型をこよなく重んじるも、嵌ることをめっぽう嫌がる作曲家の日記

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2021.09.28
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テーマ: 芸術(12)
カテゴリ: クラシック音楽
暗い音楽をつくるとNGということは1990年頃から言われていましたが、
2010年頃から暗い曲がつくられなくなったと言えるのではないでしょうか。
東日本大震災の後に復興支援曲も多くつくられましたが、
明るい曲調で未来への希望や絆をテーマとすることが定番になりました。

いろいろ考えてきた中で、ここには大きく2つの理由が考えられます。
ひとつは楽器を習う人が増え、教える側が教わる側に暗い曲を課しにくいことです。
また、自分が演奏する際にも暗い曲を日々さらうことに抵抗を感じる人がいます。
明るくあっけらかんと捉えやすい曲のほうが教えるにも演奏するにも楽なのでしょう。

もうひとつは音楽が単に元気を出すためのアイテムとして蔓延したことです。
「ただでさえ暗いことが多い世の中。明るい音楽を聴いて元気を出したい。」
こう言う人がよくいますが、これは気分的なことでBGM的な捉え方です。
シリアスな音楽としてのクラシックはBGMではなく鑑賞するためのものです。

30年前に作った暗い曲を今の若い学生に見せたら、
「何があったんですか?」と真剣に暗い曲調に違和感のある答が返ってきました。
今の若者は感性として暗くシリアスな外的要素を受け流しやすい習性を持っています。
これは教育の影響でもあり、逆に暗さを表現することも経験が少ないため苦手です。

気分が沈んでしまった時は暗い曲がいいのは昔から周知のことです。
このブログのタイトルは暗い曲を聴く人が減ったかのような印象を与えたかもしれません。
癒しを求める時に暗い曲を聴く人は、実はたくさんいると思われます。
暗い自分を認めることが何か敗者のような心持ちにさせるのが現代なのかもしれません。

本当に気分が沈んでいる時に音楽を聴いても解決にはならないかもしれません。
しかし、明るい曲調の「レクイエム」や、未来を根拠なくただ楽観する音楽よりも、
自分の心境を反映した暗い曲を聴くほうが心の浄化作用はあると確信します。
芸術とは、一時的な気晴らしではなく人生観を変えるくらいの威力があります。

クラシックで「エレジー(悲歌)」と名のつく曲はたくさんあります。
これはクラシックの作曲家が渾身の力でつくった暗い曲です。
中でもお勧めしたいのはロマン派のロシアの作曲家、
アントン・アレンスキーのピアノ三重奏曲第1番の第3楽章「エレジー」 ​です。

作曲された1894年はドビュッシーが頭角を現していた頃ですが、
この「エレジー」を聴いて120年以上も前の音楽とはとても信じられません。
クラシックは同じ曲を異なる演奏で表現の違いを聴き比べる楽しみがありますが、
他の演奏も識ってぜひ聴き比べの楽しみも持っていただきたいのです。

世の中では「子供のため」「夢は叶う」「ありのままでいい」とか言いますが、
コロナ禍では多くの若者が梯子を外されたと感じたのではないでしょうか。
体(てい)のいい明るい音楽で場凌ぎ的な元気を取り繕うのは置いておいて、
せめて「うっせぇわ」のような怒りや暗さを表現してみてはどうかと思うのです。





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最終更新日  2021.09.28 14:56:47
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