型をこよなく重んじるも、嵌ることをめっぽう嫌がる作曲家の日記

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2020.06.29
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テーマ: 現代音楽(10)
カテゴリ: 作曲家
1993年頃から学生の頃に習った西洋音楽史はなくなってしまうのではないかと考えていました。
正確にはなくなってしまうのではなく、
クラシックではない他のジャンルに流れが変わってしまうということです。
しかも、定説というものがなくさまざまな説が共存するでしょう。
現に教育的なクラシック番組でも近年の音楽がロックに変わる紹介がされていました。

現代音楽の潮流として嘗て新しさや芸術的完成度が備わった作品が生まれてから、
新しい音組織が出尽くした1990年頃から音楽としての新鮮さや可能性が感じられなくなり、
最近のYouTubeやSNSにおいて現代音楽の人気が如実にないこともわかってきました。
自分の30年間の教員時代に知った演奏家や音大生の意識から考えても、
自ら現代音楽を担うという人は本当に減りました。

現代音楽の価値はこれまで作曲家が決めてきました。
作曲家が作曲家を評価する方式は昔から変わっていませんが、
それは書法=エクリチュールという名の楽譜上の美学として発展してきた経緯があります。
そして、それはひじょうに緻密で数学的、図形的になりました。
また、調性を破棄しストイックで演奏、聴衆共に我慢の強いられる音楽になりました。

それでも音楽の新しさや可能性をもたらす意味でリスペクトされてきました。
そして、新しい芸術を研究する意味で発表する場が提供されてきています。
演奏家は作曲へのリスペクトや生業のひとつとして現代音楽に関わっていますが、
人同士の関係以上に他のクラシック音楽のように曲を愛し理解して演奏しているかと言えば、
ごく一部の現代音楽エキスパートの演奏家がそれにあたるのみです。

これまで、近現代のクラシック音楽と演奏家の関係、理解ということを考えてきました。
以前にも書きましたが、12音技法で作られた曲をコンサートで選曲する人はいないと言え、
院生が研究テーマに選んでも課題曲に課される以外はまず演奏しません。
その代わりに、ポップスのイディオムを用いた新しい音楽やロマン派、近代的な語法による音楽、
映画音楽、劇音楽、ディズニーなどをクラシックと同様に演奏するようになりました。

院生がテーマとしてロマン派から現代、邦人作品を選択しても、
その曲の分析を本当にできる人はごくごく少ないです。
ジョリヴェなどの近現代の旋法による音楽や12音技法の曲にしても、
皆が音楽的な仕組みを理解して演奏しているわけではないことが多いのです。
これはプロであってもそれほど変わりません。
それまでの経験や楽譜に書いてあることを感覚として的確に捉えているのだと思います。
また、作品の意味を深く考えずに自己流でいいと考えるのは最近の若者の特徴でもあります。
しかし、そのことは演奏したり聴いて楽しいかが全てだという主張にも受け取れるのです。

最近の現代作品の解説で若い作曲者は曲の内容や理論を書かなくなってきました。
その理由は、自分だけの誇れる語法や理論がない、
アイディアはあっても着想や音組織は以前にもあったものが多く、
言い方を変えたり既成のものを再構成しているように聴こえます。

そして、海外で認められている評価の高い作品についても、
同様に先人の理念を活かしつつ作曲家に受け入れられやすい楽譜をつくっていると感じられます。
その繰り返しが現代音楽の歴史をつくってきたわけですが、
クラシック由来の音楽として、また音を感覚的に受け入れることがだんだん難しくなり、
世の中の数ある音楽から乖離してしまったように思えるのです。

ただ、昔は特殊奏法が演奏者に嫌がられたこともありましたが、
今は理解を示してくれるようになったことは確かです。
特殊奏法については演奏精度が上がったことがあり、昔よりも演奏効果が上がっています。
また楽器の可能性としていろいろな道具で音を鳴らすアイディアは続々と生まれていますが、
その楽器の本来とはかけ離れてしまうことはクラシック音楽の美学とは裏腹です。

1990年前後は自分の作曲作品が批評家にどう書かれるのかひじょうに気にしていました。
若手でエリートでもない自分は毎回酷評が多く、それを糧に次に繋げていました。
当時に高評価だった作曲家の作品を参考に研究もしていましたが、今はどうでしょうか。
その批評家たちの言っていた美学はどこにいったのか?という感じです。
つまり、批評家の美学が正しかったにしても世の中はそのようには進まなかったのです。

実際にその昔に素晴らしい作品はたくさんあり、素晴らしい作曲家はたくさんいます。
問題は日本において芸術音楽を自ら肯定できないことにあります。
海外における実績でしか評価を下せない日本があるのです。
しかし、例えば留学してわかることは日本がいかに便利で住みやすいかということ、
日本で受けた教えがいかによかったかということです。
日本独自の音楽文化が伝統音楽ではなく芸術音楽にどうしても向かないのです。

最近は新型コロナウイルスのために音楽活動が失われました。
その間にSNSなどで拡散されている音楽はお世辞にも質の高いものとは思えません。
そうせざるを得ないからやっているものです。
そう思うと、今後は本当に必要とされる音楽しか残れないかもしれません。
そのような時に現代音楽が生き残れるのでしょうか。
私感としては、こんな時期だからこそクラシック由来の芸術性を感じられる、
ポストモダンが必要なのだと感じます。

今までの伝統や足跡が押し流されようとしています。
時代の趨勢とは言え、あの老舗のFAUCHON(フォション・パリ)ですら、
経営破綻し再建されるとのことです。

時代を見直す時にきているのは確かなのだと思います。





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最終更新日  2020.06.29 07:49:00
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