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さて、「目の周りに塗るだけでそれがじわじわ滲みて目の中のかゆみが取れる」という魔法のような世界初の機序を持った、アレジオン眼瞼クリーム。 こちらが実際の製剤になります。 ノズルがめちゃ細いです。目の周りにちょっとだけ塗るものなので、あまりクリームが多く出過ぎないようにと言う配慮だと思います。日本ナンバーワンの眼科薬メーカーの参天製薬のお薬と言うのは、使いやすいようにいつも隅々まで細やかな配慮がされているんですね。 院長が寝る前に塗ってみました。実際にアレルギー持ちなのですが、次の日の朝の目のかゆみが明らかに少なくなっていました。これはやはり効能が期待できそうです。 このアレジオン眼瞼クリーム、専門的に言うと、瞼(まぶた)の皮膚を通過して目の玉(眼球)と白目(結膜)に届いてかゆみを取ってくれると言うものです。 ただこれを実際に製品化するには極めて高度な製剤技術が必要で、「薬を溶かす技術が世界一」の参天製薬だからこそ実現できた薬だろうと思います。おそらく他の後発メーカーには至難だろうと思いますし、参天製薬のレベルの高さに眼科専門医として改めて感嘆しました。 今のところ、発売は5月下旬と噂されています。実際に世に出る日が楽しみですね。
2024.05.14
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さて今の世の中、目にアレルギー・かゆみを起こす原因と言うのは何かしら年中あるものです。 スギ・ヒノキ・イネ・ブタクサなどの花粉がどの季節でも飛んでいますし、中国からの黄砂や大気汚染物質のPM2.5 も目に症状を引き起こします。 そんなこんなで、最近は「年中かゆみ止めの目薬が欠かせない。」という患者様も増えてきています。ただ目薬を嫌がるお子様や、手が震えてなかなか目薬がちゃんと入らない高齢者の方もたくさんいらっしゃいます。 ここでちょっと余談なのですが、当院では白内障手術前に患者様が目薬を自分で点せるか実演して頂いています。看護師が「目薬、点せますか?」とお聞きすると、ほぼ100%の方が自信満々に「はい、大丈夫です。」とお答えになるのですが、実際にやってもらうとまともに出来ている方は半分もいません。そのくらい目薬を点すというのは難しいことなんですね。(笑) もちろん、点せない方にはその後正しい点眼方法を指導させていただいています。 そんな中、アレジオンLX点眼液と言う現在ナンバーワンのアレルギー点眼剤をクリームにしたものが近日発売されることになりました。なんと1日1回目の周りに塗ればそれが皮膚からジワーっと浸透して目のかゆみを抑えてくれるという、画期的な魔法のようなお薬です。 眼科専門医としての勘から言うと、これは滅茶苦茶売れそうな気がします。実際の製剤のサンプルを戴いたので、次回はその使用経験についてお話ししようと思います。(続く)
2024.05.10
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さて2012年の発売以来ドライアイ治療で大きな役割を果たし続けてきた名薬 ムコスタ点眼液 。 このお薬は元々は胃薬でそれを目薬に仕立てたものなのですが、なかなか溶けない・成分が安定しないという欠点があったようで、開発元の大塚製薬は製剤化に苦しみ抜いていました。そもそもは2010年位に発売予定だった記憶があるのですが、それがどんどんと延期され我々眼科業界の一部では「出る出る詐欺」とまで言われるくらいのお待たせ状況でした。(笑) そうしてようやく2012年に発売となったのですが、普通の点眼瓶(マルチドーズ製剤)で出すことが出来ず、1回きりの使い捨てタイプ(ユニットドーズ製剤)での登場となりました。 このタイプの製剤は毎日使うにはやや不便があるので、当然大塚製薬は製剤をより安定させて普通の点眼瓶タイプでの発売を目指していると2012年からずっと聞いていました。そして我々臨床の第一線に立つ眼科専門医もそれに強く期待していました。 ただ、時が流れても一向に実現せず、複数の情報源によると「チャレンジを続けているが、技術的に極めて困難で難しい。」とのことで、私は「あぁ、これはもう無理なんだろうな。」と半ば諦めていました。。。。 そんな中、今回不意に登場した参天製薬からの後発品(ジェネリック)は、何と平然と普通の点眼瓶タイプとして我々の前にその姿を現しました。! 日本有数の製薬会社である大塚製薬が、「恋焦がれ全力を尽くし10年の歳月をかけても達成できなかった幻の姿」で忽然(こつぜん)と出てきたのです。 中身が白濁液なのは先発品のムコスタ点眼液と一緒ですが、 粒子がより細かくなっているのかな?、点眼後の霧視(むし:霧がかかったようにぼやけて見える症状)がより軽くなっているようにも個人的には思いました。 眼科専門メーカーである参天製薬は元々、「薬を溶かして目薬に仕立て上げる能力」が世界一 と言われています。今回の「レバミピド懸濁性点眼液2%参天」の登場は、その技術力の異次元の高さと巧みさを改めてはっきりと満天下に示す象徴的な事例となりました。 ちなみにここで一言補足しておくと、これは大塚製薬の技術力が低いという事では全くありません。大塚製薬は抗精神病薬「レキサルティ」などでは世界トップクラスの戦闘力を誇る、日本を代表する製薬メーカーだからです。そうではなく、眼科専業で命を賭して日々目薬作りに邁進している参天製薬があまりにも特異的に凄い、というだけのことです。(笑) ま、いずれにせよ、秋になればこの待望の「参天版ムコスタ点眼液」が市場に登場してきます。実際に点眼した感触も非常にいいですし、眼科専門医としての私の直感では馬鹿売れしそうな気がします。実際の発売が今から楽しみですね。♪
2023.07.14
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さて当院は開業して15年が経過しているわけですが、それに伴って経年劣化で色々とボロが出てきております。 そういったものは見つけ次第迅速にメンテナンスを入れているのですが、その一環として先日院内のボイラー設備を新品に交換しました。 今後もあらゆる保守・点検を怠らず、日々最高の状態を保って皆様の診察に当たって参ります。
2024.04.24
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さて最近はスマホやタブレット端末で長時間目を酷使される方が激増しています。そしてその結果として近視の患者様が世界的に急増して大きな問題となっています。また特に受験戦争で幼い頃から眼をハードに使うことの多い東アジア(中国・韓国・日本)では明らかに近視の子供が多いことも知られています。 そしてこの近視の何が怖いかというと、 強度近視(具体的にはマイナス7D以上)になると加齢と共に加速度的に目の病気が増えることが統計的に明らかになっている からです。具体的には加齢黄斑変性や緑内障などです。そしてこれらの病気により世界中で将来の失明者が激増するのではないか?と心配されているのです。 失明は社会や医療経済に及ぼす影響が大きいので、社会全体として近視の進行を抑えることが非常に重要です。 そしてこの近視の進行抑制にはシステマティックレビューや大規模なコホート研究により、「間違いなく有効な方法」が実は既に明らかになっています。知りたいですよね。 それが何かと言うと、、、、、、 1日あたり120分以上の屋外活動をすること なのです。 屋外で太陽の光に当たること(光線曝露)によって近視の発症率が有意に低下することが証明されている んですね。 これはとても簡単で誰でも明日からできるやりかたです。なので、大人も子供もスマホやパソコンばかりせずに毎日2時間は外で活動するといいのです。是非覚えておいてくださいね。
2024.05.17
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さて世の中には、「寝る前には、決して目薬を点してはいけない」 という昔から語り継がれている伝説があります。 今でも特にご高齢の患者様では信じている方が多く、「夜、寝る前に目薬をすると、寝ている間に急死することがあると昔聞いた。あぁ、恐ろしい。絶対に点さない。」と診察室で言われることもあります。 またこれの違うバリエーションでは、目の病気が悪化したときに「もしかして、寝る前に目薬をしたのでそれが悪かったのでしょうか?」と真顔で訊かれることも良くあります。 最初に結論を申し上げると、「寝る5~10分前までに目薬をすれば何の問題もありません。寝る直前だと、涙の流れが停滞することにより成分によっては目への刺激が長引くことがあるので望ましくありません。」 ということになります。 では、一体どうしてこのような不思議な伝説が生まれたのでしょうか? それは、大昔に良く売れていた 「ある目薬」 が引き起こしたことだったのです。 具体的には、収れん・消炎作用がある 「サンチンク点眼液」 です。 この目薬には「硫酸亜鉛」という強い成分が入っていて収れん作用があるので、充血が良く取れる・目が白く見えるということで人気があり、大昔には良く病院で処方されていました。ただ硫酸亜鉛は刺激が持続する可能性があるので、「決して寝る前に点してはいけない。」と添付文書に書かれていたのです。でも当時はとても人気のある目薬だったので、きっと多くの副作用が出たのでしょう。そして上記の伝説が生まれたという事です。 今では硫酸亜鉛の様なリスクのあるお薬を使わなくても、もっと安全に充血を改善することが出来る目薬がたくさん出たので、サンチンクは「過去のお薬」となりました。そしてついに今年2023年、販売中止となりました。 「1つの時代が終わり、伝説だけが残った。」 ということですね。
2023.01.13
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さて今年2023年のおそらく9月以降くらい(現時点ではまだ決まっていない)のことになるのですが、レバミピド懸濁性(けんだくせい)点眼液2%「参天」が発売になります。 これは2012年に大塚製薬から発売されたドライアイ治療薬であるムコスタ点眼液の後発品(ジェネリック)となります。発売後10年以上が経過しすべての特許が切れたので他のメーカーが安価な後発品を出せるようになったんですね。 さて先発品のムコスタ点眼液ですが、作用としては結膜(白目)の杯細胞というものを増加させます。そしてこの杯細胞は「分泌型ムチン」というネバネバ物質を出すので、結果として目の表面で働く分泌型ムチンが増加するということになります。これによって涙の質と量が改善されます。 更にドライアイには炎症が深く関与しているのですが、元々が胃薬であるムコスタには炎症を抑える作用もあります。この「杯細胞の増加&抗炎症作用」の2つの力で、この10年間ドライアイ治療のキープレーヤ的な存在として大活躍してきました。 そして今回、このムコスタ点眼液の後発品がひっそりと参天製薬から発売されることになったのですが、そこには、 我々全眼科医を震撼させる「衝撃の事実」 が隠されていたのでした。。。。(続く)
2023.06.22
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我々人間は外界からの情報の80%を目から手に入れていると言われており、だからこそ目はとても大切なわけですが、その目の真ん中に開いているのが瞳孔です。この瞳孔なんですが、動物によって形が違うことは割りと知られていません。 (眼科セカンドオピニオン 銀海舎 P53より) 我々人間が真ん丸なのは皆様ご存知でしょうが、ヒキガエルはなんとハート型なんですね。 ネットを巡回していると、なんと 「ハート型の瞳孔を持つ猫」 もいました!。 ただ残念ながらこの猫は「エイプリルフール用の合成写真」だったようなのですが(私は本物かと思ってかなり驚いていたのですが)、 実は 人間でも「ハート型の瞳孔」を持つ方が存在する のです。 これはある患者様に検査のために散瞳薬という目薬を入れたところなのですが、上方の虹彩(茶目)の一部がその後ろの水晶体とくっついている関係で、偶然「ハート型」になっています。 患者様に「目がハート型になっていますよ」とこの写真をお見せしたら大変喜んで頂いたのですが、とっても珍しいものが見れて私も嬉しかったです。こういった様々な楽しいことがあるので私は外来診療が大好き なんですね。
