2007/01/02
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テーマ: 海外生活(7808)
カテゴリ: カテゴリ未分類
元旦の空
トリアーの元旦の空。大晦日は生憎の空模様で、寒くはなかったものの時々本降りの雨が降っていました。それでも、午前0時には小やみになり、恒例の花火は町のあちこちで打ち上がり、しばし賑やかな炸裂音が続きました。

明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、今年の目標は数年来遅々として進まない論文を仕上げる事なのですが、そうこうしているうちに新しい研究が発表されたりして、それに目を通しているとまた筆が進まないという状況です(苦笑)。もっとも、そうした新鮮な情報は良い刺激であると同時に、研究をすすめる手助けでもあります。

年末から読んでいるのはエルンスト・シューベルトの遺作となってしまった、中世の食文化(Ernst Schubert, Essen und Trinken im Mittelalter, Darmstadt 2006)。同じテーマの著作や論文集は何冊も出ているのですが、これは切れ味のいい新鮮な切り口を見せていて、面白いです。

例えば、ドイツのビール純粋法。1516年にバイエルンで制定され、1906年にドイツ全国に適用された、「ビールは大麦、ホップと水のみで醸造せねばならない」という法律があります。ドイツのビールメーカーが優れた品質の保証として、時々ラベルにも記されていますが、シューベルトはこれについて二つの指摘をしています。

ひとつは、ビール純粋法は1516年に始まったものではなく、それ以前にも各地で制定されていたこと、なぜなら当時種々の薬草や果実、スパイスを味付けに用いる試みが行われており、中には毒性のある危険な薬草もあった。それを禁止するのが純粋法の目的であり、また、バイエルン以前にも、ロンドンで1484年に水、モルツ、酵母のみを用いてビールを醸造すべきことが定められており、ビール純粋法はドイツが元祖ではないこと。

二つ目は、1516年のビール純粋法はビールの上限価格設定を目的として制定された法律の一部の文言にすぎないこと。「聖ミヒャエルの日(9月29日)から聖ゲオルグの日(4月23日)までは1マス(Mass、飲料の計量単位、バイエルンでは1.069リットル)…ミュンヘンの貨幣で1ペニヒ、聖ゲオルグの日から聖ミヒャエルの日までは2ペニヒを超えてはならない….モルツ以外で醸造したならば、1マスにつき1ペニヒを超えてはならない….今後我々の都市、市場及び農村ではいかなるビールも、大麦、ホップ、水のみで醸造すべきであることを、特に銘記する。」要は、冬季と夏期の価格上限と、大麦、ホップ、水以外に高価な薬草を用いても、それを理由に高値で売ることを排除した訳です(ビール純粋法原文は http://www.weissenseer-reinheitsgebot.de/1516.html 及び http://de.wikipedia.org/wiki/Reinheitsgebot 参照)。

この二点は、僕にとって新鮮な指摘でした。ビール純粋法は17世紀以降忘れ去られていたのが、19世紀に再発見され、ドイツビールの「古き良き伝統」として新たな価値を付与され今日に至ります。ビールのみならず、史料と時代背景をふまえて読み直してみると、新たな姿を見せる歴史的事柄は少なくないことに、シューベルトのこの著作はいくつも指摘しています。





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Last updated  2007/01/03 08:28:42 AM
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Comments

李斯。@ お久しぶりです。 御無沙汰しております。 何時も拝見してい…
pfaelzerwein@ Re:ひさびさのドイツ・その64(04/05) 「ムスカテラー辛口」は私も買おうかと思…
mosel2002 @ Re[1]:ひさびさのドイツ・その54(03/14) pfaelzerweinさん >私の印象では2013年…
pfaelzerwein@ Re:ひさびさのドイツ・その54(03/14) 私の印象では2013年からは上の設備を上手…

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