「モテない私がモテる話しをする」と、なぜか皆さんは・・・「あ、実話でしょ?」とおっしゃる。
しかし、私のことをよく御存じの方は・・・「ナイトがモテる?・・・そんなことは絶対に有り得ない。」というに違いない。
事実、恋愛経験もなければ結婚だって見合いだった。
そんな私が「恋愛小説もどき」などを描こうとは、チャンチャラおかしいのである。
いわば、「恋愛がしてみたかった」という妄想で・・・妄想だけで書いていることをご理解いただきたい。
≪Y子のこと・・・その1≫
それは私が大学2年の秋、突如として始まった。
その日は大学での部活・・・「合唱部の定期演奏会」があり、会場だった「Sホール」のロビーは、終演後間もないこともあって、観に来てくれたお客様たちと、興奮冷めやらぬ私たち合唱団員たちであふれ返っていた。
しかし、情けないことに・・・私の場合、応援に来てくれた友人たちは全員・・・私に一言だけ声を掛けると、さっさと帰ってしまった。
それは仕方のないことである。
観客のほとんどが女声団員の友人とか家族であり、そのロビーには男性のお客様たちはかなり少なく・・・私の友人たちも女性の熱気に圧倒されて、その場に留まっていることは出来なかったのであろう。
男性の団員たちもほとんどが楽屋に戻ったが、私は「合唱団員にあるまじき行為」・・・喫煙のために舞台衣装のままロビーのソファーに腰を下ろしてタバコをふかしていた。
当時はまだ、喫煙の自由があった時代である。
と、そこへ・・・後輩のアルト「Y子」が和服姿の上品なご婦人と・・・私のもとへやってきた。
「お母さん、こちらが内藤さん・・・同じ青森出身の・・・」
そう・・・この「Y子」は、今年の新入部員勧誘イヴェントで、「青森の方ですか?私もそうなんです。」と私に近づいてきて入部してきた女の子だった。
聞くと、私の言葉に「青森弁の訛とイントネーション」が感じられたとか・・・自分自身では「完璧な標準語」だと思っていた私には少なからずショックだったが、それでもひとり入部させられた喜びがあって、忘れてはいない娘だった。
「この内藤さんね・・・青森を離れて一人暮らし・・・ね、お母さん・・・うちに来てもらって青森の料理をご馳走してあげましょうよ。」
この「Y子」の発言にびっくり!
たしかに同郷ではあるが、一人暮らしは私だけじゃない・・・合唱団員の半分は、地方から出てきてアパート暮らし・・・みんなひとり暮らしをているのだ。
それに「Y子」とは、普段あまり話しをしたこともない。
もしかしたら、新入生勧誘のあの時以来かもしれない。
「あなた何を言ってるの?内藤さんが困ってらっしゃるじゃありませんか・・・すみません、内藤さん・・・この子はわがままに育ってしまって・・・無理なことを平気で言うんです。」
「いえいえ、とんでもない・・・」
そう返事をしたが、「Y子」の生まれ育った町は「津軽・弘前市」・・・私の故郷、「下北半島」とは環境も文化もまるで違う地域だ。
私の言葉から「青森生まれ」を判断されたこと自体、私は不思議に思っていた。
しかし、「お母さん、ご馳走してあげましょうよ?」という一言が不思議に思えた。
(え?彼女だって一人暮らしじゃないのか?・・・それともお母さんと一緒に暮らしてる?)
その疑問は翌週分かった。
私は翌週の土曜日、彼女の家に行く約束をさせられてしまったのだ。
押しの強い親子・・・そんな感じがした。
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