2009.08.04
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目の中に入った異物や汚れを洗い流すために使う、洗眼薬という市販薬があります。小林製薬の「アイボン」がその代表的な商品です。 私も使ったことがありますが、アイボンで目を洗うとすっきりして気持ちがいいんですね。目にゴミが入ったとき・花粉症で眼が痒くてどうしようもない時などに大変重宝する良い薬だと思います。 ところがこのアイボン、使っているうちにその爽快感・スッキリ感が癖になってしまい、1日に何十回も使用している 「アイボン中毒、略してボン中」 とでも言えるような状態の方がいるんですね。 先日、「目の調子が悪くてアイボンを1日に20~30回くらいしていたのに、治らないので来た」という患者様が来院されました。目を拝見すると、 黒目(角膜)にたくさんの傷(上の写真で水色に濃く染まっている部分)が入ってしまっています。 これはアイボンのしすぎで、ムチン層という黒目の表面を守って涙の状態を安定させる大事な物質が洗い流されてしまったことによるものです。例えて言うなら、 アカスリし過ぎて皮膚がズル剥けて真っ赤っ赤 というような状態ですね。 また、我々の涙には「ばい菌をやっつける天然成分」が元々入っています。アイボンをしすぎるとこの大切な天然成分も流れてしまい、逆にばい菌への抵抗力が減ってしまうこともあるので注意が必要です。 さて、この患者様にはアイボンを中止し点眼薬を処方したところ、1週間後には、 症状はほぼ改善しました。 アイボンは良いお薬ですが、使いすぎるとこのようにかえって逆効果になることもあります。なので、アイボンを使うときには用法・用量(1日3~6回)を必ず守るようにして下さいね。
2010.05.08
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まだまだ蒸し暑い時期が続きますね。草刈り等の農作業も多く、「目にゴミが入った」などの訴えで受診される患者様が多い季節です。 さて、この目の中なのですが、実に様々な異物が入り込みます。今日はどのようなものが入るのか、いくつかその内の珍しい事例を見て頂きましょう。 ↑ この患者様は以前も紹介したことがありますが、農作業中に田んぼで転んでその時に目にヒルが食い付いてしまいました。非常にすばしっこく逃げるので摘出するのが大変でした。 ↑ この患者様はみかんの摘果作業中に目にゴミが入り「洗っても何してもどうしても取れない」との訴えで受診されました。それもそのはず、蟻が目から振り落とされないように結膜(白目)に足を深く刺してしがみついたまま絶命していました。このありんこも引っぺがすのが大変でした。 ↑ この患者様は、「まぶたの裏で何かがもぞもぞ動いている!」との訴えで来院されました。上まぶたをめくって調べて見ると、ショウジョウバエと思われる2ミリ大の虫が目の中で既に絶命していました。 このように、目の中と言うのは様々な異物が入り込みます。自力ではなかなか取れないもの、取るのが危険なものもあります。ですので、「あれ?何か目にゴミが入ったぞ。」という時には、是非気軽にお近くの眼科専門医を受診するようにしてくださいね。
2012.09.01
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さて当院では新型白内障手術機械のインフィニティを購入したところですが、今日は製造販売元の日本アルコン社のサージカル担当の方にお願いして、A-Vit(エービット:前部硝子体切除)の勉強会をしました。 このA-Vitというのは、白内障手術時に後嚢破損(こうのうはそん)という合併症が起こった場合にトラブル処理に使う機械です。登場頻度は極めて低いのですが、だからこそ事前の入念な準備が必要なんですね。 本物のセットを開けて、インフィニティに接続して使用してみます。 このインフィニティには、アキュラスという硝子体(しょうしたい:目の奥のドロドロした物質)切除用の本格的で切れ味の良いカッターをつなぐことが出来ます。しかも25Gという極めて細い最新型の物が使えます。傷口を拡大せずに小さな切開創から使用できるので患者様の負担も軽いんですね。 ただ、インフィニティで唯一問題なのは、A-Vit使用時に毎回「Vitrectomy Cut I/A」モードを選び直さなくてはならないことです。元々の設定が「Vitrectomy I/A Cut」モードになっており、これを修正できないんですね。 A-Vit時には、必ずCut→I/Aモードを最初に使用する必要があります。I/A→Cutモードを先に使うと網膜はく離などの重い合併症に繋がることがあるので要注意なんですね。 素晴らしいマシンであるインフィニティがこんな単純なおかしな設定を修正できないというのは不思議な気がするのですが、サージカル担当の方によると「アメリカでは専門が別れているので、白内障手術専門医は本当に白内障しかしない。トラブルが発生して追加のA-Vitが必要になるとそのまま硝子体手術専門医に送るシステムになっておりあまりA-Vitを使わないので、多分そのせいで細かい設定に大らかで気にならないのでしょう。」ということでした。 うーんなるほど、機械を通してその国の医療システムが透けて見えると言うことなんですね。とっても勉強になりました。
2011.10.13
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黒目と白目の境目がどんどん白くなってきたのですが大丈夫ですか? と言う質問を患者様から受けることが良くあります。そうですね、大体1ヶ月に数回は聞かれます。今日はこの問題について考えて見ましょう。 まず結論から言うと、これは 老人環(ろうじんかん senile ring) というものです。「お年のせい」ということですね。加齢によって脂質が沈着して黒目の周りが白っぽくなったものですが、通常は視力低下に繋がったりはしないので気にしなくて大丈夫です。 それではこの老人環が一体どのようなものなのかを具体的に一緒に見ておきましょう。 上の写真で水色の矢印で示したのが老人環です。ちょっと分かりにくいので色を塗ってみましょう。 緑色に塗った所が老人環です。黒目(角膜)の隅っこなので視力などには影響はないので心配しなくてもいいんですね。 そしてこの老人環、70歳以上だと大体80%くらいの方に存在します。なので、 目の白髪 くらいに思って頂いて良いと思いますね。
2016.06.21
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さて2010年12月の発売以来、今や日本人の国民病とまで言われる「ドライアイ」の治療を革命的に進歩させた参天製薬の名薬にして、発売7年が経過した今もベストセラー街道をばく進する、ジクアス点眼液。 このジクアス点眼液はその薬理作用上、目の細胞からの水分とムチンという物質の分泌を促進するので、点眼後に涙の量を増やしてくれます。そしてその「うるおい効果」が点眼後約1時間も持続するという、画期的で優れものの目薬です。 その為、「ジクアスが無いともう生活が成り立たない。」と仰られる患者様もたくさんいらっしゃるくらいに大人気のお薬なのですが、ベストセラーで売り上げが多い(2018年3月期で見て、1年間で128億円)が故に、逆にクレームが目立つ点眼薬でもあります。 そしてそのクレームの中で断トツに多いのが、 ジクアスを点眼すると、その後で半透明のネバネバした目やにがたくさん出てきて気持ち悪い というものです。この「ジクアス点眼後に目やにが出る」という患者様からの訴えは非常に多く、私が1週間外来をしていると、最低でも1、2回は聞きます。 これは一体何なのでしょうか? ジクアスの何か危険な副作用なのでしょうか? 今日はこの「ジクアス点眼後の目やに」の正体について、私が眼科専門医として分かりやすく回答しましょう。 先ほども書いたように、ジクアスを点眼すると目の表面からムチンという物質が放出されます。これは納豆の様にネバネバしたものなのですが、この ジクアスの効果で出てきたムチンが、目の表面の常在菌をトラップしてトリモチのように絡めとって「目やに」として出てくる のです。 つまり、 ジクアス点眼後の目やには、お薬が効いている証拠 でもあるということなんですね。 ちなみに、このジクアス点眼後の目やには、無構造でバクテリアなどをトラップしたものであり、炎症細胞はほとんど認められない、いわば無害なものであることが専門的な研究によって既に分かっています。 以上をまとめると、 ジクアス点眼後の目やにに対してはそれほど神経質になる必要はない と思います。ただドライアイ治療ではジクアス以外にも有力な選択肢はたくさんありますので、どうしても不快で気になる場合には違う点眼薬に変えればそれで済む話でもあります。 なので、どうしても気になる方は、是非気軽に次回の外来で私達眼科専門医に相談してくださいね。
2018.06.11
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義眼の方の目の中はどうなっているんですか? と言う質問を患者様から頂きました。 義眼は怪我や病気などで眼球を摘出せざるを得なかったり眼球の中身を取る手術をした場合に、 眼球があるように見せるために入れる扁平な楕円形のもの で合成樹脂で作られています。ほとんどは反対側の元気な目に合わせて色や形を整えて1つ1つオーダーメイドで作ります。 それでは実際に見てみましょう。 非常に綺麗に義眼が入っていますね。 これを外すと、、、、、 中は空洞 になっています。この空洞(結膜嚢:けつまくのう)の状態に合わせて1人1人の患者様にぴったりの義眼を作っているので、パッと見では義眼と分からないことも多いくらいなんですね。
2016.07.15
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お料理、特に揚げ物などをしていて天ぷら油が眼に入りかけたことはありませんか?高温の油が眼に入ったらどうなってしまうのかちょっと心配ですよね。 ところが人間というのは良く出来たもので、現実にはなかなか油が眼に入ることはありません。危険を察知して瞬間的に眼を閉じるので、「眼に入った!」と思っても実際はまぶたに油が当たっただけということが多いんですね。 先日もある患者様が「天ぷら作っていたら揚げ油が目に入った。滅茶苦茶痛いので飛んできた」といって来院されました。私が「意外と本当に眼に油が入ることはないんですけどね。良く診せて頂きましょう」と拝見すると、、、、、、 油、本当に眼に入っていました。ちょっと珍しいですね。上の写真で緑色に丸く変色している部分がそうなのですが、高温の油が当たって黒目(角膜)に炎症・点状の細かな密度の高い傷に加えて一部上皮欠損を起こしています。黒目は非常に敏感な部分なので、このくらいの傷でもかなり強い痛みが出ることがあります。 目薬と眼軟膏を処方して本日再診して頂いたのですが、 ほとんど治っていて私もホッとしました。 このくらいの傷だったらすぐ治るには治る訳ですが、かなり強い痛みが出るのは事実なので、皆様も料理中には油が目に入らないように十分注意してくださいね。
2009.10.19
