備忘録その 11. Weingut Vollenweider
その日はトラーベン・トラーバッハ周辺の醸造所をまわることにしていた。昨年 4 月に来た時もそうしたが、移動距離はなるべく短いに越したことはない。

クレメンス・ブッシュの次はトラーベン・トラーバッハのフォレンヴァイダー醸造所だった。町外れの小道にある、意外と大きな 3
階建ての、築 100
年前後と思しき古びた建物で、外壁に昔の醸造所名がうっすらと読み取れた。門の入り口の上にはゴー・ミヨのワインガイドの醸造所の紹介にいつも出ている、葡萄をかかえたバッカスの像があった。オーナー醸造家のダニエル・フォレンヴァイダーがあそこに登ってポーズをとるのは、ちょっとアクロバティックだったことだろう。

フォレンヴァイダー氏はスイス人である。もともと電気設備関係の技師の資格をとるべく勉強していたのだが、エゴン・ミュラーのシャルツホーフベルクに感動して醸造家を目指し、スイスの醸造学校を卒業した。モーゼルの Dr.
ローゼン醸造所で働いていた 1999
年に、 1ha
のヴォルファー・ゴルトグルーベを賃貸して、友人の醸造施設を借りて 2000
年産を醸造、約 3500
本をリリース。最初は故郷スイスをはじめとする国外のワインショップが主な顧客だったこともあり、甘口が生産の約 9
割を占めていたのだが、 2007
年からは辛口の比率が増えて辛口・中辛口が約 6
割甘口 4
割と、辛口の比率を増やしている。

2014
年産はほっそりとして、酸とミネラルがストイックな印象で、まだ閉じているのか、ややそっけなかった。 2005
年に現在の醸造所の建物を購入したときに付属していた単一畑シンボックの、 2012
年産の辛口は、酸がゆったりとしてタンニンの存在感があり、ブルゴーニュの白を思わせる上品さと力強さがあり面白かった。昔のバスケットプレスを使い、 500
~ 1000ℓ
の木樽の古樽で 1
年間熟成したというから、ちょっとゲルノート・コルマンのやり方に似ているかもしれない。

醸造所から葡萄畑までは車で 5
分ほど。ヴォルフ村のゴルドグルーベは耕地整理されていないので、自根の古木が多数残る貴重な畑。フォレンヴァイダーが購入した当時は無名だったこともあり、荒れ果てていたという。粘板岩土壌は、フィロキセラにとって住みにくい環境だそうだ。青色粘板岩に赤色粘板岩が混じる。ゆるやかにカーブするモーゼルが遠くまでみわたせて、心和む景色だった。

一方、車で 2, 3
分ほど下流にあるシンボックの畑は壮絶な畑だった。アーチ型に組み上がった擁壁でテラスをつくり、その上にゴツゴツとして大柄な青色粘板岩と珪岩が、厚く堆積している。こんな粘板岩は、ヴェーレナー・ゾンネンウーアのほかでは見たことがない。急斜面に続く岩壁からは、時々岩石がおちてくることがあるそうで、川縁の車道のガードレールにはその時ぶつかって出来たというへこみが何カ所かあり、危ないことこの上ない。一部の葡萄畑は、岩石を止める鋼鉄のフェンスで道路から遮られていて、車は守られているが、葡萄畑で働いている時に落石があったらひとたまりもないだろう。

個人的には、フォレンヴァイダーはやはり甘口が良いと思う。辛口はミネラル感に富んでほっそりとして繊細で、 90
年代の辛口リースリングみたいな感じがする。でも熟成すると見事に化けるのかもしれない。
(つづく)
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