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2019.07.12
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カテゴリ: 地方徘徊
かみさんの一之宮巡りの機会に恵まれ、軽自動車で名古屋から少し離れた静岡県を訪れました
長閑な田舎風景、緑豊かな山々を眺めながら「韮山反射炉」へとやってきました

2015年(平成27)「明治日本の産業革命遺産」として世界文化遺産に登録されましたが、韮山反射炉はそこに含まれる一つ
一度は訪れたい場所でしたが、世界遺産に登録された事で訪れる方は多いだろうと思っていました

韮山ガイダンスセンターから見た韮山反射炉、以外な事に大きな駐車場は空き見学者もまばら
芝生の緑と背後の山々の緑の中にシンボリックなレンガ造りの煙突が建つ

実物を見るのは夫婦共に初めて
思い描いていた煙突の大きさと実物では多少ギャップはあるものの
背景の中に聳える煙突は存在感がある

反射炉へはこのガイダンスセンターで入場券を買い求め、センター内で反射炉の建造を必要とした時代背景や構造、ここから製造されたもの等を展示品やCGで軽く説明を受けます
CG終了後ボランティアガイドに導かれ反射炉へ

韮山反射炉全景
炉の数は4基、其々に煙突がありますが、見る角度によりお化け煙突の様に数が減っていきます
入口からだと2本

炉体から煙突部分先端までの高さは15.7m
反射炉の炉体は伊豆石と呼ばれる凝灰岩を積み上げ、内部は耐火煉瓦で覆われていて
煙突部は耐火煉瓦を積み上げたものだそうな
重厚でシックな外観は想像していたものより意外に小さく感じましたが、間近から見上げると迫力があります
個人的に煙突の外部の鉄の格子(トラス)に強い印象を持っていましたが、これは幾度かの補修工事に伴い
追加された構造体
1908年(明治41)の初回補修時にこの特徴的な格子はなかったそうで、1957年(昭和32)の補修時に崩落防止の目的で追加されたもの
外観はオリジナルから少し変わってかもしれないですが、地震を想定するとやむを得ない事でしょう
個人的に、遠景からみる反射炉にこの格子は見た目でも重要なアクセントになっている気がします

炉体
反射炉は金属(銑鉄)を溶かす炉
石炭などを燃やした熱源を効率良く金属に集中(反射)させるために内部はドーム状なっています

炉体下部の「焚所風入口、灰穴」
燃焼させるためには十分な酸素が必要、ここは上部にある「焚所(燃焼室)」へ自然送風するための空気取り入れ口
物を燃やせば灰が出ます、ここは上部で燃やした石炭の灰を下に落す場所でもあります
ここで出る煙が煙突から吐き出されます、4本の煙突からもくもくと煙りが吐き出されていたのでしょう

余談
近所に昔ながらの薪炊きの風呂を持つ家があり、煙突からは「風呂焚いてるぞ」と狼煙があがっていたものです、そこから出た灰は近隣の畑の土壌を潤してくれていました
住環境が変わりマンションが林立し、新たな住民の通報から何度か消防車もやってきました
やがては狼煙もあがらなくなり昔の情景も消えてしまった
今どきは庭でスモークや庭木を燃やすだけで消防車が飛んでくる
キャンプ場でも焚火が制限される時代・・・・・焚きたい

出湯口
解けた鉄はここから流れ出ます
手前の赤い砂利の部分は鋳台と呼ばれる窪んだ空間がありました、現在は埋められていますが
ここで鋳型に流し込まれ成形され、解けた鉄は形を現します
海から訪れる黒船、幕末の激変する時代に必要とされた「物」に形を変えていきます
それは大砲であったり、弾丸であったりしました
御存知の「お台場」はここから作られた大砲を置く砲台が設けられた事から付いたとものです


反射炉
溶解炉を2基備えたものが2基、4基の溶解炉は同時に稼働させることができ
一つの炉の溶解量は最大2.6トンの能力を誇った様です

4本煙突(3本の絵を撮ったはずだったが)

施設内ではボランティアガイドの方が案内してくれます

鋳型から取り出された「大砲」はそのままでは使えません、なぜなら弾が飛び出す砲身の部分は穴が開いていません
砲身を削り穴を開ける必要があります、それに不可欠なのが動力源

反射炉の近くに流れる韮山古川、ここの水が動力源となります
水は水車を回し水車は回転するエネルギーに置き換え、先端に付けられた刃でくり抜いていく「鑽開」という工程を経ます
現在の旋盤からは考えられない時間を要する工程だったでしょう、そうして砲身がくり抜かれた大砲は
鍛冶屋や仕上げ小屋で最終加工され大砲となっていきます
韮山反射炉は武器製造施設
施設の傍らの小池は「鑽開」の形跡を留めています

そもそも反射炉建造発端は、1853年(嘉永6)のペリー来航に始まります
幕府が外国の脅威を実感する出来事に対し、当時の江戸湾海防の責任者江川英龍に江戸湾台場(砲台)
築造と大砲製造拠点となる反射炉建造を命じます、1853年の事です
当初、下田を建造予定地としていたそうですが、ペリー艦隊の水兵が建造地に侵入した事例から
機密性の観点から建造地を韮山に変更されたようです

1855年(安政2)江川英龍は他界、その任は息子の江川英敏に継がれます
当時の佐賀藩の支援を得るなどして、着工から3年半を要した建造は1857年(安政4)に完成します
建造に携わった英龍とその家族が住んだ「江川邸」は今も保存され、韮山古川の対岸に現存し見学する事も出来ます(ドラマのロケ地として使われる趣のある建物です)

こうした反射炉は山口県萩市にも残っていますが、当時のままの炉体と煙突が残り、実際に稼働したものは「韮山反射炉」だけで、幕府直営反射炉として役割を終えるまでに大砲が鋳造されました
上、青銅製29ドイムモルチール
下、鋳鉄製24ポンドカノン砲

韮山古川の対岸にある江川英龍の像、完成した炉の姿を自ら見る事は出来ませんでしたが
自身の手がけた炉を背景に建っています

像から南の茶畑の高台にある反射炉富士山展望台へ向かい富士を眺めます
当然上り坂です
坂の途中の崖に石段があり、その先に祠を見つけ伺いました

急な石段の先に祠にはニコッと笑って打ち出の小槌持つ大黒天が祀られていました
これは参拝しないわけにはいかない

大黒様に御挨拶している間にもかみさんは展望台を目指す
坂を上る事数分で目の前に茶畑が広がります
そこから振り返ると・・・・・

目の前には世界遺産「富士山」をバックに世界遺産「韮山反射炉」の競演
・・・・・のはずなんだが、二人とも富士には昔から縁がないようで今日も富士はお休み
持っている方には下の様な光景を見る事が出来るはずです

『韮山反射炉』
2015年「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産23カ所のうちの1つとして
世界文化遺産に登録されました
韮山反射炉ガイダンスセンター(韮山反射炉)
住所 / 静岡県伊豆の国市中字鳴滝入268
アクセス / ​ 新東名長泉沼津IC⇒道の駅伊豆の村経由⇒韮山反射炉までは車で約40分

2019/06/21

以下パンフレットと四季折々の反射炉の絵が印刷されたチケット(おやじは桜の時期の反射炉)







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Last updated  2019.07.12 17:26:59
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