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さて今日の日記は「ぶどう膜炎の治療のポイント」の続編です。 ぶどう膜炎では、強いステロイド治療よりも「ほどほどの治療」が大切というのが前回のお話でした。そして同時に大切なのは、 きめ細かく診察をし、適切な散瞳薬(さんどうやく:瞳を広げる作用のある目薬)使用で、虹彩(こうさい:茶目のこと)とその後ろの水晶体が癒着してくっついてしまう事を防ぐことであると強調されていました。 またぶどう膜炎が長引いて眼圧(目の血圧)が上がると、2次的な続発緑内障という状態になることがあるのですが、 その場合、隅角(ぐうかく:目の中の水の出口のこと)をしっかり見て、それぞれの状態に合わせた治療が必要であることが説明されました。 またやむを得ず眼圧を下げる手術が必要になった場合にはトラベクトロミー(繊維柱帯切開術:せんいちゅうたいという目の中を流れている水の排水溝の切開術)、トラベクレクトミー(繊維柱帯切除術:同じ場所を切開するのではなく一部切り取る手術。眼圧を下げる効果は高いが同時に合併症も多い。)という手術があるのですが、この中のトラベクロトミーに関して、 北海道大学の陳(ちん)先生が開発した、「360°suture-トラベクロトミー」という眼球全体に渡って切開する手術の効果が凄いと言う話も印象に残りました。 この陳先生というのは、我々眼科専門医にとっては「グルメ」で有名で、その土地の美味しいお店を詳細に教えてくれるグルメガイドを様々な学会で発行していることで知られていたのですが、実は北海道大学に常勤医として勤務されている凄腕眼科医ということでした。私は全国のグルメスポットを年中飛び回って探している謎のフリーターの眼科医かと思っていたので、申し訳なかったです。
2013.10.25
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血管に富んだ組織が角膜(黒目)の真ん中に向かって侵入してくる、翼状片(よくじょうへん)という病気があります。 はっきりとした病因は不明なのですが、紫外線(太陽の光)や慢性的な機械刺激などが原因になると言われており、「みかんと魚の街」で、紫外線にさらされることの多い八幡浜市では非常にたくさんの方がこの翼状片になっています。 この翼状片、進行した場合は手術しか治療法がないのですが、単純に切除しただけでは50%!という高率で再発することが知られており、なおかつ悪いことに再発した場合は「より凶悪にパワーアップして進行」します。 そのため初回手術が非常に大切で、私は「有茎結膜弁移植」という手法で極力再発しないような丁寧な手術を手がけています。上の写真の患者様の術後はこのようになります。 ただ、どんなに丁寧に手術をしても再発する方はします。そのためずいぶん昔には再発予防のために切った後、そこに抗がん剤を塗って再発を抑える手術法が多く取られていました。ところが、この術式を受けられた方のなかに10年以上経って、 その抗がん剤を塗った部位が弱くなってしまう合併症が頻繁に見られるようになりました。 なので、私は現在では初回手術ではこの抗がん剤を使用しないことにしています。(再発した場合は使用することはあります) 手術というのは、した後もずっと患者様の状態に責任を持たなくてはならないものなので、「長い眼で見て一番有利」という術式を常に追い求めていこうと考えています。
2009.09.11
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「ヘルペス角膜炎」という病気があります。目の表面や中にヘルペスが出て来て悪さをするというものです。以下に実際に当院で治療した患者様の写真をお示しします。 このヘルペス角膜炎、ずいぶん以前には良い治療法が無くて多くの方が失明した恐るべき病気なのですが、エリオン博士と言う方が、アシクロビル(ゾビラックス)という特効薬を発明してほとんどの方が綺麗に治るようになりました。これは画期的な業績で、エリオン博士は1988年にノーベル生理学・医学賞を受賞された程でした。 ところがこのアシクロビルは粒子が粗くて目薬に出来ず、眼軟膏(塗り薬)の形でしか使用できないという欠点があります。また、薬の粒が大きくて目に入れると角膜(黒目)の表面が荒れやすい、更にヘルペスのウイルスは特に活動期は分裂が早くて凶暴なので、それに対抗するために1日に5回も使用しなくてはならない、と言う弱点もあります。 ちなみに、 眼軟膏を処方してもなかなか症状が改善しない、効かない患者様と言うのが良くいらっしゃるのですが、経験上そういう方はほぼ100% 単にお薬がちゃんと目に入っていない だけです。なので、当院ではヘルペス角膜炎の患者様が来院されたときには「軟膏がちゃんと入れられるようになるまで、何度も熱血指導」をしています。これでほとんどの場合は治ります。 、、、前置きが長くなりました。このヘルペス角膜炎、元々それほど多い病気ではないのですが、最近患者様の数が激増しています。そして、新型コロナワクチンの接種後に発症するケースが特に目立ちます。 なので、コロナワクチンを打った後に、目がぼやける、霞む、ゴロゴロする、涙が止まらない、などの症状がある場合は、是非早めに一度近くの眼科専門医を受診してくださいね。
2022.04.21
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薬に罪はないのに、日本の厚労省のシーラカンスの様な動きの遅さによる絶望的なドラッグラグ(本国アメリカから発売16年遅れ)、更に保険診療上の縛り(ファーストラインとして最初に処方することが出来ない)、トドメにプロモーション力が圧倒的に足りない業界下位の弱小メーカーである千寿製薬からの販売という、 「3重の地獄の苦難」を背負っての2012年の「ひっそりとした」静か過ぎる日本発売となったアイファガン点眼液。 またこれは完全な裏が取れているわけではない噂レベルの話ではあるのですが、複数の業界筋によると、このアイファガン点眼液の日本販売権に関しては、「アメリカ発売から16年も遅れて、更にめんどくさい1日2回点眼の古い薬なんて、どうせ今更大して売れないよ。」と製薬業界内で嫌がられてたらい回しにされ、それで最終的に弱小メーカーの千寿製薬に販売権が回ってきたという説もあります。(笑) そしてこのように、業界内の誰にも、何だったらもしかすると販売元の千寿製薬にさえも大して期待されないまま (笑) 静かに日本発売後6年が経過した今年、その「突出したガチンコ力の高さ」によって多くの並みいる競合薬を抑えて緑内障薬売上ランキングのトップに立ちました。これはまさに、 アイファガン点眼液が起こした奇跡 です。 今日は、どうして3重苦を背負った、並みの平凡な薬であったならばひっそりとそのまま息絶える運命だったアイファガンが「6年越しの奇跡」を起こせたのかについて、眼科専門医であり同時に発売時から熱狂的なアイファガンファンでもあり続けたこの私が、その秘密をついに語りましょう。 アイファガンの凄い所は以下の通りです。1. 副作用が少なくて効き目が強い。 はい、アイファガンの長所を一言で言えばこうなります。お薬と言うのは全てリスク(副作用)とリターン(作用・効き目)があるわけですが、このアイファガンはそのバランスが抜群にいいのです。 例えば、現在緑内障の点眼治療ではファーストラインとしてプロスタグランジン関連薬 が使われています。これらのお薬は眼圧を下げる力は本当に強くて、だからこそファーストラインなのですが、その一方で多くの特に「局所」の副作用があります。具体的には点眼後の強い充血、更に点眼を目の周りにこぼすと、そこが黒くなったり、くぼんだり、しまいに毛が生えたりします。中には逆にこの副作用を狙って、使い終わって余った使用期限切れの目薬を頭皮にゴシゴシ塗り込んでいるおじいさんさえいたりします。(専門的にはこの副作用はDUES:デューズという名前で呼ばれています。) またプロスタグランジン関連薬に次ぐセカンドラインの位置づけのベータブロッカー点眼剤(製品名でいうとチモプトールやミケラン)は、喘息・コントロール不良の心臓病・閉そく性の肺疾患がある患者様には禁忌で処方することが出来ません。ただ緑内障の方には高齢者が多く、自分で自分の持病を完全に把握できていない場合もあり、この系統の点眼薬の処方は医師・患者様の両方にとって大きなリスク要因となります。 更にセカンド/サードラインとして良く用いられる炭酸脱水酵素阻害剤点眼薬は、ペーハーの関係で強烈に目に沁みたり(製品名トルソプト)、沁みなくても目薬が白い濁り液で点眼後しばらくめがかすんで見えなくなるので、元々目に関して色々な不安を感じている緑内障の患者様にとっては気持ち的に沈んでしまって点しにくい、ついつい点眼をさぼりやすい(製品名エイゾプト)ものだったりします。 つまり、 緑内障の目薬と言うのはどれもそれなりの欠点があって気難しいものが多い のです。ところがアイファガンは非常に点し心地が良く(これ、凄い美点)、更に眼圧も良く下がる(ほぼセカンドラインのチモプトールと同等)のです。なので、患者様に一度処方すると、「先生、今度の目薬、点しやすいし眼圧下がるし、滅茶苦茶いいわあ。」と喜ばれることが多いのです。そして患者様が嬉しいと私達医者も嬉しいのです。何故なら、我々は患者様の「役に立つ」ことが最大の喜びであり、それをモチベーションとして毎日の外来診療を頑張っているからです。 これでもうお分かりですね。 アイファガンがベストセラーとなったのは、患者様に強く求められるお薬であったから。そこに「幸せの、喜びの連鎖」があったから。 なのです。 そしてアイファガン点眼液にはまだ他にも長所があります。2. 防腐剤に工夫があり、角膜障害が少ない。 緑内障の目薬と言うのは大なり小なり角膜(黒目)へのダメージがあります。そして防腐剤として、安価で一般的なベンザルコニウム塩化物(通称 エンベコ)が入っている目薬では、そのダメージが更に増強されます。ここでは具体的には書きませんが、多くの緑内障点眼薬はエンベコを使用しており、特に海外メーカーのものはその濃度もべっとりと非常に高い場合があります。ただ欧米の方はあまり角膜障害を気にされないようなのですが、日本人と言うのは「世界一消費者意識が高くてとても繊細」なので非常に気にされます。 そしてアイファガンは、Purite(亜塩素酸ナトリウム)という、非常に角膜に優しくて安全な防腐剤を使用しており、長期使用に不安が少ないところも大きな美点なのです。 この2点がアイファガンの凄い所なんですね。 ただこのアイファガンにも少ないながら欠点はあります。それは、 点眼後数か月が経過すると結膜(赤目)にアレルギーを起こしてくる場合が一定の確率である ことです。この副作用が出た場合には、違う系統の薬に切り替えることになります。 さて長くなりましたが、以上をまとめると、 アイファガンは売れるべくして売れた ということです。 緑内障点眼薬の中で「総合力が断トツトップ」であり、それが口コミで広がってついに6年経って1位になった ということですね。 これからも名薬アイファガンと共に、緑内障患者様1人1人の眼の状態に合わせた「オーダーメイド治療」に精進していきたいと考えています。
2018.05.27
