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2023.07.10
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カテゴリ: 広井勇



  四 片岡家の書生となる

 片岡氏に伴われて上京した広井博士は、直ちに書生として同家に寄寓(きぐう)し、同時に英語、数学、漢学等の私塾に通うことができた。東京へ出て勉強することを念願としていた幼い博士の目的は、その一部が達成せられた。最初博士は非常な喜びと意気込とをもって勉学に精進した。

 けれども、博士の感じたこの喜びははかなくも、瞬間的な喜悦に過ぎなかった。(略)

この頃、片岡家には博士より一つ二つ年上の令息があった。博士はその令息のために、時には勉強の相手を勤め、また時には遊びの相手になっていたが、非常な腕白坊主で、乱暴な遊びを強(し)い、無理な命令を下して博士を困らせていた。けれども博士が最も悲しく思った事は、寸陰を惜しむ勉学の時間の大部分を少年のために奪われてしまうことであった。しかしこれはどうする事もできなかった。一方は。多くの女中下男にかしづかれる大家の令息であり、一方は、よし主人の親戚に当るとはいえ、単なる食客に過ぎないのである。ある時、令息のために、博士は掌(てのひら)に傷つけられた事もあった。けれども、密かに博士に同情を寄せていた下男すら、これを主人に訴えて、博士をその暴威から救おうとはしなかった。この傷あとは修生ついに消えないで 残っていたが、博士はその当時もただかりそめの戯れ事で自ら傷いたものと言い、決してその令息の仕業と言った事がなかった。あまりにその少年に悩まされた博士は、時には納屋に入って三日も出て来ない事すらあった。三日間も食を断って、ひたすらに勉学の時を守るのであった。(略)

遂に博士は日夜怪しき高熱に悩まされるに至った。医者は診察の結果、腸チブスと診断した。けれども、医術は極めて幼稚の時代であり、かつ食客の身であった。病は恐るべき腸チブスであった。独り寂しく病床に伸吟する十一歳の少年であった。博士は絶えず母を呼び、勉学のことを譫言(うわごと)に口走っていた。

 この頃、片岡家に出入りした外国商人にキンドンという人があった。博士は、片岡家の玄関番であったから、自然キンドン氏とはよく顔を合わせ、やがて親しい言葉を交わす間となった。キンドン氏は乱暴者の多い当事にあって、博士の真面目で鷹揚な態度を深く愛した。ある日、彼が片岡家を訪ねた時、そこに博士が顔を見せないので不審に思い、邸(やしき)のものに尋ね、始めて博士が腸チブスにかかって重態との事を知った。キンドン氏は非常に驚いた。

 彼は早速博士を自宅に引き取り、病める小さな友人のために夫婦して神に祈るのであった。キンドン氏夫妻は進歩せる西洋の医術にのっとり、専門の医者にもまさる手当を施した。親身も及ばぬほど、親切をもって薬を与え、あるいはスープその他の滋養物を与える等、その介抱は真に到れり尽くせるものであった。これが少年を感激せしめないでおかれようか。それは人間的な愛より、もっと神に近いものと感ぜられたであろう。博士はそこに崇高な何ものかを感ぜずにはいられなかった。キンドン氏の献身的な介抱によって、博士は日に日に快方に向かった。ついに完全に病魔の手から逃れることができたのである。キンドン夫妻の厚い情は、博士の肉体を救ったばかりでなく、その精神に絶大な力を与えた。

〔博士は晩年までキンドン氏の眠る横浜の墓地へ独り花を携えて墓参した。〕

 博士はまず官費の学校に入学してその独立不羈(ふき)の道を求めんとし、明治七年三月、博士は勃々たる意気をもって、東京外国語学校の英語科下等第六級に入学した。語学に対する博士の素質は、既にこの頃から一頭地を抜いていたのであろう。この学校の入学試験は、かなり難しいものであったが、わずか十三歳の博士は優秀な成績で及第したのである。博士はここで宮部金吾氏等と知り合いになった。

この英語科は、この年の十二月独立して東京英語学校となったが、博士は間もなく工部学校の予科へ転じた。博士が、工学界に転じた動機も恐らくこの時代ではなかったろうか。それは祖母によって語られた、野中兼山の物語もまたその遠因をなしていた事ではあろう。








💛山形市のI・Mさんから頂いたお手紙の中に

「この3冊の本、誠に敬意を表する働きで、多くの信仰の友、友人に広めていきたい」 とあった。

感銘を受けて、7月7日七夕の夜、保存用にとって秘蔵していた 「ボーイズ・ビー・アンビシャス」シリーズの本を第1集から第4集まで 1冊ずつ送った。

山形県立図書館に「ボーイズ・ビー・アンビシャス」シリーズの本は全5巻が蔵書となっている。

I・Mさんも 県立図書館でこれらの本を借りて読まれたという。

まことに、どうかこれらの本の一冊一冊が広く「世に働き」ますようにと願う。


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最終更新日  2023.07.10 17:50:07


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