサマンサは動揺を隠せないが受け入れるしかない。チーフデザイナーのレナと同じ待遇で、迎え入れたジョニーとウェインだが、まだブラジャーへの理解が少なかった。勝手に作ってきた試作品ブラジャーもつけ心地が悪く、モデルの評判も悪かった。ジョニーもウェインも、毎日職場で美しい女性に囲まれて、悦びに満たされているようでもあるが、仕事に対しては真剣である。レナに指示されて街中を駆けずり回り、いろんなブラジャーを買い集めているときも、またまたレナにふっかけられて、女性用の下着を装着させられる羽目になっても、取り組んでいるときは手を抜かない。女性たちもまた必死である。香港支部長のサマンサは社を代表してプレゼン。レナはファッションショーで自分のイメージを表現したいが制約がありままならない。プライベートでも恋愛は上手くいかず、仕事に対するプライドの高さもあいまって一人キリキリ悩んでいる。そんなときサマンサにはジョニーが、レナはウェインが何気なくフォローする。男性陣は底抜けに明るく前向きである。2001年の香港の作品だが、日本公開は2006年のようである。ややこしい邦題名だが「絶世好Bra」がタイトル。登場人物たちが作ろうした究極のブラがこの映画のタイトルである。そして男性デザイナーが出した結論は、「愛する男性の抱かれている感触」の再現。だが物語はサマンサとジョニー、レナとウェインの恋愛が成就して大団円となる。ラブコメなのである。華やかで美しい女性たちの間で、底抜けに前向きな男二人がジタバタしている。キャストが魅力的だから、物語に大きなクライマックスはいらない。サマンサには演技派カリーナ・ラウ、ブラジャーの理論を語る彼女は美しく気高い。ジジ・リョンの演じるレナは、ヘンな声をだして威張っているが、ショートカットが似合う本当に愛らしい女性である。ラウ・チンワン、ルイス・クー、数々の幅広い作品をこなしている男優は、コメディのタイミングをよく知っているようだ。ブラジャー姿の女性たちに囲まれても、嫌みがなく軽やかである。観ているだけで楽しく小さなエピソードに顔が弛む。誰も彼もが真剣だから仕事の成功にも、恋の成就にも好感度がもてる作品になっている。1997年の香港返還後から、若い女優たちが飛躍的に活躍するようになったそうである。ジジ・リョンもそうだが、『墨攻』でアンディ・ラウの相手役だったファン・ビンビンの名も上がる。香港における歴史的な変革は映画にも大きな変化を与えたのは想像に難くない。この作品にしても日本人女優も出演している上、ラウ・チンワン、カリーナ・ラウは東京でラストシーンを撮っている。アジアだけのテイストに留まらない演出だがアメリカ映画とは違うベクトルで登場人物たちが真面目で一途である。コミカルなシーンでも役者たちは真剣そのもの。男のブラジャー装着や学生服姿のコスプレ、演技派女優も下着姿を見せてくれている。ハチャメチャだが真剣なラブコメなのである。香港映画ではお馴染みの俳優もカメオ出演、そう言えばジャッキーチェンも香港映画にカメオが多い。ジャッキーもアクションも魅力的だがコミカルな姿も楽しいのが彼の持ち味ではある。「恋するブラジャー大作戦(仮)」この作品の楽しさが味わえたことで、映画を観る幅が広がったような気がした。
2007.08.12
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