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さてアクティブになる楽しい夏の季節なのですが、それに伴って目にも色々なものが入ってトラブルを起こすことがあります。これは以前にも書いたことがある人気記事なのですが、新たな画像を追加して「2016年夏バージョン」でお送りしましょう。 ↑ この患者様は、「魚を捌いていたら急に目が痛くなって水で洗っても目薬しても何しても痛みが取れない。」との訴えで来院されました。矢印の部分に何かがありますね。 魚のうろこが白目(結膜)に刺さっていました。うろこは表面が複雑な形状をしているので一度目にくっつくとなかなか自力では取れません。顕微鏡で見ながら慎重にピンセットで引っぺがしたのですが、強力にくっついていたので剥がすのが大変でした。 ↑ この患者様は以前も紹介したことがありますが、農作業中に田んぼで転んでその時に目にヒルが食い付いてしまいました。非常にすばしっこく逃げるので摘出するのが大変でした。 ↑ この患者様はみかんの摘果(てきか)作業中に目にゴミが入り、「洗っても何してもどうしても取れない。」との訴えで受診されました。それもそのはず、蟻が目から振り落とされないように結膜(白目)に足を深く刺してしがみついたまま絶命していました。このありんこも引っぺがすのが大変でした。 ↑ この患者様は、「まぶたの裏で何かがもぞもぞ動いている!」との訴えで来院されました。上まぶたをめくって調べて見ると、ショウジョウバエと思われる2ミリ大の虫が目の中で既に絶命していました。 このように、目の中と言うのは様々な異物が入り込みます。自力ではなかなか取れないもの、取るのが危険なものもあります。ですので、「あれ?何か目にゴミが入ったぞ。」という時には、是非気軽に遠慮なくお近くの眼科専門医を受診するようにしてくださいね。
2016.07.07
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さてここからは、第5回四国アイランドセミナーで印象に残った話を自分のメモ代わりにいくつか書いていきます。 毎日の診療をしていて頻繁に出会う病気に「ぶどう膜炎」という病気があります。 これは「目の中に炎症を起こす病気」の総称で、皆様にはあまり馴染みがない名前でしょうが、その患者様の総数は膨大です。 ところがこの「ぶどう膜炎」、実は我々眼科専門医の悩みの種なのです。というのは、「どんなに頑張っても病名の診断にたどり着けない」ことも多く、また一部に「予後不良の疾患がある」からなんですね。 ↑ これがぶどう膜炎の患者様の内訳です。サルコイドーシス、原田病、ベーチェット病というのが、我々の業界用語で言ういわゆる「3大ぶどう膜炎」なのですが、この3つを足しても全体の25%にしかならず、後は多くの無数の病気が隠れているのです。そして、どんなに様々な検査を繰り返しても半分の50%は「同定不能」で、病名の診断に至らないのが現状なのです。 そのためこの「ぶどう膜炎」の診断と治療は良く、「推理小説と同じ」とも例えられます。限られた証拠、刻々と移り変わる症状、お出しした薬に対する患者様の目の反応、それらの全てを総合しながら、我々眼科専門医は探偵の如くこのぶどう膜炎と戦っているのです。 さてこのぶどう膜炎ですが、「3大ぶどう膜炎」の一つの「ベーチェット病」において近年画期的な治療の進歩がありました。ベーチェット病は1937年にトルコの名門、イスタンブール大学のベーチェット博士が発見した病気です。 口の中の潰瘍、皮膚の炎症症状、外陰部の潰瘍、そして急性症状を繰り返しながら悪化していく目のぶどう膜炎症状の4つが主症状なのですが、予後不良なことが多く以前から恐れられてきました。 このベーチェット病、トルコと同じ緯度のシルクロード沿いに多く(別名シルクロード病)、そのため日本にも多くの患者様がいらっしゃいます。しばらく前には人気グループのEXILEのメンバーの方がこの病気であることを告白して大きな話題にもなりました。 特効薬のない病気であり我々眼科専門医は苦労しながら治療をしていたのですが、最近になってレミケード(抗TNF-αモノクローナル抗体)という新薬が開発され、これが劇的に効くことからベーチェット病の治療は驚異的な進歩を遂げました。 「ぶどう膜炎の診断・治療は相変わらず困難だけど、それでも着実に進歩しているんだな」、そう実感できた今回のセミナーでした。
2011.04.15
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「緑内障の目薬で毛が生えるって本当なの?」という質問を患者様から戴きました。今日はこの疑問について少し考えて見ましょう。 現在緑内障の治療では「プロスタグランジン関連薬」という系統のお薬を第一選択薬として使います。下に示すのがその代表的な薬(プロスト系)です。 眼圧(目の血圧)を下げる効果が高く全身への副作用がほとんどないからですが、局所への副作用はかなりあります。充血・目の周りの色素沈着(黒くなる)などですが、その一つに多毛があります。目の周りに目薬がこぼれると、皮膚が黒くなりますし、明らかに毛が生えているのが分かりますね。 この多毛という副作用を避けるため、私は入浴前の点眼をお勧めしています。(この系統のお薬は全て1日1回点眼です)点眼後にお風呂でしっかりと顔を洗えばかなり予防できますからね。 ここからは余談になりますが、ちょうど友人がストレスで円形脱毛症になったのでちょっと上記の点眼薬を脱毛部に使ってみました。 かなり禿げていますが、お薬を使って2ヶ月後には、 かなり生えています!。その後も増毛は続き、現在では脱毛部は消失しています。かなり効果がありそうですね。 このようにお薬の作用というの本当に不思議なものですね。
2009.04.29
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どうして人間の瞳は丸いのですか? という質問を患者様から戴きました。今日はこの問題について考えて見ましょう。 まずここで言う瞳と言うのは目の真ん中に開いている「瞳孔」のことですね。私達人間は 「外界からの情報の80%を目から手に入れている」 と言われており、その入り口となるとても重要な部分となります。 さてこの瞳孔、我々人間はたまたま丸いわけですが、 実は動物によって異なる のです。! (眼科セカンドオピニオン 銀海舎 P53より引用) 猫が縦型なのは割と皆さんも御存知かと思うのですが、 ヒキガエルはなんとハート型 なんですね。 また我々人間でも、たまにこのハート型の瞳を見ることもあります。 これはある患者様に検査のために散瞳薬という目薬を入れたところなのですが、上方の虹彩(茶目)の一部がその後ろの水晶体とくっついている関係で、偶然「ハート型」になっています。 患者様に「目がハート型になっていますよ。」とこの写真をお見せしたら大変喜んで頂いたのですが、とっても珍しいものが見れて私も嬉しかったです。こういった様々な楽しいことがあるので、私は毎日の外来診療が大好き なんですね。
2016.06.06
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さて日本人では40歳以上の20人に1人(5%)、70歳以上では7人に1人(14%)の有病率ということで、非常にありふれた病気であると同時に、「失明に直結する!」という「とても怖いイメージ」があるために、多くの方から「恐れられている」病気である緑内障。 当ブログでもこれまでに様々な角度から取り上げてきましたが、この緑内障は「超慢性疾患」で進行がとてもゆっくりな病気なので、実際には発病から失明に至るまでには30年以上という時間的な猶予が与えられた、真面目に治療に取り組む患者様にとってはある意味で「優しい病気」でもあります。 そして治療の基本は、眼圧を下げるための点眼治療です。何故かというと、眼圧を下げることによって緑内障の進行を遅らせて目の健康寿命を延ばすことが出来ることは、既に質の高い多くの論文から明らかになっているからです。治療法としては他に手術も色々とありますが、結局はどれも眼圧を下げるためだけの物なので、目薬の治療だけで病気がコントロールできるのであればそれに越したことはありません。何も好き好んで痛い思いをする必要はないですからね。 そして実際全国にはとてもたくさんの緑内障点眼薬を使用していらっしゃる患者様がいます。緑内障は決して「良くなる」ことはない病気なので、世界最高レベルの高齢化がこれからも類を見ないスピードで進展するここ日本では緑内障患者様の数はこれからも増える一方です。もしかすると、このブログに辿り着いた方の中には既に緑内障の治療中の患者様もいるかもしれませんね。 そこで今日はこれまでと視点を変えて、緑内障点眼薬の世界を広く見渡してみることにしましょう。これはとても大切な視点です。何故かというと、この数年緑内障の分野では新薬ラッシュが続き、使えるお薬が爆発的に増え、その結果として以前とは比べ物にならないくらいに処方パターンが増えているからです。 それではまずはその全体像をお示ししましょう。 す、すごい量ですね。20年前には「僅かに数種類」しかなかった緑内障点眼薬は、いつの間にかこのような「爆発的な進化」を遂げているのです。そして私達眼科専門医は、これらの全てのお薬の長所・短所・有効な組合せ方を学び続けながら、毎日の診療に当たっているんですね。(続く)
2019.03.09
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外来診察をしているとたまにこのようなキラキラした宝石のような輝きが目の中にある患者様がいます。 まるで少女漫画の主人公の目のように輝いていますね。この方は白色ですが、金色だったり黄白色だったり色々なバリエーションがあります。 これは星状硝子体症(Asteroid Hyalosis)といって、60歳以上の方にたまに見られます。硝子体という目の玉の中の線維の変性疾患なのですが、ほとんどの場合は視力も良好で治療の必要はありません。 外来中にこのような綺麗な星状硝子体症を見ると、その輝きの魅力で思わず見入ってしまうこともあります。我々眼科専門医にとってのちょっとした秘密の楽しみなのかもしれないですね。
2009.05.01
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4月2日(土)の午後から3日(日)にかけて香川県高松市で行われた、眼科医トレーニング講座(日本を代表する眼科医12人による40分×12コマの集中講義)の「第5回四国EYEランドセミナー」に参加してきました。 このセミナー、私は3回連続で参加したのですが、 非常に勉強になるんですね。来年の第6回も開催が決定していますので、今年行かれなかった先生方には強力にお勧めしたいと考えています。 セミナー開始は午後の3時だったのですが、私が土曜日の外来を終了したのは0時15分、私のクリニックのある愛媛県八幡浜市から会場の香川県高松市の「ホテルクレメント高松」 までは230キロの道のりです。隣町の大洲市までは高速道路がないこともあり、どうしても物理的にセミナー開始には間に合わないんですね。今年も残念ながら少し遅刻してしまいました。 さて、このセミナーはとってもためになるのでたくさんの眼科医が来ていました。四国だけではなく遠くは京都から来た先生もいるそうです。次回からはセミナーで印象に残った話を少ししてみたいと思っています。(続く)
2011.04.14
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目にゴミが入ったら皆様どうされますか? まず目をこすって取ろうとしたり、それでも取れなければ洗面器に水を張って目を洗ったりしますよね。それでも取れなければ? 眼科を受診されますよね。 今日は 「みかんの摘果をしているときに何かゴミが目に入って、 洗っても何しても取れない」 という訴えで患者様が来院されました。 この摘果というのは「実が小さいうちに取ってしまい、果実の数を制限することにより,1つづつの果実により多くの栄養がいき届くようにし、外観の美しい果実、適当な大きさの果実を残すようにすること」なのですが、私のクリニックのある八幡浜エリアは全国有数のみかん産地で今がその摘果の最盛期ということもあり、作業中にゴミが入って受診される方が後を立ちません。 患者様は強い目の痛みを訴えて苦しんでおられます。早速目を拝見すると、 確かに目に黒いゴミが入っています。ピンセットで軽くつかんで引っ張ってみてもなかなか取れません。良く見てみると、、 なんと、ありんこでした! 足を白目(結膜)に深く刺して落ちないようにしがみついたまま絶命しています。なので、洗ったくらいでは取れなかったんですね。 このように、実は目の中というのは色々なものが入ります。洗っても取れない場合は今回のようなこともありますので、是非お近くの眼科専門医を受診されてくださいね。
