「ザウラブダグ城」の潜入に成功したノブは、とりあえず「ネズミ妖怪」からもらった地図を頭の中で整理して、あちこち探ってみることにしました。
何はともあれ、ザウラブダグが権勢を振るっているという大広間と、執務用の居室の場所を知らなくてはなりません。
大広間は、用事さえあれば誰もが入れる部屋ですから問題はないのですが、居室に関しては常に獰猛な番犬がいて、なかなかそばに近づくことはできません。
そして、助け出さなければならないお姫様の部屋は・・・・・お城の最上階の塔になっていました。
そこへ行くには屋上まで上り、そこから警備兵が詰めている番小屋の前の階段を通ってしかいけないようになっています。
しかし、ノブは魔法使いです。
姿を消し、とりあえずが詰め所の中を見てみますと、その詰め所には階段のセンサー・・・つまり、階段を誰かが登っていくと、その階段にかかる体重で警報装置が作動するようになっていたのです。
しかも、壁にはこの塔に登っていける限られた人たちの体重が記入された表がありました。
上って行けるのは、ザウラブダグ本人と、この塔の掃除を担当する女性3人だけのようです。
しかし、その女性3人の名前の下に、あとふたりの名前が書いてありました。
そしてその名前が黒い線で消されてあるのです。
ノブは透明のままで、警備兵の耳元にそっとつぶやきました。
「おい、この名前の消されている女たちはどうなったんだ?」
警備兵はその問いに答えます。
実はこれも催眠術のような魔法で、警備兵には仲間の誰かと話しているつもりにしかならない魔法なのです。
「お前は知らないのか?・・・・一人は自分の体重を少なく申告してうそをついた罪で死刑だ。・・・・・もうひとりはいつものことだがあの部屋を訪れ、最後は機嫌が悪くなって降りてこられるザウラブダグ様とあの塔の入り口でばったり出会って八つ裂きにされたよ。」
「体重を少なく申告しちゃまずいのか?」
「52キロなのに、49キロって言ったらしいんだ。・・・ってことは何か持ち込んだってことになってね・・・・有無を言わさず死刑さ」
ノブは、空を飛んで塔に近づくことにして、詰め所をあとにしました。
残された警備兵は自分が何で独り言を言ったのかわからず「?????」
その間に、ノブは塔に上り詰めましたたのです。
もちろんドアを開けるわけには行きません。・・・・空を飛んだまま、窓のほうに近づき、中を覗き込みます。
中にはお姫様の部屋らしく、内装は女の子らしい配色になっていましたが、住む人は人形・・・・・
テーブルの上にはピンクのドレスを着た、可愛らしいお人形さんが一体載っていたのです。
すまんこれから仕事だ
「魔法の木」その55
「ザウラブダグ城 」最上階の塔に、ザウラブダグに誘拐されたお姫様が監禁されています。
しかし、お姫様は太陽の魔法使いの手によって、「人形」にされていましたからザウラブダグが求めていた「お姫様との結婚」という最悪の事態は避けられていました。
また、万が一魔法が解けてお姫様が人間に戻ったとしても、「人間と魔法使いは結婚できない」という呪文もかけられていましたから、ザウラブダグがどのようにしようと、お姫様を我が物にすることはできないのです。
しかし、ザウラブダグはそれでもお姫様を自由にしようとはしませんでした。
この塔に軟禁したまま、もう何十年、何百年・・・・お姫様は人形のままこの部屋にいるのです。
ノブは、窓にはめられている鉄格子の枠の隙間から部屋の中に空気のように入っていきました。
部屋は60平米ほどの広さで、窓際に片袖の机が置かれていました。
お人形はその机のうえに置かれていたのです。
きっと毎日この部屋を訪れるザウラブダグが、この机に向かい人形を眺めてはため息をついていることでしょう。
それが納得できるほど可愛らしい人形でした。
「こんなかわいいお姫様なら、ザウラブダグが手放したくない気持ちもわかるなあ」
