穏やかなお正月ですね。
快晴無風・・・・こんなお正月は数年ぶりです。
いつもなら、除雪隊出動の連絡が真夜中に入り、今頃は雪の中を「生活道路確保」のために2往復3往復・・・・
今年は雪も積もってないから、とっても楽なお正月です。
というわけで、つづき、行きますね。
詩織の「司会者」デビューをおえた翌日、私は詩織の誕生日のための料理を作る約束をしたために、私のアパートに詩織を招いた。
招いたというより・・・・約束を果たすためにはわたしのアパートでなければ料理が作れない・・・・・。
私の気持ち次第だ・・・・・私が詩織に手を出しさえしなければ、何事もなく終わるはずだ。
待ち合わせの時間は11時、駅前のスーパーまで詩織が来るはずだった。
私は約束の時間より少し前にスーパーに着いたのだが、詩織はすでに到着していて、私に手を振って迎えた。
「ずいぶん早く着たんだね?」
「今日はお母さんに多摩動物園に行くからって・・・・だから早く出てきちゃったの」
確かに多摩動物園なら早く出なければならなかった。
詩織の右手には浅草に行ったときのようにお弁当のバスケットがあった。
今日のメニューは特に考えていなかったのでスーパーに行ってから考えるつもりだったのだが・・・・
「今日はねえ・・・カレーが食べたいな」
詩織にしてみれば、料理で私に恥をかかせたくなかったのだろう。
カレーなら、誰が作っても先ずはずれはない。
「でも、カレーだけじゃ誕生日みたいじゃないなあ」
「じゃあ、ケーキだけでも買おうよ」
詩織の提案で「カレーの材料」と、近くの洋菓子店で「生クリームのホールケーキ」の小さい奴を買った。
アパートに戻り、ドアの鍵を開けると、先に詩織が部屋に入った。
「今日はなにもしないぞ・・・・何jもできないぞ」というつもりで、私は部屋の窓を皆開けた。
昨日帰ってから掃除をして窓を開けて網戸のままで寝たから、それほど男くささは残っていなかったと思うが、その辺も気になっていた。
「豚コマ」をバターで炒め、「玉ねぎのみじん切り」を加え、色が変わってきたところで水を入れて中火で「にんじん」と「ジャガイモを」煮こんでいく・・・ごく普通のカレーラ イスだった。
突然、詩織が東側の窓を閉じた。
「どうしたんだ?」
「隣のアパートの人、こっちをのぞいてたのよ」
確か隣のアパートは近くの女子大にいっている学生で、私の部屋に女の子がいることが気になったのだろう。
「逆に窓を閉めたら変に思われちゃうよ」
私が窓を開けると、隣の住人と目が会った。
目だけで挨拶をし・・・・私は料理に戻った。
カレーが完成し、食べる前にケーキを出して蝋燭に火をつけた。
蝋燭の数は10本・・・・・1本は10歳分として残りの蝋燭は9本・・・・これで19歳を表現したつもりだった。
ギターを取り出して、コード進行だけで「ハッピーバースディ・トゥユー」を歌った。
「まだ明るいから雰囲気でないね・・・・それの蝋燭の数・・・・10本か」
「あ。ゴメンね・・・・19本の蝋燭をこの小さなケーキに飾るのもなんだから。。。」
説明をして置いたんだけれど、不満だったんだろうか・・・・
「ううん、そうじゃないの・・・・壮太君より先に19歳になっちゃったから・・・・」
そうだった・・・・・子供っぽい詩織だと思っていたが、わたしより一ヶ月前に19歳になったのだ。
「壮太君、年上にもてるもんね」
蝋燭の火を吹き消していたずらっぽく笑った詩織の顔がまぶしかった。
ケーキをいったん片付け、カレーを食べる。
冷蔵庫には青森県産のリンゴジュースがけっこう入っていたので、それで乾杯をし、カレーを食べた。
一人暮らしにはカレーを作るのは簡単だが、大量に作りおきできなかったので、家で作らない。
今日は詩織の分と二人分なので、けっこう多めに作っていた。
詩織の持って来たバスケットの中には「鳥のから揚げ」とか「卵焼き」が入っていて、おかずの種類も豊富だった。
「さっきギター弾いてくれたけど、壮太君、歌も上手いのね・・・・あとで、なんか歌ってくれない?」
コードだけはしっかり覚えていたので、「歌本」さえあればほとんど歌えた。
そして大学に入学したとき、部活をする予定はなかったので、さびしいとき歌でも歌おうと思い「歌本」だけは用意してあった。
食事が終わり、コーヒーを入れ、ケーキを切ろうとしたとき
「お願い、昨日見たとおりにさせて?」
つまり結婚式のケーキ入刀の儀式を行いたいというのである。
雰囲気におされて、詩織と右手を重ね、一緒にケーキをカットした。
隣のアパートの窓が気になったが、そのときは隣も出かけたのか窓は閉まっていた。
コーヒーの準備を詩織がしているとき、私は「歌本」を出してギターのチューニングをしていた。
テーブルの上に「歌本」を広げ、なにを歌おうか探していると、詩織はコーヒーをテーブルに置き私の右側にくっついて座った。
「詩織ちゃん・・・近すぎないか?」
「でも、こうしないと一緒に歌えないから・・・あ、この歌うたえる?」
私が注意した事も聞かないで、最初の曲をリクエストした。
森山良子の「この広い世界いっぱい」・・・・・
一番を私が歌うと、二番を詩織も一緒に歌う・・・わたしは3度音程をずらし、コーラスにしてうたった。
「いいよねえ・・昨日、内藤さんからコーラス部の司会の話が出たけど、二人で司会しながら歌っちゃおうか?」
わたしは2曲目に長谷川きよしの「歩き続けて」をうたった。
「はなしつづけて、このまま~どんな事でも~~・・・その声を聞いていたい~今はそれ~だけ~~~♪」
甘ったるい歌である・・・・・しかし、壮太の声にはちょうど音域もあい一番うたいやすい歌だった。
「この歌知らないなあ?・・・でも壮太君の声にあってるわ!」
詩織の声が耳元でささやかれる・・・・くすぐったいような・・・・しかも横を向けばすぐにでもキスできるような距離・・・・・
もし、急にキスしても、詩織は抵抗しないだろうと思っていたが、もちろんそんなことはしないつもりだった。
しかし、このままでは理性をとどめておく自信もない。
「ちょっと待ってて」
わたしは立ち上がり、冷蔵庫から缶ビールを出しに行った。
「飲むかい?」
詩織に聞くと飲まないというので、私は一本だけもってテーブルの反対側に座った。
「缶ビールの蓋を開け一杯のみ。。。。
「ねえ、20日の詩織ちゃんのほんとの誕生日の日なんだけどさあ」
「うん」
「うちの親父が出てくるんだよ・・・青森からね」
「ええ・・・楽しみにしてたんだけどなあ・・・・無理?」
「いや、・・・・もし詩織ちゃんがよければ、親父と一緒にメシ食おうかと思ってさ」
「紹介してくれるの?」
「いや、オヤジには友達と約束があるから一緒に行くっていってあるだけなんだけどさあ」
「もしよかったら、連れてってください」
「方言丸出しだぞ!」
「この前、上野の駅でお友達との会話聞いてたけど、大丈夫だよ」
こうして、私は20日の日の約束をした。
自分でも、詩織のほうに気持ちが向いてきてるような気がする。
この流れのほうが、自分にとって自然の流れのような気もする。
寿子への思いはどうしたんだ・・・・・そんな私の心の中の声が聞こえたような気がした。
つづく
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