2009.08.08
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さて先日の日記の続きです。怖い怖い「白内障術後眼内炎」の発症予防には、手術終了時に前房(ぜんぼう:目の中)に抗菌剤を投与するのが効果的であるという2006年のヨーロッパでの発表は我々白内障手術医に大きな希望を与えました。 そして今回の論文で患者様に投与されたベガモックス点眼液は、 最新の第4世代フルオロキノロン系抗菌剤で、様々なばい菌をやっつけてくれる広域スペクトルと最小発育阻止濃度(MIC)を誇る、現段階で「眼科最強」の戦闘力を持つ目薬なのです。更に防腐剤無添加の目薬なのでTASS(中毒性前眼部症候群)のリスクも極めて低く、投与法も目薬をそのまま目の中に入れるだけという簡単さです。 論文によると、ベガモックス0.1mlを前房内に投与するとその濃度は952μg/mlとなります。ベガモックスが眼の中でばい菌をやっつけてくれる濃度であるMIC中央値は3μg/ml以下なので、単純に考えると絶対に必要な濃度の300倍の濃さで手術終了時の眼の中が満たされることになります。これは凄いですね。眼の中の水(房水:ぼうすい)というのは自分で作っているのでだんだん入れ替わっていくのですが、それでもこの濃度だと術後最低5時間は安全なMIC濃度を保つことが出来ます。 また別の報告では、このベガモックスを目の中専用のBSSという液で10分の1の濃度に希釈して手術終了時に投与する(この場合は前房と言う部分を全置換)というやり方も紹介されていましたが、この場合でも濃度は450μg/ml程度と十分です。 理論的にはこれらは眼内炎予防に驚異的に効果がありそうです。ただこの論文ではベガモックス投与の安全性を実証しただけで、その効果の検討はまさにこれからの課題ではあります。
2011.03.01
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さて、いよいよその発売が迫ってきたドライアイの大型新薬、ムコスタ点眼液ですが、先日ようやくサンプルを戴けたので実際に試してみました。 ユニットドーズ製剤と言って、使いきりタイプの点眼剤です。早速開けてみましょう! おぉ、白色の濁り液です。うーん、これは溶けにくくてお薬の成分を目薬に仕上げるのに苦労したでしょうね。。。大塚製薬の開発者の方、お疲れ様でした。では早速点眼してみます。大型新薬ですので、院長の私はもちろんスタッフの皆も挑戦してくれました。その感想は、、、、 点眼した後、1分くらい目がかすんで見えない。 鼻から口にかけてかなりの苦味が来る。 あたりの、ネガティブな意見が最初に多く出ました。 添付文書にも苦味が多いということは書いてありましたし、ホリエモンではないですが、まあ「想定の範囲内」ですね。(笑) ただ、点眼後しばらく経つと、 なんだか目がスッキリした。 目がしっとりと潤ってきた。 目が暖かい感じで調子が良くなった。 など、やはりムコスタ点眼液のパワーを実感させるポジティブな感想が多く出ました。ムコスタ点眼液は、対照薬となった参天製薬の歴史的名薬の0.1%ヒアレイン点眼液に対して有意差を持ってドライアイ症状を改善するというデータが出ていますし、やはり力はありますね。 私の個人的な感想を言うと、「点眼直後のかすみや苦味は確かに弱点だが、それを上回る効果は間違いなくある! 少なくとも重症のドライアイに苦しむ患者様はトライする価値のある目薬である。」というものでした。 またこのムコスタ点眼液は、先行して発売されている同じ「ムチン産生促進薬」のジクアス点眼液とは作用の仕方が違うとの事なんですね。 添付文書には色々と難しいことが書いてあるのですが、ムコスタ点眼液が実際にどういう理屈で効くのかはまだ分かっていないとの事です。 ただ、ムコスタはジクアスの作用点であるP2Y2受容体には影響を及ぼさないことは分かっており、もしかすると、ジクアス点眼液とこのムコスタ点眼液を併用すると1+1=2のように、ドライアイにもっと効くのではないか?という期待も膨らんでしまいます。 いずれにしても、近い将来のムコスタ点眼液の登場が本当に待ち遠しいですね。
2011.11.09
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さて私は2018年4月に第122回日本眼科学会総会(日眼:にちがん)に参加してきました。この春の日眼と秋の日本臨床眼科学会(臨眼:りんがん)は、我々眼科専門医にとっては一種のお祭りの様なものです。その理由なのですが、学会と言うのは年中たくさん開催されているものの、この2つは特に参加者が多く、それを反映して様々な楽しいイベントや宴が開催されたり、機械展示場が広くて多くの新しい検査・手術機械に実際に触れることが出来るからです。 今日の日記は、自分が「あっ、これめちゃ欲しい。」と思った、個人的な物欲がスパークしたものを備忘録的に残しておくものです。 まず一番いいと思ったのが、ドイツのカールツァイス社の最新型の眼底カメラのCLARUS 500。 このカメラは画角は133度しかないのですが、同時に複数枚の写真を撮ってそれを瞬時にコンピューターで繋げることによって非常に広い範囲の眼底を一度にバンとチェックすることが出来ます。当院では既に約3年前にこのカールツァイスの新型カメラのライバルとなる イギリスのオプトス社のオプトスデイトナ (画角は200度と非常に広くそこが大きな長所) というマシンを買ってしまっているので、ちょっと買い替えるという訳にはいかない(オプトスも凄く高額だったし、減価償却も全然終わっていない)のですが、このツァイスのマシンは写真の色調が美しくて自然なのがとても魅力的だな、と思いました。涎がタラタラと出ましたね。。。ちなみにブースにいらっしゃった社員の方によるとお値段は、「、、、ま、十分に1本は御用意頂かないと、、、」とのことでした。くー、欲しいけど結構イクなあ、、、 痺れますね。。。 後は、自分は日々の診療で日の丸国産メーカーであるタカギセイコー社の細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)を気に入っていて10年使い続けているのですが、その顕微鏡を設置しているスライディングテーブルに薄型でクールでカッコいい、更に可動域も広がっているというナイスな新型が出ていて、これもかなり欲しいなと思いました。 このように、 学会と言うのは「行くと欲しいものだらけである意味危険な場所」 でもあるのですね。(笑)
2018.06.04
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さて先日に続いて今日は、最近の私の白内障手術の進化・改善点についてお話してみたいと思います。 白内障手術では水晶体の前面の膜、前嚢(ぜんのう)を丸くめくるCCCという手技が極めて重要であることは前回の日記でも書きましたが、白内障が進行していると視認性低下のために非常に困難な場合があります。 そういった時には前嚢を染めて見えやすくして手術を行うのですが、数ヶ月前までの私はICG(インドシアニングリーン)という緑色の薬剤を使用していました。ただこのICGは溶解液が作成しにくい、染まりがやや悪いなどの欠点がありました。 そのため、当院では2月から「トリパンブルー染色」という新しい染色法を導入しました。 このトリパンブルー染色液は従来のICG染色液に較べて溶解液が作成しやすく、かつ前嚢が良く染まります。具体的に見てみましょう。 薄い水色に前嚢が綺麗に染まっていますね。上の図のハート型に切れているのがCCCという手技になります。このCCCの後、水晶体の中身を吸い取って行くんですね。 このように当院では常により安全な手術を目指して努力を続けています。もちろんこれからも更に術式を洗練させて、八幡浜地域の皆様の目の健康づくりのお役に立ちたいと考えています。
2010.04.23
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現在緑内障の治療では「プロスタグランジン関連薬」という系統のお薬を第一選択薬として使います。眼圧(眼の血圧)を下げる効果が一番強いからですが下に示すのがその代表的な薬(プロスト系)です。 上の写真の中で、左端の 「キサラタン点眼液」 が発売されたのが1999年、この薬の登場が緑内障治療を劇的に変えたといわれる、当時まさに画期的な新薬でした。ちなみに私が眼科医になったのも1999年のことで、それで我々は「キサラタン世代」と呼ばれています。 キサラタンはあまりに画期的なお薬だったためにその後何年もライバルが現れませんでした。数年前からようやく「トラバタンズ点眼液」、「タプロス点眼液」という同系統の薬が発売されたのですが、その薬の効果はキサラタンとほぼ同等で、「もっと眼圧の下がる」キレの良い薬の発売が望まれていました。 10月第一週に 「ルミガン点眼液」 という新薬が発売になるのですが、 この薬は前述の「キサラタン」に対して有意差を付けて眼圧が下がるというデータが出ています。 簡単にいえば 「過去最高の効き目の薬」 ということです。その理由を下の図に示していますが、分かりやすく言えば 「患部に直接ガツンと効く」 ということになります。 ただ、良いお薬には当然副作用もあります。このルミガンは今までの薬よりも 強烈に目が充血する と言われています。早速当院のスタッフにお願いして実験してみました。 右目だけにさしたのですが、 明らかに左目 より強く充血していますね。ただ、肝心の眼圧の方は、 13.7→8.7と確かに良く下がっています。これは期待できそうですね。! この期待の新薬、ルミガン点眼液、発売と同時に当院でも採用します。少しでも緑内障患者様の不安が減ってくれたらと思いますし、私も発売を心待ちにしています。
2009.08.21
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さて1月29日(土)午後の特別講演は、 私が所属する愛媛大学医学部眼科学教室のボスである、大橋教授による「白内障術後眼内炎ーEvidence Based Preventionの時代へ」でした。 白内障手術というのは日本国内で年間に100万例前後が行われているというメジャーな手術ですが、その術後には500~2000例に1例くらいは眼内炎という感染症が発症することが知られています。この眼内炎になると最悪の場合失明につながることもあるため、我々白内障手術医は「いかに眼内炎のリスクを減らせるか?」を常に考えて続けているのです。 今回の大橋教授の特別講演は、この怖い眼内炎予防のために大切な現時点での最新の知見が散りばめられた本当に素晴らしい内容でした。 この講演の中ではいい話が多かったのでちょっとまとめておきます。眼科医以外の方にはやや難しい内容かもしれないですがご了承ください。 1. 手術前にアジスロマイシン点眼(内服薬のジスロマックというニューマクロライド系抗生剤を目薬にしたもの。アメリカではすでに何年も前から発売中だが、日本では未だに治験中で個人輸入でしか使えない。この新薬の承認が遅いという「ドラッグ・ラグ」は日本医療の大きな問題点の一つだが、眼科でもそれは同じ。本当に何とかして欲しい。)を使うことの有用性を指摘。 2. 白内障手術終了前のI/A(アイエー)という目の中の洗浄手技のときに、Tapping(タッピング)といって眼内レンズを傾けながら粘弾性物質(目の中を保護するゼリー状の物質)を吸い取る手技を左右で5秒間×4回、合計で20秒すると、BHL(ビハインド・ザ・レンズという眼内レンズの裏側を吸うやや上級者向けの手技)とほぼ同等の効果があることをスジャータスタディで実証。 3. 術後早期(手術終了直後)からの抗菌点眼薬開始が大切である、何も次の日まで待つ必要はないということ。 4.破嚢(はのう。水晶体の袋の一部が破れること。平均4%の症例に起こる)などのハイリスクイベントが発生した症例に対しては、抗菌薬の前房内投与が必要なこと。 私もこれからも眼内炎を極力起こさないような、より安全な手術手技を求めて努力していきたいと、改めて思いました。