ノブだって同じ気持ちになりました。
よっぽどこのままこの部屋から連れて帰りたい・・・・そう思ったのですが、ここはザウラブダグ城・・・・簡単にいきそうにはありませんでした。
「いったん、戻ろう」
後ろ髪を引かれる思いでしたが、こんな事で失敗するわけには行きません。
慎重に慎重をきして、お姫様の奪還とザウラブダグの退治をしなくてはなりませんでした。
そう思ったときです。
部屋のドアが・・・「ギーッ」という音とともに開いたのです。
あわててノブは姿を消しました。
中に入ってきたのは、真っ黒な甲冑を見に着けた大きな男でした。
(ザウラブダグに違いない)・・・・そう思いましたが今はどうすることもできません。
相手も魔法使いです。
少しでも動けばすぐに気配を察知されそうなので、ノブは息を殺し部屋の隅でザウラブダグの出て行くのを待たなければなりませんでした。
ザウラブダグは部屋に入ると、すぐに机の前に座り、お姫様の人形をじっと見つめます。
そして、それから語りかけ始めました。
「お前はわたしと約束したではないか・・・・自分の父王の戦争をやめさせてくれるならどんなことでもすると・・・・・だから、私はお前の父を殺し、戦争をやめさせたではないか・・・・・」
まったく自分勝手な話を始めたのです。
それからも何かぶつぶつとつぶやいていました。
30分ほどたったでしょうか・・・・・塔の下のほうからザウラブダグを呼ぶ声が聞こえました。
「ザウラブダグ様!・・・カブトムシの王子が牢獄から逃げ出しました・・・・こちらまでお戻りください!」
「おう・・・今行くから待っておれ」
そう言うと名残惜しそうに人形の前から立ち上がり、ドアを開けて塔から降りて行きました。
(カブトムシの王子が逃げ出した?)
ノブが世話になったカブトムシ王の息子・・・・こちらも助け出すと約束していましたから、ノブもザウラブダグのあとを追って、牢獄に行ってみることにしたのです。
ノブはまた窓の鉄格子の隙間から空気のようになって抜け出し、空中を浮遊したままザウラブダグのあとを追いかけたのです。
そして行きついた先は、地下の牢獄・・・・・・そこは部屋が3箇所に分かれており、最初の部屋には蟻の女王が・・・次の部屋には蜂の女王がいました。
そして最後の部屋・・・・・この部屋だけはからでしたから、きっとカブトムシの王子はこの部屋に監禁されていたのでしょう。
ザウラブダグは顔を真っ赤にして怒っています。
「今日の牢獄の当番は誰じゃ!?」
しかし、それは聞くまでもなく、その場にロープで縛り付けられていた妖怪に違いありません。
その妖怪はブルブル震えていたのでした。
「お前か・・・・ハイエナの妖怪?」
「ザウラブダグ様・・・・申し訳ございません・・・ちゃんと見張っていたのでございますが,なぜか牢獄の鍵がひとりでに開き、カブトムシの王子が私を殴り倒して出て行ったのでございます。」
いいわけをしましたが、言い訳の通じる相手ではありません。
「直ちにこやつを拷問部屋に連れて行き、仲間を白状させい!」
どうやってこの牢獄を抜け出すことができたのか・・・・ノブも不思議でした。
「逃げ出したのはカブトムシの王子だけか?」
「そうです・・・この下の階の動物たちは、数があってます。」
「それではハイエナの妖怪を拷問に掛けろ!・・・死んでも構わん!」
ノブには拷問を見ている余裕はありません。
すぐにでも逃げ出したカブトムシの王子を保護しなければ・・・・もし捕まれば八つ裂きにされるのは目に見えています。
その他にも・・・この下の階にはさらに牢獄があり・・・そこのも他の動物たち(虫の森以外から連れてこられた動物たち)が軟禁されている話しも聞きましたから、助け出さなければならないものの数がさらに増えたのです。
ノブはザウラブダグ城を抜け出しました。
つづく
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