型をこよなく重んじるも、嵌ることをめっぽう嫌がる作曲家の日記

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2020.01.31
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カテゴリ: 芸術

自分の習慣として、今聞こえてくる音楽や流れている音楽が、
どういう部類のものであるかということを軽く分析することがあります。

これは、小中高生の時にクラシック音楽を聴き漁り、
当時FMラジオから流れてくる海外のライヴコンサートを聴いたり、
レコード芸術誌の特選盤、準特選盤、選外は何が違うのかと考えたり、
知らない曲を聴いてはこの曲の何がいいのかと考えたりしていました。
自分の好きな作曲家や曲、演奏は皆がいいと言うのか、
なぜいいと言われないのかなどを他人事ながらよく考えていました。(笑)



フランスの「エスプリ」とはこの感覚か!とか、
FM誌で事前に聴きたい番組内容を調べて、
知らない曲は必ずエアチェック(ラジオからカセットテープに録音)しました。
例えばチャイコフスキーに未完だった交響曲第7番を誰かが完成させた録音があると聞けば、
高校の帰りにあるレコード屋さんに取り寄せの注文をしたりしました。
珍しいレコードばかり発注するので廃盤が多く、
レコード屋さんの店の人も手を焼いていたと思います。(笑)
なので、高校の音楽の授業、特に鑑賞が退屈だったのはよく憶えています。(笑)
大学受験のために上京した際の楽しみは神田の輸入盤専門店に行くことでした。

当時、クラシックオタクの話では歳と共に聴きたいものや好きなものが変わり、
最初は派手なロマン派から近現代の管弦楽曲、交響曲、そして次に協奏曲、独奏曲、
最終的には中高年になって室内楽にハマると。
もちろん作曲の勉強のために当時から室内楽も聴いていたのですが、
何気に聴きたい曲はそのとおりかと思います。

そんなかたちで20代を過ごし、テレビや街中の音楽も聞けば勝手に分析していました。
テレビなどのメディアから聞こえてくる音楽としては、
90年代後半から2000年代前半までクオリティが高かったように思います。
その後はクオリティは徐々に関係なくなりアマチュア的な音楽が増えました。

これは聴く人口よりも演奏したい人口のほうが急速に増え、
アマチュアとして演奏したい曲や人気のある演奏家が良いとされるようになりました。
また、編成が元来のポップスのものではなく吹奏楽やオーケストラにまで及んできたため、
聴く側の好みよりも、演奏する側の考えのほうが優先されるようになってきました。
作曲もその例に洩れず、いい曲というより作りたい曲、
ひいては作れる曲が優先されるようになってきました。
音大におけるアカデミズムはプロの演奏者選びに有効なだけかもしれません。

結果として現在、作曲作品は和声学や対位法という手法があっても、
それをポップス由来の音楽構成としてつくることに用いられることが目に付きます。
つまり、オーケストラであってもクラシック由来の表現ではないのです。
表現が限定されていて、クラシックとは別のルールということになりますが、
個人的には音楽の多様さに欠け芸術性に乏しいと感じています。

クラシックを基調とする音大で音楽理論を学んでも、
作ったり演奏したい音楽はクラシック由来のものではない人も多い状況です。
機能和声を基に現代のマーチなどに連続5度の禁則の指摘をする人などもいて、
クラシックの理論を学んではいてもクラシックの時代様式や曲はあまり知らず、
ルールの意味をよく理解していない人がたくさんいることも確かです。

一方で現代音楽を好み勉強している若者もいますが、
その作曲をする場合は中途半端な過程ではなく自身のスタイルを打ち出した時に、
コンクールや公に出したほうがいいと感じます。
しかし、先生のほうが弟子を出したがるのは演奏も同じかもしれません。

その理由は、14年間の演奏会実習ゼミで学生にやりたい曲を選ばせ、
月1回以上の演奏会で採り上げた経験からの結果です。
優秀な学生が中心で時にはクラシックに限らずざっと1600曲以上採り上げましたが、
シェーンベルクや後の12音技法の作品は一度も挙げらなかったことです。
それは院の試験やオーディション、作曲専攻の発表会として演奏したりすることはあっても、
通常のお客相手の演奏会では一度もありません。
因みにジョン・ケージやそれ以降の現代曲は何度も採り上げています。
もっと優秀な学生や大学であれば採り上げるかもしれませんが、
この事実は如何に12音技法が好まれていないかということです。

好んでいなくても課題曲になったりそこに生業が発生すれば人は演奏します。
しかし、今の時代は「人の演奏を批判するのはあり得ない」とSNSで豪語するアマチュアも多く、
評論家がプロに対しても批判的なレビューが書けない時代かもしれません。
音楽が精査されないことによって、クラシック本来の芸術性を失われていくのが不安です。
自分自身は作曲を志した時に、何よりクラシックが好きで、
その伝統上の音楽が書きたかった思いがあります。
クラシック音楽の伝統が培われることなく、
単に西洋古典音楽というジャンルになってしまわないかと心配しています。






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最終更新日  2020.01.31 05:19:51
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