2011.02.07
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さて今日は「名薬、ムコスタ点眼液の悲劇」シリーズ最終回です。 この素晴らしい薬効を誇るムコスタ点眼液ですが、実は私自身も毎日寝る前に使用しています。 圧倒的に眼の調子が良くなりますし、 点眼すると目がかすんで見えなくなるのでそのまま良く眠れる という意外な作用もあります。(笑) 「苦い、しみる、かすむ」と3拍子揃った強面のハードボイルドなムコスタ点眼液 ですが、ドライアイ患者様なら一度は挑戦してみるべき素晴らしいポテンシャルを秘めたクスリでもあります。 私は眼科専門医として、この「悲劇の名薬」ムコスタ点眼液をこれからも適切に患者様に処方していきたいと考えています。
2013.03.22
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細菌性の結膜炎などの治療に使う抗菌剤の目薬というものがあります。 この上の写真の参天製薬のクラビット点眼液(ニューキノロン系という系統の抗菌剤)が売上ダントツナンバーワンの代表選手ですが、他にも千寿製薬のガチフロ点眼液 日本アルコン社のベガモックス点眼液 も売上上位に位置しています。 ただ我々の業界ではクラビット点眼液があまりもメジャーな存在であるためでしょうか? ほとんどの目薬はその真似をして ピンク色の外観 をしています。 ところで人間というのは年を取ると目が乾いて常にしょぼしょぼしたり、慢性的にめやにが出たりします。そしてこのクラビット点眼液に代表されるニューキノロン系の点眼剤は「めやに止め」として抜群な効果を発揮するので患者様から、 あのピンクの目薬が欲しい。 と御指名で処方をお願いされることが非常に多くあります。 眼科専門医的には、この手の抗菌剤というのは明白な臨床症状があるときのみにごく短期間に限って使用するものであり、気軽にカジュアルに処方するという類の目薬ではありません。何故かと言うと、 普段から常用していると本当に細菌性の結膜炎になったときに目の中のバイキンが凶暴化・耐性化してしまっていて効かなくなりますし、そもそも健康な状態の眼には全く必要のない ものだからです。 そのため不必要と判断した場合には、「めやにも出ていませんし、目はとても綺麗ですからいりませんよ。」と説明するのですが、 「いや、めやには本当はいっぱい出ます。今、たまたま出ていないだけです。だからピンクのを下さい。」 と頑張られる患者様が多くいらっしゃいます。 押し問答の末になんとか納得して頂いて帰宅された後にも、 「ウチのおばあさんが、先生がピンクの目薬をくれなかったと言って泣いている。どうしても処方して欲しい。」 と電話がかかってきたりすることもありますし、私が断っても、代わりにかかりつけの内科医の先生におねだりしてちゃっかり処方して貰って、秘密で毎日しっかりと点している方もいらっしゃいます。(笑) この クラビット点眼液に代表される抗菌点眼剤に対する患者様の精神的な依存度と言うものは本当に凄い ものがあります。 その理由はやはり、 「点すと目の調子が良くなる」という確かな実感が患者様にある からでしょう。もしかすると、この 魔法のピンクの小瓶 には何か、 我々眼科専門医が未だに気付いていない不思議な力 があるのかもしれないですね。
2015.12.02
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2012年5月、今から6年前にひっそりと静かに日本国内発売となった緑内障・高眼圧症治療薬のアイファガン点眼液。 このアイファガンは、元々アメリカでは「アルファガンP」という名前であり、1996年の発売以来売上高世界上位のベストセラー薬であり続けている名薬でした。 少し復習をしておくと、この目薬(一般名 ブリモニジン)は「アドレナリンα2作動薬」といって、目の中を流れる房水(ぼうすい)の産生を抑制しつつ流出を促進するという、2つの作用機序を持つ非常に優れた薬剤です。先行して発売されたアメリカではずっと緑内障点眼薬売上ランキングの上位を維持し続けてきたベストセラーであり、我々日本の眼科専門医にとっても長年「喉から手が出るほど」使いたい、欲しいお薬でした。 ただ残念ながらその認可は遅々として進まず、なんと「アメリカから16年遅れ!」でようやく発売となったという、その「ドラッグラグ(海外で使われているくすりが、日本で承認されて使えるようになるまでの時間の差のこと)」の大きさでも話題となりました。 そしてこの2012年にようやく発売となったアイファガンなのですが、 なんと発売から6年が経過した今年2018年になって、多くの屈強な薬剤がひしめき合い、しのぎを削っている緑内障点眼薬の中で、なんと売上1位となった のです。 これはとてつもなく凄いことです。それがどうしてなのかを説明しましょう。1. 現在の緑内障治療においてはいわゆる「標準治療」≒ガイドラインが存在している。そしてその中では、第一選択薬としてプロスタグランジン関連薬(キサラタン、タプロス、トラバタンズなど)を使うことが推奨されており、 アイファガンは「最初に処方されるお薬」ではない。 2. また同時に保険診療上の縛りもあり、アイファガンは「ファーストライン(疾患に対して効果があるとされる複数の治療薬のうち、最初に投与すべきと考えられる治療薬)」として使うことは出来ない。あくまで「セカンドライン」以降の薬と言う位置づけとなっている。つまり、「大きくは売れないことを元々宿命づけられた薬」である。3. 更に悪いことに、発売元の千寿製薬は失礼ながら弱小メーカー(2018年3月期の売上高は379億円。これは製薬メーカーとしてはかなり少ない。)であり、薬の宣伝をする営業マン(MRさん)の数も広告のための予算も非常に少ない。なので「鼻薬を嗅がされた、緑内障学会のとてもエライ先生」が一般眼科医に薬を使うように「啓蒙」し、「応援」してくれることもほぼない。 つまり、 アイファガンが売れたのは、広告や宣伝の力ではなく、薬に本当の実力、「突出したガチンコ力」があったから なのです。でも同時に、千寿製薬には十分なプロモーションのためのお金がありませんでした。なので、アイファガンの良さは静かに口コミレベルで医療現場にじわじわと浸透するしかなかった。その為、2012年の発売からランキング1位となるまでに6年もかかったのです。 そして、資金力のある大手メーカーによる「パワープレイ」が支配的な製薬業界において、発売後6年が経過し更に弱小メーカーからの販売となったお薬が売上ナンバーワンとなるなどということは、医学界の常識では通常ではあり得ない、凄いことなのです。 それでは次回は、なぜアイファガンは数々の不利を乗り越えて売上ナンバーワンとなることが出来たのか? アイファガンのどこがそんなに優れているのか? その、 アイファガンの秘密 に迫っていきましょう。(続く)
2018.05.22
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シリーズでお送りしている「緑内障点眼薬の世界」。 これまでに現在第一選択薬(ファーストライン)として使用されているプロスタグランジン関連薬の紹介が終了しました。 続いては、第2章 ベータ(β)遮断薬 です。 この系統のお薬は、効き方としては主に房水(ぼうすい : 眼球を充たす体液のこと。眼圧を保つと共に角膜・水晶体の栄養補給の役目を果たしている。房水は毛様体という組織で作られ、主にシュレム管を通過し眼外に排出される。)産生抑制作用となります。 ベータ遮断薬は前回までに紹介したプロスタグランジン関連薬とは効き方が全く違うので、両者を併用するとより大きな眼圧下降効果が期待できますし、実際の臨床でも多用されています。 さてベータ遮断薬は、現在緑内障治療の第二選択薬(セカンドライン)として使用されています。第一選択薬(ファーストライン)のプロスタグランジン関連薬だけでは効果不十分だったり、もしくはその副作用で使えない場合などに検討される薬剤ということですね。 このベータ遮断薬は、キサラタンに代表されるプロスタグランジン関連薬が登場するまでは長い間第一選択薬の地位に君臨していました。その理由は何と言っても「眼圧がまずまず良く下がるから。」です。緑内障の目薬は何と言っても「眼圧が下がってナンボ。」なんですね。 ベータ遮断薬には、PAP(眼窩周囲症状 Prostaglandin associated periorbitopathy)のような眼局所の副作用はありませんが、その一方で、気管支ぜんそくや重い心臓病がある患者様には使用することが出来ません。 高齢の緑内障患者様の中には「自分で自分の病気を把握しきれていない」ケースもあり、それがこのベータ遮断薬処方の難しさに繋がっています。ただ逆に言うと、全身状態が良好で問題なく使える患者様にとっては「安全に使える、歴史のある良いお薬」でもあります。 それでは次回からは、このベータ遮断薬を詳しく見ていきましょう。(続く)
2019.07.11
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学校の視力検査で近視が進行して引っ掛かり眼科を受診されるお子様はたくさんいます。お父さん・お母さん方は「ウチの子の近視が進んでメガネをかけさせるのは絶対イヤ!」と思われる場合も多く、「近視が治る目薬ってないんですか?」という上記の質問を受けることが非常に良くあります。 結論から先に言うと、「近視の治る目薬はあるような、ないような感じです。」という謎掛けのようなお話になります。今日はその「近視の治る目薬」のお話をしてみましょう。 昔の言葉で言う「学校近視」、今の言葉で言うと「仮性近視」、「偽近視」と呼ばれるものがあります。イメージ的には「近視が進行してきているけどまだ固まりきっていない状態」とでも言えるでしょうか。 医学的にはこの「仮性近視」については、 1. そもそもそのような病態が存在するかはっきりと分からない。 2. 仮性近視は存在するかもしれないが、治療可能なものは数少ない。 3. 仮性近視の治療には一定の効果が認められるものがあるのは事実だが、治療を中断すると元の近視に戻ってしまうことが多いので、結局はあまり意味が無い。 あたりがコンセンサスかと思います。まとめると、「平均的には我々眼科専門医は仮性近視の治療は根本的にはあまり意味が無いと考えている。ただし治療中には一定の効果をあげる可能性のある目薬というのは実際に存在し、また近視のお子様を持つご両親の希望が強い場合には処方する場合もある」くらいの感覚なのです。 それでは実際に、その「仮性近視」の治療ではどのような目薬を使うのでしょうか? それには、、、、、 この「ミドリンM」と「ミオピン」という2種類の目薬を使用します。我々の業界ではこれを略して「MM療法」と呼んでいます。 ミドリンMは、目のピントを合わせる筋肉である毛様筋(もうようきん)の緊張を和らげてリラックスさせ、仮性近視を戻らせる作用があります。ただし散瞳(さんどう)といって瞳を開く効果が同時にあり、昼間に使用すると日常生活に支障が出るため通常夜寝る前に1回使用します。 ミオピンは1日に4回使用します。この目薬は目の毛様筋(もうようきん)の反応を良くし、また目の疲労回復作用を持つことから、毛様筋が昼間に緊張状態に戻るのを妨げる作用があると考えられています。そのため、ミオピンはミドリンMのすき間を埋める役割をするので、ミドリンM単独療法よりも併用療法の方がより効果があるとされています。 実際、このMM療法の有効性を報告した文献も古いものですが存在しています。 また、このミドリンMもミオピンも歴史のある薬剤であり、長年の経験から安全性が非常に高いことも証明されています。 ここまで読んで頂くととっても効きそうな感じのするこのMM療法なのですが、実際に患者様に処方してみると「点眼中は少し近視が改善することもあるが、それで近視が実際に治るかと言われるとなかなか厳しい」といったところです。 近視が治る目薬が開発されたら私も眼科専門医として本当に嬉しいのですが、現状ではこのMM療法以外に「近視に効く」と言われている目薬はありません。でも医学の進歩と言うのはとにかく早いので、いつの日かそんな夢の目薬が開発されるかもしれないですね。
