mikusukeの赤石お散歩日記

mikusukeの赤石お散歩日記

2008年03月10日
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【漆黒の世界と赤石物語】
(Blackworld and Redstonestory)

『外伝』

・第三章 3

俺は急いで廊下を走り続ける、かなりの広さの洋館だな普段帰宅部の俺には辛いぜ。
突き当たりまで来た時、本当に白いウサギが待っていた。俺を確認するように首をこちらに一度向け、階段を駆け下りるウサギの後を追う。
その時だった、駆け抜ける廊下の窓ガラスが強烈なインパクトを伴って砕け散った。
そして、俺に現在起きている非常識な現実を実感させた。
窓からゆっくりと身を乗り出したその生き物は、ベタなホラー映画で見かける動く死体。
簡単に言うとゾンビだな。25周年記念にビデオクリップの取り直しに来たエキストラでは無さそうだ。
何故かって?あの血走った目を見りゃ判る。ありゃ俺を殺そうとしてる目だな。
ところで、ゾンビなのに血走る目って可笑しいな。
そんな感想よりもとにかく逃げなくちゃな、まだ俺は勧誘にのるつもりはないからな。
幸いゾンビ達は動きは遅い、その辺は俺たちの世界のレギュレーションに沿っているらしい。
でも、そこはそれ仲間が多いのはやはり俺の知っている通りだった。まったく嫌になる。
全力でゾンビの群れを駆け抜ける俺とウサギ。
くそ、こうなったら俺の隠し必殺技、デビルライトハリケーンで一気に抜き去るか等と持ってもいない技を空想しても、なんともならんな。
なんせ、今の俺には武器一つないしな、サバイバルナイフの一つでもあればゾンビの群れ等G細胞で強化された怪物をも倒す俺のナイフさばきでどうにでもなろうものだが・・・・・・
いい加減妄想はやめよう、無限マグナムがあったとしても現実の俺には逃げることしか出来ない。
む、待てよ。さっき里場のポケットから取り出した包み、布に包まれているが形状から想像出来るぞ。これは、虎の彫刻でもあればその片目にぴったりはまりそうな手触りをしている、本当にコルトパイソンとかが隠されてるんじゃないのか?
そんな事を考えながら走っていたのがいけなかったのだろう、いきなり天井から落ちてきた怪物ぶつかり尻餅をついてしまった。勢いよくぶつかって尻餅をついたのが幸いしたのか、怪物の鋭い爪は俺の頭の真上を通り過ぎ髪の毛が景気良く切れる感覚があった。
しかし、この体勢では次の攻撃はかわせんな、辞世の句を考えてなかったな少々後悔していると、怪物の動きが止まる。良く見ると数匹のウサギが怪物にまとわりつくように動きを止めている。

「さぁ今のうちです、早く起き上がって」

声の主に速くどころか逆に硬直する俺を真剣な眼差しが刺す。はたしてその持ち主は魔法少女のようなステッキを振る、美少女サマクであった。
勇敢とは程遠い童顔な顔が真剣な表情でステッキを振る、コンマ5秒程で我に帰った俺はは立ち上がりサマクさんの後ろに回った。

「敵はまだ沢山います、でも彼らはこの屋敷の中でしか活動で出来ないはずです。ですから早く」

状況が飲み込めないが、今はこの屋敷から逃げる事に専念すればこの悪夢から逃れられるんだな。俺は怪物と奮戦するサマクさんを置いてはいけないと一瞬、躊躇したが彼女の無言の逃げろとの指示に頷き、振り返り全力でその場を逃げ去った。

どれだけ走ったのか、無闇に広い屋敷を怨みつつようやく屋敷の門を飛び越えた時、息をを整えていると背後から天使の吐息かと勘違いするようなささやきが俺の耳元に届いた。

「だ、だいじょうぶですか?」

声の主はこんな命の危険に晒された後でもとぼけた口調で俺を気遣う。
もう少し緊張感が欲しい場面ですが、逆にほっとしますよ。

外伝サマク1

「ご、ごめんなさい。私もっと早く助けにこれたら良かった」
「いえ、こうして安全な場所についたのだから」

本当に申し訳なさそうな表情でこちらを見る瞳には涙が浮かぶ。これが嘘泣きならもう女は信じられんな。まぁ世の中の最強スキルは可愛い女性の嘘泣きであることには清き一票は投票するけどな。