2010.10.29
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当院では現在、日本アルコン社の「インフィニティ」という白内障手術装置を使用して皆様の手術を施行しています。 このインフィニティは、白内障手術機械の歴史上最も多く売れ、現在世界で最も多く使用されているベストセラーマシンです。発売は2003年と古く既にモデル末期なのですが、この9年間続々と新機能が搭載され、絶え間なくアップグレードされてきたことにより未だに高い戦闘力を誇っています。その最大の特徴は、 通常の白内障手術機械が、水晶体を削るための超音波が縦にしか出ないのに対して、このインフィニティは横にも出るということです。 そして横に出る超音波というのは、縦に較べて効率が良い上に目へのダメージが少ないのです。ただ、横発振だけでは機械が詰まったりすることもあったのですが、 数年前にOzil IP(オジールアイピー)と言って、横発振だけでは無理な場合に必要に応じて縦発振を入れることが出来るようになり、その欠点もほぼ解消しました。 私がクリニックを開業させて戴いている愛媛県八幡浜市は、高齢化率が極めて高く、そのために白内障が非常に進行した患者様が多い地域です。そういった進行した「固い核の白内障」に対してはこのOzil IPを搭載したインフィニティが他社のマシンに較べて相対的に優れていることもあり、 現在御機嫌で稼働中なのです。 このインフィニティ、発売後9年が経過し、その間に欠点・弱点を一つずつ潰してきたためにとにかく完成度が高いです。良く「輸入車買うなら、熟成度の高いモデル末期を買え!」みたいな話がありますが、このインフィニティも全く同じ状況です。そしてインフィニティの製造販売元の日本アルコン社の素晴らしいところは、常に開発・進歩の手を緩めないことです。 白内障手術では、IA(アイエー)と言って、水晶体の皮質という周辺部分を取る手技があるのですが、これには専用のIAチップという道具を使います。このIA中というのは、我々白内障手術専門医が最も恐れている合併症の破嚢(水晶体の袋が破れること)が割と起こりやすい時間帯であり、非常に神経を使います。 今回この大切なIAに関して、日本アルコン社から画期的な新チップが発売されました。 この新型IAチップは、先端が従来型の金属製ではなく柔らかいポリマー素材で出来ています。そして、チップ先端で眼内レンズを移動したり回転させたりすることがスムーズに行えるような表面処理がされています。また、スリーブを確実にセットできるように設計されてもいます。 実際に使用してみてすぐに感じたのは、「とにかく前房(目の中)が安定している」ということでした。スリーブのセットが確実で隙間がないことが影響しているのでしょうか?、後嚢(水晶体の袋の底面)がピシッと安定していて自信を持ってフットペダルを踏めます。 またチップ先端の表面処理も効いています。眼内レンズを思ったように躍らせて粘弾性物質(手術時に目の中を保護しているヒアルロン酸製剤)を快適に安全に除去できます。 逆に欠点としては性能が高くて吸引力が強いので従来型のIAに較べると5センチほどボトルを上げなくてはならないことと、完全ディスポで1本1500円(定価)するということですが、これは一回使って見ればその価値・凄さはすぐに分かると思いますし、当院でも是非採用したいと願っています。そして、全国のインフィニティユーザーの先生方にも是非一度お試し戴きたいと考えています。
2012.09.20
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今日の日記は新型白内障手術機械インフィニティの、白内障進行具合別の自分用の設定のメモ書きです。眼科専門医向けのちょっと特殊な内容ですので興味のない方は読み飛ばしてください。 UStipは0.9mmミニフレアーABS Ozil12 45°を使用。フルケルマン使わなくてもこれで十分という印象だった。 グレード2.0~3.5くらいまでの通常症例では、 水晶体核の溝堀 その後の処理 ↑ 吸引圧は、230から280まで最後は上げたが、それでも前房は全く安定しているので問題なかった。 Ozil IP IA グレード3.5~4.25くらいの固い症例では、 溝堀 ↑ かなり縦を入れている。このくらいはないと無理。 その後の処理 ↑ 同じく吸引圧は230から280へ最終的には上げたが、全く問題なかった。 表画面はグレード2.0~3.5用のモードに近いが、、、 ↑ 裏のOzil IPのthreshold(閾値)を93%に落とし、phaco pulse on timeも20に上げている。 グレード4.25以上の、従来ならECCEで対応していた症例。 溝堀 その後の処理 ↑ グレード4.25~は暫定的に設定してみただけ。実際にはまだ使用していないので、購入した場合には今後更に詰める必要がある。 インフィニティ、確かに極めて良いマシンですが、設定出来る項目が非常に多く、使いこなすにはその全てをしっかりと詰める必要があり、それは結構ハードルが高いと言う印象でした。ある先生が「インフィニティ、業者の方が入ってくれると抜群にいいんだけど、いなくなって一人になっちゃうとうまく使いこなせないんだよなあ。設定が難しいんだよ。」と仰っていましたが私も良く分かります。 もしも実際に買う場合には、更なる猛勉強が必要と感じました。
2011.06.20
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少し前のことになるのですが、2月4日(土)、5日(日)に開催された、「第5回東京眼科アカデミー」という勉強会に参加してきました。本当はもっと前に日記に書きたかったのですが、この東京眼科アカデミーの週から4週連続で週末は東京で眼科関連の勉強会に参加しており、全く休日のない状態でどうしても書く時間がなかったのです。 さて、2月3日(金)に外来を夕方5時で早期終了させて頂いた私は最終便の飛行機で東京に向かい夜遅くにようやくホテルに到着しました。 泊まったのは「第一ホテル東京」です。新橋というエリアにあるせいか、良いホテルの割には宿泊料が安くて最近お気に入りなんですね。 軽く夕食は取っていたものの小腹が空いたのでホテルに荷物を置いてフラッと外に出ると、 山手線のガード下に魅惑的な輝きが見えます。「紅とん」という豚の串焼きのお店です。店内を覗くとお客さんがぎっしりと入っており、私もついつい引き込まれます。 メニューを見ると、看板通り「焼きとん」ばっかりです。私の地元の四国にはこの手のお店がほとんど無いので新鮮ですね。早速注文します。 うーん、美味い。焼鳥より個人的には好きかもしれない位ですね。 一息ついてメニューを見渡すと、 名物ガツ(豚の胃)ポン、レバテキ串あたりの少し珍しいものにも心惹かれ注文してみます。 どのメニューも抜群です。 豚と言うのはどの部位も美味しいんですね。店内には豚の解剖図がありましたが、全身ムラ無く料理に利用されているようで感心しました。ちなみに上の解剖図では目だけは料理に使われていないようですが、 豚の目は、「豚眼(とんがん)実習」といって、医学生や眼科の研修医が手術の練習をするのに使用します。私も研修医の頃には多分100匹以上の豚さんの目にお世話になっています。 「うーん、豚って本当に捨てるところの無い役立つ生き物なんだなあ」と感心しながらホテルに戻ります。明日からの勉強会が楽しみですね。(続く)
2012.03.16
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今、家で夕食を食べながらテレビを見ていると、バラエティ番組で「世界一飛び出る女性」と言う方が登場していました。 同じような方を以前にも何度もテレビやネットで見たことがありますが、 こういった意図的に目の玉を外に押し出すような行動は圧力の変化が激しくなるので、目の神経を痛めて緑内障を引き起こす可能性があると以前から眼科専門医として心配しています。 なので、皆様は絶対に真似しないで下さいね。
2011.03.22
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当院は開院2年目を迎え、より安全で快適な医療を提供できるように様々な部分で見直し・改善を進めているのですが、その一環としてこの度「手術前問診表」を導入いたしました。 表の項目は今までも私が患者様に口頭でお尋ねしていた内容ではあるのですが、確実性を増すためにこのような形としました。ちょっとその内容を御覧戴きましょう。 眼科の手術、特に白内障手術というのは、現在術式が極めて洗練されたものとなっており安全性も非常に高くなっています。ただやはり手術ですので思わぬ大きな合併症が起こることも0%ではありません。 当院では全ての手術を日帰りで行っているので、なおさら手術には万全の備えが必要となります。このような項目に事前にお答え戴くことにより、手術をより安全・確実に施行する事ができますので、皆様のご協力をよろしくお願い致します。
2009.05.25
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さて来たる6月11日に、全国の患者様からその登場が熱望されていた緑内障新薬のコソプト配合点眼液がいよいよ日本でも発売となります。 このコソプト配合点眼液は、房水の産生を抑制する「β遮断剤」のチモロールと「炭酸脱水酵素阻害剤」のドルゾラミドの2種類のお薬が1瓶に入ったものです。 薬の承認に関しては世界一厳しいと言われるアメリカFDAで唯一承認されている配合点眼液であり、その売上高は緑内障薬の中ではPG製剤のラタノプロストに次いで世界2位のベストセラー薬です。その効果はまさに「折り紙付き」、この名薬をついに日本でも使用できることを、私は緑内障治療医として本当に嬉しく思っています。 サンプルを戴いたので、早速当院のスタッフがチャレンジしてくれました。まずはきみちゃんから。 眼圧は16.0から11.7へと下降しています。 次はゴンちゃんです。 眼圧は15.0から11.3に下がっています。2人とも良く効いていますね。 このコソプト発売日には、同時に以前紹介した「デュオトラバ配合点眼液」も発売となります。新薬の登場スピードに負けないように私自身も勉強を重ね、ひとりひとりの緑内障患者様それぞれの状態にぴったりと合った、オーダーメード感覚のベストの緑内障治療を提供できるように努力していきたいと思っています。
2010.06.05
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さて第5回東京眼科アカデミー2日目で一番勉強になったのは、「ドライアイを訴えたがドライアイではなかった症例」という講演でした。 ドライアイは今や日本人の国民病とも言われるありふれた疾患ですが、その患者様数が多くかつ症状が多彩であるために、「何でもかんでもドライアイ」と診断してしまいがちな側面があります。また、マスコミでもドライアイに関する情報が溢れかえっているので、患者様自身が最初から「自分はドライアイ」と思い込んで受診される、と言う部分もあります。 ただ実際には、調節異常による眼精疲労が原因だったり、瞬目不全(しゅんもくふぜん)といって、まばたきが弱くてちゃんと目を閉じていないために、 ドライアイのような症状が生じていることもあります。この場合は「強くまばたきをする」ことを心掛けるだけで症状が改善することもあります。 我々眼科専門医は「一見ドライアイ」の中に隠れている様々な疾患を見逃さないように、常にたくさんの鑑別診断を念頭において患者様の診察に当たらなくてはならないな、と気持ちを新たにしました。 これで「第5回東京眼科アカデミー参戦記」は終わりです。皆様、お付き合い戴き有難う御座いました。(完)
2012.03.31
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先日の日記の続きです。有効な治療法が無いと言われる難病、網膜色素変性症ですが、実は数年前から散発的に「ウノプロストンという目薬が効果がある」という論文を目にするようになりました。 論文によると著しく自覚症状が改善した患者様が実際にいるということです。これはウノプロストンが持つ、網膜の神経節細胞のグルタミン酸障害に対する保護作用によるものではないか?と推察されていますが、まだはっきりしたことは分かっていません。 ↑ これがそのウノプロストンです。実際には「レスキュラ点眼液」という名前の緑内障・高眼圧治療薬です。 このレスキュラ、10年以上前にはベストセラー薬として一世を風靡したこともあったのですが、「点眼時に非常にしみる」、「角膜(黒目)の上皮障害を高率に起こす」、「眼圧下降効果が弱い」などの弱点があり、他の緑内障新薬に負けて現在では処方されることが非常に少なくなってきています。 ところが薬の作用と言うのは不思議なもので、今また新たな病気に効く可能性が浮上しているわけです。緑内障を合併している網膜色素変性症の患者様には当然保険診療の範囲内で処方することが可能な目薬なので、私はここ数年網膜色素変性症がある方には、このレスキュラ点眼液について説明をし希望の方には実際に処方もしてきました。 「この薬はしみるのでイヤ」という方ももちろんいらっしゃいましたが、継続されている方の中に「レスキュラさし始めてから、なんだか視界が明るく良く見えるようになった」と、自覚症状の改善を認める患者様も実際にいらっしゃいます。 なので、私は自分自身の経験から「レスキュラには網膜色素変性症の治療薬となる可能性がある」のではないか?と感じています。 また実際にこのレスキュラ、現在開発元のアールテックウエノ社が、少し濃度を変更して(未確認データですが25%濃度を上げているという説もあります)、オキュセバ点眼液と言う名前で、網膜色素変性症の治療薬として治験中 でもあります。 医学の世界は常に少しづつ進歩しています。昨日治らなかった病気も明日には治ることもあります。私は八幡浜地域の皆様に全国レベルの最新で安全な眼科医療を提供し続けることが出来るように、これからも毎日の勉強を欠かさずに努力していきたいと考えています。
2010.07.25
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さて2月4日(土)、初日に非常に勉強になったのは「強膜炎の薬物療法」、「強膜炎の外科的治療」という2つのプログラムでした。 強膜というのは、眼球そのものを形作っている丈夫で文字通り「強い膜」で、普段は白い色をしています。そして、この膜に炎症が起きている状態を強膜炎といいます。 症状としては、強い充血と痛みです。強膜炎の充血は比較的深いところで発生してるので、黒っぽい赤色に見えるのが特徴です。充血している部分は押すと痛みを感じます。この「痛い」というのが強膜炎の最大の特色であり、しかもその痛みは患者様によっては「鉛筆を目に刺されたよりも痛い」と言うほど激烈です。具体的に実際の患者様の状態を見て頂きましょう。 この強膜炎はリウマチなどの自分で自分自身を攻撃してしまう自己免疫疾患に合併することが多いですが、色々調べても結局原因が分からないことも良くあります。 そして、これだけ医学が進歩した現在でも治療に難渋することが多く、最悪の場合は強膜が溶けて(壊死して)穴が開いてしまうことさえあるのです。そのためこの強膜炎と言うのは、我々眼科専門医にとってはその知識量・経験・状況判断力・決断力を問われる非常に厳しい病気なのです。 今回のプログラムではこの強膜炎について様々な角度から勉強することが出来ました。 ↑ このように強膜炎の原因疾患というのは無数にあり、それがこの病気の治療を難しくしています。 ↑ そして、上のスライドにあるとおり、「とにかく痛い」こと、これが困るんですね。 ↑ そして、目薬だけであっさり治る症例から、内科的・外科的治療を総動員して何とか治った症例、どうしても治せない症例まで、その予後は本当に千差万別です。 ↑ 治療法は一応のフローチャートはありますが、これがまた一筋縄ではいかないのです。 ↑ これは重症例の写真ですが、激烈な炎症で強膜が溶けてしまい、その奥のぶどう膜という茶色い組織が出てきてしまっています。 ↑ こうなると、強膜パッチ術といって、他の方の献眼された目を持ってきて弱いところに貼るという外科的な治療をするというのが教科書に書いてある定説なのですが、 ↑ うかつにこのパッチ術に手を出すと、パッチをしても次から次へと溶けてしまってまた穴が開き、「合計したら数個分の目をパッチに使ってしまった!」というような凄まじい状況におちいることがあるので、「うかつに外科的治療に踏み切らないことが大切である」ことが解説されました。 重症例の治療法の実際を聞くことが出来て、本当に勉強になりました。(続く)
2012.03.23
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さて今日も「名薬、ムコスタ点眼液の悲劇」シリーズの続きです。 ムコスタ点眼液の作用を専門的に言うと、まずは結膜(白目)の杯細胞を増加させます。そしてこの杯細胞は「分泌型ムチン」というものを出すので、結果として分泌型ムチンが増加するということになります。これによって、涙の質と量が劇的に改善されるのです。更にドライアイには炎症が深く関与しているのですが、ムコスタには炎症を抑える作用もあります。 つまり、 杯細胞の増加&抗炎症作用の2つの力 があるので、ムコスタ点眼液はドライアイに抜群に効くのです。 今日はここでムコスタ点眼液がどれほど眼の表面の炎症を取り、ツルツル綺麗にしてくれるのかの実例を1つ見ていただきましょう。 色々な原因で角膜(黒目)に糸状の付着物が付着してしまい、強い異物感や痛み、充血などを引き起こす「糸状角膜炎」という病気があります。 これはなかなか難治性の病気で目薬で治す事が難しく、治療は、 ピンセットや綿棒で糸状の付着物を取るくらいしかありませんでした。当然すぐに再発もしますし、痛みなどの自覚症状が強いために多くの患者様が苦しんできました。 さて、上の写真の患者様はこれまでも強力に炎症を抑えるステロイドを筆頭に様々な目薬を処方した上で2週間おきに糸状物を取り除く治療をしていたのですが、ある時試しにムコスタ点眼液を処方したところ、 2週間後の再診時には、長年苦しんでいた糸状角膜炎(filamentosa)が嘘のように全て消えてしまっていました。! 患者様も「今まで目がしょぼしょぼし過ぎてほとんど新聞が読めなかったのに、ある日読めそうな気がしてそれから日毎に紙面が読みやすくなりました。感動しています。」と大喜びでした。 私も大変驚きましたが、その後他の同じ病気の患者様にもムコスタ点眼液を処方してみたところ、ほとんどの方が劇的に症状が改善しました。 これがムコ点のパワー なんですね。「効く人には劇的に効く。患者様自身が症状の改善をダイレクトにはっきりと実感できる」、ムコスタ点眼液は本当に素晴らしいクスリだと感じています。(続く)
2013.03.18
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さて今日は久々に「第117回日本眼科学会参戦記」の続きです。 日曜日の朝は、ホテルでしっかりとバランスの良い和食を食べて、 歩いて学会場へ出発です。 山手線に沿ってとことこと10分ちょっと歩けば会場に着くのですが、ガード下にはたくさんの飲食店が立ち並んでおり、食いしん坊の私には目に楽しい光景が続きます。 あっという間に到着しました。 日眼はメジャーな学会なので、開催期間中は毎日「学会新聞」が発行されます。 これがまた勉強になるんですね。 さて学会場に入ると、まずは学会特製の「コングレスバッグ」という荷物入れを貰います。最近はこのバッグ、どの学会でもかなり洗練されたデザインになっており楽しみの一つなのです。今回は、 水色と赤色からの2択でした。 水色のバッグを貰って、ようやく私にとっての学会が始まります。とは言っても実はすでに最終日なんですけどね。(笑) それにしても今回のコングレスバッグはスタイリッシュでカッコよかったです。(続く)
2013.06.03
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さて今日の日記は、5月26日の 緑内障の方はなぜ定期的に視野検査をしなければならないのか? の続きです。まだご覧になっていない方は先にそちらをお読み下さい。 さて、緑内障患者様に頑張って定期的な視野検査をして頂くと、 上記のように緑内障の「進行具合」を示すグラフが作成できます。これをMDslope(エムディースロープ)と言います。MD値というのは年齢別の正常者との平均感度の差を数値化したもので、正常値は-2~2dB(デシベル)とされています。 緑内障が進行してくると、このMD値は段々マイナス方向に進んでいきます。分かりやすく単純化して言うと-2~-10dBまでが初期、-10~-20dBまでが中期、-20~-30dBまでが後期となります。 そしてこのMD値が-15dBを超えると視野障害で生活に不便が出てくるとされています。 ここで先ほどのMDslopeの話に戻ります。視野検査を複数回するとMD値が1年にどのくらい悪化しているか(=MDslope)が分かってきます。すると、その患者様が「いつ頃生活が不便になり始めて、いつ頃失明してしまうか」を推測することが出来るのです。 ↑ この患者様は40歳で、現在のMD値は-4dBと初期の緑内障です。このレベルでは自覚症状は全くありませんが、MDslopeが-1dBとかなり進行の早い緑内障です。このままの状態で病気が進行すると仮定すると、51歳で日常生活が不便になり始め66歳で残念ながら失明してしまう、ということになります。 我々眼科専門医は、常にそれぞれの患者様の現在のMD値とMDslopeを認識しながら日々の診療に当たっています。「大丈夫ですよ」と言うのは、「今くらいの進行具合ならまず間違いなく一生元気に目を使って頂ける」と判断していると言うことですし、「うーん、目薬を変更・追加しましょう」とか、「申し訳ない、これは緑内障の手術を検討しましょう」と言ったら、「このままの進行具合だとちょっと困るので、更に眼圧を下げてMDslopeの悪化を食い止めよう」という意味なのです。 このように、定期的な視野検査をすることによってこそ、それぞれの患者様にぴったりのオーダーメード感覚の安心な治療方針を決める事が出来るのです。ですので、緑内障の患者様は是非視野検査に頑張って取り組んでくださいね。
2011.06.16
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