「それより、何故サマクさんがここに?」
「私の使命は貴方を守ることなのです」
「俺を?」
「貴方は貴重なY遺伝子の保持者なのです」

なんじゃそれ?悪いが、俺に特殊属性はまったくもってないぞ。部屋にあるお年玉を貯めた豚さん貯金箱を賭けてもいい。但し、毎年のように1月の中旬には殆ど残ってないがな。

油断があった、それは俺だけじゃなくサマクさんもそうだった。
俺が異変に気づいたのはサマクさんの表情が強張った3秒遅れだった。
俺の周りの空気が氷結するような皮膚感覚に襲われる。
慌てて、サマクさんに近寄ろうとするが空気の壁にぶつかり俺は頭を酷く打った。

「・・・・・・空間排他モード、何故この世界に」

サマクさんは訳の解らない言葉を口走りながらオロオロして俺とサマクさんを阻む空気の壁に手のひらを当てる。
そして俺は背後に凍りつくような感覚を感じる。振り向いちゃ駄目だ、間違いなく危険な者がいる。聞いたことのない、どこの動物図鑑にも載っていない生き物の息遣いが聞こえる。しかし、こういう場面に出くわして振り向かないでいられる奴がいるのだろうか、もしいたら俺が宮内庁のエージェントに言って勲一等を貰ってやる。丁度、同級生がそのエージェントだった事を知ったからな。でも請求は俺もあいつも生きてたらにしてくれよな。
ゆっくり振り返った俺は、そこにやはり見るんじゃ無かったと後悔した。
そこには、見たこと無いけどジャイアンとモアより大きい鳥が空中に浮かんでいる。
いや、鳥にしては蝙蝠のような羽を持つ爬虫類と言った方が正解だな。
間違いなく、レッドデータブックに推薦してやりたい生き物だ。
鳥は強烈な超音波のような鳴き声をして鋭い爪を月明かりに光らせる。
俺を食っても美味しくないぞ。
かなりヤバイな、こりゃ間違いなく逃げられそうにないしモチロン戦って勝てる相手でもない。頭の中で変な分泌液が多量に生産され危険を実感させる。もちろん逃げようとするも、背後の見えない空気壁に阻まれる。嫌な汗が背中を伝うのを感じた時だった。

「・・・・・・サマク・・・減点1」

俺が聞き覚えの無い声を背後に聞いたのは鳥が俺を方に向かって飛んでくる最中だった。
つい振り返った俺は、その声を思い出していた。この寒空に透き通るような音色。
空気に溶け込みそうな存在感であるはずなのに、クリスタルのように美しさと透明感を俺に与えるあのフードコートの少女。
不思議体験の始まりを告げたあの「手紙の少女」が音も無く俺の背後に舞い降りた。
彼女で間違いないことは相変わらずキャンディーを舐めている事でも判断できる。
そしてゆっくりと俺の背後の空気壁に手を当てる。
黒い宝石のような瞳には何の感情も見せず、瞳だけを一瞬俺の方に向け何かを確認するように、俺と同様に言葉を失い口をパクパク、瞳をパチクリさせるサマクさんに移し再び空気壁に移す。サマクさんの表情は、何故か驚愕より脅えのパーセンテージが多い気もする。

「排他モード解除、コミット完了」

摩訶不思議な声と背後の空気を切り裂く羽音を聞いたのは同時だった。
振り返った先に映った光景は、振り向く前に俺の前に確かにいた筈の少女の後姿。
フード付のコートの小柄な少女の背中から、鈍く光る獣の爪が突き出てそこから赤い液体が流れ落ちる姿だった。

外伝ハチ1

<あとがき>
今回も挿絵付です。
内容も絵もグダグダですねw





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最終更新日  2008年03月10日 12時19分19秒
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